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アラスタ・パーヴィン 人民による人民のための建築

「報酬を支払える人のために建築士が建築するのではなく、ごく普通の市民が自ら設計し建築できるとしたらどうでしょう?」アラスタは語りかける。ここでは、100万ビューを超える Alastair Parvin のTED講演を訳し、21世紀の大いなる計画について理解する。

要約

建築士 アラスタ・パーヴィンが単純ながら刺激的なアイデアを提示します。報酬を支払える人のために建築士が建築するのではなく、ごく普通の市民が自ら設計し建築できるとしたらどうでしょう?ウィキハウスの核心的なこの考えは、オープンソース化された建築組立キットを使って、どんな人でもどこでも家が建てられるというものです。

Alastair Parvin believes in making architecture accessible to 100 percent of the population.

 

1 建築士に対する固定観念は間違っている

「建築士」や「デザイナー」という言葉は 職業的なプロの意味で使われ つまりはお金を受けて働く人で このプロの人たちこそが私たちが直面する本当に大きい 仕組上のデザインの課題解決を 助けてくれる人たちだと思っています。例えば 気候変動や都市化や社会格差のような課題に対してです。建築士に対するこんな固定観念を持ってしまっていますが これは間違っていると思います

 

2 デザイン思考が重要になっている一方、建築が事実上利用されなくなっている

私は2008年 建築科で数年間勉強した後 卒業を控え まさに社会に出て仕事を得ようとしていた頃でした。そんなときコレが起こりました。市場から仕事が消えてしまいました。これを見て何個か思いつくことがありました。1つめは 就職課の助言は聞かないこと。2つめは 建築への興味深い矛盾です。矛盾というのは 社会としてかつてないほどデザイン思考が重要になっている一方 建築が 事実上 利用されなくなっていることです。デザインの奥底を語りながらも 語られていないけれど語る必要のある 経済的側面が建築の裏にはあります。

 

3 世界中の凄腕で一流のデザイナーや建築士たちは、世界人口の1%のためにしか実際に働くことができない

自分自身の年収を考えるところから始めるのがよいでしょうか。建築家のキャリアを 歩み始めた私は だいたい24,000ポンド位の年収が見込めました。36,000から37,000ドルくらいですね。全世界人口の観点から考えると この年収でも 最初から私は上位1.95%のお金持ちということになります。自然と疑問が湧いてきます。一体誰の為に働くことになるのか? 心地の悪くなる事実があります。実は 今日 建築と呼ぶほぼすべてのものは 実は 世界で上位1%のお金持ちのために デザインを考える仕事ということになります。これまでもずっとそうでした。このことを忘れてしまった理由は 建築が最大の力を発揮して 社会を変えたのは歴史の中のこんな時だったからです。様々な理由がありますが1%の人が 残りの99%に代わって築こうとしていた時です。築く理由が19世紀の慈善事業や 20世紀の社会主義 社会保障の一環の住宅提供そしてごく直近では 膨らんだ不動産バブルなど様々な理由がありました。これらの過熱のすべてはそれぞれの様々な特徴的な道を経て 自滅してしまいました そしてまた同じような状況に戻っています。世界中の凄腕で一流のデザイナーや建築士たちは 世界人口の1%のためにしか実際に働くことができません

 

4 次世代の建築士が直面している課題は、今1%の商売相手をどうやって100%に変えていくか

民主主義的に悪いというだけではなく まぁそうでもあるでしょうが この現状は実は事業戦略として賢くありません。本当ですよ。次世代の建築士が直面している課題は 今1%の商売相手を どうやって100%に変えていくかです。どうすれば解決できるのか少し直観では分かりにくい– 3つの考えを提示したいです。

 

5 建築とは建物を建てるもの?

1つ目として 建築とは建物を建てるものだという考えに 疑問を投げかける必要があります。実のところ 建物で何かを解決しようとするのは どんな種類の問題への対策でも最も高くつく解決策です。根本的に 問題解決や新しい前提を作り出す時 デザインはもっともっと興味を引くべきです。こんな話があります。建築事務所がある学校を担当しました。校舎はビクトリア朝風の古い建物でした。学校側は建築士たちにこう話します 「いいですか 廊下がもうひどい悪夢。とにかく狭くて休憩のたびに混雑します。いじめもあってそれもこれも手に負えません。なので 校舎を全面的に再設計してほしい。数百万ポンドほどかかるのは分かってる。でも 仕方がないので決めました」

 

6 再設計はやめとこう。代わりにベルを取り外そう

担当チームで考えて学校担当者は帰って行き チームが結論付けたのは 「再設計は やめとこう。代わりに ベルを取り外そう。1つのベルだけで全校向けに鳴らすのではなく もっと小さなベルを数個設置して 時間と場所をずらして鳴らそう。そうすれば廊下の混雑を分散できる」 同じ問題を解決しますが 数百万ポンドをかけるかわりに 数百ポンドをかけるのです。これは 自ら仕事を失おうとしているかのようですが 違います 実は自らをより価値あるものにします。実は 建築士はすごく 本当に こういう機知に富む戦略的な思考がうまいんです。問題は 他の多くのデザイン職と同じで その職にとって一般化した製品を 提供するという固定観念に縛られていることです。これに縛られる必要はもうなくなったと思います。

 

7 マス建築は大きくすべき?

2つ目の疑問視するに値する考えは20世紀的な考え マス建築は大きくすべき ということです。大きい建造物多額の資金です。実に 産業化時代の考え方に 私たちは囚われてしまっています。その考えは 都市を作れるのは巨大な組織や会社が 私たちの代わりに築くということ 地域の土地を全て買い入れて それぞれの均一で単一な開発計画にします。それに「形態は資金に従う」ので 最終的には大量生産という考えに基づいた– 均一で単一な地域ばかりが出来上がります。しかも多くの人には高くて手が届きません。しかし こうだったらどうでしょうか。もし都市が 多くを持つ少数によって作られるのではなく 多くを持たない大勢によっても作られるとしたら。もし大勢だったら 理想の棲家について各々が全く異なる価値観を持ち寄ります。ここから非常に興味深い疑問が生まれます。どう都市を計画しどう開発資金を賄うのだろうか? 建築士業務をどう売り込むだろうか? 民主主義の社会で市民が建築計画を 進められるようにしたとしたら? ある意味では21世紀では恐らく 都市を市民の手で開発できるのは明らかですよね。

 

8 デザインはセックスや老人介護と同類

3つ目に覚えておく必要があるのは 厳密に経済的な観点のみから見れば デザインはセックスや老人介護と同類です — ほとんどの場合素人がします。これは良いことなんです。貨幣経済以外のところでこの活動は起こっています。いわゆる 連携経済や地域通貨経済で 自分たちで自分たちのことをします。問題は 今の今まで 貨幣経済だけが 全ての生産基盤や道具を持っていました。

 

9 誰もが設計チームの一員になってきている

私たちが直面する課題は 建築が連携経済となるのに必要な道具や基盤や機関を どう作るのかということです。これはオープンソースのソフトウェアから始まりました。ここ数年ではオープンソースの機械を通じて 形のある物質の世界にも進んできています。無料で共有される青写真が 誰にでもダウンロードできて誰にでも新しく青写真が作り出せます。ここで3Dプリンターが本当に非常に興味深くなってきます。そうですよね?オープンソースの3Dプリンターが手に入った途端に そのプリンタの構成部品も 別の3Dプリンターで作れるようになりました。同じ考え方で 今度はCNC工作機械です。これは大きなプリンタのようなものでこれだと合板が切れます。これらの技術が引き起こしていることは 必要となる時間 費用 技能を急激に引き下げています。これらの技術は 手に届くようにするには大量生産品であるべきという考えを覆そうとしています。また技術によって広範囲にわたる 複雑な製造能力がもたらされようとしています。どこでも工場となってしまうような未来へと向かっているのです。これが意味するのは 誰もが ますます 設計チームの一員になってきているのです。これは本当に次の産業革命です。引き継がれてきたイデオロギーの主要な対立は 誰が生産手段を握るべきかという 質問に全てに端を発していましたが これらの技術がすでに解決と答えをもたらしていて 手段はおそらく実はもう特定の誰かのものではなく私たち全員のものなのです。

 

10 オープンソースの建築方式のウィキハウスを使えば、小さな家なら1日で建てられる

これが建築にとって どんな意味を持つのかにとても惹かれます。1年半前に私たちはウィキハウスという プロジェクトを始めました。ウィキハウスはオープンソースの建築方式です。どういうことかというとこれを使えば誰でも ネットに繋いで無料で共有されている 3D設計された図面をダウンロードして取り込めます–今のところ– SketchUpに取り込みます。無料で簡単に使えますから ボタンをクリックするだけで すぐに 切断用ファイルができて 実際に これを使うと 合板のような一般的な板材とCNC工作機械を使って 家の部材を彫り出すことができます。部材は全てに番号がふってあり 最終的には IKEAの家具キットをかなり大きくしたようなものが出来上がります (笑) ネジを使わなくても組み合わせられて くさびがたと留め具でくっつけます。組立に使う木槌も 切断シートで提供することもできます。2人か3人が1組になって一緒に作業すれば これが作れます。これまでの建築に必要な技能は一切不要です。多種多様な一連の電動工具やそんな感じのものも不要です。そして これくらいの大きさの小さな家なら 1日で建てられます

 

11 市民が誘導して都市開発するという未来の芽が生まれている

最終的に出来上がるのは家の基本的な外枠部分だけなので これに 様々な窓や外装や断熱などの部材を 付けることや追加工事を 安いものや市場にあるものから選んで加えられます。もちろん 家は完成物となっていません。これは発想の転換です。家は完成した品物ではないのです。CNC工作機械を使えば古くなった部品を新しく作ったり 作った部品でとなりの人の家を作ることもできます。これはつまり完全にオープンソースで– 市民が誘導して都市開発するという未来の芽を目撃し始めています

 

12 「キツネのようにずるがしこく怠けろ」

私たちや他の人たちも世界中で試作品を作ってきました。本当に興味深い経験も積んできました。その教訓の1つは驚異的に打ち解けること みんな建設作業をしているのか遊んでいるのか分からなくなります。しかし オープンの原則が非常にありふれた 物理的な細部にまで行き届いています。例えば 持ち上げられない部品は設計しないだとか 設計するときには 間違った方向に組み合わせられないようにするか 又は間違って組んでも対称形で問題にならないようにする。おそらく 私たちの奥深くに流れているこの原則は オープンソースの先駆者である リーナス・トーバルズが目指した原則の 「キツネのようにずるがしこく怠けろ」という原則です。有るものは無駄に作ろうとしない 既に有るものは利用して自分の用途に合わせて変えればいい。建築科で教わるであろうことの全てと 全く対照的ですが真似て使うのはいいことです。

 

13 利用し、分析し、いじくり回せることが大きく違う

適切でもあります。というのも 実際は 怠ける方針は革新的ではありません。実は産業革命以前の 数百年間はずっと同じ建て方を真似て使って 地域の納屋の棟上げをしてきました。各地域の伝統的建築と オープンソースでの建築が唯一違うのは ネット接続くらいかもしれませんが 実は 本当に大きな違いがあります。クリエイティブ・コモンズのライセンス形態で 私たちはウィキハウスの全てを共有しました。これを世界中のグループが ダウンロードし利用し 分析し いじくり回し始めたところです。素晴らしいことです。ニュージーランドのクライストチャーチのグループは 震災後の復興開発の住居として見ています。TED City Prize のおかげで 我々は リオのスラム街の素晴らしいグループと共に 地域のための工場と地域の小型大学 のようなものを作ろうとしています。これはほんの些細な始まりですが この地図には表示されていませんが実は先週だけでも もっと多くの人が連絡をくれました。次にこの地図を見るときには地図とさえ分からなくなるといいですね。

 

14 世界的に最も急成長している都市は自力で出来上がった都市

ウィキハウスがとてもとても小さい1つの解なのは分かっていますが 本当に本当に大きな問題への小さな解なのです。問題とは今まさに世界的にはもっとも急成長している都市は 高層ビルのある都市ではなく どんな形を取っていても自力で出来上がった都市です。21世紀の都市のことを語るなら 彼らこそが自作していくひとたちです。それが気に入っても気に入らなくても世界最大の設計者集団です。

 

15 インフラの問題もみんなで解決するとしたら…

もしわれわれが 気候変動 都市化公衆衛生などの問題に真剣なら 既存の都市開発の方法では実際のところ役に立ちません。ロバート・ニューワースが言うように 銀行も大企業も政府もNGOも 市民を消費者としてだけ 捉えるとしたら開発を行えないでしょう。でも もし こうだとしたらどれだけ素晴らしいでしょう 「これまで解決しようとしてきた– 構造的な問題をみんなで解決するだけでなく インフラの問題もみんなで解決するとしたらどうでしょう。太陽光発電のエアコンや 分散型の電源や分散型の下水処理装置が 低コストでオープンソースで高性能な解決策が だれにでもとてもとても簡単に作れて 解決策をクリエイティブ・コモンズに入れて みんなで所有しみんなが利用できるとしたら?」 物質版のウィキペディアといったところでしょう? また一旦コモンズに入ってしまえば ずっとそこから利用できます。これがどれくらいルールを変えてしまうでしょうか? 技術が味方していると思います。

 

16 21世紀の大いなる計画は生産をみんなのものにすること

20世紀の大いなる計画は 消費をみんなのものにすることでした。それを象徴するのはヘンリーフォードや大規模ニュータウン計画やコカコーラやIKEA などです。21世紀の大いなる計画は 生産をみんなのものにすることです。都市の建築に関しては それが本当に大切なのです。ご清聴ありがとうございました (拍手)

 

最後に

3DプリンターやCNC工作機械によって、誰もが設計チームの一員になれる。21世紀の大いなる計画は生産をみんなのものにすること。MAKERSの時代

和訳してくださった Akinori Oyama 氏、レビューしてくださった Takahiro Shimpo 氏に感謝する(2013年2月)。


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