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デフレ、復興増税、TPP、公務員制度改革、道州制 日本の大問題

「たび重なる政策の失敗と、官僚たちの誤った対応が日本をダメにしてしまった」著者は厳しく語りかける。ここでは、高橋洋一『経済復活』を6回にわたって要約し、金融政策の失敗から学ぶ日本経済復活への施策についてまとめる。第1回は、2012-2013年、日本の大問題。

超円高 為替介入で約40兆円も損をした民主党政権

超円高の根本原因は、ドルの供給量に対して円の供給量が圧倒的に不足していることにある。2008年のリーマン・ショック以来、FRB(米連邦準備制度理事会)が景気テコ入れのために積極的な金融緩和を行い、ドルの供給量が急増しているのに対し、日銀の緩和策が相対的に不十分であったことが、結果的にドルに対する円の価値が上がってしまったのだ。

ドルの全供給量が約2兆ドルなのに対し、円の供給量は約140兆円(2013年3月現在)。単純に割れば1ドル当たり70円(140兆円/2兆ドル)という計算になる。あと60兆円刷るだけで、1ドル100円となる。80円台から100円台まで円安が進めば、自動車や家電など輸出企業の収益は2割ほど拡大し、赤字に苦しんでいる大手家電メーカーも救われるかもしれない。

しかし、民主党政権は「為替介入」というその場しのぎの愚策を行い、過去4〜5年間に失われた国の損失は約40兆円となった。

 

復興増税 「将来世代にツケを回すな」は間違い

復興増税は、震災を経験した世代だけが負担することになり、不公平である。「100年に1度」のショックなのだから、100年国債を発行して100年がかりで均等に費用を負担する仕組みを考えるべきである(課税の平準化)。その意味で、復興財源確保法の所得税の25年間の2.1%上乗せ、個人住民税の10年間の年間1000円の増税は、理にかなっていない方法である。

 

TPP 「合コン」と同じで、早く参加した者の勝ち

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への加盟交渉は、あくまで交渉にすぎないため、嫌なら加盟しなければいいだけである。むしろ「合コン」と同じで、早く参加した者の勝ちである。できるだけ早く参加し、主導権を握り、有利な交渉成果を引き出すことが大切である。さらに、日本が加盟した場合、10年後に約3兆円の経済効果が得られるという試算もある。

 

デフレ 雇用を改善するには適度なインフレが不可欠

安倍政権が「インフレ目標」にこだわる理由は、実際に2%のインフレ率が達成されれば、雇用環境が大きく改善される可能性が高いからだ。物価と雇用の間には明確な逆相関関係が存在する(フィリップス曲線)ため、物価上昇率が高いと失業率は下がり、物価上昇率が低いと失業率は上がるのである。物価をインフレに誘導するには、日銀が国債買いオペなどにより量的緩和を行って円を刷ればいいのだ。

 

成長戦略 どの分野が成長するかなんて誰にもわからない

民主党が掲げた「新成長戦略」はデタラメである。7つの戦略分野によって創出される需要は123兆円、雇用は499万人と試算している。この需要を単純に割れば、一人当たりの収入は約2500万にもなるからである。このような産業ができる根拠などない。政府はそんなものを掲げるよりも、規制緩和や金融緩和を推進したほうがよいだろう。

 

年金問題 「社会保障と税の一体改革」は正しかったのか?

「社会保障・税一体改革関連法案」が2012年8月、自公合意の下で成立し、消費税率の引き上げが決定された。その目的は、将来厳しくなることが予想される基礎年金の国庫負担分を補うことにあった。しかし、そもそも年金の原資は税金ではなく、被保険者(国民)が納める保険料によって全額を確保するのが望ましい。保険料方式であれば、被保険者が保険料をいくら納め、それによって将来の年金がどれだけ受け取れるのかを把握できるからだ。消費税を上げる前に、保険料の徴収漏れを解決すべきである。

 

産業の空洞化 超円高が是正されれば国内回帰が進む

産業の空洞化とは、企業の生産拠点が海外に流出することで、国内雇用が減ることである。その原因は円高にあり、賃金の安い中国や東南アジアに生産拠点が流出するのは当然である。つまり、国内雇用を守りたいなら金融緩和によって円安への誘導をすべきである。

 

所得崩壊 デフレを解消することが何よりの特効薬

所得が下がり続けてきた元凶は、デフレである。デフレが進行すれば、たとえ名目金利がゼロでも実質金利(名目金利—インフレ予想値)が上がるので、企業の設備投資は減退する。その結果、企業業績は落ち込み、そのしわ寄せは雇用や賃金に及ぶのである。そして、賃金が伸びなくなれば、消費が低迷するので企業業績はますます落ち込むのだ。こうした「デフレスパイラル」を適切なインフレによって逆回転させれば所得はよみがえるだろう。

 

公務員制度改革 参院選で自民が勝てば、仕切り直しが始まる?

官僚の天下り斡旋禁止や幹部官僚の人事の内閣一元管理を盛り込んだ公務員制度改革は、民主党政権によって骨抜きにされた。2010年6月、定年前の官僚が独立行政法人などに出向する「現役出向制度」を認める「退職管理基本方針」を閣議決定し、天下り斡旋禁止を骨抜きにしてしまったのである。

 

道州制 地方分権によって二重行政のムダをなくす

道州制とは、現在47ある都道府県を廃止して10前後の道や州に再編する構想である。その目的は、地方分権の推進や、国と地方との二重行政の解消などである。例えば、同じ地域を走っている道路でも、国道の管理は国(国土交通省)が、県道の管理は県が行うという非合理的な役割分担が解消されれば、管理コストを大幅に削減できる可能性がある。河川についても、現在は一級河川の管理は主に国が、二級河川は主に都道府県が行っているが、増水や氾濫などのトラブルに速やかに対応するには、すべての河川をその地方の自治体が管理した方が望ましい。「ニアー・ザ・ベター」といわれるように、社会インフラの管理は地方に任せた方が合理的なのだ。

 

最後に

日本には以下の10個の大問題がある。超円高、復興増税、TPP、デフレ、成長戦略、年金問題、産業の空洞化、所得崩壊、公務員制度改革、道州制。しかし、為替はお金の”量”の問題だし、TPPは合コンと同じだし、道州制は行政にも合理性を入れるにすぎない。問題はあれど解決策はわかっている

次回は、大蔵省の「財テク」規制が株価暴落のきっかけ バブル崩壊と不良債権についてまとめる。

経済復活 金融政策の失敗から学ぶ


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