ルパル・パテル 指紋のようにユニークな合成音声

「コンピュータを駆使した音声の選択肢には限りがあります」パテルは語りかける。ここでは、70万ビューを超える Rupal Patel のTED講演を訳し、声なき人たちのためにユニークな声を生み出す方法について理解する。

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ジョナサン・ハイト 宗教、進化、そして自己超越の恍惚

「なぜ私たちは自己超越や自己を失うことを試みるのでしょうか?」ハイトは語りかける。ここでは、90万ビューを超える Jonathan Haidt のTED講演を訳し、集団選択による進化の科学について理解する。

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チップ・キッド 笑い事ではないけど笑える本のデザインの話

「本を表紙で判断するのではなく、本を体現する表紙を作るのです」チップは語りかける。ここでは、120万ビューを超える Chip Kidd のTED講演を訳し、表紙デザインの芸術について理解する。

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セバスチャン・デターディング デザインが私たちについて教えてくれること

「私が使っている椅子は、私たちの価値観をどのように表現しているでしょうか?」セバスチャンは語りかける。ここでは、55万ビューを超える Sebastian Deterding のTED講演を訳し、デザインが私たちについて教えてくれることについて理解する。

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ビーバン・キドロン 映画の素晴らしさを共有する

「映画がもつ力とは、共有体験としての物語や記憶、世界観を生み出す力です」キドロンは語りかける。ここでは、55万ビューを超える Beeban Kidron のTED講演を訳し、映画の素晴らしさについて理解する。

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ティモシー・プレステロ 賞ではなく人のためのデザインを

「本当に世界を変えたいと思うなら、結果をデザインしなければなりません」ティモシーは語りかける。ここでは、90万ビューを超える Timothy Prestero のTED講演を訳し、実世界での使用に役立つデザインについて理解する。

 

要約

ティモシー・プレステロは、途上国の新生児のために完璧な保育器をデザインしたと思っていました。でもそれは製品化に失敗し、彼のチームは厳しい教訓を学びます。賞賛されるためのデザインではなく、実世界での使用に役立つデザインの大切さを謳うマニフェストの誕生です。

Timothy Prestero loves a flashy “concept car.” But in his own work, he aims to design products for social impact, keeping users in mind.

 

1 ぎこちないデザインの「思春期」

世界を変えるためのすごいアイデアを思いつきました。心に響く素晴らしいアイデアです。私にとっては赤ちゃんのようなものです。 皆さん かわいい赤ちゃんは好きですよね。私も昔はかわいい赤ちゃんでした。私が生まれて数日後に父親と撮った写真です。

プロダクトデザインの世界では かわいい赤ちゃんはコンセプト・カーのようなものです。みんなを圧倒します。見た人はこう言います「すごい 即買いだ!」 では 今年の新車が昨年のモデルと ほとんど同じに見えるのはどうしてでしょう?(笑)

デザインスタジオと工場の間でどんな問題があったのでしょう? 私が今日お話ししたいのはかわいい赤ちゃんのことではなく ぎこちないデザインの「思春期」― 世界の仕組みを理解しようと模索している 失敗も多く難しい時期についてお話しします。

 

2 赤ちゃんを1週間温かく保つことはロケット科学ではない

新生児の健康に関する私たちの仕事を例に始めましょう。問題はこうです。世界には 途上国を中心に 1歳になる前に 中には生後1か月を迎える前に命を落とす赤ちゃんが 毎年400万人ほどいます。 こうした赤ちゃんの半数およそ180万人は 生後3日間 もしくは1週間きちんと温かい状態に保てば 命をつなぐことができます。

ネパールのカトマンズにある新生児集中治療室です。ここの赤ちゃんはみなこんな感じの保育器の中にいます。これがカトマンズで使われている 日本から寄付されたアトム保育器です。私たちはこういうものを必要としています。おそらくは日本の病院が設備を更新して 古くなった保育器をネパールに寄付したのでしょう。問題は技術者や予備の部品がなければ こうした寄付品はすぐガラクタになることです。

ここに私たちが何かできることがある気がしました。赤ちゃんを1週間温かく保つことは ロケット科学ではありません。そこで取り組みを始めました。ここボストンの優れた医療研究機関と協力し 海外で何か月にも及ぶユーザー調査を行いました。人々が望んでいることを把握できるように 人間中心のデザインを念頭に置いてデザイナーの視点で考えました。何千枚もの付箋を使い ここにたどり着くまでに何十という試作品を作りました。そしてこれがネオナーチャ保育器です。いろんな工夫が詰め込まれていていい出来だと思いました。

 

3 望むのは世界をより良い場所にすること

コンセプト・カーとは違い 私たちは 美しいものと実際に機能するものを 掛け合わせたかったのです。私たちは このデザインが メーカーや影響力を持つ人たちの心に響き 私たちの製品を使ってくれるようになるだろうと思いました。

悪い知らせです。実際にネオナーチャ保育器の中に入った赤ちゃんは 「タイム」誌の写真撮影の際の この子だけでした。反響は素晴らしいものでした。私たちは デザインは多くの人々の目に触れるべきだと考えています。この保育器はいろんな賞をもらいましたが 私たちにはブービー賞のように感じられました。私たちは美しいものを作って 世界をより良い場所にしたかったのに この赤ちゃんは 温まる時間すらなく保育器からいなくなってしまいました。

インスピレーションを与えるためのデザインというのは 実際には― 私たちにとって あるいは私が行いたいことにとっては 遅すぎたり 機能しなかったりで効果がないことが分かりました。私は デザインは結果を伴ってほしいと切に思っています。望むのは美しいものを作ることではなく 世界をより良い場所にすることです。ネオナーチャ保育器をデザインしているとき これを使うであろう人たちのことをいろいろと考えました。たとえば貧しい家族や田舎の医師 働き過ぎの看護師や修理技師のことなどです。自分たちは抜け目なく すべてを正しく行ってきたと思っていました。

 

4 「魚のいるところで釣りをする」

でも実際わかったのは製品を成功させるためには さまざまな人たちの関与が必要だということでした。製造 資金調達 流通 規制 PATHのマイケル・フリーは誰が「選び 使い 支払うのか」を 把握しなければならないと言います。ベンチャーキャピタルはいつもこう聞きます 「あなたのビジネスは何ですか。顧客は誰ですか?」

私たちの顧客は誰か?ひとつ例を挙げます。バングラデシュの病院経営者が施設の外にいます。病院の設備はどれも彼が買ったものではなく 設備購入の決定権は国の保健省や海外の援助国にあり 病院側はただ設備を受け入れるだけということが わかりました。この多国籍医療機器メーカーでも同様です 「魚のいるところで釣りをする」ということが大切です。つまり 新興市場でのターゲットは 勃興している中流階級であって 中流層の問題は心臓病や不妊症などの裕福病でした。結果を求めるデザインの一つの側面は 製造と流通のためのデザインを考えることだとわかりました。重要な教訓です。

 

5 新生児の黄疸の治療法は交換輸血と青色灯

ここで学んだ教訓を次のプロジェクトに生かそうと 製造業者を見つけるところから始めました。ベトナムで東南アジア向けに 新生児看護の製品を作っているMTTSという団体です。もう一つはEast Meets Westという アメリカの財団でこの技術を東南アジアの 貧しい病院に広める活動を行っています。

私たちはまず「何をしましょうか?どんな問題を解決したいですか?」 と尋ねました 「新生児の黄疸の問題に取り組みましょう」という提案を受けました。黄疸も とても深刻な世界的な問題のひとつです。世界の新生児の3分の2が黄疸を発症し そのうちのざっと10人に1人は 治療を受けなければ症状が深刻化し 一生にわたって障害が残ったり 死に至ったりすることもあります。黄疸を治療する一つの方法は 「交換輸血」と呼ばれるものです。想像できると思いますが高価で多少危険性もあります。

別の治療法もあります。とても技術的で 複雑で手ごわい方法です。 子どもに青色光を当てるのです。明るい青色光を できるだけ多くの皮膚に当てるのです。なぜこれが難問なのでしょう? MITに行って理由を探りました。いずれわかるでしょう(笑)

 

6 間抜けなのは製品

例を挙げます。これはアメリカの病院にある 頭上光線療法の設備です。使用法はこうです。赤ちゃんの上に設置して一人ずつ照らします。アメリカの病院から機材を持ち出して アジアの込み合った病院に送ると 実際にはこんな風に使われています。光線療法の効果は光量次第です。濃い青の四角部分にちょうどよい光線が当たるのです。でも実際にはこう使われています。端の方にいる子どもには 光線療法の効果がありません。でも 訓練もされず光量計もなければ そんなことはわかりません。

似た問題は他にもあります。この新生児集中治療室には 母親がやってきて赤ちゃんとの時間を過ごします。その母親は帝王切開を少し前に経験したかもしれません。それだけで大変な体験ですよね。母親が赤ちゃんを訪れたときに 子どもが裸で青い光の下に寝かされていると 寒そうに見えるので 母親が赤ちゃんに毛布をかけることは日常的に起こります。光線療法の視点から言えば理想的な行動ではありません。むしろ 間抜けなように見えます でも 私たちは 間抜けなユーザーなどいないということを学びました。間抜けなのは製品の方です。

 

7 人々がその製品を実際にどう使うかが重要

私たちは 実存主義者のように考えなければなりません。重要なのは「描いたかもしれない」絵ではなく 「実際に描いた」絵なのです。製品が実際の使用法を想定しているか 人々がその製品を実際にどう使うかが重要なのです。

パートナーのMTTSのことを考えたときも同じでした。彼らは新生児の病気を治療する素晴らしい技術を開発しました。頭上型の保温器とCPAP(持続的陽圧呼吸法)の設備です。安価で とても丈夫にできています。ベトナムで5万人の子どもを治療してきましたが 問題も抱えています。世界中のあらゆる医師や病院経営者がテレビを見て― 「E.R.」の再放送とか見てしまって 医療機器とはこんなものだというイメージを持っているのです。効果的なものではなく キャプテン・ロジャースを欲しがります。信じがたくまともな考えとは思えませんが。安っぽくてみすぼらしく見える機材を持つよりは 何もない方がいいという病院は実際にあるのです。だから機材を信用してもらうためには 見た目が大切なのです

結果について考えて 見た目の重要性がわかりました。だから そうした情報をひとまとめにしました。今回こそ正しく理解しようとしたのです。そこから生まれたのがこれです。ファイアフライ光線療法機です。今回はコンセプト・カーから先の段階をめざしました。いちばん最初から製造業者と話を始めました。目標は パートナーのMTTSが実際に製造できる 最先端の製品を生み出すことでした。彼らの働き方や使える資源を学び 製品の製造ができるようにしました。

 

8 正しい使い方が最も簡単な使い方

これが「製造のためのデザイン」の問題です。実際の使用法を考えるとファイアフライには 新生児用ベッドが一つついています。赤ちゃん一人しか乗せることができません。この機材をどのように使うのか明白にわかるようにしたのです。二人以上の子どもを乗せようとすると 赤ちゃんを山積みすることになります(笑)

間違った使い方をするのが難しいようにデザインしたのです。別の言い方をすれば正しい使い方が 最も簡単な使い方となるようにしたのです。もう一つの例です。勘違いしている母親の話です。母親は 赤ちゃんが寒がっているように見えて毛布をかけます。そこで私たちは 光が上からも下からも当たるようにしました。母親が赤ちゃんに毛布をかけたとしても 下から十分な光線を当てることができます。

 

9 本当に世界を変えるためには製造と流通に気を配らなければならない

最後の話です。インドに住む友人に言われました。アジアで電子機器を普及させようとするならば ゴキブリが機械の中に入り込んで 全ての部品におしっこをかけるという 製品テストをクリアしなければならない(笑)

おかしな話だと思われるでしょう。平和部隊にいたときにノートPCに ドット欠けがたくさん起きたことがありました。ある日PCの中を見てみるとアリが大量に 入り込んで 死んでいたのです。可哀そうに! ファイアフライではこんな対応策を取りました。電子機器は熱くなるのでほとんどの製品は 温度を上げないために通気口や送風機を設置する 必要があります。でも 通気口の隣に「入らないで」と記しても意味はありません。そこで通気口を全て取っ払いました。ファイアフライは完全密封されています。

私たちはこれらの教訓を学びました。試行錯誤の思春期以上に 試行錯誤のデザインはぎこちないものでした。本当に世界を変えるためには 製造と流通に気を配らなければなりません。人々が実際にその機器をどう使うか気を配らなければなりません。本当に注意する必要があります。失敗しても言い訳はできません。

 

10 結果をデザインしなければならない

実存主義者のように考え 間抜けなユーザーなどはおらず あるのは間抜けな製品だけだと考えなければなりません。自らに厳しい質問を投げかけねばなりません。自分たちが望む世界のためにデザインしているのか? 今ある世界のためにデザインしているのか? 準備ができていようともいまいとも これからやって来る世界のためのデザインなのか?

私は 製品をデザインすることからこの世界に入りました。しかし 本当に世界に変化を起こしたいのであれば 結果をデザインしなければならないと学びました。それこそが真に意味のあるデザインなのです。ありがとうございます(拍手)

 

最後に

ぎこちないデザインの「思春期」。赤ちゃんを1週間温かく保つことはロケット科学ではない。望むのは世界をより良い場所にすること。新興市場でのターゲットは勃興している中流階級。中流層の問題は心臓病や不妊症などの裕福病。間抜けなのは製品。人々がその製品を実際にどう使うかが重要。機材を信用してもらうためには見た目が大切。正しい使い方を最も簡単な使い方にしよう

和訳してくださったWataru Narita 氏、レビューしてくださった Tadashi Koyama 氏に感謝する(2012年6月)。

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