「10億人の人口を持つアフリカは今にも急成長する」チャールズは語りかける。ここでは、85万ビューを超える Charles Robertson のTED講演を訳し、21世紀がアフリカの世紀になる根拠について理解する。
要約
この10年、アフリカ大陸は、緩やかで着実な経済成長を遂げてきました。でも、経済学者のチャールズ・ロバートソンは、「アフリカは今にも急成長する」と大胆な主張を展開します。アフリカにおける教育レベルの向上から、(中国からだけではなく)世界中から集まる多大な投資まで、いくつかの指標をひも解きながら、想像以上に早い10億人への急成長がもたらされると予測します。
In “The Fastest Billion,” Charles Robertson re-examines the narrative of economic growth in African nations.
1 所得、寿命、医療などアフリカは急成長を迎えつつある
アフリカは急成長を迎えつつあります。一人当たりの所得は2000年から 倍増しました。そして この成長はすべての人に影響を与えています。平均寿命も過去10年の間 3年に1歳の割合で増えています。つまり 今日アフリカで生まれた子は 3日前に生まれた子より 1日長生きするというわけです。それほど速いスピードなのです。そして HIV感染率も20%下がり サブサハラアフリカでHIVに感染する人は 年間60万人の割合で減っています。マラリアとの戦いにも勝利をおさめつつあります。マラリアによる死者数は27%減少しています。これは 世界銀行の最新データです。マラリア予防の蚊帳も効を奏してきています。驚くことではありません。皆 成長するんです。ローマ帝国時代の紀元後1年から 1800年の間はたいした成長は見られません。でも ローマ人が呼ぶところの スコットランドの野蛮人私の祖先によって 産業革命が引き起こされ 19世紀には成長が加速し始めます。成長は どんどん速くなり あらゆる人に影響を与えてきました。シンガポールのジャングルであろうと フィンランド北部のツンドラであろうと すべての人にです。もはや 成長の訪れは時間の問題でした。
2 質の高いリーダーシップが成長の理由の1つ
今 アフリカで成長が起こっている理由の一つに 質の高いリーダーシップがあげられます。皆さんもご承知の通り1990年代における 世界で最も素晴らしい政治家はアフリカ人でした。でも 私はこれまでずっと大陸をまたがり 素晴らしい人々と会っています。彼らは改革を行い 各国での経済状況を変えてきました。
3 公共部門だけではなく民間部門も好況
西洋諸国もこれに関わっています。西洋諸国の債務免除プログラムにより サブサハラ諸国の負債は GDPの70%から40%まで半減しました。その反面 私たちの負債レベルは120にまで上昇し 結果として 少しみじめに感じられます。負債が多ければ政治の力は弱くなりますが 公共部門の債務が少なければ 政府も どちらか選ぶことなく 教育・保健に投資をしながら 債務利息の支払いができます。さらに 好況なのは公共部門だけではなく 民間部門でもです。西洋では民間部門の負債は GDPの2倍にも及びます。スペインや イギリス アメリカでそうで 本当に大きな債務です。でも アフリカ諸国における民間部門の負債は GDPの10~30%にとどまっています。もし中国が成し遂げたことをできる大陸があるとすれば― このグラフ上では中国の民間債務はGDPの130%です― もし ここ30年で中国が成し遂げたことを できるところがあるとすれば 今後30年間のアフリカ大陸でしょう。
4 エネルギー投資の背景にはアフリカの人口動態がある
アフリカには巨額の政府資金があり民間債務も少ないです。皆 知っているんでしょうか?もちろんです。外国直接投資は この15年 アフリカにどんどん流れ込んできています。1970年代には アフリカなんて誰も見向きもしませんでした。この投資は西洋諸国が主導しているものです。中国についていろんな話を聞きますし 中国は多額の資金を貸与しています。でも 過去2年間の外国直接投資の60%は 欧州、アメリカ、オーストラリアカナダからで 10%がインドからでした。投資は エネルギーに向けられています。アフリカは 1日あたり1千万バーレルの石油を産出しており それは サウジアラビアやロシアの産出量に匹敵します。さらに 電気通信や ショッピング・モールへの投資もあります。こうした素晴らしい状況の背景には 人口動態があると考えています。アフリカの人口動態だけではありません。これは 世界各地の15歳から24歳の人口を表したもので 今 注目いただきたいのは青線です。10年前に例えば Foxconnが iPhoneの工場を立ち上げるとしたら 中国を選んでいたかもしれません。東アジアの青線が集まっているところで 2億人の若者がいて 2010年まで毎年 増加しています。つまり 次々と若者がやってきては 「仕事がほしい」と言うばかりか 「高い給料なんていらないからただ仕事をくれ」という状況なんです。でも 今は違います。この10年で中国の15歳から24歳の若者は 20~30%も減少しています。では どこに新しい工場を作るべきなのでしょう? 注目されているのは南アジア パキスタンやバングラデシュ そして アフリカです。アフリカが注目されているのは あの黄色の線が示す通り アフリカの若者の数は ずっと増加を続け 2050年までその傾向は変わらないからです。
5 重要なのは若者たちがどう教育されているか
確かに多くの若者が どんな市場にでも 押し寄せてくると困ることもあります。特に男性が増えるとそうですが 少し危険な場合もあります。ただ そこで重要なのは その人たちがどう教育されているかです。ここの赤線をご覧ください。1975年当時には サブサハラアメリカで 中等教育を受けていたのは 適齢期の子どものうちたった9%でした。1970年代半ばにサブサハラで 工場を建てようと思いますか? そんなことは誰もせず 代わりにトルコやメキシコで 繊維工場を立ち上げていました。当時 両国の教育レベルは 25~30%だったからです。現在 サブサハラの教育レベルは 1975年当時のトルコやメキシコと同じです。繊維関係の仕事を得て それにより貧困の世界から抜け出し 産業化や裕福さに向かって歩んでいけます。
6 アフリカを人口で見ると東アフリカが最も大きく、その可能性も甚大
では 今 アフリカはどんな感じなんでしょう? これは 少し妙ですが 経済学者の私の目から見たアフリカです。小さな四角1つが10億ドルを表します。ご覧の通り私が注目しているのは 真ん中にあるナイジェリアです。南アフリカも大事です。でも 将来を考えたとき 私が最も関心があるのは 中央、西部、南部アフリカです。アフリカを人口で見ると 東アフリカが最も大きく その可能性も甚大です。
7 ほとんどのアフリカ諸国は今、民主主義のもとにある
別の観点から見てみましょう。こちらの地図は 民主主義国家と独裁国家を対比させています。民主主義国家でも不安定なものはベージュ 確立しているものはオレンジ色にしています。この通りほとんどのアフリカ諸国は 今 民主主義のもとにあるのです。なぜ それが重要なんでしょう? 人々が望むのは 政治家がしようとすること― 成功はしなくとも届けようとすることだからです。民主主義では好循環が強化されます。ガーナで行われた2012年12月に選挙で 2人の候補者が議論を戦わせたのは 教育についてでした。片方の候補者は中等教育は 30%だけでなく皆に無料で提供すべきと主張し 他方が約束をしたのは 学校を新しく50校建てるということで 彼が僅差で当選しました。民主主義によって政府は 教育に投資するようになっています。教育によって成長や投資が促進され それが予算収入をもたらし 政府の財源も増えて 教育が成長につながっていくのです。まさに好循環です。
8 汚職を少なくするには中産階級を育てればよい
でも 私はこの質問を受けて とても悲しくなりました 「政治的腐敗はどうなの?」 「汚職があるのにどうしてアフリカに投資できるのか?」 何が悲しいかと言うと このグラフにある通り 汚職は 富と最も相関関係があります。貧しいときには汚職なんて気にしません。右側にある国々をご覧ください 一人当たりの国内総生産が 5千ドル以下の国ほぼ全てで 汚職度数は およそ3くらいです 10段階の3ですから良くないですね。貧しい国は皆 腐敗しています。豊かな国は比較的 腐敗していません。どうしたら貧しく腐敗した状態から 豊かで腐敗が少ない状態になれるのでしょう? 中産階級を育てればよいのです。そのためには投資をしないといけません。腐敗が横行しているからそこには投資しないなんて もってのほかです。汚職の擁護者になるつもりはありません。以前に 賄賂を断ったことで逮捕されたこともあります。アフリカでのことではありませんよ。でも 私がここで言いたいのは 状況は変えられるということです。投資することで自らの手で変えられるんです。
9 経済学者は予測は得意ではない
半ば公然の秘密になっていることですが 経済学者は予測は得意ではありません。次に何が起こるか予想できません。2000年に時計の針を戻すと 当時 エコノミスト誌は 「絶望の大陸」という有名な表紙を作りました。彼らは ただアフリカでの過去10年の 成長率が2%というのを見て 今後10年に何が起こるかを予測したわけです。成長率2%と推測し 先が見えないとしたのです。人口は2.5倍に増えていたわけですから 1990年代にはアフリカは もっと貧しくなりました。2012年になってエコノミスト誌の表紙を 飾ったのは何だったでしょう? 新しい表紙は「前途有望なアフリカ」です。過去10年の成長率が 5.5%だったからという理由でです。皆さんも 経済学者になれるか試してみましょう。過去10年の成長率が 5.5%だったとして アメリカにおける今後5年の成長を IMFはどう予測するでしょうか? 聴衆: 5.5%CR: その通り 皆さん 次の成長率も5.5%と思われたでしょう。皆さんも立派な経済学者です。でも ほとんどの経済学者同様間違っています。気を悪くしないでくださいね。
10 インドはアフリカの20年先を行き、発展途上のアジアはインドの10年先を行く
さて アフリカがたどったのと 同じ軌跡をたどっている国を見つけたいと思います。つまり 1800年もの何もない状態を経て グーンと急成長する国です。インドも その一つです。これは 1960~2010年のインドの成長を表したものです。下にある数字はちょっと忘れてください。実際 最初の20年間 つまり 60、70年代にはインドはたいして成長していません。成長率は2%ながら 人口は2.5倍にも膨らんでいます。聞いたことがある話でしょう。これは まさに 80、90年代にサブサハラで起こったことです。そして 1980年に起こったのが 急成長!インドが爆発を始めます 「ヒンドゥー並の成長率」や 「成長できない民主主義」ではなくインドは急成長したのです。サブサハラの成長を インドの成長物語に重ね合わせると 驚くべきほど似ています。20年間の停滞期 そして 傾向線が示すように サブサハラの成長は インドよりも良いのです。これに 発展途上のアジアを重ねてみましょう。インドは アフリカの20年先を行き 発展途上のアジアはインドの10年先を行くのが分かります。ここから 今後30~40年の予測をしてみます。これは過去を振り返って 予測をするのよりも良いと思います。ここから言えるのはこうです。アフリカ経済は 現在の2兆ドル規模から 2050年までに29兆ドル規模になり 現在の価値で換算すると 欧米経済より大きなものになります。平均寿命も13年延びます。人口も倍増して 10億から20億人になり 世帯収入も 今後35年で7倍になります。これをアフリカで ナイロビ、ラゴス、アクラで発表したときある質問を受けました 「なぜ そんなに悲観的なのですか?」
11 一緒に21世紀がアフリカの世紀になるようにして行こう
考えてもみてください。その指摘にも一理あるんです。アジアやインドの良いところは もちろん 悪いところからも学ぶことができるでしょう。きっと アフリカは過去の過ちを避けることができます。もちろん この一週間ここで紹介された技術の中にも アフリカの成長の さらなる促進に役立つものもあるでしょう。私たちにもできることがあるんです。技術が それを可能にしてくれています。今すぐにでもインターネットで アフリカの素晴らしい文学を ダウンロードできます。でも あと30秒待ってくださいね。素敵な音楽も買えます。私のiPodにも入っています。アフリカの商品を買ってください。休暇に訪れて 自ら変化を感じ取ってください。投資してください。そして 人を雇って アフリカに持ち帰れるスキルを与えてください。彼らが自分の会社を私たちが西洋でしたよりも もっと早く成長させられるように。そして 一緒に21世紀が アフリカの世紀になるようにして行きましょう。ありがとうございました(拍手)
最後に
重要なのは若者がどう教育されているか。汚職を少なくするには中産階級を育てればいい。インドはアフリカの20年先を行き、アジアはインドの10年先を行く。21世紀はアフリカの世紀。
和訳してくださった Yuko Yoshida 氏、レビューしてくださった Minami Okamoto 氏に感謝する(2013年1月)。