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官僚を選び、人事院と身分保障を廃止し、政治家を育成せよ 脱官僚の実現法

前回は、二重権力構造の利用は官僚の常套手段 公務員労組にも配慮した鳩山政権についてまとめた。ここでは、官僚を選び、人事院と身分保障を廃止し、政治家を育成せよ 脱官僚の実現法について解説する。

1 官僚を使いこなす前に、まず官僚を選べ

官僚を使いこなす前に、優秀な人材を見極め、再配置するといった「官僚を選ぶ」ことが重要である。選ぶことには2つ意味がある。1つは、直接的な効果として、自分たちが信頼できるチームを省内に作ることができる。もう1つは、一度人事に手をつければ、幹部を掌握する上で強い効果がある。政務三役さえしっかりしていれば、官僚たちと正しい信頼関係を築くことができるだろう。

鳩山総理は、かつて政権を取ったら「(各省庁の)局長クラス以上には辞表を提出してもらいたい」と発言していた。これを実行すれば、幹部人材の見極めと抜本的な再配置を行うことができるだろう。同時に、まずは幹部に限って「身分保障」を外し、民間企業の取締役と同じような人事体系にすればよい。

 

2 閣議をお習字大会から討議の場にせよ

福田政権での労働基本権の制約撤廃 自民党による公務員制度改革2でも述べたように、閣僚は「各省の代弁者」ではなく「内閣の一員」である。こうした意識共有を行うために、週二回(通常は火曜と金曜)の閣議の時間をもっと長くすればよい

自民党政権で大臣を経験した人によると、閣議とはサインすべき文書がたくさん並べられて、ひたすら筆でサインするお習字大会のようなものだったそうだ。所要時間もせいぜい30分程度で、閣僚同士の議論などはほとんどない。これを2〜3時間、できれば半日ぐらい諸問題を討議し、様々な認識を共有する場にすべきである。

 

3 人事院と身分保障を廃止し「官僚は特別」論を駆逐せよ

官僚主導の根源である公務員制度を抜本改革する必要がある。そうしたければ、政務三役たちが「局地戦」で消耗するだけに終わりかねないからだ(つまずきの始まりは天下り人事 司令塔なきゲリラ戦だった民主党参照)。そのためには、公務員制度を民間並みの人事制度に変えてしまえばよい

具体的には、人事院と身分保障を廃止することである。人事院については、公務員の労働基本権の制約を解除することが鍵である。制約されている協約締結権と争議権を両方とも付与し、代わりに人事院を廃止すればよい。

身分保障については、まずは幹部に限って先行的に廃止した上で、最終的にはすべての公務員について廃止すべきである。もともと身分保障が設けられた経緯は、明治期の第一次大隈重信内閣(隈板内閣)で、当時の政党政治家たちが政党人を役所のポストに就けたいとの政治的意図だけから官僚たちをポストから外し、免職や休職にしたことである。たしかにこうした人事の横行は防ぐ必要はある。しかし、現在では「能力・実績主義」という原則が国家公務員法で定められているため、もはや身分保障は不要なのである。

 

4 改革の戦術論は、過去の成功と失敗に学べ

改革の戦術においては、①全体像を描きつつ、同時に急所の改革を先行実施し、②プロセスの公開を武器とすることが重要である。改革においてよくある抵抗は、全体像が描けないと個別論を進められないとする「先送り」である。また、個別論だけを取り上げると「トカゲのしっぽ切り」も行われる。この両方を回避するために①の戦術が重要である。

例えば、脱官僚のための改革であれば、急所は幹部の人事制度改革や労働基本権の拡大である。一方、全体像としては、優秀な人材の確保・育成策なども含めた抜本的な公務員制度改革、霞ヶ関官僚の地方支配を打破する地域主権改革、官製資本主義を打破する規制改革などが必要である。

プロセスの公開を武器にするとは、国民の前に議論をさらして改革を進めるということである。かつて福田政権下で官民人材交流センター懇談会の様子をインターネット中継したように、政治主導を国民に監視してもらうのである。例えば、大臣室は常時インターネット中継にするなど、政策決定プロセスをできる限り国民に明らかにしたらよい。

 

5 「脱官僚」に足る政治家を揃えよ

脱官僚に足る政治家を揃えること、これが長期的な脱官僚を実現するために必要なことである。そのためにも、中長期的な観点での人材の確保・育成が重要である。例えばイギリスでは、議会折衝に向く政治家と、政府で政策を担う政治家を分け、人材育成するシステムができている。こうした仕組みを参考にすべきである。

また、政民の人材流動化も進める必要がある。現在は、いったん政治の世界に入れば、その後の人生を政治の世界で過ごすことが当たり前のように考えられている。しかし、例えば任期一回で政治の世界に入る人がいても良いのではないだろうか。そうした人を許容する制度・文化に変えれば、より多様で優秀な人材を集め、政治の世界を活性化できるだろう。

 

最後に

脱官僚・政治主導のメリットは選挙があること。政治主導のプロセスを国民に公開し、選挙によって審判してもらえばよい。官僚を選び、閣議を討論の場にし、人事院と身分保障を廃止し、改革の戦術論(全体像・急所・プロセス公開)を学び、脱官僚に足る政治家を育てよ

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