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ジェニファー・ヒーリー 「もし車が話せたら事故は避けられる」

「運転は危険な行為です。でも、車に陰口をたたかせることによって、事故を避けることができます」ジェニファーは語りかける。ここでは、30万ビューを超える Jennifer Healey のTED講演を訳し、車とドライバーの情報を共有することで、事故のない世界を作れることを想像する。

要約

車を運転するときは、ガラスに囲まれた密閉空間に乗り込みドアにロックをかけ、自分の目を頼りにして — 前後の数台しか見ることはできないにも関わらず — アクセルを踏み込みます 。しかし車同士が位置や速度の情報を共有し、予測モデルを用いて道路上の全員にとって最も安全な経路を計算できたらどうでしょうか?ジェニファー・ヒーリーは事故の無い世界を想像します。(TED@Intelで収録)

A research scientist at Intel, Jennifer Healey develops the mobile internet devices of the future.

 

1 運転は危険な行為

事実に向き合いましょう。運転は危険な行為です。私たちはそれについて考えることを避けますが 事実 世界中の車のダッシュボードには 宗教の偶像や 幸運のお守りが飾られています。それでも これを真実とは認めようとしないのです。自動車事故は アメリカの 16歳から19歳の人の間では 最大の死因であり その事故のうち75%はドラッグやアルコールとも 関係がありません。

 

2 車がお互いに話せれば運転しやすくないか

では何が起きているのでしょう? 確かなことは言えませんが私は初めての事故を憶えています。若い頃 高速道路を運転していると 前の車のブレーキランプが光ったのが見えたので こんなことを思いました。「減速するのね じゃあ私も減速しなきゃ」 私はブレーキを踏みました。しかしその人はただ減速していたわけではなく 停止。それも高速道路の上で完全に停止したのです。時速約100km から 0km に 私はブレーキをベタ踏み ABSが作動したのが分かりましたがそれでも車は走り続け 分かっていたことではありますが止まり切れませんでした。エアバッグが作動し車はめちゃめちゃ ですが幸運にもケガ人はいませんでした。でも前の車が止まった理由は私には見当もつきません。こんな状況は避けられたはずです。私が考えたのは 車がお互いにしゃべりかけることができれば もっと運転しやすくなるのではないかということです。

 

3 全てに注意を払うのは不可能

少し考えて頂きたいのは 車の運転とはどんなものかということです。車に乗り込み ドアを閉めるとガラス内の窮屈な空間に密閉され 周りの世界は 直接には認識できなくなります。その車体を 部分的にしか見えない道で 鉄の巨体をすり抜けながら 人間ではありえないスピードで操らなければならないのです。いいですか?信じられるのは自分の両目だけなんです。そう それだけ。人間の目が本来 得意とはしないことを強いられるのです。車線変更をするとき まずどんなことをする必要があるでしょうか? 道から目をそらす?その通り 進行方向を見るのをやめて 死角を確認して 前を見ずに運転するんです。誰にとっても等しくこれが安全な運転方法とされています。なぜこんなことをするのでしょうか? 視線を向ける先を選択する必要があるからです。もっと重要なことは? 通常 私たちは道路上で 注目するものを選択するのは得意ですが 時として何かを見落としたり物事に気付くのが遅れたり 間違った解釈をしてしまうこともあります。ドライバーは 事故を起こすと決まって 「気付かなかったんだ」と言い訳します。それは信じましょう。全てに注意を払うのは不可能ですから。

 

4 停止しようとしていることを事前に察知できる

しかし 今やその状況を改善する技術が存在しています。将来的には 車がお互いにデータを交換することで 3台の車が前方にいるということだけでなく 後ろや左右にいる3台も 同時に俯瞰することができるようになり 車の中の様子までわかるようになります。前方の車の速度も分かるようになり 巡航速度や 止まろうとしていることも分かります。停止しようとしていることを事前に察知できるのです。

 

5 車の行動は合理的な予測ができる

アルゴリズムや予測モデルを用いた計算により 未来を予測できるようにもなるでしょう。不可能だと思われることでしょう。どうやって未来を予測する?確かにとても困難ですが、実際には違うんです。車に関しては不可能ではないのです。車は3次元の物体であり ある時点では 位置と速度は決まっています。また道路を走行するものであり 多くの場合 事前から知られる経路をとります。ある車が ほんの少し後にいる場所について 合理的な予測をすることはそんなに困難ではないのです。車に乗っているとき バイクが時速135kmで 車線を横切りながらブシューッとやって来たとしても、こんな経験をされた方も多いかと思いますが「どこからともなく現れた」というわけではありません。その人は30分ぐらいは道路上にいたんです (笑) ここで言いたいのは 誰かがそのライダーを見たということ 10km 20km 30km手前でも誰かがその人を見たはずです。ある車がその人を見かけ地図上に記録すると 地図に現れ 位置 速度や 時速135kmで走行を続けるという推定などが得られます。これは事前に察知可能です。理由は他の車がこう耳打ちするからです 「ところで5分後 バイクに注意」というように 車の行動について合理的な予測ができるのです。車はニュートン力学に従う物体です。これは非常に都合の良いことです。

 

6 位置情報データの共有で両者の予測モデルが改善される

どのようにして実現するのでしょうか? まず手始めに GPSを使って 位置情報を共有するというような シンプルなことから始めましょう。私の車にGPSとカメラが搭載されていれば どこを どの位の速度で走行しているのか 非常に高い精度で分かります。コンピュータ・ビジョンを用いれば 周囲の車の位置や 進行方向のようなものも割り出せます。他の車についても同様で 自分の現在地については正確に 他の車の位置については大雑把に分かります。では2台の車がそのデータを共有したらどうなるでしょうか? 車がお互いに会話できたら? それは簡単なことで 両者の予測モデルが改善されます。みんな得をするのです。ボブ・ワン教授のチームは 車の共有するのがGPSデータのみで 交通量が少なくても 曖昧な推定を結合させるとどうなるか コンピュータでシミュレーションを行いました。さらには この研究をシミュレーションの枠から出し 現在 実際に車に搭載されているセンサーを取り付けた ロボットを用いて実験を行いました。使用したのはステレオカメラ GPS そして補助システムとして一般的な 2次元レーザー距離計です。また それとは別に短距離無線装置を取り付け ロボット間の情報伝達を可能にしました。ロボット同士が近付くと お互いの位置を正確に追跡し 衝突を避けることができます

 

7 優先すべきは予測とは異なる道を進んでいる車

現在もさらなる改良を続けていますが いくつかの問題に突き当たりました。その1つは 情報量を増やし過ぎると データを処理し切れなくなることです。そこで優先度を決める必要が出てきますが それこそ予測モデルが役に立つ場面です。ロボット自動車が予測された軌跡をなぞっているだけなら そんな情報は捨てても構いません。優先すべきは 予測とは異なる 道を進んでいる車です。そのようなものこそ問題となりますが 軌跡を新たに予測することができます。道を外れたことだけでなくその外れ具合も分かるのです。さらに 退くよう警告する必要があるのはどのドライバーかも分かります。

 

8 車とドライバーという2つの要素に依存する

どうやって全員に警告するのがベストでしょうか。どうすれば車は「どいた方が良い」と耳打ちできるでしょうか? 次の2つの要素に依存します。1つは車の能力 もう1つはドライバーの能力です。性能の良い車に乗っていても 電話していたり 何かをしていたら おそらく緊急時には 咄嗟に反応できません。そこで私たちは別系統の研究を立ち上げ ドライバーの状態のモデル化を試みています。現在では 3台のカメラを用いて ドライバーが前を向いているのか 横や下を向いているのか電話しているのか コーヒーを飲んでいるのか検出できるようになりました。事故を予測することができ 全員が安全な経路を計算することで 誰が どの車が最も道を空けるのに 最適な位置にいるのか予測できるのです。本質的には これらの技術は既に存在しています。

 

9 最大の問題はデータを共有する意思

目下のところ 最大の問題は データを共有する意思です。確かに 自分の車に見張られ 自分のことを 他車に話され 陰口の中を進んで行くというのは あまり気乗りのしない考えだとは思います。しかしプライバシーを侵害しないような方法で行うことも可能だと信じています。さっき話したように車を外から見ても 乗っている人のことは分かりませんし それはナンバープレートについても同じことです。車が裏でしゃべってしまうかもしれませんけどね(笑)

 

10 車に陰口をたたかせよう

このアイデアは素晴らしいものだと思っています。ちょっと考えてみてください。後ろにいる注意力散漫な10代の人に あなたがブレーキをかけて 完全停止しようとしていることを知らせたくは無いのですか? データをすすんで共有することで みんなにとっての最善策を取れるのです。車に陰口をたたかせましょう。それが道路をとても安全にするのですから。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

車の位置情報の共有と、ドライバーの状態の共有で事故は避けられる。車に陰口をたたかせよう

TED公式和訳をしてくださった Tomoshige Ohno 氏、レビューしてくださった Hidehito Sumitomo 氏に感謝する(2013年4月)。

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