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デニス・ホン 視覚障害者が運転できる車を作る

「認識、計算、非視覚的インタフェースという3つの段階を解決できれば視覚障害者が運転できる車を作ることができます」デニスは語りかける。ここでは、55万ビューを超える Dennis Hong のTED講演を訳し、視覚障害者が自分で運転できる車について理解する。

要約

ロボティクス、レーザーレンジファインダー、GPS、フィードバック装置を使い、デニス・ホンは視覚障害者が運転できる車を作ろうとしています。これは「自動運転車」ではないことに注意してください。目の不自由なドライバーが、速度、障害物との距離、ルートを把握し、自分で運転できる車なのです。

Dennis Hong is the founder and director of RoMeLa — a Virginia Tech robotics lab that has pioneered several breakthroughs in robot design and engineering.

 

1 車の運転ができるのは目の見える人だけ?

車の運転ができるのは 目の見える人だけだと 多くの人は思っています。視覚障害者が自分で車を安全に運転するなど これまで不可能だと考えられていました。私はデニス・ホンです。視覚障害者のための車を開発することで 目が不自由な人に 自由をもたらしたいと思っています。

 

2 視覚障害者が安全に運転できる車は作れるか?

この話に入る前に 私がした別のプロジェクトについて 少しお話しします。DARPAアーバンチャレンジです。これは自動運転ロボットカーを 作ろうという試みです。ボタンひとつで 人が何もしなくとも 車が自律的に 目的地までたどり着きます。2007年に この競技会で私たちのチームは 3位に入り 50万ドル手にしました。それと同じ頃 全米視覚障害者連合(NFB)によって 「視覚障害者が安全に運転できる車は作れるか?」という課題が 研究コミュニティに投げかけられ 私たちはこの挑戦を受けました。簡単だと思ったのです。自動運転車は既に作っているので あとは視覚障害者を乗せるだけでしょ? (笑) 大間違いでした NFBが望んでいたのは 視覚障害者を運べる車ではなく 視覚障害者が自ら判断し運転できる車だったのです。だから私たちはすべてを捨てて 一から作り直す必要がありました。

 

3 認識、計算、非視覚的インタフェースという3つの段階がある

本当にそんなことが実現可能なのか? 私たちは検討のため バギーで試作をしました。2009年の夏に 国中から視覚障害のある若者を募って 車の運転を試してもらいました。まったく素晴らしい体験でした。もっとも この試作車は設計上 よく管理された環境でしか使えず 閉じた平坦な駐車場で走らせ 車線もロードコーンを使っていました。試作がうまくいったので 私たちは次のステップへと進み 本物の道を走れる 本物の車の開発に取りかかりました。どういう仕組みなのでしょう? 結構複雑なシステムなんですが 簡単化して ひとつ説明してみましょう。3つのステップがあります。認識 計算 それに 非視覚的インタフェースです。ドライバーは目が見えないので システムがドライバーに代わって 環境を把握し 情報を集める必要があります。そのために初期測定ユニットを使います。ちょうど人の内耳のように 加速度や角加速度を把握します。その情報をGPS情報と合わせて 車の位置を割り出します。それから2台のカメラで車線を検出し 3台のレーザーレンジファインダーで 環境中の障害物をスキャンします。前後から近づく車や 道路に飛び出してくるもの 車の周囲の障害物などです。

 

4 問題は集めた情報や指示をどう伝えるか

そういった膨大な情報をコンピュータに取り込んで 2つのことをします。1つはその情報を処理して 周りの環境を理解すること。ここに車線があり あそこに障害物があると把握し それをドライバーに伝えます。このシステムは賢くて どう運転すると一番安全か判断でき 運転のための操作指示を 生成します。問題は 素早く正確に見ることのできない人に そういった情報や指示を どう伝えるかということです。そのために様々な種類の 非視覚的インタフェース技術を開発しました。3次元通知音システムに始まり 振動するベスト ボイスコマンド付きクリックホイールや レッグストリップ 足を圧迫して合図する靴まであります。今日はその中から 3つだけご紹介しましょう。

 

5 指示を伝える手袋「DriveGrip」と「SpeedStrip」というイス

最初のはDriveGripです。手袋なんですが 関節にバイブレーターが付いていて ハンドルを回す方向と大きさを 指示するようになっています。もうひとつはSpeedStripです。この座席は元々マッサージチェアでした。中身を取り出して 様々なパターンで振動するようにしてあります。それを使って 現在の速度や アクセルやブレーキの指示を伝えます。こちらはコンピュータが環境を どう理解しているかを示しています。振動は見えないので LEDを付けて 何が起こっているのか見えるようにしてあります。センサーのデータが コンピュータを通してドライバーに伝えられています。

 

6 圧搾空気が出る視覚障害者用モニタ「AirPix」

DriveGripも SpeedStripも とても効果的ですが これらの装置の問題は 操作の指示をするばかりで 運転車に自由がないということです。コンピュータがどうしろと指示します 左に曲がれ 右に曲がれ スピードを上げろ 止まれ 後部座席ドライバーの問題です。それで私たちは運転指示装置よりも 情報を伝える装置に より注力するようになりました。情報を伝える非視覚的インタフェースの 良い例は AirPixです。視覚障害者用モニタと思ってください。穴のたくさん開いた小さなタブレットで 穴から出てくる圧搾空気で イメージを描き出すようになっています。目が見えなくとも これに手をかざせば 車線や障害物を見ることができます。気流の頻度や温度を 変化させてもいいかもしれません。これは多次元ユーザインタフェースなのです。左右のカメラの映像と それをコンピュータがどう解釈し AirPixにどんな情報を送っているかの様子です。ここではシミュレータを使い 視覚障害者がAirPixで運転しています。シミュレータは 視覚障害ドライバーの練習に良いですが 非視覚的ユーザインタフェースを いろいろ手早く試すのにも使えます。以上が基本的な仕組みの説明です。

 

7 帰りはマークにホテルまで送ってもらおうかな

ほんの1ヶ月前 1月29日に 私たちはこの車を初披露しました。有名なデイトナ国際スピードウェーで行われた Rolex 24レースでのことです。きっと驚きますよ。どうぞご覧ください(音楽)皆さん 今日は歴史的な日と言っていいでしょう。NFBの皆さん 特別観覧席にこれからさしかかります(歓声)(最高時速43キロ)今 特別観覧席前です。ゲート前です。前に出てきたバンの後ろを走っています。最初の箱が来ます。マークがよけられるか見てみましょう。やりました。右にかわしました。3つめの箱が投げられました。4つめの箱です。2つの箱の間を完璧に通り抜けました。バンを追い抜こうと 近づいています。これこそ運転の醍醐味です。素晴らしい大胆さと巧みさを見せています。最終関門に近づいています。並んだ樽の間を通り抜けます(成功!!)(拍手)とても嬉しいよ。帰りはマークにホテルまで送ってもらおうかな。いいとも(拍手)

 

8 世界中の人から何百という手紙やメールや電話をもらった

このプロジェクトを始めて以来 世界中の人から何百という 手紙やメールや電話をもらいました。お礼のメッセージが多いですが 中には変わったのもあります 「車専用のATMに点字がついている理由がやっとわかったよ」 (笑) しかし時には・・・ (笑) しかし時には 抗議とは言わないまでも 強い懸念を示した手紙もあります 「視覚障害者に道路で運転させるなんて あんたどうかしてる。正気の沙汰じゃない」 この車はプロトタイプであり 今ある普通の車と同等か それ以上に 安全になるまで 公道には出しません。そして実現できると固く信じています。

 

9 今日お見せしたものはほんの始まりに過ぎない

しかし このような過激なアイデアを 社会は受け入れるのでしょうか? 保険はどうなるのでしょう? 運転免許は? 実現のためには 技術的難問以外にも 違った種類の問題がたくさんあります。このプロジェクトの主な目的はもちろん 視覚障害者のための車の開発ですが 可能性としてより重要なのは このプロジェクトから派生して出てくる 価値ある様々な技術です。センサーは 暗闇や霧や 雨の中を走るのにも使えます。新しいインタフェースと合わせて 目の見える人のための車を より安全にすることもできるでしょう。あるいは視覚障害者が学校やオフィスで 日常的に使うものにも応用できます。教室で先生が黒板に書いたことが 非視覚的インタフェースで視覚障害のある生徒にもわかる。そんなことを想像してみてください。とても価値あることです。今日お見せしたものは ほんの始まりに過ぎません。どうもありがとうございました(拍手)

最後に

視覚障害者が運転できる車を作るには、認識、計算、非視覚的インタフェースという3つの段階がある。問題は集めた情報や指示をどう伝えるか。手袋「DriveGrip」、イス「SpeedStrip」、そして視覚障害者用モニタ「AirPix」があればそれが可能。誰しもが快適に過ごせる技術開発

 

和訳してくださった Yasushi Aoki 氏、レビューしてくださった Hidetoshi Yamauchi 氏に感謝する(2011年3月)。

「自動運転」が拓く巨大市場-2020年に本格化するスマートモビリティビジネスの行方- (B&Tブックス)


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