100-artists

シェイ・ヘンブリー 100人のアーティストになった僕

「様々なアーティスト100人の作品を展示する国際美術展を開催するにはどうすればよいでしょうか?」ヘンブリーは語りかける。ここでは、130万ビューを超える Shea Hembrey のTED講演を訳し、架空の100人のアーティストの作品を紹介する。

要約

様々なアーティスト100人の作品を展示する国際美術展を開催するにはどうするか?シェイ・ヘンブリーの場合、答えは架空のアーティストを創り、大規模な野外展示から髪の毛1本で描いた小さな絵画まで全ての作品を自分で作ることでした。たった1人のアーティストがどれ程爆発的な創造性と幅広い技術を持っているか、面白おかしくあっと驚くトークをご覧ください。

Shea Hembrey explores patterns from nature and myth. A childhood love of nature, and especially birdlife, informs his vision.

 

1 個性的で風変わりそして手先が器用な人々の間で育った

僕は現代美術アーティストですが 生い立ちはちょっと変わっています。生まれて初めて美術館に行ったのは20代になってからで 育ったのは周りに何もなく 道路も未舗装のアーカンソーの田舎で 一番近い映画館まで1時間でした。でも芸術家として育つにはいい環境だったと思います。個性的で風変わり そして 手先が器用な人々の間で育ったからです。僕の子ども時代は説明できないほど 田舎くさいものでした。同時に皆さんが思うよりずっと知的でした。例えば僕と妹は子どもの頃 リスの脳みそを食べる競争をしていました (笑) でもその一方 僕の家族は読書家でした。そしてテレビと言えばドキュメンタリーでした。僕は父ほど熱心な読書家を見たことがありません。1日に小説を1~2冊読めます。

でも小さかった頃の思い出は 父が僕のBB ガンで家の中のハエを殺していたことです。何がすごいかと言うと リクライニングチェアから大声でBBガンをよこせと言い 僕が取ってくると びっくりするのは― 家の中のハエをガンで殺すのはかなり凄いんですが 何がすごいかと言うと 撃つ加減が分かっていて 2部屋離れた所から撃って ハエがとまっていたものは傷つけないんです。ハエを殺すのには十分で とまっていたものは傷つけない強さで撃てたからです。

 

2 「婆ちゃんのテスト」と3つのH

でもとにかくアートの話をしましょう (笑) 子どもの頃の話をしていたらきりがないので 僕は現代美術が大好きですが この世界とこの環境に 強く不満を感じることがよくあります。数年前 何ヶ月かヨーロッパで過ごし 有数の国際美術展を見ました。芸術界で今何が起こっているか 動向が分かるとされるものでした。そしていくつも続けて見に行って 衝撃を受けました。自分が何を求めているのか 頭の中ではっきりしたのです。僕はそこには無いものや 十分に無いものを求めていました。でも主な2つとして まず一般大衆に受ける 身近な作品が もっと欲しいと思いました。そしてもう1つ欲しいと思ったのは もっと精巧な技巧と 手法でした。

そこで完璧なビエンナーレには何が必要かと 考えて羅列し始めました。そして自分のビエンナーレを やろうと決めました。企画して指揮をして 世界でやり始めようと思いました。それで作品を選抜する 基準がいくつか要るなと思いました。僕の中の基準には 2つ重要なものがあります。1つは「婆ちゃんのテスト」と 僕が呼んでいるもので 祖母に芸術作品の説明を 5分でする想像をします。5分で説明できなかったら パッとしていないか 難解すぎるかです。十分磨かれていないのです。さらりと説明できるまで 取り組む必要があるということです。そして2つ目の一連のルールは― 芸術なので「ルール」はいやですね。僕の基準は 3つのHです Head(頭)Heart(心)Hands(手)です。素晴らしい芸術作品には「頭」があり 興味深い知的なアイデアや 概念を表現しています。それには「心」もあり 情熱や 思いや魂が感じられます。そして「手」として巧妙に作成されています。

 

3 世界中の100人の芸術家を捏造した

それでこのビエンナーレを どうやってやろうか どうやって世界を旅して芸術家を 見つけようかと考え始めました。でもある日 もっと簡単な方法を思いつきました。全部でっち上げればいいやと(笑) それでそうしました。ビエンナーレには芸術家が必要だ 国際ビエンナーレだから世界中の芸術家が要ると思いました。それでどうしたかと言うと 世界中の100人の芸術家を捏造しました。彼らの生い立ちや人生における情熱 芸術のスタイルなどを考え出して 彼らの作品を創り始めました (笑)(拍手)

この手のプロジェクトはきりがないと思いました。それで本当にビエンナーレにして アトリエで2年取り組んで 2年で完成させようと決めました。そしてその通りにしました。これらの芸術家について話しましょう。多種多様ですが 僕は技巧は得意なので 色々な技法を試すことができて楽しかったです。例えば写実派の絵画だと このような 古典巨匠のスタイルから 全く現実的な静物画や この手の髪の毛1本で描くようなものまで色々です。一方ではパフォーマンスや短編映画や 屋内展示の このようなものや これ そして野外展示でこのようなものや こんなものもあります。ちなみに 全部僕が作りました。フォトショップの合成ではなく 僕が金魚と一緒に川に入っています。

 

4 ネル・レメル、ケイ・オヴァストリー

では僕の架空の芸術家を紹介したいと思います。こちらはネル・レメルです。ネルは農耕に関心があり 作品も土を耕すことに根差してします。この作品は「反転した大地」です。不毛な土地を空を使って 浄化したいと思ったのです。そして巨大な鏡を― (拍手) そしてここでは巨大な鏡を 土にはめ込んでいます。これは縦6.7メートルです。僕が彼女の作品でいいと思うのは 周りを歩いて 空を見下ろすと 下を向いて空を見ると 空が 今までと違う感じに広がることです。たぶんこの作品が一番いいのは 夕暮れと夜明けで 地球の影が差し地上は暗いのに 頭上にはまだ明るい光がある時間です。周りが薄暗い時にここに立つと この窓に飛び込みたくなる気がします。いい作品でした。これはアーカンソーの実家の裏庭です。穴を掘るのは好きなので とても楽しい作品でした。柔らかい土を2日かけて掘ったからです。

次の芸術家はケイ・オヴァストリーです。彼女は短命や儚さに興味があり 最新のプロジェクトは 「私が作った天候」というもので 彼女は自分の体のサイズの 気象を作っています。この作品は「霜」です。彼女がしたのは 寒い乾燥した夜に 行ったり来たりしながら芝生に息を吹きかけて 命のしるしを― 命のしるしを残すことでした。彼女の命のしるしです (拍手) これは彼女が残した 長さ1.5メートル幅12センチの霜です。日が昇ると溶けてしまいます。僕の母が演じてくれました。

 

5 日本人芸術家、ガス・ワインミュラー

次は日本人芸術家のグループです。東京の日本人の (笑) アーティスト達です。今までなかった別のアート分野を創りたいのですが 資金が必要で 面白い資金調達プロジェクトに取り組むことにしました。その1つがスクラッチ式の名画です (笑) それぞれのアーティストが 23 ×18センチのカードに オリジナルの絵を描き 10ドルで売っています。買うまで本物かハズレか分からないわけです。それで日本ではブームを巻き起こしました。みんなが名画を欲しがったからです。一番価値があるのは ほとんどスクラッチされていないものです。作品は全部なんらかの形で 幸運や運命や偶然について表現しています。最初の2つはジャンボ宝くじ当選者の 数年前と当選後の肖像画です。

これは「短い棒(貧乏くじ)を引いて」という題です (笑) とても気に入っているのですが これは 従弟がある日友達に僕のことをすごくいい言い方で 紹介してくれたからです 「僕の従兄弟のシェイだよ。棒の絵がすっごく上手いんだから」 (笑) 今までで一番の褒め言葉のひとつでした。

この芸術家はガス・ワインミュラーで 「人々の芸術」という大きなプロジェクトをしています。この中で「アーティスト・イン・レジデンス」と題して 小さな作品も作っています。何をするかと言うと (笑) 誰かの家で1週間過ごします。その家の玄関先や戸口にパジャマと 歯ブラシを持ってやってきます。1週間共に過ごす準備は万端です。そしてそこにあるものだけを使って 作業用のささやかな住み込みアトリエを作ります。その1週間は偉大な芸術とは何か 家族と話し合います。いろいろ話し合って 彼らの所有物を全部かき分けて 作品を作る材料を見つけます。そして家族が素晴らしいと思える 芸術作品を作るのです。この家族には静物画を描きました。彼の作品はどれも 定住することや空間そして 私有物になんらかの形で関連しています。

 

6 ワキン・パリスヴェガ、シルビア・スレーター

次のプロジェクトは ワキン・パリスヴェガのものです。彼が興味を持っているのは― 彼は芸術はどこにでも潜んでいて ちょっと手を加えるだけで成り立つと考えています。そしてそれを自然の力を利用して行っています。例えば雨を使って絵を描くシリーズなどです。これは「愛の巣」プロジェクトです。彼がしたのは 野鳥にアートを作ってもらうことでした。野鳥が取りに来る場所に材料を置き 巣を作ってもらいました。この巣は「ラブロックさんの頭の巣」で こちらは「ラブソング・ミックステープの巣」という題です (笑) これは「ラブメイキングの巣」です (笑)

次はシルビア・スレーターです。シルビアは美術教育に関心があります。とても真面目なスイス人芸術家です (笑) 彼女は混乱状況下の場所や 途上国で働く友人や家族のことを思い浮かべ 自分が作れて彼らの役に立つものは 何だろうと考えました。何か悪いことが起こって お金をつんで国境を越えたり 武装者の買収をしなくてはならない時です。そこで彼女はポケットサイズで 持ち歩く人をイメージした 作品を作ることを思いつきました。肌身離さず持ち歩いて 最悪の事態になったら これを渡して命を助けてもらいます。この命の代償は 灌漑を行うNGOの責任者のために作ったものです。使うことなく家宝として 譲り渡すことになるのがいいのですが 支払いのためにバラバラにでき このように葉っぱが支払いとなるように作りました。ですから貴金属と宝石でできた貴重品です。これはバラバラされたものです。つい最近エジプトを脱出するため壊さなくてはならなかったのです。

 

7 マイケル・アベマシーとバド・ホーランド

これはマイケル・アベマシーとバド・ホーランドのコンビです。2人は文化というか慣習を 創ることに関心を持っています。そこでどこかの地域に引越しし 小さい地域の中で新しい習慣を打ち立てようとしています。これはテネシー東部で 彼らが思ったのは 死に対して前向きな 慣習が必要だということでした。そこで彼らは「埋葬ダンス」を 考案しました。埋葬ダンスは 人生の記念日や誕生日に 友人や家族を呼んで 自分が埋葬される場所で踊るものです (笑) 僕たちがやったときも沢山観客がきました。家族に説明したのですが分かってもらえず ただ「仕事するから喪服に着替えて」と言いました。そして墓地に行ってこれを作ったのですが 好奇の目で見られておかしかったです。お墓の場所で踊るのですが ダンスが終わったあと 皆が自分に祝杯をあげ称賛してくれます。実質的に自分が出席できる 葬式を行うわけです。これは僕の父と母です。

これはジェーソン・バードソングの作品です。動物としての人の視覚や 擬態やカモフラージュに興味があります。人は暗い路地や ジャングルの道を見て 顔や動物を認識しようとしますよね。そのような自然な習性があります。彼はこの概念を利用しています。この作品ではこれらは実は葉ではなく カモフラージュのある蝶です。このようなものを組み合わせます。こちらも葉っぱの山ですが 実は蝶の標本です。またこれらを絵画と合わせています。この箱に入ったヘビの絵が例です。箱を開けて「わっ ヘビがいる」と思っても 実は絵なのです。こうして写実主義と擬態についてや 素晴らしいカモフラージュに 騙される人間について興味深い表現をしています(笑)

 

8 ヘイゼル・クラウセン、シルバー・ドーベルマンズ

次のアーティストはヘイゼル・クラウセンです。ヘイゼルは人類学者ですが長期有給休暇を取って 「存在しない文化を一から創れば 文化について学ぶことが多いわよね」と思い 実行しました。のどちんこを使った 独特のヨーデルを歌う「ユーヴライツ」という スイス人民族を創りました。彼らはのどちんこがいかに― 禁断の果実のせいで口にすることは 全て堕落しているとしています。これが彼らの文化の象徴でもあります。これは「ユーヴライツにおける 性行為と人口管理」という ドキュメンタリーの写真です。これは彼らの特有のアンゴラ刺繍です。これは創始者の1人ゲルト・シェーファーです (笑) 本当は叔母のアイリーンですが でたらめな物をでたらめな人物が作って すごく可笑しかったです。これを見ると笑ってしまいます。あれはフレンチアンゴラで リボンは全てドイツ製アンティーク ウールは10年ほど前に ネブラスカの織物工場で買ったもの それに古い中国製スカートだと分かっているので。

次はシルバー・ドーベルマンズという 芸術家のグループです。彼らのモットーは「ひとりずつに 実用主義を広めよう」です (笑) 彼らが関心を持っているのは 僕たちがどれ程甘やかされるようになったかです。これは僕たちが甘やかされすぎているという意見の1つです。彼らはこの有刺鉄線のトゲ全部に 警告サインをつけました (笑) (拍手) これは「常識フェンス」という題です。

 

9 K.M.ユーン、ジャニーン・ジャクソン

次はK.M.ユーンという 非常に面白い韓国の芸術家です。彼は儒教芸術の愛石の伝統を 作り変えています。次はメイナード・サイプスです。僕もメイナードは好きですが 彼は自分の世界に没頭していて 何と言うか妄想が激しいんです。次はロイ・ピーニッグで とても興味深いケンタッキーの芸術家です。すごく心の優しい人で どうしても欲しいという人に配給チーズと 引き換えに自分の作品を渡したことさえありました。

次はオーストラリアの芸術家ジャニーン・ジャクソンです。これは彼女のプロジェクトの1つで 「見ていないところで芸術作品がすること」です (笑) これはリトアニアの占い師ヨーギ・ぺトラウカスの作品です。こちらはジンジャー・チェシャーの 「最後の人」という短編映画からです。これは僕の従妹と妹の犬のギャビーです。次のサム・サンディは オーストラリアのアボリジニ族の 長老であり芸術家でもあります。これは彼が行っている 大規模な移動展示品の1つです。

 

10 エステル・ウィロースビー、ヴェラ・ソコロバ

これはエステル・ウィロースビーの作品です。色彩を使って癒しを行います。彼女は100人の中でも一番多作な芸術家です。来年には90歳になるのですが (笑) これは周Zによるものです。静止状態に興味を持っています。次はヒルダ・シンで 「社会的集合体」という一連のプロジェクトを行っています。

次はヴェラ・ソコロバです。正直言ってヴェラはちょっと怖いです。目を直視できない感じです。ちょっと不気味な感じなんです。こんなこと言ったら怒りを買うので 実在人物じゃなくてよかったです (笑) 彼女はセント・ピーターズバーグの検眼医で 光学を使った作品を作っています。次はトーマス・スィフトンによるもので 短編映画「ガリガリ君の冒険」です (笑) そしてこれはシシリー・ベネットの 短編映画シリーズからです。この他77人のアーティストがいます。ここに紹介されていない77人も加えたのが 僕のビエンナーレです。ありがとうございます。ありがとう (拍手) ありがとうございます (拍手)

 

最後に

「婆ちゃんのテスト」と3つのH(頭、心、手)が重要。世界中の100人の芸術家を捏造した。ネル・レメル、ケイ・オヴァストリー、日本人芸術家、ガス・ワインミュラー、ワキン・パリスヴェガ、シルビア・スレーター、マイケル・アベマシーとバド・ホーランド、ジェーソン・バードソング、ヘイゼル・クラウセン、K.M.ユーン、エステル・ウィロースビー、ヴェラ・ソコロバ…。100重人格者

和訳してくださったSawa Horibe 氏、レビューしてくださった Takafusa Kitazume 氏に感謝する(2011年3月)。

「人間と物質」展の射程: 日本初の本格的な国際展 (中原佑介美術批評 選集)


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