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キース・ムーリカー 死んだカモが私の人生をどう変えたか

「1羽のカモがガラス張りの建物に衝突して死んだ後…」キースは語りかける。ここでは、100万ビューを超える Kees Moeliker のTED講演を訳し、死んだカモに起こった出来事が彼に与えた影響について理解する。

要約

ある日の午後、キース・ムーリカーが見つけた研究対象は、ほとんどの鳥類学者が見向きもしないようなものでした。1羽のカモが彼のオフィスがあるガラス張りの建物に衝突して死に、そして… その後に見たものが彼の人生を変えることになります [注意: 刺激の強い映像や動物の性行動の描写が含まれます]

Kees Moeliker writes and speaks about natural history, especially birds and remarkable animal behavior, as well as improbable research and science-communication-with-a-laugh.

 

1 私の仕事は動物の死骸を収集すること

私は ロッテルダム自然史博物館で 学芸員をしています。私の仕事はコレクションの管理と 標本を収集すること ― つまり動物の死骸を収集することです。1995年に 博物館の隣に新しい棟ができました。ガラス張りだったので 本当に仕事が はかどりました。鳥がよくビルにぶつかって死んだからです。ご存知かもしれませんが 鳥はガラスが何かわかっていません。ガラスが見えないので衝突して死んでしまいます。私は死骸を拾いに行って 標本にしてコレクションに加えるだけでいいんです (笑) その頃 私は ガラスにぶつかる音だけで 鳥の種類がわかるようになっていました。

 

2 生きたカモが死骸の上に乗り交尾を始めた

1995年6月5日のことです。窓に衝突する大きな音が聞こえました。それが私の人生を変え一羽のカモの人生に終止符を打ちました。外をのぞくとこんな光景が見えました。窓に激突したカモの死骸です。うつぶせで死んでいます。近くにいるカモは生きています。よく見てください。どちらもオスです。そして次の瞬間 ― 生きたカモが死骸の上に乗り 交尾を始めたのです。

私は生物学者で鳥類学者ですから 「何かおかしいぞ」と思いました 一羽は死に もう一羽は生きているから屍姦です。よく見ましたが どちらもオスです。だからホモセクシャルの屍姦です。そこで ―(笑)カメラとノートと椅子を用意して 行動を観察しはじめました。75分も経つと ― (笑) 私は満足しましたしお腹も空いて 家に帰りたくなりました。そこで外に出てカモを回収し 冷凍庫に入れる前に その死骸が本当にオスなのか確かめました。これは とても珍しいカモの男性器の写真です。確かにオスでした。珍しいというのは1万種いる鳥類の中で 男性器があるのは300種に過ぎないからです。

 

3 『マガモにおける同性愛屍姦の初めての事例』

『マガモにおける同性愛屍姦の初めての事例』珍しいものを観察したという認識はありましたが 論文の発表を決意するまでに6年もかかりました (笑) 誕生パーティーやコーヒー・ブレイクには うってつけの話題でも ― 学会での発表となると話は別です。理論的な枠組みも ありませんでした。6年経って友人や同僚に急かされる形で 『マガモにおける同性愛屍姦の初めての事例』を 公表することになりました。状況を整理しましょう “a” は私のオフィス ― “b” はカモがガラスに当たった場所 ― “c” は私が観察していた場所です これは先ほどの写真です。

皆さん ご存知かもしれませんが 科学論文を書いても内容が特殊だと ― 読者は せいぜい6~7人です (笑) でも いい知らせがありました。マーク・エイブラハムズという人が電話をしてきたのです 「あなたのカモの論文が ― イグノーベル賞を受賞しました」 イグノーベル賞とは ― (笑)(拍手) イグノーベル賞とは まず人を笑わせそして考えさせる研究に ― 贈られる賞でより多くの人が 科学に関心をもつことを目指しています。それはいいことだと思って賞をもらうことにしたのです (笑)

 

4 人間に対するダチョウの求愛行動

ところで マークの電話はストックホルムからではなく マサチューセッツ州のケンブリッジからでした。私はボストンを経てケンブリッジへ向かい ハーバード大学で開かれた ― 素晴らしい授賞式に出席しました とても楽しい体験でした。本物のノーベル賞受賞者が表彰してくれるのです。それでも ほんの序の口です。他に9人の受賞者がいました。彼は一緒に受賞したチャールズ・パクストンです。彼の[2002年]の生物学賞 受賞論文は 『イギリスでの飼育条件下における ― 人間に対するダチョウの求愛行動』 でした (笑) 今 ここにもイグノーベル賞の 受賞者がいるはずです。ダン・アリエリーはどこですか? 彼に拍手を (拍手) ダンは 安価な偽薬よりも 高価な偽薬の方が効果が高いことを立証して 医学賞を受賞しました (笑)

 

5 動物の倒錯した行動なら何でも知っている

これが私のいわば「1分間の栄光」 ― 受賞スピーチの様子です。これが そのカモです。アメリカ西海岸では初公開になります。今 まわします (笑) どうぞ 皆にまわしてください。これは標本資料です。鳥インフルエンザにかかる心配はありませんよ。受賞後 私の人生は一変しました。まず カモにまつわる ― いろいろな物が送られてきて 充実したコレクションができたことです(笑) もっと良いことに驚くべき動物の行動に関する ― 記録が集まってきたのです。だから動物の倒錯した行動なら何でも知っています。本当です (笑)

これはムースです。交尾しようとしているのはバイソンの銅像です。2008年 モンタナ州での記録です。これは金魚と交尾しようとするカエル。2011年 オランダです。オーストラリアのオオヒキガエルです。車に轢かれていて 屍姦の事例です。体位も目を引きます。正常位は動物界では非常に珍しいのです。ロッテルダムで観察されたハトです。2004年 香港のツバメです。ウィスコンシン州のシチメンチョウです。イーサン・アレン少年院の構内で観察されました。交尾は一日がかりだったので 受刑者も楽しむことができました。

 

6 窓に映った自分とけんかしている鳥

さて この行動は何を意味するのでしょう? なぜ自然界でこんなことが起こるのか? これが私の疑問です。そこで事例を検討して ある結論に至りました。屍姦が起こる重要な要素とは 突然かつ劇的な死と 交尾に適した姿勢である と。少なくとも このスライドを見るまでは そう考えていました。カモの死骸が写っています。死後3日が経過している上に 仰向けになっています。私の屍姦の理論も水の泡です。

もう一つ建物のガラスが鳥の命を左右する例を紹介します。ロッテルダムにいるクロウタドリのマッド・マックスです。この鳥は2004~08年に渡り来る日も来る日も ― 窓にぶつかり続けました。ビデオをご覧ください(音楽)(コン) (コン) (コン)実は この鳥は 窓に映った自分とけんかしているのです。縄張りが侵されたと思っています。ここに来る度に侵入者が見えるので 終わりはありません。私は この鳥を2年間観察しましたが はじめは脳の障害を疑っていました。でもそうではありません。ビデオから取った画像を見てください。ガラスにぶつかる瞬間に 足を前に出し それから当たっています。

 

7 世界的に鳥の主な死因の1つが衝突死

最後に 皆さんを「死んだカモの日」にご招待します。毎年6月5日 ― 午後6時 5分前に 私達はロッテルダム自然史博物館に集い ― 例のカモを博物館から持ち出して 鳥が窓と衝突するの防ぐための 新しい方法について検討するのです。皆さん ご存じかわかりませんが 世界的に 鳥の主な死因の1つが衝突死なのです。米国だけでも 10億羽がガラスの建物に衝突して死んでいます。式典が終わると皆で中華料理店に行き アヒルのフルコースを食べます。来年は皆さんと オランダ ロッテルダムでお会いできることを 楽しみにしています。ありがとうございます(拍手)あぁ すみません。私のカモを返していただけますか?(笑)(拍手)ありがとう。

最後に

私の仕事は動物の死骸を収集すること。生きたカモが死骸の上に乗り交尾を始めた。ホモセクシャルの屍姦。他にも人間に対するダチョウの求愛行動、金魚と交尾しようとするカエルなどがある。『マガモにおける同性愛屍姦の初めての事例』屍姦の理論は水の泡

和訳してくださった Kazunori Akashi 氏、レビューしてくださった Shohei Tanaka 氏に感謝する(2013年2月)。

マガモ No3601


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