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ジョン・マエダ アート、テクノロジー、デザインから創造的リーダーが学べること

「アート、テクノロジー、デザインから創造的リーダーは何を学べるでしょうか?」マエダは語りかける。ここでは、85万ビューを超える John Maeda のTED講演を訳し、未来における創造的リーダーシップについて理解する。

要約

RISD (ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン) の学長であるジョン・マエダが、可笑しくも魅惑的な講演をお届けします。アート、デザイン、テクノロジーの領域での生涯に渡る作品群を紹介したあと、締めくくりとして未来における創造的リーダーシップの姿を示します。人間演ずるコンピュータまで登場する初期作品のデモは必見です。

John Maeda, the former president of the Rhode Island School of Design, is dedicated to linking design and technology. Through the software tools, web pages and books he creates, he spreads his philosophy of elegant simplicity.

 

1 保護者面談後の父の様子

この場でお話できて大変光栄です。80カ国以上の人が集まっています。そのような聴衆を前に話すのは 私には目新しい体験です。

どの国の学校でも保護者面談は やっているのではと思いますが ご存知ですか? 親としてではなく自分が子どもだった頃 親が学校に来て先生と話すのは 何か決まり悪いものでした。3年生の時に 父が来たことがありました。普段は仕事を離れることのない人で 労働者階級の移民の典型です。それが学校での息子の様子を見ようとやってきたわけです。先生は父に言いました 「ジョンは数学と美術がよくできますよ」と。父はしきりにうなずいていました。次の日 豆腐を買いにきたお得意さんに 父が話すのを耳にしました「うちのジョンはね 数学がよくできるんですよ」 (笑)

 

2 なぜ美術は言わなかったんだろう?

このことはずっと 私の中で引っかかっていました。なぜ美術は言わなかったんだろう? なぜ美術はだめなのか? 私の生涯に渡る疑問となりましたが 数学が出来るということでコンピュータを買ってもらえて それはそれで良かったのでした。これを覚えている人いますか? 私の最初のコンピュータです。Apple II を持っていた人? たくさんいますね。素晴らしい (拍手) ご存知のように Apple II は何もできませんでした (笑) 電源を入れるとタイプした字が緑色で表示され たいがいは間違ってると言われます。それが私達の知るコンピュータでした。そのようなコンピュータに親しんだ私は 父の夢だったMITに入りました。MITでコンピュータのあらゆる部分について学び その後 美術学校に移りました。コンピュータから逃れるために そしてコンピュータを思考のための – 精神的空間と見なすようになりました。

私はパフォーマンスアートから影響を受けて 20年前のことになりますが 人間が演ずるコンピュータを作りました 『人力コンピュータ実験』という名前です。電源やマウスドライバやメモリなんかがあって これはかつての日本の首都の京都でやったんですが 部屋を2つに仕切って このコンピュータをオンにすると 助手達が巨大な段ボール製のフロッピーを コンピュータに差し込みます。フロッピードライブ役の人がそれを身に付けます (笑) 彼女はフロッピーの最初のセクタを見つけると データを取り出してバスに渡します。バスはデータをせっせと – メモリや CPUやVRAMへと運びます。実際に動くコンピュータです。ちなみに これがバスです (笑) 見た目は速そうですこれは座標を示す – マウスドライバ (笑) 速く動いているように見えますが 実際にはすごく遅いコンピュータです。本物のコンピュータに比べてこれがいかに遅いか認識して コンピュータやテクノロジーへの興味を深めました。

 

3 テクノロジー、デザイン、アートそしてリーダーシップ

今日は4つのことをお話しします。はじめの3つはテクノロジー デザイン – アートに 私がどう興味を惹かれてきたか これらが どう重なり合うかということ。あと1つは – 4年前にRISDの学長になったので リーダーシップを取り上げます。この4つの領域を組み合わせようという実験の話をします。

 

4 テクノロジーは日々進化している

テクノロジーの話から始めましょう。テクノロジーは素晴らしいものです。Apple II が登場したての時本当に何もできませんでした。文字を表示するだけです。しばらくして使えるようになったのが画像です。コンピュータで色付きの華やかな画像が 使えるようになった時のことを覚えていますか? さらに何年かして CD並の音が出せるようになりました。すごいことです。コンピュータで音楽を聞けるんです。その後CD-ROMで映画を見られるようになり 感動しました。どんなに興奮したか覚えていますか? それからブラウザが現れました。ブラウザは素晴らしいものでしたが 原始的で ネットワークは遅く 最初は文字だけでした。それから画像― ネット上のCD音質の音楽― さらにネットで映画も見られるようになり感心したものです。それから携帯が現れます。文字 画像 音楽 ビデオそして今や iPhoneに iPad Androidがあって 文字 ビデオ 音楽 ・・・ 同じパターンですね? 私達はループの中に捕らわれているのかもしれません。この10年ほど 私は – コンピューティングの可能性について考えていて 人が物事を理解する時のデザインの役割テクノロジーで – デザインをどう理解できるかということに興味を抱いてきました。ここで簡単なデザイン教室をしましょう。

 

5 デザイナーは形式と内容の関係に注目する

デザイナーは形式と内容の関係に注目します。内容というのは例えば – 「FEAR」 (恐れ)という言葉 ある種の悪い感情を表す4文字の言葉です。ヘルベチカ・ライトにした FEAR です。あんまり不安は感じませんね。ヘルベチカ・ウルトラ・ライトにすると 「恐いかって? へっちゃらさ!」という感じになります (笑) 同じヘルベチカ・ウルトラ・ライトでも大きくすると こいつはキツいなという感じになります。大きさで形式も変わるのが分かります。内容が同じでも違ったように感じられるのです。書体を変えてみると 何だか可笑しくなります。海賊風のフォント― ジャック・スパロウ船長用です「ウォーッ 恐いぞー!」 本当に恐い感じはしません。むしろおかしな感じがします。あるいはこうするとナイトクラブみたいになります (笑) 「FEAR に行こうぜ」みたいな (笑) 「いかしてるだろ」と (笑)(拍手) 内容は同じなんです。離れていた文字をこう押し詰めると タイタニック号の甲板で身を寄た― 人々のようで文字が可哀想になり 同情を誘われます。書体をこんな風にすると すごく上品な感じがします。高級レストランの FEAR です 「僕には一生入れないだろうな」みたいな (笑) すごいバージョンの FEAR です。これが形式と内容です。

 

6 デザインとテクノロジーの関係

内容を1字変えると ずっと良い言葉になります「FREE」 (自由)です。FREE は素晴らしい言葉です。どんな風にもできます。太字の FREE はマンデラ氏の自由のよう。そうだ 私は自由になれる! 細字の FREE は自由に呼吸できる感じがします。とてもすがすがしい文字を離すと すごく軽やかに呼吸できる感じがします。それに青のグラデーションを付けてハトを描き加えたら ドン・ドレイパーのFREE になります (笑) 形式 内容 デザインというのはこんな風に働くんです。とても力があります魔法のよう TEDに出てきたマジシャンみたいです。それがデザインの力です

私はずっとデザインとテクノロジーの関係に興味を抱いてきました。最近では人に見せることのない 古い作品をご覧に入れましょう。私のしてきたことが分かるように 私は90年代に こういう作品をいろいろ作っていました。これは音に反応する四角です。なぜ作ったのかと聞かれますが 自分でもよく分かりません (笑) ただ四角が自分に反応したら面白いなと思っただけです。私の子どもが小さかった頃 よくこれで遊んでいました 「あーー」とか言って 「お父さん あー あー」みたいな感じで 電気屋に行っても同じようにやって 聞くんです。「お父さん このパソコン 音に反応しないよ」 その頃私は どうしてコンピュータは音に反応しないんだろうと考えていて それで実験として作ったわけです。

 

7 『タップ・タイプ・ライト』

私はこのインタラクティブ・グラフィックスの領域で 多くの時間を費やしていましたが その後やめました。MITの教え子達が私よりすごいものを – 作るようになったのでマウスを置いたんです。1996年に 最後の作品を作りました。白黒で まったく色はなく 整数の算術だけです 『タップ・タイプ・ライト』という題です。古き良きタイプライターに捧げたものです。弁護士の秘書をしていた母がいつも打っていました。10種類あります (タイプする音) (タイプする音) シフトを押すと・・・ 10種類あります。これは文字が回転します (タイプする音) 文字の輪です (タイプする音) 20年前のものなので ちょっとアレかもしれませんが – 私は『赤い風船』という フランス映画が好きで – いい映画ですよね? あれが好きで それをモチーフにしました(タイプする音)(タイプライターのベル音) ほのぼのとした感じがします (笑) 最後になりますがバランスです。タイプしているとストレスがたまりますが このキーボードで打つとバランスを取れます (笑) Gのキーを打つと元通り Gを打てば大丈夫 こんな感じです (拍手) どうも。

 

8 アートがわからないのは想定通り

20年前にやったものです。私はいつもアートの周辺にいましたがRISDの学長になって アートが中心になりました 。純粋なアートは素晴らしいものです よく「アートはよく分かりません」と言う人がいますよね。それはアートが効いているということです。アートは謎めいているものなので 「分からない」なら想定通りなんです (笑) それがアートです。アートは疑問を提起しますが その疑問には必ずしも答えはないんです。

RISDに エドナ・ローレンス自然研究所という – 素晴らしい施設があって8万点の標本があります。動物とか骨格とか鉱物とか植物とか ロードアイランドでは 動物が車にはねられると うちに電話が来て 誰か取りに行って 剥製にするんです。

なぜRISDにこんな施設があるのかというと 本物の動物とか実物を見ることで 存在を理解し把握する必要があるからです。RISDでは画像を元に描かせることはありません 「デジタル画像にはできないの? その方が便利でしょう?」と多くの人が言いますが 私はこう答えます「昔のやり方が良いこともあります。今とは随分違うこともあって昔のやり方の良い点を 見極める必要があるんです。たとえ新時代になろうとも」 仲の良いニューメディアアーティストに 長谷川踏太という人がいます。今は東京を拠点にしていますが ロンドンにいた頃は 奥さんとよく いっしょにゲームをしていました。アンティークのお店に行って 欲しいアンティークがあると 店主に その品の裏にあるストーリーを聞くんです。その話が気に入れば購入します。2人が店でカップを見つけて尋ねます 「これのこと聞かせてよ」 すると店主が答えます「古いもんだよ」 (笑) 「もう少し教えてくれない?」「うん すごく古い」(笑) そういうことを繰り返すうちに アンティークでは 古さに価値が置かれていると分かりました。自分はニューメディア・アートの創作に 生涯を捧げてきたと彼は振り返っています 「あなたの作品 いったい何なんです?」と聞かれる それがニューメディアです。でも彼が気付いたのは古い新しいの問題ではなく 答えはその間にあるということ 「古い」塵や「新しい」雲ではなく良いものかどうかが大切なのです。雲と塵を組み合わせることで何かが起きます。今日のあらゆる面白いアートや 面白いビジネスにそれを見ることが出来ます。新旧を どう組み合わせ良いものを作るかに面白さがあります。

 

9 クリエイティブな人たちは間違いから学ぼうとする

アートは問いかけですが リーダーシップでも問いかけは よくします。今や簡単には機能しなくなっています。もはや単純な権威主義の時代ではありません。権威主義の例ですが以前ロシアを旅行して サンクトペテルブルクの史跡に行ったとき こんな標識を見ました「芝生に入るべからず」と。英語で書いてあって 英語を話す人だけに言うのは不公平だと思いました。でも その後ロシア人向けの標識を見つけました。あらゆることを禁止する標識です 「遊泳禁止」「ハイキング禁止」「何でも禁止」 私のお気に入りは 「植物禁止」 なぜ史跡に植物を持ち込むんでしょう? わかりません それに「恋愛禁止」 (笑) それが権威主義です。構造的にはどうか? 階層構造です。今日の多くのシステムは階層構造をしていますが それは崩れつつあります。木構造のかわりにグラフ構造になっています。階層ならぬネットワークです。これは扱いにくいものです。

今日のリーダーはこれまでとは違った リーダーシップが求められていると思います。これは私が同僚のベッキー・ベルモントと 創造的リーダーシップについて考察したものです。リーダーシップについてアーティストから何を学べるか? 通常のリーダーは間違いを避けようとします。でもクリエイティブな人たちは間違いから学ぼうとします。従来のリーダーは常に正しくあろうとしますが 創造的なリーダーは正しいならもうけものと思っています。今日の複雑で曖昧な世界でこの考え方は大切であり アーティストやデザイナーから学べることはたくさんあると思います。

 

10 ありそうにないもの同士を結び付け、何かが起こるのを望む

最近ある企画でロンドンに行きました。4日間 砂場に座ってみないかと 友人が誘うのでいいねと応じたのです。4日間に渡って毎日6時間 砂場に座り ロンドンの人たちと6分ずつ会うんです。大変でした。彼らの話に耳を傾け 悩みを聞き砂に描きながら 理解しようとするんですが やっていることの意味をなかなか掴めませんでした。この1対1の対話を4日間ずっとやっていて 学長の仕事に似ているなと感じました 「これは自分の仕事と同じだ。会議に次ぐ会議」 この体験の終わりに なぜ自分がこれをやったのか理解しました。リーダーとして私達がやっているのは ありそうにないもの同士を結び付け 何かが起こるのを望むということです。あの部屋で私はロンドン中の 沢山の人の繋がりを見つけました。人を繋ぎ合わせるリーダーシップは 今日における大きな課題です。階層にせよネットワークにせよ 素晴らしいデザイン上の挑戦です。

 

11 領域をまたがるつながりを見出すこと

私がやっていることの1つは テクノロジーとリーダーシップを アートとデザインの視点で結び付けるシステムの研究です。まだどこでも見せたことのないものをご覧に入れましょう。これは私がPythonで書いたスケッチアプリです。Photoshopはご存知ですね? これはPowershopという名で。どういうものかというと 組織を考えてください。CEOというのは 頂点ではなく組織の中心です。組織には様々な部門があり どこかの領域を見たいと思うかもしれません。緑の領域は順調ですが 赤い所はうまくいっていません。リーダーとして いかに見 結び合わせ 実現するか?この「流通」というのを 開いてみると下位部門が出てきます。このECO部門に所属する人を見てみましょう。これが ECO部門の人たちです。階層を横断して恊働したいというとき CEOにとって難しいのは 領域をまたがる 繋がりを見出すことです。研究開発部門を見ると この2つの関心領域に共通する人がいます。このような人材を取り込むことが重要でしょう。その人達とどんなやり取りをしているのか ヘッドアップ表示が欲しいと思うかもしれません。何度一緒にコーヒーを飲んだか? 電話やメールの頻度は? メールの雰囲気はどうか?どんな結果が出ているか? このようなシステムを使うことでリーダーは ネットワーク内の活動をよりうまく調整できるかもしれません。あるいはLuminosoのような技術を使おうと考えるかもしれません。テキスト分析をしているケンブリッジの会社です。自分のコミュニケーションにはどんな傾向があるか?。

 

12 アートとデザインを通して新しいものを見つけよう

このようなシステムは重要だと私は考えています。リーダーを巡るソーシャルメディアを狙ったシステムです。このような視点はより多くのリーダーが アートやデザインの領域に足を踏み入れるようになって初めて広がるでしょう。アートとデザインを通して新たな考え方や新たなシステムが 見つかるからです。私はこれを考え始めたばかりですが 皆さんにご紹介できてうれしく思っています。最後までご静聴いただき感謝します。ありがとうございました (拍手)

 

最後に

なぜ美術は言わなかったんだろう?生涯にわたる疑問。テクノロジーは日々進化し、デザイナーは形式と内容の関係に注目する。アートがわからないのは想定通り。クリエイティブな人たちは間違いから学ぼうとする。ありそうにないもの同士を結び付け、何かが起こるのを望む。領域をまたがるつながりを見出すこと。リーダーはアートとデザインを通して新しいものを見つけよう

和訳してくださったYasushi Aoki 氏、レビューしてくださった Kazunori Akashi 氏に感謝する(2012年6月)。

リーダーシップをデザインする―未来に向けて舵をとる方法


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