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デフレの原因、量的緩和、日銀の打率、通貨供給量 日銀とグラフ

前回は、特殊法人、債務残高、金利上昇、厚生年金基金 官僚とグラフについてまとめた。ここでは、デフレの原因、量的緩和、日銀の打率、通貨供給量 日銀とグラフについて解説する。

16 デフレの原因は企業ではなく日銀にある

日銀はデフレターゲットをしているのか

消費者物価指数の推移を見ると、ここ10年間ほぼマイナス1.0〜0%の間に収まっている。日銀はデフレを脱却しそうになると金融引き締めを行っており、あたかもデフレターゲットをしているようである。これらの金融政策の始まりは、00年8月のゼロ金利解除だ。外部から見れば明らかな失政だが、日銀ではこれを失敗と見ていないのだろう。

 

日銀の金融政策決定会合出席者は経済音痴ばかり?

当時の日銀の金融政策決定会合出席者は、中原伸之委員を除いて経済音痴ばかりだった。速水優議長は名目金利と実質金利の違いを理解しておらず、篠塚英子委員はデフレの意味を理解していなかった。

 

インフレ目標でぶつかる「親小沢」と「反小沢」

当時の民主党内では「親小沢」のデフレ脱却議連(会長・松原仁衆議院議員)と、「反小沢」仙谷由人官房長官らがインフレ目標導入で争っていた。しかし、結局は仙石氏の鶴の一声で実現できなかった。

いずれにしろ、00年当時に世界で標準的なインフレ目標1〜3%が導入されていれば、00年8月のゼロ金利解除はできなかったはずである。ビスマルクの「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があるが、当時の日銀は歴史どころか経験にすら学ぶことのできなかったのだ。

 

17 日銀は世界で唯一量的緩和政策をしていない中央銀行

二番底という不安が出てくる理由

二番底という不安が出てくる理由は、2008年9月のリーマンショックに端を発した金融危機の脱却から、日本だけが取り残されているからだ。各国の金融危機のGDPギャップとその埋め方は、財政政策と金融政策で埋めている。しかし、日本はそのどちらもしないのでGDPギャップが埋まらないのである。

GDPギャップとは、雇用が完全雇用である場合のGDP(潜在GDP)を推計し、それと現実GDPとの差額をいう。この数字が大きければ失業率が高くなり、賃金が下落し、物価も下がる。逆に、現実GDPが潜在GDPを上回る場合には雇用が逼迫し、賃金が上昇、物価も高くなる。例えば、日本のようにGDPギャップが40兆円程度あると、失業率を2〜3%程度、失業者を130〜200万人程度増やしている。

 

先進国では日銀だけが逆行

各中央銀行のバランスシートの推移を見ると、リーマンショック以降、日銀だけが量的緩和をしていないことがよくわかる。日銀は09年11月まで、デフレでも問題ないと言い逃れをしてきた。しかし、09年末、鳩山政権がデフレ宣言すると、デフレを容認しないなどと言い出したのだ。本当に成長を望むならば、日銀に対して4年間の成果目標を課すべきである。

 

18 日銀の金融政策の打率は2割以下

政権交代とともに消えた経済財政諮問会議の重要性

政権交代とともに消えた経済財政諮問会議の重要性は、総理、官房長官、経済財政担当大臣、総務大臣、財務大臣、経産大臣、日銀総裁がメンバーに入っているので、国のマクロ経済政策を議論できることである。経済財政諮問会議を除いて、2週間に週間に1度以上、日銀総裁を入れて重要閣僚が顔をあわす機会はこれまでなかった。

 

00年代の10年間の中央銀行の成績表

00年代の10年間(120ヶ月間)の消費者物価(除く生鮮食品)から、中央銀行の成績表をつけるとする。日本の達成月はわずか23ヶ月にすぎない(打率にして1割9分)。アメリカは打率10割、イギリスは7割3分、EUは9割1分。いかに日銀だけが「デフレ目標」になっているかがわかる。

 

名目3%成長は「高めの成長」なのか

名目3%成長は「高めの成長」ではなく、欧米の先進国の名目成長率は平均4〜5%である。OECDの名目成長率と長期金利の関係を調べると、名目成長率が4%以上だと長期金利を上回る傾向にある。OECDの中で日本はどちらも最下位である。

 

19 通貨の少なさがデフレの原因

「購入資産は何でもいい、ケチャップでも」

「購入資産は何でもいい、ケチャップでも」と言ったのは、バーナンキFRB議長である。量的緩和の効果は、基本的には出てくるマネーの量に依存するため、何を買っても効果はあまり変わらないのである。

 

日本は世界で唯一の通貨増加率がマイナスの国

マネー量と物価の関係は、経済学では「貨幣数量理論」として知られている。もともとは、インフレ率がマネー増加率に関係があるという歴史的事実を説明するためのものである。マネーと非マネー(財・サービス等)の関係として、マネーが少なければマネーの超過需要になるが、それは同時に非マネー(財・サービス等)の超過供給になる。超過供給ということは、モノがあふれて物価が下がるデフレというわけだ(ワルラスの法則)。

このワルラスの法則の原理は、マネーを出すとシニョレッジ(通貨発行益)が政府・中央銀行に発生して、それが物価を上げ下げするというものである(変動相場制では財政政策は効果なし 物価の安定が目的の金融政策参照)。ワルラスの法則での非マネーは資産も含まれるため、シニョレッジが資産市場に入ると資産バブルになるおそれがある。

こうした理論があるとともに、貨幣数量理論はデータからも支持されている。各国の通貨増加量とインフレ率の関係を見ると、正の相関関係にあるのだ。00〜08年のインフレ率がマイナスの国は、日本、香港、リビアの3カ国しかなく、特殊事情(カレンシーボード制と経済制裁解除後の混乱)を除けば日本が唯一の通貨増加率がマイナスの国なのである。さらに、各国の人口増加率とインフレ率の関係を見ても相関関係はないため、少子高齢化はデフレの原因とはいえない。

 

20 日銀は東日本大震災以降、資金を引き下げた

震災直後から減り続けるベースマネー

震災などのような非常時には、復興債などを発行して経済を支えなければならない。しかし、震災直後からベースマネーは減り続けた。11年度の国債償還額は30兆円にもかかわらず、日銀直接引受額は12兆円と、18兆円分マネーを減らしたのである。

本来、国債発行計画における復興債において、復興債を発行しても、その分日銀引き受けの額を増やせば市中消化の量は変わらない。つまり、復興債を18兆円発行したとしても市中金利の上昇はないのだ。また、労働保険特別会計でも5兆円の捻出はできる。合計で23兆円の復興財源を準備することは可能なのである。

 

「震災以降、積極的に資金提供してきた」というウソ

日銀は「震災以降、積極的に資金提供してきた」というが、それはウソである。日銀資産負債残高とベースマネーの推移を見ると、東日本大震災以降、日銀は資金を徐々に少なくしていることがわかる(復興財源は国債の日銀引き受けと埋蔵金の活用 シンプルな復興政策参照)。

 

最後に

デフレの原因は企業ではなく日銀にある。日銀は世界で唯一量的緩和政策をしていない中央銀行だった。日銀の金融政策の打率は2割以下。日銀は東日本大震災以降、通貨供給量を引き下げた。2000年代の10年間の中央銀行の成績を比べると、日銀は圧倒的に落第生だった

次回は、新聞と軽減税率、橋下徹、経常収支、規制緩和 マスコミとグラフについてまとめる。

グラフで見ると全部わかる日本国の深層


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