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元本保証と老後の不安につけ込む悪質かつ合理的な商品 年金保険

前回は、オプション取引を理解できない人は手を出すな! EB債と特約付商品についてまとめた。ここでは、元本保証と老後の不安につけ込む悪質かつ合理的な商品 年金保険について解説する。

1 利率保証付き年金保険

ただ保険会社を儲けさせるだけの年金

「利率保証付き個人年金(個人年金保険)」はただ保険会社を儲けさせるだけの商品である。基本的な仕組みは、手数料(契約時費用など)を引かれた残金で運用するため、積立利率が多少高くても通常の預金とあまり変わらない実質利率になってしまうのだ。しかも、中途解約の場合はすでに手数料分が引かれているため、元本保証はない。

 

2 外貨建て年金保険

利率保証付き個人年金の応用商品として「外貨建て個人年金保険」がある。個人年金保険を外貨で運用するものである。しかし、日本で暮らすなら外貨建て資産はほとんど必要ない 外貨運用でも述べたように、類似条件の外国債券を直接購入した方がよい。

 

3 変額年金保険(投資型年金保険)

客に有利な商品設計はそもそも無理?

元本保証の運用では派手な商品はできないため、変額年金保険や投資型年金保険といったものが出てきた。変額年金保険とは、株式運用を積極的に取り入れているもので、価格変動リスクが大きい商品である。「運用・年金・保険」の3つの機能を兼ね備えていることを売り物にする広告が多い。しかし、本質は「運用」の違いだけであり、年金保険という名の”株式投資信託“である。

変額年金保険は、客に有利な商品設計ではない。なぜなら、販売した銀行、年金保険の引受先の保険会社、各投資信託を運用する会社のそれぞれに手数料を支払うことになるからである。相続対策(所得税の生命保険料控除の利用)として活用できることを訴求する会社も多いが、高い手数料のことを考えればあまり魅力的な商品とはいえない。

変額年金保険の保険機能を増強した商品に「ステップアップ型死亡保障付変額年金保険」(ラチェット型死亡保障)がある。これは、死亡保険金(死亡給付金)の最低保証額を定期的に見直す仕組みのことである。もし加入者が死亡したときには、①一時払い保険料、②その時点の積立金、③ステップアップ型死亡保障、のうちで最も大きい金額が死亡保険金となる。ただし、この商品は保険会社側が運用のリスクを負いすぎているため、実際にアメリカでは保険会社が経営破綻するという事態を招いたのだ。

 

2つの年金保険についてのクイズ

45歳前後の男性が、老後の資金として2000万円を超える定期預金を持っていて、60歳前後まで使う予定はなく、これから15年以上の運用が可能というケースを考える。銀行では「①がおすすめですが、②もいいですよ」と以下の2つの商品を勧められたが、この男性にどのように回答するかというものである。

商品①は投資型年金保険で、「運用期間が15年以上なら年金原資108%保証特約」「運用手数料は年12回まで無料」「死亡給付金100%保証」というものである。商品②は外貨建て年金保険で、「米ドル建て元本を保証」「株価上昇に一定の連動」「万一の際の保険機能(米ドル建て)」がついている。

結論から言えば、「元本を守りたいのであれば、今後も定期預金か普通預金に預けるか、個人向け国債を買うといいでしょう」とアドバイスをするだろう。商品①の欠点は、「年金原資108%保証特約にかかる手数料がかかる(おそらく年3%程度)」「運用期間中には、保険関係費用や運用関係費用などがかかる」「年金の受け取り方に制約がある」「解約返戻金に最低保証がない」というものである。そして、長期の円定期預金は中途解約の可否を確認せよ 長期預金とインフレでも述べたように、長期での元本保証はインフレが起きた場合に意味がなくなるという欠点もあるのだ。

 

為替リスクと株価リスクの両方を負う運用

商品②の欠点は、為替リスクと株価リスクの両方を負う運用方法であることだ。元本保証も死亡給付金も米ドル建て(為替リスク)であり、株価上昇に連動(株価リスク)していることからわかる。また、「初期費用」や運用期間中に毎年かかる手数料もあるだろうし、株価が下がった場合には「上乗せが一切なくなる」可能性もある。いずれにせよ「セットは割高」という原則を忘れてはならない。

 

最後に

年金保険は元本保証と老後の不安につけ込む悪質な商品。しかし、販売側から見れば合理的な商品。運用・年金・保険は別々に契約したほうがよい。「セットは割高」という原則を思い出そう

次回は、販売手数料、信託報酬、信託財産留保額と3つの手数料が一般的 投資信託についてまとめる。

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