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年率表示のトリックや為替手数料の理解度で客を選別する 高金利預金

「楽してカネを増やしたいというスケベ心を刺激するという意味で、金融機関は風俗業界と同じだ」著者は語りかける。ここでは、吉本佳生『金融広告を読め』を12回にわたって要約し、金融機関による金融商品広告の読み方を学ぶ。第1回は、高金利預金。

1 オーストラリアドル定期預金

年率表示のトリック

年率表示のトリックとは、満期までの期間が1年よりもずっと短い預金について、金利を年率に換算して表示する方法である。例えば、「年10%」という金利の表示は「1年間預けた場合に10%の金利がつく」という意味だが、「3ヶ月もの」などのように満期が短い預金にも10%の金利がつくように表示するのである。実際は、10%の4分の1の2.5%、そこからさらに20%税金で引かれるため、2%しか金利がつかないのだ。

なお、著書では合計63個の金融商品広告を見ていくが、そのほぼすべてに共通することは「細かな文字で書かれていることほど重要」だということだ。

 

バカ高い為替手数料

さらに注意すべき項目が「為替手数料」である。「外貨預金への入出金の際には、外貨現金・トラベラーズチェックはお取り扱いしておりません」と「円から外貨に交換する際には、所定の手数料がかかります」という部分から、預け入れのときと引き出しのときの両方に両替手数料を払う必要があるのだ。例えば、三菱東京UFJ銀行の窓口では、1オーストラリアドルあたり2円がかかる(2013年9月現在)。ただし、最近ではネットでの取引によって為替手数料も安くなってきている(例えば新生銀行は50銭など)。

また、為替手数料を元本に対する比率に換算すると、現在は約90円/A$(オーストラリアドル)なため、4.4%(=4/90)の手数料となる。つまり、この商品は元本に対して「約2.4%の損」なのである。

 

2 円定期預金、ユーロ定期預金

悪い方向への進化

こうした広告の応用として、年率の金利を大きく設定して、満期を短くするというものがある。また、「30万円以下」のように預入の上限を設定することで、銀行の損が大きくならないように工夫している。さらに、年率の金利の近くに「税引き後14.4%」のような大きい数字を入れることで、満期の短さに気づかせないようにする工夫もされている。ついで買いの期待できるスーパーなどの広告と違い、金融広告は目立つものほど自分たちが儲かる商品であることが多いのだ。

 

客を選別する機能

ミクロ経済学には「価格差別」という考え方がある。価格差別とは、客を複数のタイプに分けて(差別して)、それぞれに異なった価格を設定することで「高く買ってくれそうな客には高く売り、安くないと買ってくれないよう客には安く売る」という企業側の戦略をさす。例えば、スーパーの広告をしっかり見る人には安く売り、見ない人には高く売るというものである。

金融広告にもそうした機能があり、細かな文字までしっかり読むタイプの人は銀行に来ないが、大きな文字だけを見て年率表示のトリックなどに引っかかるカモだけが、銀行にやってくるというように、価格差別を行っているのである。それによって売り込む商品を変えて、効率よく利益を上げているのである。

 

3 米ドル定期預金

さらに悪質な広告

さらに悪質な広告として、金利が「年率」かどうかを載せないもの、文字のレイアウトを変えて錯覚を起こしやすくしたもの、「上乗せ」や「最大で○○」といった言葉によって射幸心を煽るものがある。

 

超低金利だから有効な表示

超低金利時代だからこそ有効な表示形式として、「通常金利の○○倍」といったものがある。例えば、通常の金利が年0.01%だった場合、「6ヶ月もの」で年0.5%の金利になるだけである。また、定期預金の新社会人向けキャンペーンなどで「通常金利プラス1%」や「通常金利の10倍」と表記することで、前者は年率表示、後者は倍率表示に引っかかる客を選別することができるのである。

 

最後に

高金利預金には客を選別する機能がある。年率表示や倍率表示のトリック、重要なことを小さく書く、為替手数料、上乗せや最大で○○といった表記によって選別する。それ自体は悪いことではなく、勉強していない人が騙されるだけである。金融広告の意味に敏感になろう

次回は、円・外貨預金と投資信託による販売手数料の水増し セット商品についてまとめる。

金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか (光文社新書)


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