differential-countermeasure

生活保護、歳入庁、負の所得税、ストック課税 大阪維新の格差対策

前回は、財源、地方交付税、消費税、新たな利権 大阪維新の経済政策についてまとめた。ここでは、生活保護、歳入庁、負の所得税、ストック課税 大阪維新の格差対策について解説する。

11 生活保護の不正受給の原因は国の無策

働くよりナマポ(生活保護)を受けたほうがいい?

ネットでは生活保護のことを「ナマポ(生保)」と呼び、ナマポを受けるためのマニュアルがたくさん紹介されている。ある程度の年齢層になると生活保護に対する抵抗を感じる人も多いが、若い世代の中には不正受給に罪悪感がない人もおり、今後の社会保障においても問題が大きい。

 

不正受給を減らせば、何十億円もの無駄がカットできる

大阪市には年収30万円以下の人が多く存在する。生活保護受給者の言い値ではあるが、大阪市ほどの大都市に貧しい人が多いのは不思議である。なお、2010年度の不正受給は2万5355件、128億7426万円で、生活保護費(3.3兆円)の0.4%である。

 

保険料の徴収制度そのものに不備がある

保険料の徴収は国税徴収法という法律に規定されており、税金と同じ扱いである。収入が低ければそれほど税金を課せられず、同時に保険料も減免されるため、市の税務課と一緒にチェックをすればいいのである。しかし、担当者は社会保険料と税金を別のものと考えており、制度を正しく理解していないようである。

大阪市は不正受給問題解消に向け、給付を現物支給とすることや、医療費に一定の自己負担を求めること、受給資格を期間限定とし、受給を続ける場合は再審査する制度を盛り込むなど、いくつか方針を打ち出している。

 

先進国水準で見れば、日本の生活保護受給者は少ない

一方で、日本の生活保護は必要なところに届いていないという批判もある。厚労省推計では本来なら生活保護が必要なのは364万世帯であるのに対し、実際に生活保護を受けているのは37%の135万世帯にとどまっている。

国際的に見ると日本の生活保護給付総額は少なく、保護されている人も驚くほど少ない。日本の公的扶助総額の対GDP比は0.7%程度で、OECD平均の2.4%を下回る。総人口に占める公的扶助を受けている人の比率も1.4%にすぎず、OECD平均の7.4%を下回るのである。ただし、国民1人あたりのGDPに占める生活保護者1人あたりの金額比率は、OECD平均が32%なのに対し、現時点の日本は50%と比較的高い。

 

インフレ率を戻せば生活保護者は減る

生活保護者増加率とインフレ率にも明確な逆相関関係があり、1990年からの相関係数はマイナス0.9である。インフレ率が健全な水準である2%程度になれば、生活保護者は10%(20万人程度)減少するのである。ここから、生活保護費のカットよりも、デフレからの脱却がより重要なのがわかる。

 

12 歳入庁はまず大阪で実現。不正撲滅は地方から

歳入庁で脱税、不正、不公平を是正する

歳入庁とは、国税庁と日本年金機構を一体化し、税と保険料の徴収インフラを整えるシステムをさす。現在は税については国税庁、年金については年金機構(旧社会保険庁)と、徴収システムは一体になっていない。国税庁と年金機構が把握している法人数には80万件もの差があり、年金保険料の徴収漏れは年10兆円程度と推計できる。税についても、納税者番号制度を導入して歳入庁をつくれば所得を正しく把握でき、脱税がなくなって5兆円程度の増収となることが推計される。

国民にとっても歳入庁ができれば1カ所で納税と保険料納付が済み、行政の効率化にもなる。少なくとも地方税についての大阪市の税務課と社会保険料徴収部門を一緒にした地方版の歳入庁はできる。

 

歳入庁は世界中にあるのに財務省は執拗に反対する

歳入庁による徴収一元化は世界の潮流である。海外でも、アメリカ、カナダ、アイルランド、イギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイスランド、ノルウェーが実施しており、東欧でも傾向は同じである。しかし、財務省は激しく抵抗しており、それは今も変わっていない。

 

13 維新の会の「負の所得税」が解決への道

「ベーシック・インカム」を導入すれば生活保護はいらない

ベーシック・インカムとは、生活保護などの社会保障給付を統合し、年齢や仕事の有無を問わず、すべての国民に所得に応じて一定の額を支給する仕組みである。そして、所得が一定額を上回る場合には一定率の所得税を課税する。

財源は、社会保障給付費100兆円のうち、医療費30兆円を除く70兆円で、概算では全国民に月額5万円程度を給付できる。ただし、これは年金50兆円を含んでいるため、それを除くと月額1万5000円程度である。この施策を実現するためには、歳入庁で人々の所得や資産を十分に把握するのが条件である。

 

同様の制度はすでに世界の流れになっている

ベーシック・インカムのルーツは、45年ほど前に経済学者のミルトン・フリードマンが提唱した「負の所得税」である。負の所得税とは、所得税と公的扶助制度を組み合わせて、課税前所得が課税最低限度額を下回る者に、その差額の一定割合だけ給付を行うという考え方である。

このアイデアは、既に「給付付き税額控除」という税額控除という方法で算出した非納税者に対する給付を所得税制に組み込んだ制度として、多くの先進国で導入されている(年金制度、負の所得税、消費税の年金財源化 社会保障制度の問題点参照)。

 

14 大阪では金持ち優遇の税制が変わる

現在の課税方式は「金持ち優遇」になっている

世代間格差が生じる要因は、現役世代の収入としてのフローが増えないという面と、ストックへの課税方式が金持ち優遇になっている面がある。フローは所得が高くなるに従って税率が上がる累進課税なのに対し、金融資産などのストックは分離課税という形が取られている。また、預金利息や株主配当などへの課税は一律20%などと決まっており、多く資産を持つ人もそうでない人も税率が同じという意味で、金持ち優遇といえる。

土地・建物は固定資産課税台帳があるため、誰が資産を保有しているかがわかるが、金融資産は把握できていない。金融資産を把握するには、歳入庁をつくり、国民背番号制を導入して銀行口座、証券口座などをすべて番号で管理すればいい。金融資産を把握できれば、ストックを総合課税に変えることも可能となり、金持ち優遇の不公平が是正できるのである。

なお、相続税はストック課税だが、フローへの課税と相続前のストック課税がしっかりできれば、二重課税の防止のために、将来的には相続税をなくすという発想も出てくる。

 

橋下市長の考え方は旧大蔵省の伝統的方針に近い

橋下市長の考えは「歳入庁で正確に把握した上でストック課税を適正に行い、逆にフロー課税を緩くして経済を活性化させる」というものである。経済が活性化すれば消費と貯蓄が増え、消費税の税収が増える。そうなれば法人税も下げることができ、企業活動の活性化にもつながる。まず経済ありきの考え方なのである。

 

世代間格差・自治体格差よりも、まずは個人の格差

様々な格差が問題視されているが、究極的には個人の格差を解決すればいい。最終的な個人の可処分所得ベースで考えることが重要であり、個人の格差が許容範囲であれば何の問題もない。

ただし、世代間格差も若い人々のやる気をなくさせる可能性があるため、公的年金なども時間をかけてでも積立化への転換を図るほうがよいだろう。

 

最後に

生活保護はインフレ率2%の達成で10%(20万人)減らすことができる。歳入庁で税と保険料の徴収インフラを整えれば、脱税、不正、不公平を是正することができる。負の所得税は「給付付き税額控除」として導入することが世界の潮流になっている。ストック課税を公平に行うためには、歳入庁をつくり、国民背番号制を導入して銀行口座、証券口座などをすべて番号で管理したうえで総合課税を行えばよい。ストック課税は適正に行い、フロー課税は緩めて経済活性化させよう

次回は、国政進出、復興、教育、公務員改革 維新八策の真相についてまとめる。

大阪維新の真相


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>