「未来の飛行機は自分の意思を持つと信じています」シェーファーは語りかける。ここでは、90万ビューを超える Bastian Schaefer のTED講演を訳し、3Dプリンタで作る未来の飛行機の可能性について理解する。
要約
デザイナーのバスティアン・シェーファーが未来の航空機のすぐれたデザインを紹介します。その骨組みは、丈夫で柔軟性のある自然界の形と世の中のニーズから生まれました。たっぷりの自然光を取り入れて、十分なスペースを有した航空機を想像してみてください。しかも、3Dプリンタから生み出された部品を使用しています。
Bastian Schaefer and a team of designers at Airbus have been imagining the high-concept future of the jet airlplane — in a future with less fuel and more passengers.
1 誰にも未来を予測することはできないが、姿を描くことはできる
未来について何がわかりますか? 難しい質問ですが 答えは簡単です。何もわかりません。誰にも未来を予測することはできません。でも未来の姿を描くことはできます。この時 革新的なアイディアが生まれます。刺激的ですし 何より― これまでの考えを打ち破る点で とても重要です。
2 未来の海上飛行機は現実にならなかった
未来のビジョンを描いた人は これまで沢山います。例えば 20世紀初頭に発表されたこちらのイラストは 未来の海上飛行機だそうで 大西洋を横断するのに1日半しかかからないそうです。この未来図は現実になりませんでした。現在 一番大きい飛行機は エアバスA380。かなり大きくて 沢山の人々を運ぶことができます。先ほどお見せした海上飛行機とは 技術的にも完全に異なります。
3 自然界に見られる骨や骨格のデザインを模倣した構造の航空機を考案した
私はエアバスとチームを組んで もっと持続可能な 未来の航空機の姿を創造しています。私たちにとって持続可能性を考慮するのは 社会的に とても大切ですが 同時に 環境や経済価値も重要です。そこで 私たちは自然界に見られる 骨や骨格のデザインを模倣した とても斬新な構造を考案しました。そんなわけで 少し奇抜な外観になりました。ものづくりの構造に携わっている方は特にそう思われるかもしれません。でも 少なくとも様々な未来の可能性について 模索するための 一案になります。
4 最新のマン・マシン・インターフェースを搭載することを考案した
では未来の航空機の客層はどうなるでしょう? 高齢の方がいて若い方がいる 女性の社会進出が進んでいて 私たちに全員に影響するメガトレンドが訪れます。未来の人体測定について 子供たちの体は大きくなっているみたいですが 私たちも横の方に大きくなっています。そこで とても密集している機内に スペースが必要です。色んな人がいるわけですから 高齢の方々のように 健康増進が必要な方もいます。個々のニーズに合うサービスを受けたいですし 移動中も時間を有効に使いたいと思うでしょう。そこで考えたのが 最新のマン・マシン・インターフェースを 航空機に搭載して 一つの製品にすることでした。
5 未来の飛行機は自分の意思を持つと信じている
最先端の技術と乗客のニーズを統合しました。例えば 機内を もっと明るくしたいと思ったとき どうやって自然光を取り入れることができるか? 例えば この飛行機には 窓がありません。未来に必要なデータとコミュニケーションソフトウェアは どうなるでしょうか? 私は未来の飛行機は 自分の意思を持つと 信じています。複雑な技術の集合というよりは 生き物のように なるんじゃないかと思います。未来の飛行機は違った様子になります。様々な場所によって 機体が乗客と直接交流します。機材に関しては 合成生物学の利用も考えられます。機体を設計する際の重要なポイントは構造です。ですから これから機体の構造に組み込めるような 新素材がどんどん出てくるでしょう。
6 3Dプリントと新しい設計基準によって機体の重量を減らすことができる
旧世界と新世界を比べてみましょう。まずは現在の様子からご覧いただきます。これはA380に見られる取り付け用の金具。とても重いですし 旧式の設計基準を遵守しています。こちらは同じ目的で使う部品ですが 骨の構造を利用しています。設計方法が全く異なります。旧式は1.2キロで 新式は0.6キロです。ですから3Dプリントと新しい設計基準によって 機体の重量を減らすことができます。温室効果ガスに直接関係するので 航空機設計で重要な課題です。
7 DNAと同じ手法をテクノロジーにも適用できる
このアイデアを 掘り下げてみましょう。自然界では構造や その構成要素はどのように作られるのでしょうか? 自然界はとても賢いですから全情報を― 小さな塊に集約してしまいます。DNAです。そこから より大きな骨格が形成されます。全情報はDNAに集約されているので ボトムアップの手法が取られています。それがトップダウンの手法と結合しているわけです。私たちが普段やっているとおり 筋肉や骨を鍛えることで 強化されていきます。テクノロジーにも同じ手法を適用できます。例えば 機体にはカーボンナノチューブを使用しますが これが大きな つなぎ目のない機体の骨格になります。具体的に ご覧いただきましょう。3Dプリンタの中でカーボンナノチューブが 成長していく姿をご想像ください。これをプラスチックのマトリックスに埋め込んで 部品にかかる力に対して強化されます。莫大な本数があるので これを何本もまとめて 最適な形態にすることができます。つまり電気やデータを仲介できる 構造や基礎構造が作れます。そして これを素材にトップダウンの手法で より大きな部品を 組み立てることができます。
8 想像できるなら実現してみませんか?
では 未来の飛行機を見てみましょう。未来の乗客の体型に合わせて 座席が変形します。異なる人体測定に適応します。機内には社交の場があり バーチャルゴルフなんかが できるでしょう。最後に 機体の生体工学の構造は 透明のバイオポリマーの膜で覆われていて 飛行機の未来像を 根本から変えてしまうでしょう。ジェイソン・シルバはこう言いました。想像できるなら実現してみませんか? 未来でお会いしましょう。ありがとうございました。
最後に
多くの人のニーズを、自然界の知見と科学技術で解決する。想像できるなら実現してみませんか?
和訳してくださった Mari Arimitsu 氏、レビューしてくださった Masato Suzuki 氏に感謝する(2013年7月)。
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