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テレビCM、運転免許、タクシー、ラブホテル、風邪薬 ビジネス規制

前回は、学校の階段の踊り場、理髪店、酒税、電気料金 日常生活の規制についてまとめた。ここでは、テレビCM、運転免許、タクシー、ラブホテル、風邪薬 ビジネス規制について解説する。

7 ケイン・コスギはピンチの後にリポビタンDを飲む

薬のCMの最後に必ず「ピンポン」となる理由

リポビタンDを飲むのはピンチを脱出した後な理由は、薬事法66条1項による規制や「医薬品等適正広告基準」(昭和55年厚生省薬務局長通知)といった通達があるからである。誇大広告をしてはいけなかったり、承認を受けている効能効果以外をうたってはならないのだ。また、CMの最後に「ピンポン」と効果音が鳴って「使用上の注意をよく読んでお使いください」などのテロップが流れるのも規制のためである。さらに、こうした「自主規制」の背景には天下りがあるのだ。

 

カタログ通販の注意書きをテレビ画面に”詰め込む”

テレビショッピングの「読み切れない注意書き」にも理由がある。テレビショッピングには「特定商取引に関する法律」が適用されるが、この表示は1976年の「カタログ通販」を念頭において定められたものと同じ条文が適用されているのである。同法では通信販売の広告に、商品価格のほか送料、支払時期、支払方法、引渡時期、申込みの撤回に関する事項、住所・電話番号、商品に瑕疵があった場合の責任などの表示を義務付けている。しかし、こうした内容をテレビ画面に一気に詰め込まれても読み切れないだろう。例えば、電話で申込みを受けたときに必ず伝える項目を設けるなど、テレビに合わせたルール作りはできるはずである。

 

佐賀県民が民放を見られるのは「致し方ないこと」

テレビ局の免許は、関東・中京・阪神の各広域圏などを除くと、原則「県域免許」という県内で放送を行うことについて免許を受けている。しかし、佐賀県ではもともと民放が一局しかないにもかかわらず、現実は福岡や熊本のテレビ局の電波が飛んでくるため多くの民放を視聴できていた。こうした状況は2011年7月の完全地デジ化に伴って解決はされたが、そのことは「致し方ない状況」(情報流通行政局地上放送課)としている。

 

ワンセグ携帯を持っているとNHKの集金人がやってくる

NHKは全都道府県をカバーしているが、NHKを実際に見るかどうかにかかわらず、受信設備を設置した者は受信料を払わなければならないとされている(放送法32条)。また、最近ではワンセグ機能付きの携帯電話も受信契約の対象とされ、テレビは一切見ない世帯にも受信料がかかる可能性があるのだ。本来なら「NHKを見たい人は受信契約を締結する」という制度にして、BS放送と同様スクランブルをかけて見られなくすればいいだろう。

 

おバカ規制を知るために4 通達行政とは何か

通達行政とは、法律、政令、省令のさらに下にあるもので、厳密には法令ではない。しかし、通達には役所の意志が反映されやすく、大事なことは通達で決められているともいえるのだ。

 

8 運転免許は5年で更新しなければならない

「セグウェイ」は道路上に存在しないはずの物体

セグウェイとは、原動機がついていて重心を傾けると、動く乗り物である。これは日本の道路交通法によると、存在しないはずの物体になってしまう。道路交通法では、道路の上で動く物体は歩行者、軽車両、車両に分類され、それぞれ歩道、自転車道、車道の上を通る。しかし、セグウェイはこの3つのどこにも該当しないため、公道では走れないのだ。

 

日本の車の性能は「初代カローラ」のまま?

日本の車の性能は上がっているが、日本の高速道路は依然時速100kmが上限のままである。その背景には、警察庁交通局長通達によって事実上、最高速度が100kmまでとされているからである。日本の道路の設計基準は、もっと速く走れる構造になっているが、国交省と警察庁との縄張り争いによってそれが不可能になっているのだ。

 

「交通の教則」は『ONE PIECE』を超える大ベストセラー

免許更新の際に配られる「交通の教則」は年間1400万部も発行されている。これをほぼ独占的に扱ってきたのが「全日本交通安全協会」で、年間事業収入37億円のうち、32億円は講習用教本の収入である。更新手続では視力検査と講習を受け、更新手数料2550円、講習料700〜1700円を徴収される。通常5年更新が10年更新になったら協会の収入は半減するため、協会としては必死に抵抗するのだ。

 

おバカ規制を知るために5 「免許」というキーワード

「免許」というキーワードは規制の世界では重要である。免許事業といえば、監督官庁からいろいろ規制を受けていると考えて間違いない。ただし、そうした規制は新規参入者に対する協力な参入障壁になっていることもある(医師や教員など)。免許の他「許可」や「登録」が必要な業種もある。

 

9 タクシーはデフレなのに値上げを強制されている

規制緩和の「揺り戻し」

規制緩和の揺り戻しの例としてタクシー業界がある。2009年に「タクシー特措法」(特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法)が国会に提出され、修正協議を経て与野党全会一致で成立した。これによって、国交省は以前のように台数制限や料金の統制権限を取り戻し、業界各社に指導を始めたのだ。

 

関西のタクシー運転手だけが”虚弱体質”?

本来「労働条件の悪化」が問題ならば、タクシー会社が運転手に過重な労働をさせないように厳しく監督すればよい。「安全性の低下」が問題であれば、安全点検をしっかりやるよう法例を守らせるのが筋だ。しかし、今回の規制はそうしたものにはなっていない。

例えば、「最高乗務距離規制」を強化し、指定地域での1乗務当たりの乗務距離に上限を設けた。具体的には、関東・中部・九州では270km、北海道は280kmとされるのに対し、近畿は250kmと短くなっている。しかも、近畿だけは高速道路に乗った場合もカウントされるため、長距離客を多く獲得している割安タクシーにとって不利になる。つまり、旧来型の大手タクシー会社と役所が結託し、狙い撃ちしたとも考えられるのだ。

 

「減車をすれば監査免除」という本末転倒の通達

運輸局は、特措法の制定直後「減車をすれば監査免除」という本末転倒の通達を出した。国交省に免除の理由を問うと「減車を実施している事業者は、安全面の認識も高いと判断している」(自動車交通局旅客課)という。しかし、各社の台数が減れば売上が下がり、逆に会社側が「もっと稼げ」と労働強化する危険性などを考えていないのだ。

 

10 ラブホテルとビジネスホテルの境界線

GHQ時代の「朝食メニュー規制」が残っている

ホテルと旅館の違いは旅館業法2条2項で決められているが、旅館業法施行令を見るともっと細かい違いが書いてある。また、厚労省が所管する旅館業法の他に、国交省(観光庁)が所管する国際観光ホテル整備法という法律がある。この法律に基づいて政府の登録を受けたホテルや旅館は、国が海外に宣伝してくれる上に、固定資産税の軽減措置を受けられる(259市町村で実施)。その適用条件の1つが「洋食の朝食が提供できること」なのである。しかも、コーヒー、トースト、卵というメニューまで決められているのだ。

 

食堂があれば「ラブホテルではない」?

「旅館業法施行令」では、ホテルや旅館に必要な構造や設備について、都道府県の条例で基準を追加できることにしている。例えば、東京都の場合、都内でホテルとして許可を取るには食堂が必要になっている。その理由は「ラブホテル扱いされないため」である。

ラブホテルにあたると「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下「風営法」)によって警察の監督下に置かれ、18歳未満は立ち入り禁止など厳格な規制に縛られる。しかし「風営法施行例」で食堂とロビーが一定面積以上確保されていれば、ラブホテルとはみなされないことになっていた。その後、警察庁は2010年7月に施行令を改正し、食堂とロビーがあっても「休憩料金表示」「自動精算機」などがある場合を規制対象に加えている。

 

新しい発想のホテルが阻まれた「フロントの壁」

「フロント施設のないマンションではホテル営業はダメ」という規制によって、新しい発想のホテルが阻まれている例がある。千葉県のディズニーリゾート近隣で不動産業を営む青山真士氏は、夏休みや週末は近隣のホテルが満室になってしまう一方で、周辺のマンションには空室が多いことに目を付け、マンションの空室をホテル代わりに安い価格で提供するビジネスを思いついた。しかし、前述の規制によって「不動産の定期借家契約」を結ばざるを得ないため、事務手続が煩雑で事業が拡大できていない。規制の世界には「ホテル」か「不動産」しかないため、その狭間で非常に手間がかかってしまっているのだ。

 

おバカ規制を知るために6 「条」と「項」と「号」

法令の条文にも「条」「項」「号」の3段重ねの構造がある。「条」の中で改行して文章を書き分けるときは「項」を使う。「条」や「項」の中で、箇条書きで基準を書き並べたりするときは「号」を使う。たまに「1条の2」という条文があるが、これは後づけで追加された「条」の番号である。

 

11 風邪薬はコンビニで買えない

営業時間が長いほど薬は売りづらい

薬事法が大幅改定され(施行は2009年6月から)、市販の医薬品をリスクの高い順に第1類(H2ブロッカー含有の胃薬や一部の風邪薬など)、第2類(主な風邪薬など)、第3類(主な整腸薬など)に分類した。薬剤師より簡単に資格を取れる「登録販売者」を設け、第2類、第3類だけを販売する店舗なら薬剤師を置かなくても「登録販売者」が販売できることになった。

しかし、厚労省が法改正の際に定めた省令によって、24時間風邪薬(第2類)を販売しようとしたら「登録販売者」の資格を持つ店員を1日当たり12時間以上配置しなければならないとされた。通常のコンビニ店舗で常時2人の資格者を勤務させるのは容易ではない。

 

ドン・キホーテの「テレビ電話」はどこへ?

このときの薬事法改正では、隠れた規制強化も行われた。そもそも改正の背景にあったのは、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」が打ち出した医薬品の深夜販売だった。ドン・キホーテは2003年、深夜でも薬剤師がいる店舗からテレビ電話でお客に説明するという遠隔情報提供を導入した。厚労省と揉めた結果、2004年4月、遠隔情報提供は明文で認められた。

しかし、その後の2006年薬事法改正ではテレビ電話での販売を認める規定は姿を消した。代わりに薬剤師か登録販売者を必ず常駐させなければならないと明文で規定されたのだ。規制緩和の皮をかぶりながら、規制強化もしていたのである。

 

省令で突如「インターネット販売禁止」が登場

さらに、法改正に伴い、従来認められていた「インターネットでの医薬品販売」まで禁止されたのだ。しかも、この「ネット販売規制」も前述の「コンビニ販売規制」も、薬事法の法律の条文でなく、省令が根拠とされているのだ。なお、2013年1月11日に、一般用医薬品のネット販売を含む郵便等販売を省令で禁止したのは違憲との最高裁の判決が出ている。

 

12 仕分け会議の結論の半分は「検討する」

役所には「説明責任」がない?

仕分け人側の「インタネット通販が危険だという合理的根拠を厚労省は示せていない」という指摘に対して、役所側(大塚耕平・厚生労働副大臣)は「逆にインターネット通販を解禁しなければならないという合理的理由も示してもらっていない」と切り返した。この根底には「役所の決めたことに民間が異を唱えるなど言語道断」という思想がにじみ出ている。

 

やはり「安全上の理由」は口実

また、規制改革担当の平野達男・内閣府副大臣(当時)は「インターネットでの販売が拡大すると、地方の薬局がつぶれてしまう。これは政治的な問題だ」と繰り返した。この発言は、表向きは「安全上の理由」といいつつも、実は「薬局という既得権業界を擁護したい」ことが本音だと正直に吐露したに等しい。

 

「大事なことは役人が決める」を追認

仕分けによって目立ったのは「検討する」という言葉だ。この言葉には「大事なことは役人が決める」ことを追認していることを意味する。本来、規制は国会の決める法律で作るべきなのに、結局は省令や通達などによって役所が行っていいと言っているようなものなのだ。つまり、国会で決めるべきことと役所に任せていいことの仕分けこそ、最初にやるべきだったのだ。

 

テーマは「本質的なもの」にすべき

そもそも、仕分けテーマとして選定された12項目の多くが「なぜこの項目を取り上げたか」といった項目だった。著者は、もし規制仕分けを次回やる機会があれば、以下の3つを柱にするとしている。

  1. 古くから指摘される難題への挑戦:農業、医療、介護、教育など
  2. 最近の規制強化の検証:医薬品のネット販売、タクシーの規制再強化、派遣規制強化、貸金業の規制強化など
  3. 市民生活密着型の課題:自動車運転免許を10年更新にできないかなど

 

最後に

ピンチの後にリポビタンDを飲むのは、薬事法による規制や通達があるから。運転免許を5年で更新しなければならないのは、全日本交通安全協会へ天下りしている警察庁OBのため。タクシーが値上げを強制されるのは、国交省と既得権を持つ業界団体のため。ラブホテルとビジネスホテルの境界線は、食堂とロビーがあるかどうかだった。風邪薬がコンビニで買えないのは、厚労省と既得権を持つ業界団体のため。規制仕分けの結論の半分が「検討する」なのは、大事なことを役人が決めることを認めているから。消費者のためにならないルールの裏には役所と既得権を持つ業界がある

次回は、公職選挙法、派遣社員、借金の上限金利、野菜の規格 世の中を支配する規制についてまとめる。

「規制」を変えれば電気も足りる (小学館101新書)


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