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ロリー・サザーランド 広告マンの人生の教訓

知覚価値を変えることで、私たちの思う実際の価値と同様の満足感を得ることができます」ロリーは語りかける。ここでは、200万ビューを超える Rory Sutherland のTED講演 を訳し、見方を変える宣伝広告と詩や感嘆することの意義について理解する。

要約

宣伝広告は、製品そのものを変えるのでなく、私たちの見方を変えることで製品の価値を高めます。ロリー・サザーランドは「知覚価値を変えることで、私たちの思う『実際の価値』と同様の満足感を与えることができる」と大胆な主張をし、私たちの人生観に興味深い影響を与える結論を提示します。

Rory Sutherland stands at the center of an advertising revolution in brand identities, designing cutting-edge, interactive campaigns that blur the line between ad and entertainment.

 

1 知覚・ブランド・主観価値などの無形価値は悪者扱いされている?

TEDでの講演は初めてです。広告マンなので いつもはお金を儲ける側のTEDの秘密組織 「悪のTED」で講演しています。2年に一度ミャンマーで開催され 特に良かった演説は 金正日の 「若者に喫煙を再開させる方法」です(笑)広告業界で長年働き 気付いたのは 宣伝広告で作り上げる無形価値― 言い換えれば知覚価値 またはブランド価値 主観価値 こうした何かしらの無形価値が 少々悪者扱いされていることです。モノが少ない環境で 将来暮らすことを考えると 基本的に選択肢は2つあります。一般的に敬遠される 貧困の中で暮らすか 無形価値が 価値全体の中で 大きな割合を占める世界で生活するか。色々な意味で無形価値は 労働力や限られた資源を 使い尽くすより ずっと良い選択です。

 

2 もし60億ポンドを線路以外に使ったら…

1つ例を―ロンドン発パリ行きの 列車の旅を快適にする方法を 15年程前 大勢のエンジニアに問いかけたところ 素晴らしい解決案が出ました。60億ポンドをかけ 全く新しい線路を ロンドンから沿岸まで敷き 3時間半の旅を40分短くするものです。私はただの広告マンですが 時間を短縮するだけとは 列車の旅を快適にする案として あまり想像性がない…では60億ポンドを線路以外に使ったら どんな快適さが得られるか?これは広告マンの素朴な提案ですが 世界トップレベルの 男女のスーパーモデルを雇い 旅の間ずっと高級ワインを振舞いながら車内を往復してもらうのは どうでしょう (笑) (拍手) 30億ポンドくらい余る上 乗客は 列車をもっと遅くしてくれと言うでしょう (笑)

 

3 プラシーボの一体何が悪いのか?

ここでまた広告マンの素朴な疑問です。この話から エンジニアや 医療従事者 科学者たちは 現実問題の解決に執着する事がわかります。しかし実際 社会的な豊かさがある基準に達すると ほとんどは認識の問題になります。ここでもう1つ質問 プラシーボの一体何が悪いのか? 開発費用も少なく 良く思えます。効果はバツグンです。例え副作用があったとしても 気のせいなので安心して無視できます(笑)これを タイラー・コーエンの ブログ「限界革命」で議論しました。ある人はなんとこの考えを更に発展させ プラシーボ教育を提案していました。何かを教わる事より 良い教育を受けていると感じる事が 効果を生むというのです。つまり根拠のない自信に基づく うぬぼれに近い感覚が 後に大きな成功を収める事に繋がる というわけでオックスフォードへようこそ (笑) (拍手)

 

4 感じ方に手を加えるほうが現実を変えるよりずっといい

でもプラシーボ教育の論点は興味深いものです。感じ方に手を加えるだけで 人生のどれほどの問題が解決できるか? 退屈で手間も面倒もかかる 現実を変える作業よりずっといい 歴史に好例があります。ある王が考えたもので 調べたところ それは プロイセンのフリードリヒ大帝でした。彼は ドイツの民衆に ジャガイモを大いに推奨していました。小麦とジャガイモの 2つの炭水化物源があれば パンの価格変動が減少すると気づいたからです。飢餓のリスクも減少します。2つの穀物に頼れますから。

 

5 大帝によるジャガイモのブランド再生の物語

唯一の問題はジャガイモが まずそうだという事です。18世紀 プロイセン人は滅多に野菜を食べませんでした。現在のスコットランド人と一緒です (笑) 大帝はジャガイモを強要しようとしました。プロイセンの農民たちは 「こんなもの犬も食わない マズいし何の役にも立たない」 ジャガイモ栽培を拒否して 処刑された農民もいたようです。大帝の次の案は ジャガイモを王室の野菜とし 王族しか食べられないという位置づけをすることでした。ジャガイモを王家の畑で育て 見張り番は 昼夜を問わず 畑を守り しかし 見張りすぎぬよう命じられました (笑) 18世紀の農民たちにとって 間違いないルールと言えば 「見張るのは盗む価値がある証拠」で すぐにドイツで大規模な ジャガイモの闇栽培が始まります。大帝はジャガイモのブランド再生をしたのです。まさに最高傑作でした。

 

6 売春婦にベールの着用を義務付けた

この話をすると あるトルコ人男性が 「素晴らしいマーケティングですが アタチュルクには及びませんね」と言いました。二コラ・サルコジのように アタチュルクは ベールの着用を禁止し トルコを近代化させようとしました。芸がない人なら単にベールを禁止したところですが それでは非常に多くの反発に遭い 大変な抵抗があったでしょう。発想が自由なアタチュルクは 売春婦にベールの着用を義務付けたのです (笑) (拍手)

 

7 全ての価値は相対的で、知覚価値である

これが本当かはさておき― 環境問題もこれで解決です。子どもへの性的虐待者は ポルシェに乗らねばならない (笑) アタチュルクは2つの根本的なことに気がつきました。第一に 全ての価値は相対的であり 知覚による価値であること。この看板の下はスペイン語表示です。ドル表示は実際ペソですが ブエノスアイレスの賢い露天商たちは 英米人観光客に不利な 価格差別をする事にしました。広告マンとして称賛します。

 

8 義務付けより説得が効果的

この話が示すのは 全ての価値は主観的だという事です。二点目は 義務付けより説得が効果的であること。点滅式の速度表示器でも 右下のような新しいタイプは 笑顔としかめ面で 感情に訴えかけます。この表示器の素晴らしい点は 維持費が速度違反カメラより10%安いのに 事故を2倍防止できることです。従来の古典派経済学者を 困惑させるおかしな話は この変な笑顔の表示が 皆さんの行動を変えるのに 60ポンドの罰金と3点の罰則より効果がある事なのです。行動経済学の話を少し― イタリアでは罰則は 減点方式で 12点から引かれていきます。損失回避の方が人の言動に 強い影響を与えるからです。イギリスでは「また3点もらっちゃった」が イタリアではそうはいかない。

 

9 「金を捧げ、鉄を授かった」との彫刻

無形価値が時価や物的価値の代わりになる 素晴らしい例をもう1つ― これは環境保護の目指すところです。これもプロイセンの話で1812か13年頃 フランスとの戦争を支援するために 裕福な者は宝飾品を献上し 代わりに鋳鉄製の複製品が 渡されました。この例では「金を捧げ 鉄を授かった」と彫られています。興味深い事に その後50年間 プロイセンで地位を誇示できるのは 金やダイヤではなく 鋳鉄製の宝飾品でした。金の宝飾品を所有する 本質的な価値より これらには 象徴的 ブランド価値があり 家族が過去に大きな犠牲を払った証拠なのです。

 

10 社会的圧力を生み出し、より平等主義な社会にするのは可能

現代ではこんな感じです (笑) しかし 高価でレアであるほど 価値が上がる効果があるものもあれば その逆に 至る所にあり 階級がなく 最小主義である事に 価値がある場合もあります。よく考えると シェイカー教は環境保護の原型でした。アダム・スミスによれば 18世紀の米国では 富の誇示が厳しく禁じられていたため ニューイングランドの 経済を妨げかねなかったといいます。裕福な農民でも隣人の不満を招かない お金の使い道がなかったからです。社会的圧力を生み出し もっと平等主義な社会にするのは全く可能です。

 

11 アメリカ大統領もホームレスでも飲むコーラは同じ

もう1つ興味深いのは メッセージ価値とも言える 無形価値を 本質的価値よりも持つ製品は多くの場合 かなり平等主義的であるという事です。象徴価値が物質価値に取って代わる良い例は 衣服で言うと おそらくデニムでしょう。皆さんの多くは左翼的で コカコーラ社を好きではないかもしれません。しかしアンディ・ウォーホールの コメントは念頭に置くべきです 「アメリカ大統領もホームレスでも 飲むコーラは同じというのがいいんだ」 当たり前と思うでしょうが これほど民主的なものを 作ったのは素晴らしい功績です。ですから少し観点を変える必要があります。本物の価値は製造 労働 工学を伴い 有限の素材を使う事だという 基本的な考えがあり 付加価値等は見せかけでごまかしだと言います。疑うのももっともです。明らかに宣伝に見えますから。しかし現在はメディアも多様化し 付加価値を付けるのも容易になり もっと公平になりました。

 

12 マッシュアップ、調理、モバイルフード…

私の子ども時代のメディア環境を 食べ物で表現してみました。左側は独占販売者で メディア王ルパート・マードックかBBCだけ (笑) 右側は与えられたもの何にでも感謝する メディア会社に頼る大衆です (笑)現在は利用者も参加しており デジタル世界では「ユーザー作成型コンテンツ」 食の世界では「農業」と呼ばれます (笑) これは「マッシュアップ」と呼ばれます。誰かのコンテンツで 新たな事を行います。食の世界では「調理」です。これは「フード2.0」他人と シェアするための食べ物です。イギリス人が得意の「モバイルフード」 フィッシュ&チップス包み、ミートパイ サンドイッチ 私たちイギリス人が発明したものです。イタリアンはもっとおいしいけれど 携帯はできないでしょう (笑)ところでサンドイッチ伯爵が発明したのは 実はトーストサンドイッチだそうだから トースト伯爵ですね(笑)

 

13 状況に適した情報提供

状況に適した情報提供もあります。ペルノを例に挙げます。どの国にもその土地特有の飲料があり フランスはペルノです。国内で飲むとおいしいんですが 他で飲むと全くマズイんです (笑) ハンガリーのウニクムもそうです。ギリシャ人はレツィーナを作りましたが これはギリシャで飲んでもダメです (笑)でも現在の情報はカスタマイズされ 役に立つ情報を提供し 人に影響を与えることができます。スタンフォード大のB.J.フォッグ 携帯電話を 「説得技術」と呼び 現在地や状況を踏まえ タイムリーな情報を 即時に提供するのは 史上最高の説得テクノロジーだと言います。

 

14 簡単にできるかが基本的に行動を決定する

このようなツールが自由に使えるなら 著名な技術者たちのように もっと賢明な使い方を考えなくてはなりません。例を1つ挙げます 家の壁に大きな赤いボタンがあり 押すたびに50ドルが 年金に入ったら もっとお金を貯められますよね。簡単にできるかが 基本的に行動を決定するわけです。広告は衝動買いの機会を作るのに 非常に貢献してきました。でも衝動貯金する機会は作られた事がありません あれば 多くの人がもっと貯金できるでしょう。人が決定を下すプロセスを 変えるだけで 選択肢そのものも変わるでしょう。広告マンとしては 貯金してほしくないですが 消費を不必要に延期してるだけなので (笑) でももし そうしたいのであれば 人間の行動を変える基本的な 手段が必要ということです。

 

15 製品を一切変えずに無形価値を創る史上最高の実例

さて ここでカナダの例をあげます。広告会社オグルヴィ・カナダのインターン ハンター・サマービルは トロントでコメディをしていましたが パートで広告の仕事に就き シリアルの宣伝を担当することになりました。これは製品を一切変えずに 無形価値を創る 史上最高の実例です。シュレディーズは奇妙な四角い全粒粉シリアルで ニュージーランドやカナダ イギリス つまり イギリス帝国に忠実な国でしか買えない (笑) シュレディーズのリニューアルにあたり 彼はこれを思いつきました。 ビデオ:(ブザー音) 男:シュレディーズは四角いはずなのに (笑)このダイヤ型は出荷されてないでしょうね (笑)新ダイヤ型シュレディーズ 同じ全粒粉100%の美味しいダイヤ型 (拍手) これは無形価値創造の 完璧な例でしょう。知覚に必要な 光子と脳細胞といいアイデアさえあればいいのです。まさに傑作と言えます。もちろん多少の市場調査は必要です。

男:シュレディーズは新製品を開発中で 社員一同張り切っています。新ダイヤ型シュレディーズです (笑) まず ダイヤ型が入った箱を 見た第一印象を教えて下さい (笑) 女:前は四角じゃなかった? 2:どういうこと? 女3:四角に見えるけど 男:見方の問題です 6と9をひっくり返すようなものです ひっくり返せば9に見えますが 6は9とは大分違う。 女3:MとWみたいに 男:その通り 男2:向きを変えただけみたいだけど この角度から見たら もっとおもしろい形だね。 男:両方試食してください。まず四角の方を (笑) 男:どちらがいいですか? 男2:1つ目 最初の方ですか? (笑) こうなるともちろん議論が起こります。当然ながら カナダの保守派は この商品の「侵入」を拒否しました。結果 メーカーは妥協案の 「コンボ・パック」にたどり着きました (笑) (拍手) (笑)

 

16 全米ワイン経済研究所の話

これが面白いというなら 全米ワイン経済研究所の話もあります。知覚について広く研究しており 人口の5-10%の ワイン通以外 ワインの品質と美味しく感じることに 相互関係はないと発見しました。値段を教えた場合は例外です。人は高価なワインを好む傾向にあります。ですからこれからは銘柄を隠して飲みましょう。これには笑ってしまいますが 大事な理性的観点でもあります。今後このような価値の必要性が増すということです。既存のものをもっと高く評価することに専念し 他に何ができるか悩まないことです。

 

17 詩とは新しいものを身近にし、身近なものを新しくすること

2つの引用を述べて終わります。1つ目は「詩とは 新しいものを身近にし 身近なものを新しくすることだ」で 私達のこれからの仕事のいい定義です。なじみのないものを人々に紹介し すでに存在するものの価値を高めて 良さを認めてもらうのです。ソーシャルネットワーキングも役立ちます。人々がニュースを共有できるからです。日常の些細な活動に価値を与えるため 大金をかけて 誇示する必要がなくなり 日常の小さなシンプルなことで 周りの人を 楽しませる事ができる。まさにマジックです。

 

18 感嘆することが足りないのでなく、感嘆できないのだ

2つ目はG.K.チェスタトンの名言で 「感嘆することが足りないのでなく 感嘆できないのだ」です 技術に関与している人は納得するでしょう。最後に一言: 健康や愛や セックスなどを重視し 見えなくて無形だからと言うだけで 今まで考慮しなかったものに 物的価値を与えるようになれば 想像つかないほど恵まれていると気づくでしょう。ありがとうございました (拍手)

 

最後に

プラシーボは全く悪くない。王室の野菜としてジャガイモ栽培を普及させた大帝、売春婦にベール着用を義務づけたアタチュルク。全ての価値は相対的で知覚価値。義務づけより説得が効果的。損失回避の方が人の言動に強い影響を与える。簡単にできるかが基本的に行動を決定する。既存のものをもっと高く評価することに専念し、他に何ができるか悩まないこと。詩で感嘆しよう

和訳してくださった Masami Mutsukado と Kacie Landrum 氏、レビューしてくださった Sawa Horibe 氏に感謝する(2009年7月)。

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