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不動産の値段はどう決まる?年間収益/利回りが世界標準の収益還元法

前回は、持ち家と賃貸はどっちが得?不動産とは何かについてまとめた。ここでは、不動産の値段はどう決まる?年間収益/利回りが世界標準の収益還元法について解説する。

5 収益還元法

「一物四価」の謎

かつての日本では「一物四価」という1つの不動産に4つの価格がつけられていた。高い順に実勢価格(実際の売買価格)、公示価格(公示地価)、路線価、固定資産税評価額とされていた

公示価格は、全国の不動産鑑定士が毎年1月1日時点の不動産価格を評価し、国土交通省の付属機関である土地鑑定委員会が審査して決める価格である。毎年3月頃に公表され、その他の地価の基準に使われる。目的は、国や地方自治体が用地を取得する価格や、国土利用計画法に基づく土地取引の判断基準にすることである。

路線価は、国税庁が全国の市街地の不動産価格を路線(道路)ごとに定めたもので、毎年1月1日時点の価格となる。目的は、相続税・贈与税・地価税などの徴収である。現在では公示価格の8割を基準に決められる。

固定資産税評価額は、全国の市町村が3年に1回1月1日時点の不動産価格を調査するもので、総務省の管轄となる。目的は、固定資産税などの地方税の徴収である。現在は公示価格の7割が基準となる。

また、公的な地価評価として、各都道府県が毎年7月1日時点の地価を調査する「基準地価」というものもある。

 

公示価格はいい加減

公示価格の決め方はいい加減であることが、バブル崩壊によって明らかになった。公示価格は売買事例をもとに決めるため、売買事例は過去の事例を参考に決めるしかなかったからである。また、路線価もその土地が生み出す利益に対するものでなく、単に場所によって決められていたため、不公平が生じていた。

 

収益還元法はグローバル・スタンダード

これまで日本では、不動産業者が勝手に相場を作り、周辺の土地の売買価格で比準価格を決めて不動産価格を決めてきた(取引事例比較法)。こうした相場の正当性が公開されることなく、無知な消費者相手に絶対に損しない価格で売買していた。しかし、バブル崩壊後の地価の急激な下落で不良債権問題が発生し、こうしたカラクリが明らかになってきた。

そうして出てきた方法に、収益価格を基準とする収益還元法がある。この方法は世界標準であり、この方法を使えば持ち家と賃貸を同一の条件で比較することができる

 

土地にはなぜ価値があるのか

土地に価値がある理由は、そこからお金が生まれるからである。土地を他人に貸せば家賃や地代が入るし、農作物を育ててお金を得ることもできる。家を建てて自分で住めば、家賃分が収益となる。このように、土地の価値はそこから生まれる収益で決まるのである。

 

現在価値と将来価値

お金には現在価値(Present Value)と将来価値(Future Value)がある。前者は今目の前にある1万円のことで、後者は例えば1年後に手に入るはずの1万円のことである。資本主義の世界では、現在価値は常に将来価値よりも価値が高い

 

現在価値を計算する

現在価値と将来価値を求める式は以下の通り。将来価値は現在価値に利回り分を足したものなので、現在価値は将来価値から利回り分を足したものを割れば求められる。

  • 現在価値=将来価値/(1+利回り)
  • 将来価値=現在価値×(1+利回り)

お金は複利で増えていくため、n年後の価値として整理すると以下の式となる。

  • n年後の価値=現在価値×(1+利回り)n乗
  • 現在価値=n年後の価値/(1+利回り)n乗

 

還元価値と還元利回り

還元価格(収益還元価格)は収益還元法から導き出された価格のことである。また、還元価格を導く際に設定した利回りを「還元利回り」ともいう。つまり、投資の利回りが高ければ証券の金額は安くなり、利回りが低ければ証券の金額は高くなるのだ。

 

6 家の値段の求め方

不動産は無期限の証券

不動産は天変地異などで土地が消滅するといったことがない限り、基本的には需要があれば永久に利益を生み出すと考えられる。その意味で不動産は無期限の証券といえる。また、土地と建物を区別して還元利回りを設定するのが理想だが、インフレ率や金利といった経済環境の変化の大きさを考えると、まずは一律の利回りを設定することをおすすめする。

 

土地の利用法で利回りが変わる

土地はその利用法で利回りが変わる。一般に最も利回りが低いのは、駐車場などとして地代をとって土地だけを賃貸するケースである。次に、アパートを建てて人に貸せば、より高い利回りになる。さらに、ハイテクを装備した高級オフィスビルを建設すれば、より高い賃料を取ることができるだろう。後者になるほどハイリスク・ハイリターンになる。

 

市場金利でも利回りは変わる

また、市場金利でも利回りは変わる。不動産より債券や株式などの投資商品のほうが利回りが高くなれば、不動産価格が下がり利回りは高くなる。逆に不動産の投資利回りが他の投資商品よりも高ければ、地価が上昇し利回りが低くなる。

 

不動産の還元価値=収益/利回り

不動産の還元価値を求めるには、1年間の収益を利回りで割ればいい。これは「現在価値=n年後の価値/(1+利回り)n乗」という式をもとに導き出せる。

 

マンションの還元価格

例えば、利回りを5%として、家賃10万円の賃貸マンションに住んでいるとすると、そのマンションは1年間で120万円の収益を生むため、「還元価格」は2400万円となる。

 

最後に

不動産の還元価値=収益/利回り。不動産の還元価値を求めるには、1年間の収益を利回りで割ればいい。いい加減な公示価格にまどわされるな

次回は、世にも不思議な不動産市場 借地・借家権と定期借家権についてまとめる。

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