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ビバリー + デレック・ジュベール 大型ネコ科動物から教わったこと

「私たちがいる状況こそがラストライオンです」ジュベールらは語りかける。ここでは、60万ビューを超える Beverly and Dereck Joubert のTED講演を訳し、命について大型ネコ科動物から教わったことについて理解する。

要約

ビバリー・ジュベールとデレック・ジュベールは、野生のライオンやヒョウを撮影するために、草むらの中で生活しています。今までに誰も見た事がなかった映像も含まれるビデオと共に、彼らが得たこの威厳ある動物との関係や、人間界が及ぼした脅威からネコ科の動物を救おうとする努力を語ります。

Documentary filmmakers Beverly and Dereck Joubert have worked to conserve wildlife for more than 25 years. As National Geographic Explorers in Residence, the couple influences public policy and perceptions.

 

1 アフリカの原生地域とその保護

私たちが情熱を注いでいるのは アフリカの原生地域と その保護です。特に大型ネコ科動物に 注目してきました。人間の苦しみや飢え 気候変動が深刻な時に なぜ ネコ科動物を 心配するのかと 疑問に感じる人もいるでしょう。今日お話ししたいのは ある特有の性格をもった この大切なヒョウから教わった メッセージです。

私たちは犯罪捜査ドラマ CSIの 28年間つづく 超ロングエピソード とでも言える生活をしてきました。基本的には 動物の科学的研究や 行動を観察して 大型ネコ科動物に捕えられた 2千頭以上の動物も見てきました。しかし科学では この動物たちがもつ 個々の性格を 真剣に見ていないことにがっかりします。こんな実例があります。このヒョウはアフリカにある樹齢2千年の バオバブの木の上にいました。このヒョウの母や祖母も 同じ木にいたのです。このヒョウは私たちをいざない とても大切なものを見せてくれました。生後8日目の雌ヒョウです。私たちはすぐさま ここで生活をすることにして このヒョウと共に 4年間半を過ごしました。毎日観察をして このヒョウに近づき この個体の性格が わかるようになりました。私は ある特定の女性たちと たくさんの時間を過ごす運命にあります。彼らは変わっていて とても特別な存在で 個性的で しばしば セクシーです (笑) 明らかに 妻はその一人ですが リガデマと名付けた このヒョウもそうです。リガデマは 私たちの人生を変えました。

 

2 リガデマとは空からの光という意味

母ヒョウがリガデマと過ごす時間以上に 私たちはリガデマと一緒にいました。母ヒョウが狩りに出てから 観察と撮影をしました。私たちがいた場所から20歩ほどの木に 雷が落ちたことがありました。とても怖かったです。バラバラと木の葉が落ち 焼けた匂いがたちこめました。しばらく茫然としていましたが 正気に戻ったときに ヒョウの赤ちゃんを見て 心配になったことがありました。あの耳をつんざく音と 私たちを結びつけて 覚えてしまうのではないかと思ったのです。それは要らない心配でした。リガデマは急いで茂みから走り寄り 震えながらも私たちの横に座りました。デレックに背を向け 周囲を見まわしていました。その日を機に 私たちに 打ち解けてくれたようでした。まさにこの日が このヒョウの 名前の由来になりました。リガデマとは 空からの光 という意味です。

 

3 ネコ科は個性的な特徴を持つ

どの動物にも 個性がありますが 特にネコ科は個性的です。このライオンは 「火と共に挨拶する男」と名付けました。写真から その理由が見て取れるでしょう。でも 実際に彼らに近づき 時間を共にすることで 心を通わせて 個性を知ることができるのです。研究を進めるには アフリカの未開の土地を探さなくてはいけません。これはボツワナの オカバンゴデルタです。この湿地にテントを張って生活します。わくわくする毎日ですが 緊張する時間が 多いのも事実です。水の中を運転したり 未知の土地にいるためです。それでも私たちはアフリカで 大型ネコ科動物を探し求め撮影をしています。

ネコ科の動物が 水嫌いであることは 誰でも知っていますが 意外な事実を発見しました。正気の人なら行かない場所へ 自分たちをせきたてて出かけ 発見したことです。ビバリーに背中を押されたこともあり 限界に挑んで 自らをせきたて 頑張りました。でも このライオンが通常のライオンより 15%も大きいことがわかりました。水牛の狩りを専門とするライオンなのです。

 

4 自然界に存在する悪と人間界の悪の争いの共通点

私たちに課せられた問題は 引き返すタイミングを知ることです。毎回うまくはいきません。この写真を撮った日は 水深を軽く見過ぎていました。どんどん深みにはまり デレックの胸まで浸かってしまいました。そこで深い窪地にはまり 車が完全に沈んでしまったのです。200万ドル相当の撮影器具を 台無しにしてしまいました。プライドの傷つき方は ひどいものでした。また 車のエンジンもだめになりました。私たちの決め事ですが 車を沈めてしまった者が ワニと泳ぐ特典を得ます (笑) この映像すべては ビバリーが上から撮ったものです。濡れることがない場所です (笑) でも抜け出せなくなった場所は どこも素晴らしい景色でした。ちょうど このライオンたちがやって来たので ビバリーが見事な写真を収めました。

私たちは 珍しい映像を捉える為に 絶え間なく撮影をしています。20年前 「永遠の敵」と題した 映画の撮影で ライオンとハイエナの 珍しくて 残酷な光景を 捉えることに成功しました。驚く事に 支持され続ける作品になりました。その理由は きっと 自然界に存在する悪と 人間界の悪の争いに 共通点があるからでしょう。

 

5 動物の行動を人間が善し悪しを決めるべきではない

驚いたのは このライオンが名前のとおり 火と共に挨拶する男であることが 見てわかります。このハイエナに狙いを定め 捕まえようとしています (動物の声) これは動物たちにも それぞれの 性格があることを表していると思います。動物の撮影をするときは 限界に挑戦するだけではなく 彼らの生活を干渉しないようにして 生活しています。動物のこのような行動は 何百年も続いているので 人間が善し悪しを決めるべきではありません。難しい問題です。

デレックが言うとおり 私たちは極限の状態で仕事をしています。極限とも言える気温の中 夜も自らせきたて 睡眠もとらないことが多いのです。活動中はほとんど ギリギリの状態です。私たちは10年間 ライオンと象を追い続けました。うまくいかずにいたところ ある晩 撮影できたのです。正直に言うと 辛い想いをした夜でした。涙が頬を伝わりました。心配で体が震えていたほどです。このような撮影は未だかつて 行われた事はありませんでした。これは是非見ていただきたい映像です。

 

6 前に進もうとするための意思

これは私たちが撮った 最高の映像だと思いますが 目を見張るのは 結末が予測できないところです。多くの人は 心や肺ではなく 目で 死の始まりを確信してしまい 死を確信したときに 人間も動物も 希望を捨ててしまいます。この映像で それがわかります。この象は あまりの敵の多さに 希望を捨ててしまいます。でも 同様に 希望を取り戻すこともできます。万事休したと思ったとき ある事が起きます。あることがひらめき 戦う意思が芽生えます。鉄のように固い意思は 人間も この象も この自然保護区も ネコ科動物も 誰もが持っている意思なのです。戦い 精神的な壁を突き進み 前に進もうとするための意思です。いろいろな意味で この象は 私たちにとって インスピレーションの象徴になり 仕事を進める上で 希望の象徴にもなりました(拍手)

 

7 お互いの場所の確保は大切

ヒョウの話に戻ります このヒョウの性格を 理解するには 十分すぎるほど たくさんの時間を共に過ごしました。当たり前のように一緒にいたのは ヒョウには気に食わなかったかもしれません。私たち夫婦は 常に一緒に仕事をしているので 車中ではお互いの場所を きちんと決めています。ビバリーが座る片側には 撮影器具も置いています。その反対が私の場所 お互いの場所の確保は大切なのです。

あるとき 私は後部座席の 撮影器具を取りに席を外しました。それを見ていたリガデマは 好奇心旺盛の猫のように 様子を伺いに来ました。驚きましたが 私たちを信頼してくれたようで とても嬉しかったです。でも これが癖になると 他の人にも同じことをするのではないかと 心配になりました。何かあったら このヒョウが 撃たれてしまうかもしれません。そのため すぐに予防策を考えました。思いついた唯一のやり方は このヒョウを怖がらせずに 母ヒョウが出すうなり声に似た 音を聞かせることです。デレックの思いつきで ヒーターのスイッチを入れました。自分の居場所を取られてしまうと ビバリーが心配してたのでね (笑) それは冗談ですが このようにして 個性を見せてくれたのです。しかし リガデマが 狩りを始めたときは 事態の展開に驚きました。

 

8 ハイエナから身を守るためにリガデマがヒヒの赤ちゃんをくわえた

最初はとても嬉しく思いました。卒業式を見ているようで 代理親になった気分でした。リガデマは生きていけると このとき確信しました。でも 母ヒヒに赤ちゃんが くっついているのがわかり 珍しいことが 起きていることに気がついたのです。ヒヒの赤ちゃんは とてもあどけなく 逃げもしませんでした。そこで数時間ほど 観察したところ 面白いものが見られました。とても感心したのは ハイエナから身を守るために リガデマが赤ちゃんをくわえたことです。その後 5時間もすると 世話をしていました。私たちが知らないことは まだ存在し 自然は人間の予想を超えるものだと 気づきました。常にオープンな心が必要です。

 

9 大型ネコ科動物を守りながら自然環境の保護を推進する運動

ちょっと手荒いこともありました (笑) でも とても面白いものが ここからわかるのです。遊びが大好きな子ヒョウでありながら 獲物をとらえる捕食者でもあり 母親にもなったために 精神的葛藤があるのです。母性本能があり 女性になりつつある 女の子のようです。この観察は リガデマを理解する上で 新しい側面をもたらしました。リガデマとヒヒは 夜もずっと一緒でした。何時間も一緒に寝ていました。赤ちゃんヒヒがどうなったのか 皆に尋ねられますが 死んでしまいました。冬の寒さが原因だと見ています。

この時期だったと思いますが 自然環境の保護がもつ意味を 私たちは確信しました。動物の個々の性格を理解し 尊敬の意を表しながら 動物の重要性を 理解することです。ナショナルジオグラフィックと始めたのは 大型ネコ科動物を守りながら 自然環境の保護を推進する運動です。また 過去50年にわたって 人間がしてきたことを振り返りました。私たち夫婦が生まれた頃 ライオンは45万頭いましたが 現在は2万頭しかいません。トラも減っていて 4万5千頭いたのが 今は3千頭ほどです。

 

10 動物の運命は我々が握っている

チーターは1万2千頭まで 減ってしまいました。ヒョウは 70万頭いたのが わずか5万頭です。私たちがリガデマと過ごした 素晴らしい5年間以上の 月日の間に 1万頭のヒョウが合法的に ハンターに殺されてしまいました。その間に犠牲になったヒョウは まだたくさんいて 密猟で1万頭ほどが 殺されている可能性があります。持続可能とは言えません。人間は動物を 敬服したり 恐れたりしますが 動物の力を奪いたいのです。かつては 国王のみが ヒョウ皮を身に着けていましたが 今では儀式などで 伝統的なヒーラーや聖職者が身につけます。これは皮をはがされた ライオンの前足ですが 不気味なくらい 人間の手に似ています。皮肉にも動物の運命は我々が握っています

 

11 雄ライオン1頭につき20頭から30頭のライオンが犠牲になっている

骨の貿易が急速に高まり 南アフリカでは ライオンの骨が市場に出回っています。ライオンとトラの骨は 見た目が同じであるため ライオンの骨を扱う産業が トラを絶滅させようとしています。これは切実な問題ですが 雄ライオンにも重大な問題が降りかかっています。2万頭と示したライオンの数には 注意が必要です。雄ライオンは3~4千頭ですが 皆 同じ病気に 感染してしまっています。それは 怠慢という病気です。人間の怠慢です。狩りをスポーツのように扱っている事実を 気づきながらも とがめることはしていません。今日お見せしたような内容を 知らない人が多いからでしょう。

知っていただきたいのは 雄ライオンが1頭殺されると 群れ全体が 滅びてしまうため 別の雄ライオンがやってきて その群れを引き継ぎます。子ライオンは全て殺されてしまい 子を守ろうとする雌ライオンも犠牲になることがあります。そのため どこか遠くで 壁にかけられたライオン1頭につき 20頭から30頭のライオンが 犠牲になっていると見ています。

 

12 地球と私たちを結ぶ精神的なつながりや尊厳を失う

私たちの調査からわかったのは ライオンは大切な存在であることです。この生息地には欠かせません。ライオンがいなくなると アフリカ全体のエコシステムが消えてしまいます。アフリカのエコツーリズムには 年間800億ドルも入ります。これはライオンだけの心配ではなく アフリカ全体に関係する問題です。動物たちがいなくなると 関連するもの全てが消えてしまいます。でも さらに心配なことがあります。人間と自然のつながりがなくなると このような動物たちとの 精神的な つながりがなくなり 人間は希望を失くし 地球と私たちを結ぶ 精神的なつながりや 尊厳を失います

 

13 私たちがいる状況がラストライオン

今このように ライオンやヒョウの目を見て 私たちが認識しなくてはいけないのは 重大な問題に対する自覚です。2月に「ラストライオン」という 映画の公開を予定しています 「ラストライオン」は まさに現状を描いています。私たちがいる状況が ラストライオンだと言えます。行動を起こさなければ 草原から大型ネコ科動物が 完全に消えてしまい 他のものも 絶滅してしまうでしょう。動物を保護できなければ 人間自身を保護する仕事まで出てくるでしょう。

冒頭でお話ししたように 私たちの生活を かたちづくるものですが 自然環境の保護とは 敬意の念と 関心が とにかく必要です。男であれ 女であれ 共同体であれ 地球全体であれ お互いを尊重し その重要性を認めることを やめてはならないのです。リガデマですが 赤ちゃんができて 私たちは祖父母になりました(笑)どうもありがとう(拍手)

 

最後に

リガデマとは空からの光という意味。ネコ科は個性的な特徴を持つ。動物の行動を人間が善し悪しを決めるべきではない。ハイエナから身を守るためにリガデマがヒヒの赤ちゃんをくわえた。大型ネコ科動物を守りながら自然環境の保護を推進する運動。雄ライオン1頭につき20頭から30頭のライオンが犠牲になっている。私たちがいる状況がラストライオン。動物の運命は我々が握っている

和訳してくださったTakako Sato 氏、レビューしてくださった Yuki Nakamura 氏に感謝する(2010年12月)。

野生ネコの百科 第4版 (動物百科)


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