bioluminescence

エディス・ウィダー 不思議ですばらしい生物発光の世界

「深く暗い深海には獲物を捕り、交尾の相手を求め、自衛のために光を放つ多くの生物が生息しています」ウィダーは語りかける。ここでは、85万ビューを超える Edith Widder のTED講演を訳し、発光する海洋生物の世界を理解する。

要約

深く暗い海の底には、獲物を獲り、交尾の相手を求め、自衛のために光を放つ多くの生物が棲息しています。生物発光の専門家エディス・ウィダーは、この薄明の世界を最初にフィルムに収めた一人です。TED2011で彼女は、光を放つ生物をステージに登場させ、発光する海洋生物の驚くべき映像を見せてくれます。

Edith Widder combines her expertise in research and technological innovation with a commitment to stopping and reversing the degradation of our marine environment.

 

1 生物発光のほとんどは海で起きる

皆さんを未知の世界に ご案内しようと思います。そこは何光年も離れた 場所ではありませんが 光で立ち現れる 世界なのです。ほとんど知られていないことですが 海洋生物の大部分は 光を発します。私はこの 生物発光と呼ばれる 現象を長年研究してきました。生物発光のほとんどは海で起きるため この現象を理解することは 海洋生物の理解にとても重要なのです。私は この現象を 海洋汚染を 視覚化し 追跡するためにも用いています。要は 私はこの現象に夢中なのです。初めて深海潜水艇に乗って 深海に潜り 光が花火のように踊るのを見ました。以来 私は生物発光ジャンキーなのです。潜水から戻り 私の見たものを言葉で伝えようとしましたが とうてい語り尽くせませんでした。体験を直接に共有できる方法が必要でした。最初にその方法を思いついたのは ディープローバーという一人乗りの 潜水艇での作業中でした。

 

2 発光を誘発した方法

次のビデオで 発光を誘発した方法をご紹介します。まず見えるのが 左右に 張り出したネットです。幅約1mあります。潜水艇の前方で ネットが深海の軟体動物と 接触します。艇の明かりを消すと 発光を見ることができます。生物がネットにぶつかって発する光です。これは生物発光が 最初に記録された映像です。これを録画したのは高感度ビデオカメラです。カメラは 暗闇に十分に順応した 人間の眼ほどの感度です。ですから 人が潜水艇に入って観察すると このように見えるわけです。これを皆さんにも体験してもらうために 生物発光するプランクトンを持ってきました。これはライブの講演としては 大胆すぎる実験でしょうね(笑)照明を落として できるだけ暗くしてください。このフラスコには 発光プランクトンが入っています。今は光っていませんね。死んでいるのでしょうか (笑) 少しかき混ぜてみると 生物発光がどのようなものかがわかります(嘆声)おっと 失礼(笑)暗闇で研究しているので よくやらかします。大丈夫です。

 

3 渦鞭毛虫の生物発光

先ほどの光は 渦鞭毛虫の生物発光によるものです。これは単細胞の珪藻類です。なぜ単細胞の珪藻が 光を放つ必要があるのでしょうか。まず捕食者から身を守ることが考えられます。点滅する光は助けを求める叫びのようなもので 生物発光警報装置として知られています。車や家の警報装置と同様に 侵入者に来るなと警告を発するのです。侵入者が捕食されるよう仕向けるか 侵入者を追い払うかします。

この手段を使う生物はたくさんいます。このドラゴンフィッシュを例に取りましょう。目の下に発光器があって ひげもあります。たくさんの発光器官があります。お見せしましょう。潜水艇で長時間追跡しなければなりませんでした。この魚の最高速度は1ノットで 潜水艇の最高速度と同じだったからです。その甲斐あって 特殊な捕獲器で捕らえ 船の実験室に引き上げることができたのです。この魚は ありとあらゆる部分が発光していました。信じがたいことです。眼の下の器官が発光しています。ひげも光っています。 腹部の発光器も光っています。ひれも光っています。助けを呼ぶ叫びです。注意を惹きたいのです。驚くべきことです。通常はこの現象を見ることはできません。網で引き上げるまでに消耗してしまうからです。

 

4 目くらましのために発光する化学物質を水中に放つエビ

光で身を守る方法は他にもあります。たとえば、このエビは 発光する化学物質を水中に放ちます。イカやタコがスミを吐くのと同じです。そして捕食者の目をくらますか注意をそらします。この小さなイカにも同じ能力があるため ファイヤーシューターと呼ばれます。一口大のおいしそうなご馳走 あるいは 翼の付いた豚の頭に見えるかもしれませんが (笑) 攻撃されるや 光を連射します。まさに光子魚雷の連射です。明かりを消すのが間に合ったので 発光する粘液が 網にぶつかり 光りを放つのをご覧いただけます。驚くべき現象です。

外洋には多くの生物がいますが その多くは発光するのです。発光する理由はだいたいは分かっています。食物を見つけるため 交尾する相手を誘うため 天敵から身を守るために発光します。ですが大洋の底に行くと そこは本当に不思議の世界です。これらのうちには 映画「アバター」の 生物のヒントになったものもいるでしょう。しかし パンドラ星まで行かなくても このような生物を見ることができます。

 

5 3000年以上生きる黄金珊瑚の群生

これは黄金珊瑚の群生です。ゆっくりと成長します。固体によっては 3000年以上生きていると考えられています。トローリング漁を禁止すべき理由の一つです。しかもこの驚異の群生生物は発光するのです。この珊瑚は どこに触っても きらめく青緑色の光が生じます 息をのむ美しさです。このようなものにも出会います。まるでドクタースースの本から飛び出してきたようで 実にいろいろな生物が付着しています。これらはハエジゴクイソギンチャクです。突っつくと触手を引っ込めますが さらに突っつくと 光り始め やがて銀河のように見えるようになります。帯状に光を放つのは 防御のためだと思われます。

 

6 クモヒトデやウミエラの一種の発光

ヒトデの仲間にも発光するものがいます。足に沿って光を帯状に発する クモヒトデもいます。これは植物のように見えますが 実は動物です。茎状の体の端を風船状に膨らませ 砂に体を固定します。ご覧のように 強い潮流にも耐えることができます。これをそっと採取して実験室に持ち込み 細い体の基部を押さえると 光を放ちます 茎状の体から羽毛状の先端まで 緑から青へと 色を変えながら光ります。色づけし効果音を入れて 皆さんが楽しめるようにしてみました (笑) でも なぜ発光するのかはわかりません。

もう一つ これもウミエラの一種です クモヒトデが乗っていますね。緑のライトセーバーになります。先ほどのものと同じように 帯状に発光します。基部を押さえると 基部から先端に向かって光の帯が走ります。先端を押さえると基部から根元に走ります。中央部分を押さえるとどうなるでしょうか (嘆声) この現象についてのお考えを拝聴したいです(笑)

 

7 深海の底には光の言語が存在する

深海の底には光の言語が存在します。私たちはようやくそのことに気づき始めました。これを解明する一つの方法は 発光行動をまねることです。これは私が使った疑似発光装置です。電子クラゲと呼んでいます。青色LEDを16個使っただけのものですが 様々な発光パターンをプログラムできます。それを私が開発した「海中眼」というカメラで観察します。大部分の生物には見えない遠赤色光を用いるので 活動を妨害しません。これから皆さんにお見せするのは この装置を利用して誘発した 深海の生物の反応です。

 

8 私たちは何者かに語りかけている

カメラはモノクロですし 高解像度でもありません。ここに見えるのはエサ箱です。海のゴキブリのような生物が箱を囲んでいます。皆 等脚類の生物たちです。正面にあるのは 電子クラゲです。これが点滅しはじめます。LEDの一つを速い速度で点滅させます。カメラで撮影すると光は大きく見えます。点滅が始まるとすぐ 特にここをよく見ていただきたいのですが 何か小さいものが反応します。私たちは何者かに語りかけているわけです。真珠の首飾りのように見えます。3本あるようです。何度繰り返しても 同じ現象が起きます。場所はバハマ諸島で深度約600mです。まるでチャットルームですね。いったん会話が始まると皆が参加します。たぶんこれはエビでしょう。水中に発光する化学物質を放出しています。エビと会話しているんです。すごいと思いませんか 何を話しているかはわかりませんが たぶん何かセクシーなことだと思います(笑)

 

9 世界初の深海ウェブカムを用いて録画した生物の反応

最後に 世界初の深海ウェブカムを用いて録画した 生物の反応をお見せしましょう。モントレー海溝に昨年設置したカメラです。データの解析に着手したばかりです。まず光源を設置します。発光するバクテリアと考えてください。海底に生物の死骸があるかのように 光を使って見せかけるのです。腐肉をあさる生物が寄ってきました。巨大なカグラザメです。光に引かれて来たのかどうかは分かりません。エサもあったからです。でも匂いに引かれてやってきたのならば 反対方向から接近したでしょう。サメはどうも電子クラゲを 食べようとしているようです。3.6mもあるカグラザメです。

 

10 思慮深いイカ

さて次もウェブカムからの映像です。回転花火のように光らせます。警報器のようなものと考えてください。フンボルトイカが近づいてきました。若いイカで体長90cmほどです。場所はモントレー海溝水深900mです。警報器と見ているなら直接攻撃しないでしょう。装置を攻撃する生物を攻撃するはずです。いろいろな反応が観察できました。このイカは少し思慮深いです 「おっと待った 何か違うぞ」 どこが違うかを考えながら 執拗に近づきます。何度も戻ってきて 数秒間離れて 考えてみて さらに考えて 「別な方向から近づいたらどうだろう」 (笑) だめだ。

 

11 私たちは海の星に住んでいる

私たちの研究は端緒についたばかりで ようやく実態がわかってきたところです。もっと多くの観察者が必要です。皆さんも潜水艇に乗る機会がありましたら ぜひ乗船して潜水してみてください。私たちは海の星に住んでいるのですから 「一生のうちにやるべきリスト」に潜水艇の乗船をぜひ加えてください。地球では生物が生存できる空間の 90パーセント いや99パーセント以上が 海なのです。海は魔法の場所で 息をのむ光のショーや 驚くべき不思議な生物で満ちています。他の惑星に行かなくても 見たこともない生物に出会えます。でも潜水するときには 明かりを消すことを忘れないでください。忠告しておきますが やみつきになりますよ。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

生物発光のほとんどは海で起きる。食物を見つけるため、交尾する相手を誘うため、天敵から身を守るために発光する。渦鞭毛虫の生物発光、目くらましのために発光する化学物質を水中に放つエビ、珊瑚やクモヒトデやウミエラなど。深海の底には光の言語が存在する。私たちは海の星に住んでいる

和訳してくださったHaruo Nishinoh 氏、レビューしてくださった HIROKO ITO 氏に感謝する(2011年3月)。

発光生物のふしぎ 光るしくみの解明から生命科学最前線まで (サイエンス・アイ新書)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>