4d-printing

スカイラー・ティビッツ 「世界を変える4Dプリンティング」

「水道管が伸縮可能だったり、うねりを起こせたらどう思う?私たちと共に世界を変えてみない?」スカイラーは静かに語りかける。ここでは、55万ビューを超える Skylar Tibbits のTED講演を訳し、時間軸を加えた4Dプリンティングの可能性を理解する。

要約

3Dプリンティングは1970年代後半から高度化してきました。TEDフェローであるスカイラー・ティビッツは、4つ目の次元として時間軸を加えた4Dプリンティングという次世代技術を開発しています。この新技術により、時間とともに自分で形を変えたり、自己組織化するような物体をプリントできるようになります。目の前で折り畳まれる立方体や、需要を理解し伸縮する水道管を想像してみて下さい。

Skylar Tibbits, a TED Fellow, is an artist and computational architect working on “smart” components that can assemble themselves.

 

1 物理的な素材に自己構築のプログラムを組み込む研究

これは私がプロトタイプを 6時間ぶっ続けで作っているところで 自分のプロジェクトのためとはいえ奴隷労働です。DIYやメーカームーブメントは現実にはこんな感じなんです。今日の建設・製造業も同様に 労力のみに頼った組み立てを行っています。私はこんな理由から物理的な素材に 自己構築のプログラムを組み込む研究を始めました

 

2 マイクロやナノレベルで新たな革命が起きている

しかし 別の世界もあります。今日ではマイクロやナノレベルで 新たな革命が起きています。これは 物理的 生物的な素材をプログラムして 素材自身に 形や特性を変えさせたり 従来の半導体を使わない計算をさせるものです。cadnanoというソフトウェアまで開発され これを使えばナノロボットや薬物送達システムのような 3次元の形をデザインし DNAを用いて それらの機能性 構造体を自己組織化で組み立てられます。

 

3 非効率的でエネルギーを浪費している配管

しかし人間のスケールで見てみると ナノ技術では解決されていない 問題がたくさん存在します。建設や製造に目を向けると とても非効率的でエネルギーを浪費しており 労働技術も過度に要求されます。インフラにおける例として配管に注目してみましょう。水道管は 高価なポンプやバルブを除いては 流量は一定なので 送水能力も決まっています。それが地中に埋められています。何かが変われば ? 地面が動いたり 環境や需要が変化すれば ? 最初からやり直す必要があります。水道管を掘り起こして交換するのです。

 

4 ナノスケールのプログラム可能で適応性のある素材と周りの環境を結びつける

そこで私が提案したいのは2つの世界を結合すること。つまりナノスケールのプログラム可能で適応性のある素材と 周りの環境を結びつけるのです。単なる機械による自動化や 頭脳を持った機械が人間の代わりに働くのとは違います。自己構築のためプログラムできる素材を使うのです。これは自己組織化と言われ 壊れたパーツが 周囲との相互作用のみを通じて きちんとした構造をつくりあげるプロセスです。

 

5 人間のスケールで行うためには数種類の材料が必要

では 人間のスケールでこれを行うためには何が必要でしょうか? 数種類の簡単な材料が要ります。1つ目は素材と形状ですが エネルギー源とセットになっている必要があります。熱、振動、空力、重力、磁力などの 環境から受け取れるエネルギーでも良いです。相互作用を厳密に設計する必要もあります。それにより エラー訂正ができるようになったり 形状がある状態から別の状態へ遷移できるようになります。

 

6 タンパク質の立体構造を再現する

私が行ったプロジェクトをいくつかご紹介しましょう。1次元 2次元 3次元 更には4次元のシステムもあります1次元のシステムでは 自己折り畳みタンパク質というプロジェクトで タンパク質の立体構造を再現するというアイデアです。ここではクラムビンというタンパク質を用いました。主鎖を対象とし、そのため架橋結合や周囲との相互作用はありません。それを いくつかの部分に分け 中に伸縮素材を組み込みます。これを空中に投げ上げキャッチすると タンパク質のとても複雑な立体構造が完全に再現されています。これによりタンパク質の立体構造を 実体としてモデル化し折りたたみの原理や 幾何学的複雑性を理解することができます。つまりタンパク質を直感的な物理モデルとして研究することができるのです。現在それを2次元のシステムに拡張中です。平たいシートに自己折り畳みをさせ立体構造をつくらせるのです。

 

7 ポリオウィルスのような自律的なパーツ

3次元に関しては昨年TEDGlobalでお見せした Autodesk社と アーサー・オルソンと共同で研究した 自律的なパーツがあります。バラバラなパーツが勝手にくっつくのです。このようなガラスビーカーを500個製作しました。中にはそれぞれ異なる分子構造が入っていて それぞれ色のものを組み合わせる事ができます。これらをTEDsterの皆さんに進呈しました。人間スケールでの分子自己組織化が どのように行われるかを理解するための直感的なモデルとなりました。これはポリオウィルスです。強く振るとバラバラになりますが ランダムに振ると エラーを訂正しながら 自動的に構造を形作り始めます。これは不規則なエネルギーを与えることにより 規則的な形を作れることを示しています。

 

8 家具スケールの物体を自己組織化できるか試した

更には ずっと大きなスケールでそれができることも示されました。昨年のTED Long Beachで 私たちは展示品を作る展示品を作りました。家具スケールの物体を自己組織化できるか試したわけです。そこで私たちは回転式の大きな立体をつくり 来る人に様々な速度で回してもらい システムにエネルギーを与え 自己組織化がどう機能し マクロスケールの建築や 製品の製造技術として どう使えるか直感的な理解が得られました。

 

9 3Dプリントに複数の素材を使える4Dプリンティング

私は先程4Dと言いましたね。新たなプロジェクトを今日初めて公開します。Stratasys社との共同プロジェクトで 4Dプリンティングと言います。4Dプリンティングの背景にあるアイデアは 複数の素材でつくられた3Dプリントに複数の素材を使えるということです。新たな能力を与えるというものです。その能力とは変形能力であり パーツが立ちどころに 自力で ある形から別の形に直接変形できるようになるのです。ワイヤーやモーターの無いロボット工学のようなものです。パーツをプリントしさえすれば 別のものに変形します。

 

10 単一のソフトウェアで自己組織化システムをデザインできる

Autodesk社とも協力し Project Cyborgというソフトウェアの開発も手がけました。これにより 自己組織化の挙動をシミュレートし どの部分がいつ折り畳まれるか最適化する事ができます。しかし最も重要なのは 単一のソフトウェアで ナノスケールでも ヒトスケールでも 自己組織化システムをデザインすることができることです。このパーツは複数の素材でプリントされていますが 1つ目のデモをお見せしましょう。このひも状のものを水に入れると これが勝手に折り畳まれ M I Tという文字になります バイアスがかった人間ですので もうひとつ大きなタンクに浸されたひも状の物体が 3次元構造である立方体に自力で折り畳まれるところです。人間は全く介在していません。プログラムや変形能力が 素材に直接搭載されるのは おそらくこれが初めてでしょう。また将来的にはより適応性の高いインフラを 生産するための工業技術となり得るかもしれません。

 

11 宇宙用の変形・自己組織化可能な構造をデザインしている

きっとこう思いますよね。おぉ こりゃ良い でもこれをどう使えば環境に適合させられるんだ? と そこで私はMITで研究室を設立し 自己組織化研究室と名付けました。人工環境向けの プログラム可能な素材の開発をしています。いくつかの重点領域では 近いうちに実用化できると思います。その中の1つは極限条件下での利用です。組み立てが困難な環境下では 現行の建設技術は役に立ちません。大き過ぎたり 危険過ぎたり 高価過ぎたり部品が多過ぎたりするからです。宇宙が良い例です。私たちは 宇宙用に 環境に応じて機能システムを変えることのできる 変形・自己組織化可能な構造をデザインしているところです。

 

12 パイプ技術にパラダイムシフトを起こす

インフラの話に戻りましょう。私たちはボストン郊外のGeosyntecという企業と共同研究をしており パイプ技術にパラダイムシフトを起こそうとしています。水道管が容積や流率を変更できるよう 伸縮可能だったり 水自体を動かせるよう 蠕動(ぜんどう)のようにうねりを起こせたらどうでしょう。これは 高価なポンプやバルブではありません。プログラム可能かつ適応性のあるパイプです。

 

13 私たちと共に世界を再発明し、変えてみませんか

今日皆さんにお伝えしたいのは 私たちの世界では組み立て作業は現実的には厳しいということです。複雑なものが 複雑なパーツから 複雑な方法でつくられています。そのため どのような産業の人であれ 私たちと共に世界を再発明しすっかり変えてみませんか。ナノスケールからヒトスケールまでものの作られ方が変わると このような世界から このような世界へと昇華できるのです。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

4Dプリンティングを使えば、自ら変化したり組織化できるものを作ることができる。しかもシンプルに。水道管の未来

TED公式和訳をしてくださった Tomoshige Ohno 氏、レビューしてくださった Yuko Yoshida 氏に感謝する(2013年4月)。

自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 (ちくま学芸文庫)


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