algoworld

ケヴィン・スラヴィン 「アルゴリズムが形作る世界」

「私たちがやっているのはもはや自分では読めないアルゴリズムを書いているということです」ケヴィンは警鐘を鳴らす。ここでは、160万ビューを超えるKevin SlavinのTED講演を訳し、アルゴリズムを自然の一部として理解する必要性を考える。

要約

ケヴィン・スラヴィンは、アルゴリズムのためにデザインされ、コンピュータプログラムによるコントロールが広がり続ける世界に我々は生きていると言います。TEDGlobalで行われたこの魅惑的な講演で、彼は複雑なコンピュータプログラムがいかに多くのことを決しているかを示しています。諜報戦略、株価、映画の脚本、建築デザイン。そして私たちがもはや読めもしなければ結果をコントロールすることもできないコードを書いていることに警鐘を鳴らしています。

Kevin Slavin navigates in the algoworld, the expanding space in our lives that’s determined and run by algorithms.

 

1 本物の写真だがフィクションでもある

この写真は マイケル・ナジャーによるものです。実際アルゼンチンに行って 撮ってきたという意味で 本物の写真ですが フィクションでもあります。後でいろいろ手が加えられているからです。何をしたかというと デジタル加工をして 山の稜線の形を ダウジョーンズのグラフにしたのです。だからご覧いただいている 谷に落ち込んでいる絶壁は 2008年の金融危機です。この写真は 私たちが 谷の深みにいたときに作られました。今はどこにいるのか分かりません。こちらは香港の ハンセン指数です。似たような地形ですね。どうしてなんでしょう?

 

2 アルゴリズムはコンピュータの判断基準

これはアートであり メタファーです。でも重要なのは これが牙のあるメタファーだということです。その牙のために 今日はひとつ 現代数学の役割を 再考したいと思います。金融数学でなく もっと一般的な数学です。ここにあるのは 世界から何かを ただ引き出していたものが 世界を形作り始めるようになる という変化です。私たちの周りの世界にせよ 私たちの中の世界にせよ 具体的に言うと それはアルゴリズムです。アルゴリズムというのは コンピュータが判断をするときに使う ある種数学的なものです。繰り返しの中で アルゴリズムは 真実への感覚を備えるようになり そして骨化し 石灰化して 現実になるのです。

 

3 「もっぱらステルスを見破るということ」

このことを考えるようになったのは 2、3年前に大西洋を渡る飛行機の中で 私と同年代のハンガリー出身の 物理学者と隣り合わせ 言葉を交わした時でした。冷戦時代のハンガリーの物理学者たちが どんなものだったのか聞いてみました。「どんなことをしていたんでしょう?」「もっぱらステルスを見破るということです」「いい仕事ですね 面白そうです どういう仕組みなんですか?」 これを理解するためには ステルスの仕組みを知る必要があります。ものすごく単純化して説明しますが 空中の156トンの鋼鉄の塊が 単にレーダーをくぐり抜けるというのは 基本的にできません。消すことはできないのです。しかし巨大なものを 何百万という小さなものに 何か鳥の大群のようなものに 変えることはできます。するとそれを見たレーダーは 鳥の群れだと 勘違いします。この点でレーダーというのは あまり有能ではないのです。それで彼は言いました。「ええ でもそれはレーダーの話です。だからレーダーは当てにしませんでした。電気的な信号 電子通信を見る ブラックボックスを作ったのです。そして電子通信をしている鳥の群れを見たら これはアメリカ人がかんでいるなと考えたわけです」

 

4 「第二幕は金融業界です」

私は言いました。「そりゃいい 60年の航空学研究を 打ち消していたわけですね。それで第二幕は何ですか? その後はどんなことをしているんですか?」。彼は「金融業界です」 と答えました。「なるほど」 最近ニュースでよく耳にしていたからです。「どんな具合になっているんですか?」と聞くと 「ウォールストリートには物理学者が2千人います。私はその1人です」ということでした。「ウォールストリートのブラックボックスは何なんでしょう?」「そう聞かれたのは面白いですね。実際それはブラックボックス・トレーディングと呼ばれているからです。アルゴ・トレーディングとか アルゴリズム・トレーディングと言うこともあります」。アルゴリズム・トレーディングが発展したのは ある部分 金融機関のトレーダーたちが 米国空軍と同じ問題を抱えていたからです。動く点がたくさんあって P&Gであれ アクセンチュアであれ マーケットで百万という株を 動かしています。それを全部同時にやるのは ポーカーですぐに全財産賭けるようなものです。手の内を明かすことになります。だから彼らはその大きなものを ・・・アルゴリズムがここで出てくるのですが 百万という小さなトランザクションに 分割する必要があります。そしてその魔術的で怖いところは 大きなものを 百万の小さなものへと 分割するのと同じ数学が 百万の小さなものを見つけてまとめ、マーケットで実際何が起きているのか 見極めるためにも使えるということです。だから今株式市場で 何が起きているのかのイメージがほしいなら それは隠そうとするたくさんのプログラムと それを解き明かし 出し抜こうとする たくさんのプログラムのせめぎ合いということです。これは大変結構なことです。米国株式市場の 70%がそうなのです。皆さんの年金とか ローンといったものの 70%がそうやって動いているのです。

 

5 「2時45分のフラッシュ・クラッシュ」

それで何か悪いことがあるのでしょうか? 一年前のことですが 株式市場全体の9%が 5分間で消えてなくなりました。「2時45分のフラッシュ・クラッシュ」と呼ばれています。9%が突如消えてなくなり 今日に至るまで誰も 本当のところ何が起きたのかわからないのです。誰が仕組んだことでもありません。誰かがコントロールしていたわけでもありません。彼らが持っていたのは 数字が表示されている モニタと 「停止」と書かれた 赤いボタンだけです。

 

6 自分では読めないものを書いている

私たちがやっているのは もはや自分では読めないものを 書くということです。判読できないものを 書いているのです。自分たちの作った世界で 実際何が起きているのか 私たちは感覚を失っており それでも前に進み続けています。ボストンにNanexという会社があって 数学や魔法や そのほかよく分からないものを使って あらゆるマーケットデータを見て そこから実際アルゴリズムを見つけ出しており、そして彼らが見つけ出したときには 引っ張り出して 蝶のように標本にするのです。彼らがしているのは 私たちが理解していない巨大なデータに直面したときにすることです。つまり 名前とストーリーを 与えるのです。これは彼らが見つけたものの例です 「ナイフ」に 「カーニバル」に 「ボストンシャフラー」に 「トワイライト」。

 

7 「170万ドルはちと高くないか?」

おかしいのは もちろん そういったことはマーケットに限った話ではないということです。そういった類のことは 一度見方を覚えると 至る所で目にするようになります。たとえばこれ あるハエに関する本を Amazonで見ていると 値段が170万ドルだということに 気づくかもしれません。絶版になっています 今でも(笑)。170万ドルで買っていたらお買い得でした。数時間後には2,360万ドルまで 上がったからです。送料別で 疑問は 誰も買いもしなければ 売りもしていなかったということです。このAmazonで起きた現象は ウォールストリートで起きたのと同じ現象です。そしてこのような挙動を見て分かるのは それがアルゴリズムの衝突から 生じたということです。アルゴリズムが互いにループの中に捕らわれ 常識的な観点でそれを監視する 人間の目がなかったということです。「170万ドルはちと高くないか?」 (笑)

 

8 ユーザの頭の中のファームウェアを把握する

Amazonでのことは Netflixでも同じです。Netflixはこれまでに何度となく アルゴリズムを変えてきました。最初は「シネマッチ」で その後たくさんのアルゴリズムを試しています。「ダイナソー・プラネット」に「グラビティ」 現在使っているのは「プラグマティック・ケイオス」です。プラグマティック・ケイオスがしようとするのは 他のNetflixのアルゴリズムと同じことです。ユーザの頭の中のファームウェアを 把握しようとするのです。ユーザが次に見たいであろう映画を おすすめできるように。これはとても難しい問題です。しかし問題の難しさや 私たちによく分かっていないという事実が プラグマティック・ケイオスの効果を 弱めることはありません。プラグマティック・ケイオスは 他のNetflixのアルゴリズム同様 最終的には借りられる映画の 60%を言い当てています。ユーザについての1つの考えを表す 一片のコードが 映画レンタルの60%をもたらしているのです。

 

9 情報でも金融統計でもなく文化の物理学

もし映画の評価を 作る前にできたとしたらどうでしょう? 便利ではないでしょうか? イギリスのデータ分析専門家がハリウッドにいて ストーリーを評価するアルゴリズムを作っています。Epagogixという会社です。脚本をそのアルゴリズムにかけると 数値として 3千万ドルの映画だとか 2億ドルの映画だと言い当てるのです。問題はこれはGoogleではないということ。情報でも 金融統計でもなく 文化なんです。ここで目にしているのは ・・・ まあ普通は目にしないかもしれませんが 文化の物理学だということです。もしそれがある日 ウォールストリートのアルゴリズムのように クラッシュしておかしくなったとしたら どうやってそれが分かるのか? どんな風に見えるのか?

 

10 寝室の隠れた建築家

そしてこれは家庭の中にもあります。これはリビングで競い合っている2つのアルゴリズムです。この2つのロボットは 「きれい」ということについて随分違った考えを持っています。スローダウンして 電球をつけてやればそれがわかります。寝室の隠れた建築家のようなものです。そして建築自体が アルゴリズムによる最適化の対象となるという考えも 突飛というわけではありません。非常に現実的なことで 身の回りで起きていることなのです。

 

 

11 行先制御エレベータ

一番よくわかるのは 密閉された金属の箱の中にいるときです。行先制御エレベータと呼ばれる 新式のエレベータです。どの階に行きたいのか エレベータに乗る前に 指定する必要があります。ビンパッキングアルゴリズムが使われています。みんなにエレベータを好き勝手に選ばせるような バカなことはしません。10階に行きたい人は2番エレベータに、3階に行きたい人は5番エレベータにという具合にやります。これの問題は みんながパニックを 起こすということです。なぜかわかりますか? このエレベータは 大事なものを欠いているからです。ボタンみたいな (笑) みんなが使い慣れているものです。このエレベータにあるのは 増えたり減ったりする数字と「停止」と書かれた赤いボタンだけです。これが私たちのデザインしようとしているものです。私たちはこの機械の言葉に合わせて デザインしているのです。そうやってどこまで行けるのでしょう? すごく遠くまで行けるのです。

 

12 5マイクロ秒遅れたら負ける

ウォールストリートの話に戻りましょう。ウォールストリートのアルゴリズムは 何よりも1つのこと スピードに依存しています。ミリ秒とかマイクロ秒という単位で動いています。マイクロ秒というのがどんなものかというと マウスクリックには50万マイクロ秒かかる と言えば 感覚としてわかるでしょう。しかしウォールストリートのアルゴリズムでは 5マイクロ秒遅れたら 負けるのです。だから皆さんがアルゴリズムなら 私がフランクフルトで出会った建築家のような人間を探すことでしょう。彼は高層ビルを空洞にしています。家具のような人間が使うためのインフラはすべて取り去って 床を鉄骨で補強し サーバの山を積み上げられるようにするのです。それもすべて アルゴリズムが インターネットに近づけるようにするためです。

 

13 ビルが空洞にされている

インターネットは分散システムだと皆さんお考えでしょう。もちろんそうですが それは場所として分散しています。ニューヨークでは これが分散の元です。コロケーションセンターが ハドソン通りにあります。ここはまさにケーブルがこの都市に出てくる場所です。この場所から離れるたびに 何マイクロ秒かずつ遅れることになります。ウォールストリートのこの辺にいる 「マルコポーロ」とか「チェロキーネーション」といった連中は、コロケーションセンターのまわりの 空洞化されたビルに入り込んだ この連中に対して 8マイクロ秒遅れをとることになります。そういうことが起き続けているのです。ビルが空洞にされています。なぜなら どのような見地から見ても その場所から「ボストンシャフラー」みたいに 利益を絞り出せる者は他にいないからです

 

14 825マイルのトンネルが掘られている

しかし ズームアウトしてみると ニューヨークとシカゴの間に 825マイルのトンネルがあるのがわかります。Spread Networksという会社によって この何年かの間に作られたものです。この2つの都市を結ぶ 光ケーブルで マウスクリックの37倍の速さで 信号を伝えることができます。それがすべてアルゴリズムのため カーニバルやナイフのためのものなのです。考えてみてください。私たちはアメリカ中を ダイナマイトとロックソーで切り進んでいるのです。アルゴリズムが3マイクロ秒 早く売買できるようにするために、人の知ることのない コミュニケーションフレームワークのために それが「明白なる使命」であるかのように 常に新たなフロンティアを求めているのです。

 

15 水をどけて無からお金を引き出す未来

あいにくと 私たちには難しい仕事が待ち構えています。これは単なる理論ですが MITの数学者によるもので 正直なところ 彼らの言うことの 多くは理解できません。何か光円錐とか量子もつれがどうのという話で どれも私にはよくわかりません。しかしこの地図ならわかります。この地図が表しているのは 赤い点で示される市場で儲けようと思ったら、そこは人のいる所 都市ですが 最大の効率を得るためにサーバを 青い点のところに置く必要があるということです。お気づきかもしれませんが 青い点の多くは海の真ん中にあります。それが私たちのするであろうことです。泡かプラットフォームでも作るのでしょう。水をどけて 無からお金を引き出すのです。輝かしい未来です。アルゴリズムにとっては(笑)

 

 

16 アルゴリズムを自然の一部として理解せよ

実際に興味深い部分はお金ではなく お金が動機づけるものです。私たちは アルゴリズム的な効率で 地球を変えつつあります。そういう観点で 前に戻って マイケル・ナジャーの写真を見れば あれはメタファーではなく 予言だということに気づくでしょう。私たちが起こしている 地殻変動的な 数学の影響に対する予言です。地形はいつもこのような 奇妙で不安定な人間と自然の コラボレーションによって作られてきました。しかし今では第三の共進化の勢力があります。アルゴリズムです。ボストンシャフラーに カーニバル そういったものを自然の一部として理解する必要があるでしょう。ある意味では実際そうなのですから。どうもありがとうございました。

 

最後に

戦争、金融、文化、建築と様々な場面でアルゴリズムが活用されている。人ではなくサーバが住むビル、車や電車でなく光ケーブルが通るトンネル、まずはその存在を知ろう

和訳してくださった Yasushi Aoki 氏、レビューしてくださった Yuki Okada 氏に感謝する(2011年7月)。

世界でもっとも強力な9のアルゴリズム


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