前回は、発議要件の緩和と所属会派の機関承認慣行の改善が必要 議員提出法案についてまとめた。ここでは、委員会での逐条審査、両院協議会改革が重要 国会で法律ができるまでについて解説する。
法律案が国会に提出されると
政府提出法案も議員立法も、プロセスはほぼ同じである。また、国会提出された法律案の審議は、先議の議院、つまり法律案が提出された議院で先に行う。また、「予算案」「予算関連法案」「それ以外の法律案」のうち、予算案には衆議院先議のルールがある。国会審議・採決のプロセスは以下の7つである。
- 議院運営委員会(先議)
- 本会議趣旨説明
- 委員会
- 公聴会
- 本会議
- 可決・修正(後議に送付)
- 可決
国会審議に入るまで
法律案が国会に提出されると、各会派(政党)の議席配分によって選出された委員で構成する1.議院運営委員会(議連)に諮っている。議院運営委員会とは、衆参それぞれに設置されている常任委員会の1つで、日程や議題、発言者と時間、採決方法など本会議の運営や、委員会などの設置といった議院運営についての事項のほか、議長諮問事項などについて協議している。議連を実際に取り仕切るのは、委員長と理事からなる理事会である。
議連で重要法案と判断されれば、2.本会議で主任の国務大臣が法律案の提案趣旨説明を行った後、各会派による質疑が行われ、其の後3.所管委員会へ付託される。ここで、国会対策委員会(国対)とは各党の一組織であり、国会外の非公式協議を取り仕切っている司令塔である。いわば、表の議連に対して裏の国対といえる。
委員会とは
委員会制とは、法案を個別・具体的に審議・審査するために国会審議から議案を付託されている組織で、委員会での審議・審査を経て、本会議で審議のうえ議決するという制度である(国会法第56条第2項)。衆参両院それぞれに17の常任委員会と、案件に応じて設置される特別委員会がある。常任委員会は、各省に対応して設置される常設の委員会で、委員数は衆議院予算委員会が50人と最も多く、その他の委員会は10-45人となっている。審議の頻度や期間については、付託議案や議院運営によって大きく異なる。
法律案の審査について、アメリカ連邦議会は委員会中心主義をとるのに対し、イギリス議会は本会議中心主義をとっている。ただし、本会議中心主義だからといって委員会審査がないわけではない。アメリカ連邦議会は、本会議で提出法案が朗読された後、即座に委員会に付託される。一方、イギリス議会は、委員会に付託されるのは本会議での討議を踏まえ法律案の骨子の採決を行ってからである。
なお、野党の国会戦術として、日程闘争のほか議事妨害などの対抗手段をとって、時間切れによる廃案を目指すものがある。具体的には、つるし(所管委員会への付託の阻止)、審議拒否、委員長の不信任動議、内閣不信任決議案等の提出が挙げられる。
委員会での審議
委員会での審議は、各会派の議席配分によって選出された委員長はじめ理事らで構成する理事会と、非公式協議の場である理事懇談会があって、各会派の国会対策委員会が采配している。法律案が委員会に付託されると、与野党はまず、付託された委員会の理事懇談会を開催する。そのうえで、委員会開催前に開かれる理事会で、議題などの確認が行われる。
委員会初日は趣旨説明のみで散会となる。2回目以降の委員会審議では、各会派委員が所定の時間内に大臣・副大臣・大臣政務官を相手に質疑を行う。また、国会審議を円滑に進めるために、質疑予定者は委員会2日前までに質問内容を開示することが国会の慣行となっている。政府側は質疑予定委員のもとを訪れて「質問取り」をしたり、様々なルートから質疑内容の詳細を把握しようと情報収集に務める。議院立法の場合は、法案提出者が答弁者を務める。
審議から採決へ
審議から採決へ至る時間的な制限は総質疑時間が基準で、一定期間の討論などの条件を満たせば、審議・審査を打ち止めにできる。与野党の駆け引きと断続的に行われる協議のもと、法律案の採決への道筋がついたら、学識経験者や関係当事者などを参考人として委員会に招集し、意見聴取・質疑を行う4.公聴会を開く。そして、委員会最終日は、締めくくりの総括質疑を行ったうえで委員長が終局を宣言し、討論・採決に入る。
本会議での審議と採決
委員会で採決されると5.本会議での審議となる。本会議では、付託された委員会の委員長から審査経過について報告がされ、各会派による賛否の討論演説が行われる。その後、議長から委員会採決の結果報告がなされ、採決に入る。その結果、法律案が過半数で可決されると、議長からもう1つの議院に6.法律案が送付される。送付を受けた議院でも、同じ審議・審査プロセスを経て両院で過半数により可決すれば、提出された法律案は法律(憲法第59条第1項)となる。なお、両院の採決結果が異なった場合などは、両院協議会での協議、衆議院での3分の2以上の再可決というルートもある。
「ねじれ国会」での合意形成
両院の会派勢力が異なるという「ねじれ国会」での合意形成が難しい理由は、政権交代がほとんどなかったからではないか。数のチカラを背に、ほぼ修正なしに議案を押し通すことができたため、主張が対立する与野党が話し合いによって妥協点を探り、解決していくという発想が必要なかったのだ。
開かれた合意形成に向けて
開かれた合意形成をするためには、国会外で非公開のもと与野党が調整するのではなく、委員会審議で議論するとともに、委員会で修正作業を進め、最終的に議決するのがいいだろう。そのために、委員会審議において逐条審査を実施したり、両院協議会を成案を取りまとめる機関として位置づけていけばよい。両院協議会の委員構成を超党派で協議し、成案を取りまとめるための構成へと変更することが重要である。議員立法で政治を「見える化」することで、前例踏襲的な官僚と違った視点やアイデアが採用されるだろう。
最後に
国会審議・採決のプロセスは、議院運営委員会(先議)、本会議趣旨説明、委員会、公聴会、本会議、可決・修正(後議に送付)、可決の7つ。政権交代の経験がほとんどなかったため、与野党協議による合意形成が難しい。開かれた合意形成のためには、委員会審議における逐条審査や、両院協議会の委員構成の超党派化が重要。議員立法で政治の「見える化」を確保せよ。
次回は、参政権、請求権、陳情、直接請求・住民投票 ニッポンの変え方についてまとめる。
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