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援助関係と相談者・援助者を取り巻く環境への理解 家族支援と連携

前回は、価値観の多様化と時代の変化への対応 現代家族が抱える問題と特徴についてまとめた。ここでは、援助関係と相談者・援助者を取り巻く環境への理解 家族支援と連携について解説する。

6 家族支援と文脈

児童相談所やスクール・カウンセリングなど、相談者自身に金銭的な負担がかからない相談機関と、個人開業のような相談者に金銭的負担がかかる場所では、相談者に明らかな違いが見られる。ここでは、相談者のモチベーションや相談者と援助者の関係性など、家族支援の背景について検討する。

 

相談者のモチベーション(来談の動機づけ)

料金を払ってでも相談したいという相談者は、来談予約の段階から面接に対する動機づけが高い。一方で、無料の相談機関を訪れる相談者は動機づけが低いか、相談に対して拒否的な場合がある。前者は開業臨床などであり、後者は児童相談所などである。

 

相談者と援助者の関係性

家族療法の1つであるソリューション・フォーカスド・アプローチ(解決志向アプローチ)では、相談者と援助者の関係性を以下の3つに分けている。

  1. カスタマー・タイプ:動機づけが高く、問題解決に積極的
  2. コンプレナント・タイプ:表面的には面接を希望しながら愚痴だけに終始
  3. ビジター・タイプ:動機づけが低く、拒否的

 

援助関係と助言

援助関係にはこのような違いが見られるため、相談者に応じて助言の仕方を変える必要がある。事例5(ことばの遅れを主訴とした相談にことばがけを増やすように勧める)の場合でも、カスタマー・タイプではそのまま受け入れることが多いが、コンプレナント・タイプやビジター・タイプでは受け入れられないことも多いのだ。

 

援助関係の調整と変化

援助関係は常に変わらないというものではない。むしろ、援助者側の力量によって、コンプレナント・タイプやビジター・タイプであった関係をカスタマー・タイプに変化させるのが重要である。

以下に示す3事例は、ともにクライエント本人の相談への動機づけが低く、親や養護教諭に半ば強引につれてこられたケースである。しかし、援助者とのかかわりを通じて関係性が変化したことがわかる。事例6(保護観察処分となった少年に催眠を行うことで関係性を築いた)事例7(不登校状態の少女に養護教諭への催眠の話を通して関係性を築いた)事例8(登校時に腹痛を訴える少年にその兄への催眠を通して関係性を築いた)。援助者側が「催眠」という非日常的な体験を提供させられることのメリットについても理解できる。

 

援助関係の変化について

事例6では、ビジター・タイプだった少年に対して催眠を提案することで、関係性をつくっている。また、本人と両親でニーズが異なっていたため、両者に気配りをしつつ調整していった。催眠の提案の前にも〈ちりばめ〉(O’Hanlon ら,1992)やイエス・セット、そして「暗黙の催眠観」を活用している様子がうかがえる。

事例7も、ビジター・タイプだった少女に対して、彼女を無理やり保健室に連れてきた養護教諭の催眠への興味を利用して関係性をつくっている。養護教諭のニーズに合わせて〈逸話〉(O’Hanlon ら,1992)を語りつつ、「暗黙の催眠観」も利用している。

事例8では、ビジター・タイプだった少年に対して、家族療法の立場から小さな変化を起こすことで関係性をつくっていった。初回の母親の来談時での選択肢の提示、2回目のクライエント以外の家族全員の援助関係の見立てによって、兄をカスタマー・タイプに変えることで変化を起こしていった。同時に、援助者が「暗黙の催眠観」を無視しない姿勢をとり続けることによって、兄と少年の関係を通じて援助していった。

 

社会変化と自己決定能力

情報処理能力の基礎

ここでいう情報処理能力とは、情報ツールを使って集めた情報に対し、日常的にどのように対応していくかという情報リテラシーのことである。これは情報を取捨選択することであり、選択肢を捨てていく作業でもある。さらに重要なのは、選んだ結果に対して責任を持つことであり、それが大人になるということである。

 

自己決定能力の育成

自己決定能力を育成するためには、選んだ結果のプラス面とマイナス面の両方を考慮する訓練を積む必要がある。例えば、ある高校生カップルが親の居ぬ間に行為を行う(A)か、我慢する(B)かという場面がある。Aのプラス面は「気持ちいい、大人になった、友達に自慢できる」などで、マイナス面は「うまくできなかったらどうしよう、妊娠させたらどうしよう、バレたらどうしよう」などである。Bのプラス面とマイナス面は、そのままAのマイナス面とプラス面に対応している。多くのケースでは、プラス面同士を比較するだけで、マイナス面の責任が取れるかという考え方をしないのである。

自己決定能力における性の問題は、思春期の子どもの発達課題であり、非常に重要なテーマである。性教育は決して「生殖器教育」ではなく、自己決定能力とかかわる「人間性教育」でなければならない。そして、性行為の問題だけでなく、進路選択や職業選択、さらには配偶者の選択などにもかかわってくる。

事例9(高校を中退したが、今後の方針を自分では決められないと話す少女)では、自己決定できない子どもの状況をよく表している。不登校の子どもたちへの援助でも、学校に行く道と学校に行かない道の選択肢を用意した上で、両方のプラス面・マイナス面を考えることが重要である。その上で、マイナス面に対してどのような対応ができるかを具体的に考えさせるのである。

なお、『中学 技術・家庭 家庭分野』(教育図書)p.28-29においても、雨が降りそうなときに傘を持っていくかどうか、音楽教室と学習塾のどちらに通うか、といった例で解説している。

 

コラム6:自己決定能力

自己決定能力とは、自分で決める能力のことである。自己決定が苦手な子どもには、2つのタイプがある。1つは経験不足で、もう1つは自分が選んだ結果に自信が持てないタイプである。前者に対しては小さなことでも決めさせていく経験を積ませればいいし、後者に対しては選べたことを認めていけばよい。こうしたことを繰り返すことで、自己効力感(外部環境に対して自分が働きかけられるという感覚)を高めることができる。

 

7 環境の変化と子どもへの対応

ここでは、環境の変化が子どもにどのような影響を与えるかと、その対応について検討していく。

 

環境の変化とストレス

環境の変化には、自分の意思によって生じるものと、自分ではコントロールできないものがある。前者の例は、旅行や髪型を変えるといったもので、後者の例は、転勤や転校、家族内の誰かが病気になったり亡くなったりするというものである。大人の場合には、後者のような変化でもこれまでの人生経験などを通じて何とか対応できるが、子どもの場合には何らかの不適応行動が生じることがある。

 

環境の変化と子どもへの影響

環境の変化による子どもへの影響とは、生活環境が変わった結果、子どもが何らかのサインを示すことである。環境の変化によって子どもが示すサインを、小学校低学年と高学年以降に分けて以下に示す。

小学校低学年(7〜9歳)に現れるサイン

  • 発熱、腹痛、頭痛、頻尿、チック症状などの身体症状
  • 食欲不振、嘔吐などの食行動の異常
  • 場面緘黙、夜尿、爪かみなどの習癖
  • 不登校、一人遊び、友達の悪口を言うなどの対人関係の変化
  • 落ち着かない、妙に明るくふるまう、多弁、無口になる、赤ちゃん返りなどの行動変化

小学校高学年(10歳〜)に現れるサイン

  • 円形脱毛症、過敏性腸症候群などの身体的(心身症)症状
  • 抑うつ感、無気力、キレるなどの精神症状
  • 学力低下などの学習上の問題
  • 抜毛、リストカット、拒食・過食症状などの習癖
  • 非行、不登校などの行動変化

このようなサインが見られたときには、一応身体的な病気の有無を医師に診察してもらい、特に医学的な病理が見られない場合は、環境の変化に対する何らかのサインだと考えてみることが大切である。例えば、事例10(妹の誕生でいい兄を演じるという形でストレスをためて腹痛を訴えた少年)のように、親や周囲にとっては喜ばしい妹の誕生でも、子どもにとってはストレスになってしまうことがわかる。

 

環境の変化への大人の対応

こうした環境の変化への大人の対応としては、以下の3つのことが重要である。第一に、子どもの日常的な行動を親や周囲の大人がよく観察しておくことである。普段の子どもの様子を把握しておけば、子どもの変化にも気づきやすくなるからである。

第二に、生活環境が変化したとしても、親や周囲の大人はそれ以前と同じように子どもと接することである。そうすることで、子どもはそうした環境を「安全基地」としてとらえ、新しい環境にもうまく慣れていけるのである。例えば、スクール・カウンセリングなどでは年度末でケースが終結することが多いが、本来は新しい生活環境に子どもが慣れたところで終結に持っていったほうがよい。

第三に、子どもが親などにことばによって悩みを伝えてきたときに、感情は受け止めるが行動化することは止めることである。例えば、「○○なんて死んじゃえばいい!」と子どもが言ったときに、「死んじゃえばいい!って思うほど嫌な思いをしたんだね」と気持ちを受け止めることは重要だが、「よし、じゃあ○○を懲らしめに行こう」と親が行動に移してしまうことは慎まなければならない。

 

コラム7:内部環境の変化

内部環境の変化とは、子どもの成長に伴って生じる身体や精神状況の変化のことである。思春期は精通や初潮など、子どもの身体から大人の身体に変わる時期である。同時に、異性を意識するだけでなく、同性と自分を比較して劣等感を強めたりすることもある。こうした思春期の子どもの心理状況をよく理解しておくことが、適切な対応を行うためにも大切となる。

 

8 子どもからのサインを受け取る

ここでは、子どもがストレスにさらされたときに示すサインについて、詳しく検討していく。

 

「ことば」にならないサイン

「ことば」にならないサインとは、子どもの示す身体症状や行動などである。例えば、不登校の場合も、その典型的な経過では腹痛や頭痛といった身体の不調から始まることが多く、その後に物や家族に対する暴力などの攻撃的な行動を示すといわれている。大人であれば「ことば」で悩みを表現することもできるが、言語表現能力が未成熟な子どもは、そうした悩みをうまく伝えることができない場合が多いのである。

 

身体症状としてのサイン

身体症状としてのサインには、心身症がある。心身症とは、身体に器質的あるいは機能的な病変や障害が実際に生じており、その原因として心理社会的な要因(ストレス)が強く関与しているものをいう。本人が身体症状を訴えていても、器質的あるいは機能的病変が明らかでないものは「心気症」と呼び、心身症とは区別されている。

心身症の例には、事例11(ケガをきっかけに失立失歩となり、赤ちゃん返りをするようになった少女)のような「失立失歩」がある。これは、身体医学的な原因がないにもかかわらず、立つことも歩くこともできなくなってしまうことである。失立失歩という症状のほかにも、子どもがストレスを受けたときに示しやすい代表的な心身症には以下の5種類がある。

  1. 消化器系の症状(反復性腹痛、過敏性腸症候群など下痢や腹痛)
  2. 呼吸器系の症状(気管支喘息、過換気症候群)
  3. 皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、円形脱毛症)
  4. 泌尿器形の症状(頻尿、夜尿)
  5. その他(頭痛、自律神経失調症、チック症)

 

行動としてのサイン

行動としてのサインには、赤ちゃん返り、落ち着きのなさ、不眠、抜毛、拒食・過食などの食行動異常、爪かみ、吃音などがある。また、不登校(学校に行かない・行けない)や問題行動(非行、家出、暴力)なども、子どもが示すサインといえる。こうしたサインで子どもが伝えたいことは何かを見極めていく努力を、大人は続けていくことが大切である。

 

被虐待児の示す行動的サイン

学校で教師が気づきやすい被虐待児の示す行動的サインには、以下の11個が挙げられる。

  1. 衣服の汚れや同じ服を着続けている
  2. 着替えるときに異常な不安を見せる
  3. 食べ物への執着が強く、むさぼり食べる
  4. 友達に食べ物をねだる
  5. 保護者の前ではおどおどしている
  6. 保護者に変に密着したり、こびたりする
  7. 家に帰りたがらない、家出を繰り返す
  8. 音などに過敏に反応しおびえる
  9. 大人が手を動かすと、防御の姿勢をとる
  10. 学力が急に低下する
  11. 他児や他者に対して攻撃的になる

事例12(親に「かわいい」という表現を使う虐待が疑われる少女)は、作文や絵、そして何日も同じ服を着ていることなどから虐待を見極めていった。

 

子どものサインを見逃さないために

子どものサインを見逃さないためには、子どもの身体症状や問題行動を指導や治療の対象としてみるだけでなく、自分に向けられたメッセージであると捉えることが大切である。特に、児童虐待の場合は早期発見と早期対応が求められる。子どもにかかわる人々は、こうした子どものサインを見逃さないことが重要である。

 

コラム8:児童虐待

児童虐待とは、保護者がその監護する児童(18歳未満)に対し、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト(育児放棄)、心理的虐待を行うことである(価値観の多様化と時代の変化への対応 現代家族が抱える問題と特徴参照)。児童虐待の背景には、親の精神的未熟さや経済的困窮、家族と社会との関係性の薄さなどが指摘されている。

しかし、最も大切なのは、子どもにかかわるすべての人が、子どもの命と精神の安全と安心を守り、子どもの最善の利益を保証するために児童虐待の早期発見と早期介入の必要性を意識し行動していくことである。親の見栄や権利主張に振り回されず、まずは子どもの命と心を殺してしまわないようにすることが社会の務めだからである。

 

9 家族支援における専門機関との連携

ここでは、児童相談所について概説した後、専門機関や専門職の連携のあり方について考える。

児童相談所とは

児童相談所とは、昭和22(1947)年公布の児童福祉法により、原則として生まれたばかりの乳児から18歳になるまでの「児童」にかかわる、すべての福祉的問題に対応する行政機関である。法律によって、都道府県および政令指定都市にその設置が義務付けられている。

児童相談所は、その児童福祉相談業務を遂行するために、以下の6つのような機能を備えている。

  1. 相談・調査:相談・調査、関係機関との連絡調整
  2. 判定・臨床:医学的、心理学的、社会学的な総合的査定と援助
  3. 措置:各種児童福祉施設や里親などへの児童の処遇の依頼、委託権限
  4. 児童虐待対応:児童虐待への対応
  5. 市町村支援:児童相談の第一窓口となった市町村の支援
  6. 一時保護:子どもを併設の一時保護所に入所させ、各種査定や援助を行う

これらの機能を十分に発揮できるように、児童相談所には専門の職員が配属されている。所長のもとに、児童福祉司、児童虐待専門官、児童心理司、医師、相談調査員、児童指導員、保育士、栄養士や調理員などである。また、児童相談所で受け付けた相談は、以下の5つに分類される。①養育相談、②保険相談、③心身障害相談、④非行相談、育成相談である。

児童相談所が措置する児童福祉施設には、以下の9つがある。また、児童相談所の措置によらずに利用できる児童福祉施設には、保育所、母子生活支援施設、児童家庭支援センターがある。

  1. 乳児院:様々な理由で家庭での養育を受けられない、誕生から1歳未満の乳児を入所させて養育する施設
  2. 児童養護施設:様々な理由で家庭での養育を受けられない、1歳以上から17歳まで(場合により20歳まで)の児童を入所させて、安定した生活環境の提供と養育を行う施設
  3. 児童自立支援施設:家庭での養育環境の問題から生活指導が必要な児童も入所させて指導を行う。かつての教護院
  4. 情緒障害児短期治療施設:軽度の情緒障害を有する児童を短期間入所させたり、家庭から通所させたりして治療を行う施設
  5. 知的障害児施設:知的に障害を有する児童を入所させて、保護的環境を提供しながら生活能力の育成を図る施設
  6. 知的障害児通園施設:知的に障害を有する児童を家庭から通園させて、自立生活に向けての生活技術や能力育成をする施設
  7. 盲ろうあ児施設:視聴覚に障害のある児童を入所させて能力を生活技術を育成する施設
  8. 肢体不自由児施設:上肢、下肢または体幹の機能の障害のある児童の治療と自活能力を育成する施設
  9. 重症心身障害児施設:重度の知的障害および重度の肢体不自由が重複している児童を入所させて、治療および日常生活を指導する施設

 

真の連携とは

真の連携とは、各機関や専門職の守備範囲を知り、ケース処遇に必要な連携すべき他の専門職種について判断し、協働できることである。ここでは連携について、専門職やコーディネート(協働)、そして施設職員の人間関係の視点から整理する。

 

専門職とは

専門職とは、専門的な資格が必要な仕事を生業としていることである。いわばプロ中のプロといえる。ただし、プロ野球選手がピッチャーとキャッチャーを同時に兼ねることができないように、1人の専門職がすべてを担うことは不可能である。そのため、それぞれの専門職の守備範囲について知り、その範囲を超えた課題や対応についてはしかるべき専門職に任せることができなければならない。

 

連携とコーディネート

連携とコーディネート(協働)を行うためには、ケースの福祉を向上させるために、ケース全体を把握し、それぞれの専門職の専門性の違いを見極めながら専門職間の意見や方法論の違いを調整していく必要がある。人と人、人と物、人と制度の関係性にも気を配ることが求められるため、今後はソーシャルワーカーの役割が増すと考えられる。

 

施設職員の人間関係

施設職員の人間関係では、個々人の性格の問題のみで捉えることなく、専門職としての責任と捉える必要がある事例13(身体障害者療護施設に入所している女性に対する処遇について他職種との意見の不一致)のように、各専門職がそれぞれの専門性に即して対応しているにもかかわらず、性格の問題として捉えて不信感を増してしまうことがあるのだ。例えば、「看護師の立場からは…」とか「介護福祉士の視点からは…」といった話し方をすることによって、専門性と性格の問題を分けて考えやすいだろう。

福祉の利用者に対してよりよい処遇を行うためには、福祉職員の精神的安定が何よりも求められる。そのためにも、他職種の専門性と個人の性格を常に分けて考えることが必要である。

 

家族支援の視点と方法

家族支援の視点と方法とは、クライエント本人だけでなく、クライエントを取り巻く社会システムへの援助のことである。具体的な家族支援の視点と方法として、システムの一次的変化・二次的変化、偽解決、例外、ソリューション・フォーカスド・アプローチ、リフレーミング技法などがある。

システムの一次的変化・二次的変化とは、(家族)システムに何らかの問題(不登校、介護など)が起きたときに元に戻ろうとすること(一次的変化)と、新たなシステムに変化しようとする動き(二次的変化)である。日常的には一次的変化によって家族システムは安定しているが、それで解決できない状態を偽解決という。そこで、システムの第三者である援助者が介入することで、二次的変化が起きるように援助することが必要になる。

例外とは、悪循環から抜け出しているときのことで、偽解決を繰り返しているように見えても例外があるという前提で援助することが重要である。この例外を膨らませていく方法に、ソリューション・フォーカスド・アプローチなどがある。さらに、MRIアプローチからのリフレーミング技法(意味づけの変化、一般化)なども活用できる。

 

コラム9:家庭訪問

家庭訪問による援助でも、他の援助と同じようにプラスとマイナスの影響がある。プラス面としては、話を聞くだけよりも的確に対象者の生活状況を把握することが可能になる。マイナス面としては、対象者のプライベート空間に他者が侵入されるとして防衛的・攻撃的になることがある。

例えば、虐待を疑われる家庭などへの家庭訪問の場合は、訪問しても会えなかったり、防衛的になることを覚悟しなければならない。一方で、援助を強く求めているケースでは、あらかじめ訪問する日時を伝えておくことが援助的(安心感を与える)になる。また、家庭訪問ではできるだけ2人で訪問することが、犯罪防止や無用な圧力を避ける上でもふさわしい。

 

最後に

6「家族支援と文脈」では、相談者自身に費用がかかる場合と費用がかからない場合といった、援助者や援助機関と相談者との間の文脈(状況)のズレによって生じる変化について検討している。7「環境の変化と子どもへの対応」では、環境の変化とストレス、子どもへの影響、そして大人の対応についてまとめている。8「子どもからのサインを受け取る」では、ストレスを受けた子どものサインを周囲の大人が気づき、適切な対応をしていくために必要な知識について整理している。9「家族支援における専門機関との連携」では、子どもの問題を通して家族問題に取り組む機関である児童相談所について概説し、専門機関や専門職の連携のあり方について提言している。事例6、7、8にちりばめられた戦略と意図は必読である

次回は、アスペルガー症候群への援助の実際と解決志向の関わり 発達障害と家族療法についてまとめる。

臨床家族心理学―現代社会とコミュニケーション


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