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パトリック・シャパット 漫画の力

「鉛筆で真面目な問題に光を当て、思いもかけない人々を結びつけることは可能です」シャパットは語りかける。ここでは、60万ビューを超える Patrick Chappatte のTED講演を訳し、マンガの力について理解する。

要約

ウィットに富んだジョークを連発しながら、パトリック・シャパットがささやかな漫画にある力について鋭い意見を述べる。正しい人の手にかかれば、鉛筆で真面目な問題に光を当て、思いもかけない人々を結びつけることが可能であると、レバノン、西アフリカ、ガザで行なわれたシャパットのプロジェクトが実証する。

Using clean, simple pencil strokes, editorial cartoonist Patrick Chappatte wields globally literate and to-the-point humor on world events — the tragic, the farcical and the absurd.

 

1 世界が狭くなった理由はテクノロジーのせい

僕は新聞に漫画を描いている 風刺漫画家です。新聞ってみんなは聞いたことがあるか知らないけど 紙に書かれた読み物で(笑) iPodよりも少し軽いし 値段もちょっと安い でもなんて言われてるか知ってる? 活字メディアには将来がないって言われてる。誰がそんなこと言ったか?いやメディアが でもニュースってわけでもないよね? もうそんなこと読みましたよって [活字メディアに将来はない / もう昨日インターネットで読んだよ](笑)みなさん 世界は狭くなりました。月並みですが見てください。どれほど小さく ケシ粒のようになってしまったか 当然理由は分かっていますね。テクノロジーのせいです。ハイ(笑)

コンピューターのデザインしてる人はいる? そうですか 君たちは僕の生活を惨めにしてくれてるよ。トラックパッドは昔は丸かった。丸くていい形 面白い漫画を描くのに最適。でも平らで四角いトラックパッドで どうしろって言うんだ? 漫画家として僕は何もできないね。とにかく 今では世界は平らだって分かってる ホントに。そしてインターネットは世界の 隅々まで行き渡った どんなに貧困な僻地にも 今ではどのアフリカの村にもインターネットカフェがある [インターネットカフェ / コーヒーはありません] (笑) ここでフラぺチーノの注文はしないように。こうして情報格差をなくしているわけ。第三世界もインターネットに接続されて 僕らは皆繋がってるわけです。じゃあ次はどうなるか? メールが来るんです [第三世界が接続されたぞ!/ メール:お腹がすいた!] ハイ とにかく インターネットは僕らに力を与えてくれました。君たちに力を与え 僕にも力を与えてくれた。そして他の人たちにも力を与えた (笑)

 

2 テクノロジーは僕らを解放した

実はこの最後の2つの漫画は ハノイであった会議の時に ライブで描いたんだけど めずらしかったみたいだね。新社会主義の国ベトナムでは(笑) それでワイドスクリーンにライブで漫画を描いてたんだけど かなりセンセーショナルだった。そしたらこの男の人がやってきて 僕と僕のスケッチの写真を撮ってるから 「これはすごい ベトナム人ファンだ」と思ったんだ。そして2日目にも来たから 「ワーオ ほんとに漫画愛好家なんだ」と思ったんだけど 3日目にやっと分かった。その人は任務でやってたわけ。だからこれで100枚以上僕の写真がある筈 僕の笑顔とスケッチが一緒に ベトナム警察のファイルに入ってる (笑)

でもホントにインターネットは世界を変えた。ミュージック業界を揺るがした。僕らの音楽の聴き方を変えた。年配の人は覚えていると思うけど 昔は店まで行って 万引きしなくちゃいけなかった[インターネットはミュージックを変えたわ / 昔は店まで行かなくちゃ盗めなかった] (笑) そしてインターネットは 未来の雇い主が 君たちの履歴書をどう見るかも変えた。だから注意してください。フェイスブックに何を書くかも 81 00:03:31,000 –> 00:03:34,000 お母さんが言ったように注意すること。

テクノロジーは僕らを解放した。これは無料WiFi でもとにかく僕らを解放した。仕事場のデスクからね。これが君たちの暮らし 満喫してください (笑) 要するにテクノロジーやインターネットは 僕らのライフスタイルを変えたわけ。この人みたいなテクノロジーの第一人者で ドイツの雑誌が21世紀の哲学者と呼んだ人物が 僕らのやり方を決めているんだ[Appleのスティーブ・ジョブズ] 僕らがどう消費するか方向付けて まさに僕らの願望の方向付けをしている [これで今までする必要のなかった仕事まで簡単にできるようになります](笑)(拍手) 気に入らないと思うけど テクノロジーは 僕らの神様との関係も変えてしまった [牧師様 私は罪を犯してしまいました / (グーグル)分かっておる] (笑)

 

3 漫画は武器として使える

さて このことに意見すべきじゃないけど 宗教と風刺漫画というのは 聞いたことがあるかもしれないけど 2005年のあの日から 相容れないものとなりました。デンマークの漫画家が何人も集まって 世界中に反響をもたらす漫画を描き デモや死刑宣告につながりました。それは暴力を招き 人が死にました。とても気分の悪くなる出来事だった。漫画のせいで人々が死んだのです。もちろん その頃僕は漫画は実際のところ 両方の立場から描かれていると思っていました。一番初めに漫画を使ったのはあるデンマークの新聞で イスラム教について意見を述べようとした。デンマーク人のある漫画家が自分はその主張を描く仕事の 依頼をうけた24人の1人だったと話してくれた。そのうち12人は断ったって知ってた? 「何を題材にすべきか命令される必要なんてない」って言っていた 「そういうものじゃない」って。でも間もなくして もちろん漫画は イスラム側の過激派と政治家たちにも利用された。目的は論争を引き起こすこと。その辺の話は知ってると思うけど 漫画を武器として使えることは分かっている。歴史によれば ナチも漫画を使って ユダヤ人を攻撃した。そして現在に至ってる 国連で 世界諸国の半分が 宗教を侮辱するものを罰することを求めてる 宗教毀損と言っている。一方残りの半分は抵抗して 言論の自由を守ろうとしている。つまり文明の衝突があって 漫画がその間にあるってこと? これには僕も考えされられた。これは僕が キッチンのテーブルで考えているところ。僕のうちのキッチンに来たついでに 僕の奥さんにも会ってください。

 

4 漫画でするジャーナリズム

[人生の意味を探してるんだ / グーグルしてみたら](笑)この数ヵ月後 2006年に 僕は西アフリカの コートジボアールに行きました。分裂国家とはまさにこのことだね。真っ二つに分かれてた。北に反乱軍がいて 南の首都アビジャンに政府がいる そしてその間にいるのがフランス軍 巨大ハンバーガーみたいな形 真ん中の肉にはなりたくない。僕はこのストーリーについてのリポートを 漫画でするために行ったんだ。かれこれ15年こういったレポートをしてる 僕の副業と言ってもいいかな。だから漫画のスタイルも違うって分かると思う 社説の漫画なんかよりもずっと真面目な内容 ガザのような場所にも 2009年の紛争中に行った。つまり実質的には漫画でするジャーナリズムってこと。みんなも今後もっと見るようになると思う 未来のジャーナリズムはこれだと思ってる。

それでもちろん僕は北の反乱軍に会いに行った。彼らは自分達の権利を求めて戦う貧困層だった。この紛争にはアフリカでよくある 民族問題も含まれてる。ドゾン族にも会いに行った。ドゾン族は西アフリカに住む 伝統的なハンター達で 人々に恐れられている 反乱軍に加勢することが多い。魔力があり 姿を消して 弾丸を避けることができると信じられている。僕はドゾン族の首長に会いに行った 首長は自分の魔力について僕に教えてくれて 「おまえの頭を今すぐに切り落として それから生き返らせることができるぞ」って言った。僕は「いや 今そんな時間はないのでは」って言った (笑) 「また今度ということで」

 

5 漫画は境界線を越えることができる

それでアビジャンに戻ったんだけど そこの地元の漫画家たちと ワークショップを開くチャンスがあった。それで よし!と思った こういう状況では漫画を本当に武器のように使って 相手に対抗できるぞって。と言うのもコートジボアールのマスコミは完全に二分されていて 大虐殺が起こる前のルワンダの マスコミのようだったから。だから想像できるでしょう。そして一介の漫画家に何ができるか? 編集者が自分達が希望する絵を描くように 漫画家に指示することは時々あるし もちろん漫画家は食べていかなくちゃならないでしょ? 僕のアイデアは全く簡単で コートジボアールの両サイドの漫画家を 一箇所に集めて それぞれの新聞から3日間離れてもらい 一つのプロジェクトを一緒にやって 国に影響を与えてる問題に 漫画で取り組んでもらうことだった。そう 漫画で 漫画の前向きなパワーを見せてくれって。良くも悪くも漫画は 効果的なコミュニケーション方法なんだ。それに今まで見たように 漫画は境界線を越えることができる。ユーモアも真面目な問題に取り組むのに いい方法だと思う。集まった漫画家たちの成果はすごかった。お互いに同意はしなかったけれど そんなことは関係なくて それに上品な漫画を描いてくれって頼んだわけじゃなかったし。初日は怒鳴りあっていたけれど 13年間のコートジボアールの 政治危機を振り返った 一冊の本を作り出した。

 

6 レバノンやケニアでも漫画の共同作品を作った

だから共同で何かを作る発想はあったんだ。僕はこのようなプロジェクトを レバノンでは2009年に 今年は1月にケニアでやってきてるんだ。レバノンでは本じゃなかったんだけど アイデアは同じで 分裂した国家で 全部の党派から漫画家を呼んで 何か一緒にしてもらう。レバノンでは 新聞の編集者たちにも参加してもらって すべての党派を含む8人の漫画家の作品を 1ページにまとめて印刷してもらって 政治や日常生活での宗教のように レバノンに影響を及ぼす問題について訴えてもらった。効果ありだった。ベイルートのほとんどの新聞が3日間に渡って これらの漫画を一斉に全部発表したんだ。反政府系の新聞 親政府系 キリスト教系 イスラム教系ももちろん 英語版、ありとあらゆる新聞。だからこれは素晴らしいプロジェクトだった。それからケニアで行なったのは 民族問題について取り組むことだったんだけど これはアフリカのあちこちで壊滅的な問題なんだ。そこで僕らはビデオクリップを作った Youtube/kenyatunesで見られます。

 

7 みな悪いことをしないという選択肢がある

言論の自由を説くのは ここでは簡単だけど 抑圧や分裂で 見てもらったのと同じで 漫画家として何ができるか? 漫画家も仕事でやっているわけだ。でも僕はどんな場所のどんな状況でも 漫画家には少なくとも 憎しみを煽る漫画を 描かないという選択があると思う。だからそれが僕の伝えようとするメッセージなんだ。僕らはみな悪いことをしないという選択が 最終的にはあると思う。そして僕らは そんな批評や責任のある声を サポートする必要がある。アフリカであれ レバノンであれ 地元の新聞上でも Appleストアでも どのようなコンテンツが提供されるかに対して 現在最大の影響力を持つのはテクノロジー企業です。何が人々に不快で 何が刺激的か勝手に決めています。つまりこれは漫画家に自由があるかでなく みなさんの自由の問題ということです。漫画家やジャーナリストや 活動家が黙ることは 世界中の独裁者の思うがままに なってしまうということなのです。ありがとう(拍手)

 

最後に

世界が狭くなった理由はテクノロジーのせい。テクノロジーは僕らを解放した。漫画は武器として使える。漫画でするジャーナリズム。漫画は境界線を越えることができる。憎しみを煽る漫画は描かない。僕らはみな最終的には悪いことをしないという選択肢がある

和訳してくださった Sawa Horibe 氏、レビューしてくださった Masayo Maeda 氏に感謝する(2010年7月)。

風刺漫画で日本近代史がわかる本


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