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デヴィッド・スタインドル=ラスト 幸せになりたいなら、感謝しよう

「私たち全ての人間に共通することは、幸せになりたいという気持ちを持っていること」デヴィッドは語りかける。ここでは、280万ビューを超える David Steindl-Rast のTED講演を訳し、「止まる 見る 進む」ことの重要性について理解する。

要約

「私たち全ての人間に共通することは、幸せになりたいという気持ちを持っていることだ」と、修道僧であり諸宗教の研究者であるデヴィッド・スタインドル=ラストは言います。「幸せは感謝の心から生まれる」と彼は説きます。ゆとりを持ち、自分の方向性を見極め、そして何よりも感謝の気持ちを持つことについて、彼の教えが心に響きます。

Brother David Steindl-Rast, a Benedictine monk, meditates and writes on “the gentle power” of gratefulness.

 

1 幸せになりたいという気持ちは私たち皆が共有している

皆さんは 私について それも とても個人的なことで知っていることがあります。私もまた 皆さんについて 知っていることがあります。皆さんの関心事の中でも特に重要なことです。私たちには知っていることがあります。世界のどこで出会った人であれ 道ですれ違った人であれすべての人について その人が何をしていようと 何と闘っていようと その原動力となっているものを知っているのです。それは私たち皆が持っている― 幸せになりたいという気持ちです。これは皆 同じなのです。幸せをどのように考えるか その考え方は違っても 幸せになりたいという気持ちは 私たち皆が共有しているものなのです。

 

2 感謝が私たちを幸せにしてくれる

さて 本日のテーマは感謝の心ですが 幸せと感謝の心には どんな関係があるのでしょうか? 多くの人が言うでしょう「そんなの簡単だ」 「人は幸せな時に感謝をする」 でも もう一度考えてみてください。幸せな人が感謝しているというのは本当でしょうか? 幸せになるために全てを手に入れても また別の物や もっと多くの物を欲しがるために 幸せでない人が 大勢いるということを 私たちは皆 知っていますね。私たちは また 誰もが決して望まないような不運を たくさん背負っていながら 心の底から幸せな人たちを知っています。彼らは幸せに溢れていて驚かされます なぜでしょう? 彼らに感謝の心があるからです。幸せが 感謝をもたらすのではなく 感謝が私たちを幸せにしてくれるのです。もし 幸せが感謝をもたらすと考えているなら 考え直してください。感謝が私たちを幸せにしてくれるのです。

 

3 貴重であると同時に真の授かり物である

さて それでは 感謝とは一体 何なのでしょう? どのような仕組みで起こるのでしょうか。振り返ってみてください。皆さん 経験から心当たりがあるはずですよ。誰でも 自分にとって 貴重な体験をしているものです。とても貴重である経験が 与えられているという ありがたい組み合わせなのです。貴重であると同時に 真の授かり物でなくてはなりません。買った訳ではなく勝ち取ったのでもない 取引や努力で得た訳でもない あなたに授けられた物です。この2つが同時にやってきたとき 自分にとって本当に貴重で しかも それが無償で与えられていると気づいたとき 私の心に自然と 感謝の気持ちが 湧いてきます。幸せの感情も自然と湧き上がってきます。感謝の気持ちはこのように起こるのです。

 

4 この一瞬にすべての可能性が秘められている

ここで重要なことは このような経験は稀である必要はなく 感謝が単なる経験である必要もないのです。感謝の気持ちを持って生きることができるはずです。感謝して生きるそれなのです。では 感謝して生きるにはどうすればいいのでしょう? 一瞬一瞬が授けられているのだと 体感し 意識することです。授かり物です。勝ち取ったのではありません。そこにあなたの力は働いていません。その瞬間がまた与えられる保証は どこにもありません。しかし それこそが私たちに授けられた もっとも貴重なものなのです。この一瞬に すべての可能性が秘められているのです。もし 今この瞬間が なかったとしたら 私たちは 何の機会も与えられず 何も経験できません。この一瞬は 授かり物なのです 授けられた瞬間なのです。

 

5 本当にありがたいのは与えられた事物ではなくその機会

この授けられた瞬間に秘められた贈り物― それは「機会」です。本当にありがたいのは与えられた事物ではなく その機会なのです。もし その物が別の所にあって それを楽しんだりそれで何かをしたりする 機会を得られなかったら 感謝の気持ちは持てないのです。機会は すべての授かり物の中に存在します こんな諺がありますね 「逃したチャンスは戻って来ない」 もう一度 考えてみましょう 一瞬一瞬が新しい授かり物で何度も繰り返されます。もし この瞬間の機会を逃しても 次の瞬間が与えられまた次の瞬間がやってきます。この機会を利用することもできれば 逃すこともできます。もし その機会を生かすことができれば それが幸せへの鍵となります。幸せへのマスターキーを しっかり つかむのです。どの一瞬にも 授かったことに対して感謝できます。

 

6 与えられた全ての瞬間に秘められた機会には感謝できる

では 私たちはいかなることにも感謝できるでしょうか? それは 無理です。暴力や戦争 迫害や搾取には感謝できません。個人的なレベルでは 友達を失うことや裏切り 死別などに感謝はできないでしょう。すべてに感謝できる訳ではないとはいえ― 与えられた全ての瞬間に秘められた機会には 感謝できるのです。たとえ 非常に難しい状況に 直面したとしても その難局に立ち向かい 与えられたその機会に応えることができます。意外と悪くないものですよ。実際に見て 経験すると 大抵の場合 与えられたものは 楽しむ機会なのだと気づきます。それを逃してしまうのは 人生を急ぎすぎて 立ち止まらずその機会を認識していないからです。

 

7 困難という機会に立ち向かうことが課題

しかし 時には 大きな困難に襲われることもあります。そんな時は その困難という機会に立ち向かうことが課題なのです。痛みを伴うこともありますがそれを学ぶことによって 立ち向かえるようになります。例えば 忍耐を学ぶということです。平和への道は 短距離走ではなく マラソンのようだと言われます。忍耐力が必要で 難しいことです。それは自分の意見や信念のために 立ち上がることかもしれません。その機会が私たちに与えられているのです。学ぶ 耐える 立ち上がる その機会が与えられているのです。でも機会は機会でしかなく 私たちが称賛するのは その機会を生かす人たちです 機会を生かし― 人生を意味あるものにしている人たちです。失敗しても次の機会が与えられます いつでも次の機会があるのです これが人生の素晴らしく豊かなところです。

 

8 私たちは人生を駆け抜け止まらない

では どうしたらこの素晴らしさを 生かせるようになるでしょうか。私たち一人ひとりが感謝して生きる方法は どうすれば見つかるのでしょう。たまに感謝するのではなく 一瞬一瞬に感謝する方法です。どうすれば良いのでしょう とても単純な方法です。実は子どもの頃に良く言われていた簡単なことです。横断歩道を渡る時に習いましたね。止まる 見る 進む それだけのことです。しかし私たちはめったに立ち止まりませんね。私たちは人生を駆け抜け止まらないのです。止まらないために機会を逃します。立ち止まらなくてはなりません。心を静かにするのです。私たちは人生にも「とまれ」の標識を 立てておかなければなりません。

 

9 与えられた物を楽しむ、それが人生

数年前 私はアフリカに滞在して 戻ってきてから 水に気を留めるようなりました。私がいたアフリカの地域には飲める水がありませんでした。蛇口をひねるたびに 胸がいっぱいになりました。電気をつけるたびに とてもありがたくて 幸せを感じました。でも その感覚は長続きしません。そこで 電気のスイッチと蛇口に シールを貼りました 蛇口をひねるたびに「水」を意識するためです。やり方はそれぞれです。思いつくままに 自分に合う方法で構いません。とにかく皆さんの人生に「とまれ」は必要なのです。そして 立ち止まったら 次は 見ることです。目を大きく開いて よく見るのです 耳を澄まし嗅覚も研ぎ澄ましましょう。すべての感覚を大きく開いて 与えられたこの素晴らしい豊かさを受け入れましょう。終わりはありません。与えられた物を楽しむ それが人生なのです。

 

10 機会に心を開くと行動につながる

すると 心も開くのです 与えられた機会に心を開きましょう。他の人を助け 幸せにする機会にも心を開きます。なぜなら 私たちにとって一番の幸せは 皆が幸せであることだからです。機会に心を開くと 行動につながります。これが3つ目です。止まる 見る そして進むつまり行動に移すのです。私たちにできることは 今この瞬間私たちに与えられているのです。大抵は楽しむための機会ですが 時にはもっと難しいものである場合もあります。

 

11 恐れることがなければ暴力的にはならない

しかし 何であろうと機会を利用すれば 何とかなるものです。人間は創造的ですからね。そして この「止まる 見る 進む」という― ちょっとした意識が 世界に革命をもたらすほどの力を持った種なのです。というのも 私たちは今この瞬間 意識改革の真っ只中にいます。この変化に皆さんは驚くでしょう 「感謝」や「感謝の気持ち」という言葉を あまりによく聞くので私はいつも驚いています。様々なところで目にします 飛行機に乗れば「感謝」レストランに行けば「感謝」 「感謝」と名のついたカフェやワイン そうそうトイレットペーパーでさえ 「ありがとう」なんて名前のがあります(笑) 感謝への意識が高まっているのです。人々が 感謝の大切さと 世界への影響力に気づき始めたためです。これは非常に重要な形で 世界を変える可能性があります。なぜなら 感謝の気持ちがあれば恐れることはなく 恐れることがなければ 暴力的にはならないのです。感謝の気持ちがあれば行動の元となるのは― 不足感ではなく満足感ですから 分かち合う心も生まれます。感謝の気持ちがあれば 人々の違いを楽しみ 全ての人を尊重するでしょう。これが世の中の力関係のピラミッドを 変えていきます。

 

12 必要なのは小さなグループのネットワーク

平等になる訳ではありませんが 平等に尊重されるようになります。そこが重要です。世界の未来はネットワーク型になります。ピラミッド型でも逆ピラミッド型でもありません。私の言っている革命とは 暴力のない革命です。とても革新的で 革命の概念さえも 根本から変えるような革命です。なぜなら 普通の革命では ピラミッドを逆さまにするだけですから 底辺にいた人たちが頂点に立ち それ以前とまったく同じことが 繰り返されるのです。必要なのは小さなグループのネットワークです。お互いを知っていて― 交流し合う 小さなグループ それが 感謝の世界なのです。

 

13 「止まる 見る 進む」

感謝の世界は喜び溢れる人々の世界 感謝する人々は喜び溢れる人々です。喜び溢れる人々が増えれば増えるほど 私たちの世界は喜び溢れるものになります。感謝する生き方のためのネットワークを運営していますが ネットワークは急速に広がってきています。なぜ拡大したのか分かりませんでした。感謝の気持ちが湧いたら キャンドルを灯すよう呼びかけました。10年で 1500万本のキャンドルが灯りました。人々は気づき始めているのです。感謝の世界が幸せな世界だということに そして私たちは皆 「止まる 見る 進む」を行うだけで 世界を幸せなものに変える機会を 得るのです。これが私の望みです この話を聞いて自分もやってみたいと 少しでも思ったら実行してください 「止まる 見る 進む」。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

「止まる 見る 進む」ドMになろう

和訳してくださった Ayako Inoue 氏、レビューしてくださった Emi Kamiya 氏に感謝する(2013年11月)。


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