「私がドライバスを発明したのは入浴が面倒だったからです」ルドウィクはユーモアを込めて語りかける。ここでは、65万ビューを超える Ludwick Marishane のTED講演を訳し、世界初の入浴代替ローション「ドライバス」発明の経緯を理解する。
要約
水差し1杯の水のために毎日1km以上も歩かなくてはいけない人は世界中に何百万人もいるわけですが、そうであればその貴重な水を入浴には使わないでしょう。若き起業家のルドウィク・マリシェーンは、安価で、清潔で、利便性もある解決策―世界初の入浴代替ローション「ドライバス」について、彼がどうやって発明したかを、笑いも含めた素晴らしいストーリーで語ってくれます。
Student Ludwick Marishane invented a water-less bathing lotion and was named the 2011 Global Student Entrepreneur of the Year Award — all because he didn’t feel like taking baths.
1 入浴する代わりに肌に塗るようなものを誰か発明してくれないかな
私は南アフリカのリンポポ州出身です。隣の州との境にある小さな町モテテマで育ちました。水と電気の供給については 天候と同じくらい不安定な厳しい環境で育ちました。17歳の冬のとき友だち何人かと一緒に 日向ぼっこをしていました。リンポポの冬は日が照ってとても暑いです。日向ぼっこをしていると隣にいた親友が言いました 「やれやれ 誰か発明してくれないかな。入浴する代わりに肌に塗るようなものを」 私は思わず口にしました「おいおい それ俺も欲しいな」
2 トラコーマの予防策は洗顔以外になにもない
私は家に帰って 少し調べてみました。そして 衝撃的な統計を見つけたんです。今日 上下水道を利用できていない人の数は 世界全体で25億人を越えています。4億5000万人がアフリカにいて その内 500万人は南アフリカにいます。このような環境では様々な病気が蔓延します。最も被害の大きい病気はトラコーマです。トラコーマとは 目にばい菌が入ることで 発症する目の感染症で多重感染してしまうと 永久失明する可能性もあります。毎年毎年 この病気によって 800万人が永久失明になっています。恐ろしい事にこのトラコーマの予防策は 洗顔以外になにもないのです。飲み薬もワクチンもありません。
3 入浴が嫌いなのは事実だけど、世界を救うためにやらなきゃ
この衝撃的な統計を見て 考えました。「これは自分のためにやるんじゃない。入浴が嫌いなのは事実だけど 世界を救うためにやらなきゃ」 (笑) そして僕の名馬Nokia 6234 携帯を使って調べました。パソコンもなくインターネットもろくに使えません。1時間20ランドのネットカフェを除いてね。ウィキペディアやグーグルでローションやクリーム 組成物や溶融点有毒性などについて調べました。そして高校の化学にならって 1枚の紙に化学式を書きました。まるでKFCの秘伝スパイスのレシピみたいでした。
4 入浴の代替となる世界初のローションを発明した
化学式も用意できたので 次は 実践する必要がありました。その後の4年間で40ページに渡るビジネスプランや 特許明細を全て 携帯電話で書き上げ 国内最年少の特許権者となりました そして・・(入浴も必要なし!) これ以上は言えませんね (笑)。私は「ドライバス」を発明しました。入浴の代替となる世界初のローションです。文字通り 皮膚に塗ればもう入浴しなくてもいいのです (笑)
5 5ランドの1袋で1回の入浴分になる
高校での限られた資源で実践した後 大学へ行き 何人かの人と出会い 実用化に向けて 十分に機能する完成品ができました。実はもう市場に出回っています。ドライバスを宣伝し 広める中で いくつかの教訓を得ました。まず お金のない人たちは 大口購入はしません。その時の需要に合わせて購入します。タバコも箱買いはせず毎日1本ずつ買います。たとえ割高になるとしてもです。だからドライバスをこの革新的な小袋に入れました。半分にパキっと折ってギュッと押せば出てきます。たったの5ランドの1袋で1回の入浴分になります。これがドライバスの売りです。このビジネスモデルを作った後 製品化についても色々学びました。実は 郊外に住む裕福な子どもにも 需要があることに気づいたのです (笑)。少なくとも1週間に1回はね。その他にも 1回入浴をしないことで 80リットルの水が節約できるだけでなく 田舎に住む子どもたちにとって 1日2時間の節約ができます。それは学校の時間にもなり 宿題をする時間にもなり 子どもとして過ごせる時間にもなり得ます。
6 裕福な人の便利グッズであり、貧しい人の救命具
世界規模の影響を目の当たりにして この活動を 重要な命題に掘り下げました。ずばり「清潔」と「利便性」です。ドライバスは裕福な人の便利グッズであり 貧しい人の救命具なのです。
7 こんな事を成し遂げられたのは入浴が面倒だったから
製品の実用化を終え 今まさに 多国籍企業に販売交渉をしています。その後 世界中の店頭に並ぶことになります。今この話を聞いている皆さんに1つ質問があります。週に50ランドの小遣いしかなかった私が リンポポ州の砂利道で 世界のために入浴しなくて済む方法を編み出しました。あなたを止めるものは何でしょうか(拍手)。私の話はまだ終わりじゃありませんよ。もう1つ 今回の過程全体から学んだ 大事なことがあります。昨年 私はグーグルから世界一聡明な若者の一人に選ばれました。さらに 私はアフリカ人としては初めて 世界学生起業家 最優秀賞も受賞しました。ただ 私も困惑しています。こんな事を成し遂げられたのが 入浴が面倒だったという理由だからです。ありがとうございました (拍手)
最後に
きっかけや動機は何でもいい。自分の欲求と誰かの役に立つものを結びつけよう。
TED公式和訳をしてくださった Naoki Funahashi 氏、レビューしてくださった Takahiro Shimpo 氏に感謝する(2012年12月)。
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