「アップルとグーグルは対立していない」著者は喝破する。ここでは、夏野剛『iPhone vs. アンドロイド』を4回にわたって要約し、2つのビジネスモデルと日本の大きな可能性について理解する。
1 アップルは最強か
iPodというイノベーション
iPodの本質は、PCに接続することを前提としたことで圧倒的にシンプルなUIを実現したことが挙げられる。ユーザーが複数のiPodを持っていても、特別な操作や手続なく同期できる。こうした「音楽を聴くための総合的な環境」といった世界観の構築がiPodの強みである。
iTunesストアは儲からなくても構わない
iTunesストアは価格設定に際して、完全にユーザーサイドに立った。99セント(100円前後)という基本価格を曲げることなく、ここで儲けなくても構わないという姿勢を取ったのだ。
iPhoneの強み
iPhoneの強みは、サービスとコンテンツ、ポータルと課金のプラットフォーム、ネットワーク、そしてOSを含むクライアントとデバイスの垂直統合によるユーザーの囲い込みである。魅力的なハードウェアを高く売るしくみである。iOSを基盤として、いわば「iWorld」ともいうべき世界を築き上げているのである。
iPadの目的
iPadはiPhoneと同じCPUを採用し、表示領域を大きくしてパソコンの機能を持たせている。つまり、これまでパソコンを使うことを避けていた世代にもITの恩恵を届けることができる。長期的に見れば、WindowsなどのデスクトップOSも浸食していくだろう。
2 グーグルが目指す未来
広告が表示できれば何でもいい
グーグルの事業展開領域は、サービスとコンテンツが強く、それを支えるOSによって成り立っている。それはウェブサービスの広告収入を極大化するためのしかけである。
アンドロイドは手段にすぎない
モバイル端末向けのアンドロイドやパソコン向けのChrome OSは手段にすぎず、あくまで広告の表示機会が増えることが目的である。このように、グーグルもアップルもどこで儲けるか、そのためにどの部分を呼び水として割り切るかという戦略が非常に明確である。稼ぎどころである広告についてはダイレクトバイイングの仕組みを築き上げ、ユーザーからすれば無料でネットの情報を使える、そして他のプレイヤーから見ても競合するところがない存在なのがグーグルなのである。
最後に
アップルはハードウェアで儲けており、グーグルは検索連動型広告で儲けている。そのために必要な投資は惜しみなく行っており、戦略が明確である。事業部採算制とは対極にある、賢いどんぶり勘定。夏野(@tnatsu)氏らが率いるドワンゴにも通じる考え方。
次回は、ガラケー黄金時代はなぜ終わったのか 市場の成熟化とiPhone登場についてまとめる。
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