conscience-of-television

ローレン・ザラツニック テレビの良心

「テレビは私たちの真の姿を予想もしないような形で映しています」ローレンは語りかける。ここでは、50万ビューを超える Lauren Zalaznick のTED講演を訳し、テレビの良心について理解する。

要約

テレビ会社のエクゼクティブ、ローレン・ザラツニックがテレビの人気番組について深く考察します。50年にもわたる視聴率とその評価について大胆な分析を行った結果、テレビは私たちの真の姿を、予想もしないような形で映していると論じます

After wholly revamping the Bravo Network, media trendsetter Lauren Zalaznick is inventing fresh ways for NBC Universal to reach coveted new audiences across multiple media.

 

1 テレビは私たちの価値観全体を発信している

ここで数々の すばらしいスピーチや アイデアが披露された後に 話すのは本当につらいんです。今日話そうとしているのは テレビの話なのです。ほとんどの人がテレビを見ますね。みんなテレビが好きです。好きなところがあるはずです。アメリカでは 本当のところ皆大好きです。平均的なアメリカ人は 1日におよそ5時間もテレビを見ます。いいですか? そのテレビで生計を立てている私にとっては とても良いことなのです。しかしテレビを良く思わない人もたくさんいて 非難する人もいます。テレビは ばかばかしい ろくでもないと言う人さえいます。子どものころに 私の母はテレビを 「馬鹿の箱」と呼んでいました。

しかし今日は テレビの善し悪しを論じようとは思いません。私は テレビには 良心があると信じていることを お話したいのです。なぜこう思うかというと 私はテレビが アメリカの倫理や政治 社会や情緒面で求められているものを 直接に反映していると信じているからです ― つまりテレビは 私たちの価値観全体を 発信しているのです。人間に固有のさまざまな価値観が 積み重なったものが 私たちの良心を構成します。

 

2 私たちは発展し進化することで動物的欲求を抑えてきた

今 テレビの善悪の話はしていません。人気番組の話をしています。ニールセン社のトップ10の番組を50年分 見ていきます。50年間分の ニールセン社の視聴率調査は よく言われるように 社会的 集団的な無意識を ― 反映するだけではありません。ではそのトップ10はどのように 私たちの社会的良心を 反映しているのでしょうか。テレビはどうやって進化をしてきたのか。そして社会に関して何を語るのでしょうか。

まず 進化について 基礎的な生態学から話しましょう。人間を含む動物には 4つの基本的な欲求がありましたね。食欲、性欲、権力欲 そして貪欲です。思い出してほしいことは 私たちは発展し 進化することで これらの動物的欲求を 抑えてきたということです。人間は泣いたり 笑ったりできます。恐れや同情も感じます。ここが他の動物とは 違っているところです。他にもあります。人間は楽しむことが大好きです。テレビを見るのが大好きです。これは人間と動物が明らかに 異なるところです。動物は遊ぶのが大好きかもしれない。でも見る事は好きではありません。

 

3 人間の良心とテレビ番組の関係

そういうわけで 私は 人間の良心とテレビ番組の 間にある 人間ならではの関係から 何が説明できるか見い出したいと 強く願っていました。どうしてテレビはこのように進化してきたのでしょう。私はこのことを 天使と悪魔が両肩に 乗っている漫画のように考えています。テレビは文字通りの 良心として機能しながら 同時に誘惑したり 見返りを与えたりしているのでしょうか。

これらの問いに答えるために 研究をしました。50年前にあたる 1959年から60年にかけての番組まで遡りました。ニールセン社のトップ20を研究しました。20本ずつ50年間で 1000本もの番組です。3000人以上の人 ― ほぼ3600人と話しました。18歳から70歳まで どういう気持ちを感じたか尋ねました。この番組を見てどう感じたか 一つ一つの番組について尋ねました。道徳的なあいまいさを感じましたか? 怒りましたか?笑いましたか? それはあなたにとってどういう意味でしょう。TEDのオーディエンスはグローバルですが 調査はアメリカで行いました。でも 見ておわかりのように ここで求められるような感情はユニバーサルです。また事実として アメリカでの人気番組の80%以上は 世界各国で視聴されています。だから世界中のみなさんに 関わる結果になっていると思います。

 

4 1960年から2010年まで50年もの研究結果

最初のスライドをお見せする前に 謝辞を述べたいと思います。二人の方からヒントをいただきました。良心というアイデアをいただき 良心は毎日の生活に影響すると教えてくれた 伝説的な指導者のジャック・スターンと データの見せ方のお手本として TED コミュニティーのスーパースター ハンス・ロスリングです。お会いになった方もいらっしゃるでしょう。

では始めます。ご覧下さい。1960年から2010年まで 50年もの研究結果です。まずはこの二つから始めましょう ― インスピレーションと道徳的な曖昧さの状態です。ここでは インスピレーションとは 気持ちが高まり 世界をよりポジティブに感じさせた番組と定義します。道徳的なあいまいさとは 何が正しくて何が間違っていたのか 違いがわからなかった番組を指します。1960年からスタートして インスピレーションは一定です。だから私たちはテレビを見るんです。道徳的な曖昧さが上昇し始めます。60年代の終わりから 道徳的な曖昧さが上昇しています。インスピレーションはだんだん下降します。なぜ? キューバ危機、JFKが射殺 公民権運動 人種差別反対デモ、ベトナム戦争 キング牧師も ケネディーも射殺され ウォーター・ゲート事件もありました。何がおこるか見て下さい。70年にはインスピレーションが急落し 道徳的なあいまいさが急上昇です 二つが入れ替わり テレビ映えするロナルド・レーガンが 大統領になると 回復しようとしますが でも できないんです。エイズ、イラン・コントラ事件 チェレンジャー号の爆発、チェルノブイリ 道徳的なあいまいさは、テレビの主要なミームになります。1990年からその後20年間のことです。

 

5 「信じられない ベトナム戦争」

こちらを見て下さい。このグラフはとても似た傾向を示しています。こんどは 赤丸でほっとする快適さ 社会的な主張だとか 図々しさを 青と緑で示します。テレビ番組では 『ボナンザ』、『don’t forget』、『ガンスモーク』 『アンディ・グリフィス』など 家庭向きの番組はほっとさせます。こういうのが増えました。心地よい番組ばかりです。図々しさが上昇しはじめ 社会的な主張も急上昇です。1969年になると、何が起きるでしょう? 快適さ、図々しさ、社会的主張がここにあり これらが社会で戦っただけでなく テレビでも競いました。大人気だった二つの番組 『ガンスモーク』と『マイペース二等兵』が 1969年に第2位と3位でした。第1位はなんでしょう 社会的にみて図々しいヒッピーの番組 『ローワンとマーティンのコメディ』です。みんな一緒に住んでいたでしょう? この番組への反応は劇的でした。

1966年の緑のスパイクを見て下さい。この先導的な番組への反応です。業界で大ヒットと言うときには どういう意味なんでしょうか。1966年のテレビシーズンで 『スマザーズ・ブラザーズ』が突如登場します。この番組は視聴者に こう言わせた最初の番組なんです 「信じられない ベトナム戦争、大統領について テレビで好きなことを言えるんだ」 これが私たちにとって大ヒットしたという意味です。

 

6 デジタル時代になっても破壊的な発明は出ていない

では、先ほどのチャートのように何があったか見ましょう。1970年に ダムが決壊しました。ダムの決壊です。快適さはもはやテレビを見る理由ではなくなりました。社会的な主張と図々しい内容が 70年代を通して上昇しました。ではこれを見て下さい。70年代は誰でしょう?ノーマン・レアです 『オール・イン・ザ・ファミリー』、『サンフォード・アンド・サン』 そして圧倒的なのは 70年代通してのトップ10に入っている 『MAS*H』です。研究した50年間の テレビ番組で 図々しい番組として トップ10にランクインするうちの7本は ベトナム戦争中に放映されたものです。トップ10 のうち5つはニクソン時代に放映されました。20年間のうち1世代だけでした。これは発見でした。すごい テレビでこんなことができるの テレビでこんな風に感じるなんて 私たちを変えることができるのか。この 本当に鋭い聴衆の皆さんに お伝えしておきたいことがあります。デジタル時代になっても破壊的な発明は出ていません。アーチー・バンカーが私たちと一緒に 肘掛椅子から押しのけられたのは 40年も前です。

 

7 ファンタジーと想像力が上昇するのはいつも失業の上昇と対応する

簡単なグラフです。また別の特性を示します。ファンタジーや想像力を こんなふうに定義しました 「日常を忘れさせてくれるもの」や 「すっきりした気持ちになるもの」 赤い点で表示してるのは失業者数で 労働省の統計を用いています。見て下さい ファンタジーと想像力が上昇するのはいつも 失業の上昇と対応します。私たちは人がお金を節約したり 失業したりしている番組を見たいでしょうか。見たくないですよね 70年代には 『バイオニック・ウーマン』という先駆的な番組があり 1973年に一気にトップ10入りしました 『シックスミリオンダラーマン』や 『チャーリーズエンジェルズ』も後に続きます。1980年にもう一つヒットがありました ― もう一つは支配と権力についての番組です。どんな番組があったでしょう? グラマラスでリッチな番組 『ダラス』や『ファンタジーアイランド』です。国民的な心理状態を信じられないくらい反映しています。失業というゆるぎない事実を受けた 心理状態です。

 

8 テレビに求められたのは判断だった

これは私の大好きなチャートです。最近20年間を表す図だからです。テレビ業界にいてもいなくても 絶対に見聞きしているでしょうが スリーカメラのシットコムタイプの番組は衰退し リアリティー・テレビが伸びてきました。業界用語でいうと バツテンに注目です。90年代はユーモアが大きく栄えました 『フレンズ』『フレイザー』『チアーズ』 そして『サインフェルド』 社会が良くて 失業率も低かった。でも見て下さい。バツマークが現れます。2001年 2001年の9月のテレビシーズンでは ユーモアは判断力に決定的に負けてしまうんです。そうならないわけがありません。2000年に大統領選があり 最高裁で大統領を決めました。ドットコムバブルがはじけました。9・11がありました。炭素菌が日常の用語になりました。これがやがてどうなったか見て下さい。2000年以降 インターネットが立ち上がり リアリティTVが主流になります。テレビに求められるのは何でしょうか? 私だったら 反撃とか ノスタルジーと考えたかもしれません。崩壊しかけた世界での心地よいもの ところが 求められたのは判断でした。テレビの登場人物を投票で追い出したり ペイリンの娘を番組でずっとダンスさせたり 次のアメリカン・アイドルを選んだりクビにしたり 全部すごいことですね。

 

9 私たちの良心と共にテレビの肩に乗っている

これらのテレビ番組は劇的に変わりました。では純粋なエンターテイメントは この50年どうだったのでしょう。最初に話したように 基本的な欲求は変わりません。私たちは動物であり 母親が必要です。明確で有力な母親像は どの10年代にもありました。1950年代には ほのぼのしたドラマ『ビーバーにまかせて』のジューン・クリーバー 笑いが止まらない ルシル・ボールは 社会的な意識の高まった60年代の象徴 モード・フィンドレイは 枠にとらわれない1970年代を代表する女優です。中絶、離婚 閉経までをテレビで扱いました。80年代には 最初のクーガーが登場します。アレクシス・キャリントンが演じました。マーフィー・ブラウンの演ずる副社長は 片親というアイデアも示しました。この時代のお母さんは ブリー・バンデキャンプです。悪魔なのか天使なのかわかりませんが 私たちの良心と共に テレビの肩に乗っかっています。とにかくこの映像は本当に大好きです。

皆さん TEDWoman の女性も男性も そして TEDWomanのグローバルな聴衆の皆さん テレビの良心について お話する機会をいただき感謝します。また テレビ時代の日々にずっと テレビの映像にアイデアを盛り込んできた すばらしいクリエーターたちに 感謝します。彼らがテレビに命を吹き込んだだけでなく 視聴者もまた 集団として社会的な良心を通じて テレビに命を吹き込み 生きながらえさせ 力を与えたり奪ったりしました。ありがとうございます(拍手)

 

最後に

テレビは私たちの価値観全体を発信している。私たちは発展し進化することで動物的欲求を抑えてきた。デジタル時代になっても破壊的な発明は出ていない。ファンタジーと想像力が上昇するのはいつも失業の上昇と対応する。テレビに求められたのは判断。私たちの良心はテレビの肩に乗っている

和訳してくださったMariko Imada 氏、レビューしてくださった Kanon Matsuyama 氏に感謝する(2010年12月)。

「視聴率」50の物語: テレビの歴史を創った50人が語る50の物語 (実用単行本)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>