前回は、グーグルのすごさは企画力と営業力とサーバーメンテナンス ITのウソについてまとめた。ここでは、BtoCで成功した企業はBtoBで失敗する インターネットの未来について解説する。
YouTubeが買収された理由
グーグルがYouTubeを買収した理由は、買収した方が安かったからだろう。AS番号というデータセンターの経営者は必ず取る番号がある。この仕組みでは、ユーザー数の少ないところがユーザー数の多いところへつなぐためには費用が必要となる。YouTubeがAS番号を取得するとグーグルは大金を支払う必要があったため、番号を取得した矢先に買収をしたのである。このように、インターネットはユーザーから見ればISPへの接続料だけでつながっているように見えるが、ユーザー以外の部分ではみんなおカネを支払っているのだ。
ニコニコ動画、存続の危機
ニコニコ動画は月に1000万円以上のコストがかかっている。これはもともとYouTubeの便乗モデルとして考えられたサービスで、YouTubeの動画に字幕を貼付けられるというシステムだった。しかし、YouTubeからアクセスブロックをされ、サービスの継続が難しくなったことがあったが、親会社のドワンゴから支援を受けてサービスを継続した。その後、個人で動画サービスを作っているスタッフの力を借り、サイト一時閉鎖の1週間後、ニワンゴとは別のサーバーに新たなシステムを作り、独自の動画配信サービスとして再開したのだ。
人が集まる動画コンテンツ
現在の動画ビジネスでは、音楽とグラビアは収入モデルとして成立しているが、その他のコンテンツは厳しいと言われている。YouTubeの著作権侵害コンテンツには人が集まるが、ニコニコ動画でそれを扱うのは難しかった。しかし、実はユーザーにとって見ている動画はどうでもいいことに気がついた。ニコニコ動画の動画に対してコメントを書き込む機能を使って、ほかのユーザーと会話がしたいだけなのだ。
素人でもおもしろい動画がつくれた
エニグモという会社が、ユーザーが企業のCM動画を制作して配信する「フィルモ」(2011年11月30日サービス終了)というサービスを始めた。ユーザーが作ったCM動画をYouTubeに載せて申請すると、おもしろいCMを作った上位100人に4000円、優勝者は20万円がもらえるサービスである。この上位の作品はおもしろいのだ。
動画CMは見ない
そもそも動画配信に広告を出稿する企業が少ないのは、動画そのものに合った広告を配信する技術がそこまで発展していないからである。ブログのようなテキスト主体のコンテンツであれば、そのテキスト内容に近い広告を入れるアドセンスやアドワーズなどの広告モデルがある。しかし、動画にはそうした技術がまだなく、できたとしても配信サーバ側のコストパフォーマンスが100倍程度違うのである。
YouTubeは発明ではない
アメリカの雑誌「ニューズウィーク」では、2006年最大の発明がYouTubeだとされていた。しかし、YouTubeに似た動画投稿サイトは昔から存在していた。昔からアップローダーという技術はあったし、動画がアップできることもインターネット初期からあった。それでも、YouTubeがそのように言われたのは、ブランディングとグーグルに買収されたという2点が大きかったのだろう。
CGMで大もうけできるか
CGM(Consumer Generated Media)とは、インターネットなどを活用して消費者が内容を生成していくメディアである。CGMのメリットは、無料であることである。CGMの場合、サイトを開設しておけばユーザーが勝手に商品を置いていき、別のユーザが勝手に商品を買っていく。そして、お金だけがサイト開設者に落ちていくという方式である。しかし、「この指とまれ!」というサイトのM&Aに暴力団関係者がかかわってしまったように、Webサイト自体で商売をするのであれば、誰かがお金を出すというシステムがない限り難しいのだ。
CGMの成功例
CGMの成功例は出会い系サイトである。ユーザー同士がお金を支払うことで、場を提供した会社が利益を上げるからだ。
頑張れセカンドライフ
2007年、「セカンドライフ」というインターネット上の3D仮想現実空間が流行した。しかし、基本的にお金がないとおもしろくないというシステムだった。しかも、1つの空間にユーザーが約50人しか入れないという制限があったり、そもそも操作が難しかったりで、ジリ貧になってしまった。
微妙なRMT市場
RMT(Real Money Trade)とは、ゲーム内での通貨と現実通貨を取引するものである。そもそもRMTは、オンラインゲームの「ウルティマオンライン」のころから行われていたため、1990年代後半から存在していた。しかし、しょせんはゲーム内での話でしかない。なお、最近では仮想通貨「Bitcoin」への注目が集まっている。
マイクロソフトのビジネスモデル
マイクロソフトのビジネスモデルは、ビジネスソフトのオフィスで儲けることである。そのため、個人ユーザーをあまり重用しなくてもよく、企業にとってのビジネスツールであるオフィスを販売できれば問題ないのだ。
ビジネスソフトの今後
マイクロソフトのオフィスが企業ユーザーに使われなくなる心配はないだろう。しかし、最近は「グーグルドライブ」などのWebベースのアプリケーションを使用する人が増えている。Webベースとは、インターネットにつながっている状態で操作を行い、保存したデータはインターネット上にあるグーグルのサーバー上に記録されるものである。ただし、Webベースのアプリケーションを使うためには100%インターネットにつながる通信環境が必要なため、何か問題が起きたときに責任問題になることを防ぐためにも、企業ユーザーはオフィスを使い続けるだろう。
BtoCで成功している企業はBtoBで失敗する
個人的な思い込みだが、インターネットの場合、BtoCで成功している企業はBtoBで失敗している。例えば、ヤフーは日本での知名度は抜群で、宣伝力も技術力もあるにもかかわらず、ヤフーサーバーをBtoBで使用している企業はない。これは、サービス提供者側の利益効率に問題があるのではないか。
BtoCで成功している企業は、黙っていても売上が入ってくる。一方、BtoBで成功するためには、営業力を高め、顧客に頭を下げて回らないとお金が入ってこない。そのため、BtoCで成功している企業は、わざわざ企業に営業をしにいかないのではないだろうか。
インターネットの未来
インターネットの基礎的な技術は、既に開発が終わってしまっている。ネットにつなぐとにおいが出るというような進化はあるかもしれないが、それはにおいを合成する技術がすごいだけで、インターネット自体の進化ではない。また、「FON」という端末を購入したユーザーが受信した電波をほかのユーザーに利用させることができるシステムがある。しかし、その電波に100人、1000人が同時につながったら、回線に混雑が起こるだろう。
インターネットの未来を考えると、パソコンよりも携帯電話を利用したサービスの方が発展するだろう。普通に働いている一般的な人は、パソコンの前に座っている時間はせいぜい1、2時間だろう。しかし、携帯電話からインターネットに接続したり、端末本体に蓄積されたデータをサーバに記録されたりできれば、個人が行う行動のほとんどがインターネットを経由した先にあるサーバに蓄積されていく状態になる。通話からインターネット、買い物まで含めて、ほとんどすべてが携帯電話1台で済むようになるだろう。
最後に
YouTubeがグーグルに買収されたのは、買収した方が安かったから。ニコニコ動画に人が集まるのは、ほかのユーザーと会話をしたいから。Webサイトで商売をするには、誰かがお金を支払う仕組みを作らなければ難しい。CGMの成功例は出会い系サイト。BtoCで成功している企業がBtoBで失敗するのは利益効率が悪いから。インターネットの未来は携帯電話にある。
次回は、西村博之は悲観的、2ちゃんねると公共性 佐々木俊尚×ひろゆきについてまとめる。
![]() |