ecology

グレッグ・アスナー 空からの生態学

「地球の生態系を守るには新しい方法で、より多くのデータを集めることが必要です」アスナーは語りかける。ここでは、50万ビューを超える Greg Asner のTED講演を訳し、空から見た生態学について理解する。

要約

森林の実態はどうなっているのでしょう。生態学者のグレッグ・アスナー氏は、分光計や高出力レーザーを使い、「高技術炭素量算定法」と呼ぶ方法で、空から大自然の詳細な3D地図を作成します。引き込まれて行くようなトークで、「地球の生態系を守るには、新しい方法で、より多くのデータを集めることが必要だ」と、アスナー氏は語ります。

Greg Asner’s mapping technology produces detailed, complex pictures of how humans’ activities affect our ecosystems.

 

1 ライオンの雄は怠け者ではない

テクノロジーは私たちの自然に対する考えを変える力を持っています。例えばライオンについては 何世紀もの間サバンナでの狩りは 全て雌が行い 雄は食べるだけだと言われて来ました。皆さんも聞いたことがある話だと思います。最近 南アフリカのクルーガー国立公園で 航空地図を作製したのですが 同僚がGPSで追跡できる首輪を ライオンに付けて 空から狩りの行動を 追跡しました。左下ではライオンがインパラの群れに 忍び寄っているのが見えます。その右側はライオンの – 可視域と私が呼ぶものです。草木に邪魔されずに ライオンの視野が届く範囲を示しています。この調査から 雄は私たちが思っていた様な怠け者ではないということが分かりました。ただ狩りの仕方が違っていただけです。雌は見通しの良いサバンナで 普段 昼間に 広範囲に渡る狩りをし 雄は よく夜に 深い茂みの中で獲物を待ち伏せます。このビデオは実際に狩りをしている時の可視域で – 雄が左側 雌が右側にいます。赤と濃い色は草木の茂っている場所で 白は広くオープンな場所です。これは狩りをしている雄と雌の 丁度目の高さの可視域です。雄ライオンが狩りをしている時の 不気味な緊張感が突如 – ひしひしと伝わって来ますね。

 

2 CAOの本質は生態系の実際の構成要素を測定する能力

最初にこんな話をしたのは 私たちが いかに自然について無知なのかを伝えたかったからです。これまでに 熱帯雨林の消失を食い止めるための さまざまな試みが行われてきましたが この図の赤い部分が示すように 熱帯雨林は急速に減少しています。あらゆる手段が尽くされているのにこの様な場所は 科学的にほとんど分かっていないというのは皮肉なことです。理解できなければどうやって保護できるのでしょう。

私は地球生態学者で探検家です。物理 化学 生物学や その他諸々 退屈な科目を学んできましたが その中でも地球に関する未知の部分に取り付かれています。そこでー 「カーネギー空中観測所(CAO)」を設立しました。可愛く塗装を施した飛行機という感じですが 高度なセンサーやコンピュータなど 1トン以上の装備を積み 意欲満々の地球科学者と パイロットが乗っています。とてもユニークな機材が2つあり 1つは画像分光計で 植物の化学組成を 上空から計測できます。もう1つは とても高出力を持つ レーザーです 機体の底部から放射され 生態系を走査し 1秒間にほぼ50万回 高解像度3Dで測定します。私の家の近くにあるサンフランシスコの ゴールデンゲート橋の画像です。この橋の真上を飛び 3Dのカラーイメージを ほんの数秒で作成できます。しかしCAOの本領は 生態系の実際の構成要素を測定する能力です。これはCAOで撮った アマゾンの小さな町です。データを薄切りするように 例えば3Dで植生と建物を見たり 化学情報を使い 植物の成長速度を実測することが 上空を飛行しながら可能です。濃いピンク色は植物の成長が最も速い所です。生物の多様性を 今まで想像もできなかった方法で見られます。これは熱気球で 飛んだ時の熱帯雨林の様子です。これを見ると熱帯雨林には 万華鏡のような様々な色で 多様な種が共存していることが分かります。ここで知っておいてほしいのは こうした樹木はクジラより大きいので 地上を歩いているだけでは 理解はできないということです。私たちの画像は3Dで化学的 生物学的な分析ができるので 林冠に生息する種だけでなく 熱帯雨林を埋め尽くす – 他の生物に関してもいろいろな情報が得られます。

 

3 熱帯林での炭素蓄積状況の管理の仕方

地上や人工衛星のセンサーなど 他の視点からでは決して分からないことを 解明する為に CAOを立ち上げたのです。今日は3つの質問を取り上げたいと思います。最初の質問は 熱帯林で – 炭素蓄積状況をどうやって管理するかということです。熱帯林の樹木は大量の炭素を蓄積しています。その炭素は森にとどめておく必要があります。さらなる地球温暖化をくいとめる為です。しかし残念ながら森林伐採から生じる 世界の炭素排出量は 船 飛行機 電車 車など全てを含めた 世界の交通機関が出す排出量と同じほどもあります。森林伐採を抑制するための政策作りに 政治家は励んでいますが そうした場所は 科学では未知の世界なのです。炭素の蓄積場所を知らなければ 何を失っているのかを知ることもできません。そのためには 高度な積算システムが必要です。私たちの持つシステムで極めて詳細な 熱帯林の炭素蓄積量を知ることができます。赤は閉鎖林冠の熱帯林を示し 黄色や緑色はクッキーの形を取られたように 森が伐採されている箇所です。まるでケーキのを切っているかのようですが 厚さがクジラほどもあります。ズームインして森を見ることも 木々を見ることもできます。素晴らしいことに 森のずっと上空を飛んでいるのに 後で分析する時には 木々のてっぺんを間近に感じ 枝や葉の1つ1つまで見ることができます。森にすむ生物や木々そのものになったかのような 感じになるのです。

 

4 炭素地形図は森林保護と温暖化防止の取り組みを進化させている

このテクノロジーを使って 初の高解像度な炭素地形図を作成するため アマゾン川流域のような遠い所や それ程 遠くもないアメリカや中米などに赴きました。ペルーとパナマの初めての炭素地形図をお見せします。赤から青い色になっていきます 赤は炭素の蓄積量が非常に多く 樹木が最も高く茂っている所です。青は炭素蓄積量が非常に少ない所です。ペルーだけでも驚くような結果が出ました。炭素の分布状態は 今日まで全く知られていなかったのです。ペルー北部では 赤色の特に炭素の蓄積量が多い所を アマゾン川と氾濫原が 通り抜けています。完全に伐採され破壊された森は青で 伐採というウィルスが広がっている所はオレンジ色です。南アンデスに飛ぶと樹木限界線が見え 山の中に入るにつれ 炭素地形が 終わっているのがはっきり見えます。アマゾンの西に行くと最大級の沼地が見えます。夢のような湿地帯です。ジェームズ・キャメロンの『アバター』を思わせます。最小の熱帯国の1つパナマに行くと 炭素蓄積量が多い赤色から少ない青色まで ばらつきが非常に大きいことがわかります。残念ながら低地では 炭素のほとんどが失われています。残ったものはというと 赤や緑色で示される高い炭素の蓄積量は 山の中で見られます。1つ面白い例外が画面の真ん中にあります。パナマ運河周辺に緩衝地帯が見えます。赤と黄色になっていますね。運河の運営機関は 世界貿易と合わせて運河流域の保護にも力を注いでいるのです。この様な調査により 資源と森林保全に対する政策が変わりました。炭素地形図は 森林保護と温暖化防止の取り組みを 進化させているのです。

 

5 気候変化にどう対処すべきか

次の質問はアマゾン熱帯雨林のような場所の 気候変化にどう対処すべきかということです。私はこんな場所で 過ごすことが多いので既に気候変化を目の当たりにしています。気温が上がり 干ばつが増え しかも繰り返し起きています。2010年の大干ばつは この図に赤で示してありますが西ヨーロッパの面積にほぼ匹敵します。アマゾン地域は2010年には 乾燥がひどくアマゾン川の主流さえ 一部干上がりました。右下の写真がその時の様子です。遠く離れた辺境の地では このような干ばつで熱帯林は 大被害を受けています。例えば2010年の干ばつ後 枯れてしまった木を赤で示していますが この場所はペルーとブラジルの国境で 全く探索されておらず 科学的にもほぼ完全に未知の世界です。

 

6 アマゾンには一度は訪れてみるべき

地球科学者として思うに 生き物は 気象変化が起きると その影響を出来るだけ避けようと 東にあるブラジルからずっと西のアンデスや 山の中へと 移り住まなくてはならなくなるでしょう。ここで問題になるのはアマゾン西部を こうしている間にも人間が破壊していることです。この100平方キロに及ぶ 採金者たちが作った森の中の傷跡を見て下さい。3D画像の緑色部分が森です。金採掘の影響は 地表の下に見ることができます。これでは どんな生き物も何処にも移動出来ないことが 一目でわかります。

アマゾンにまだ行ったことがない人は訪れてみるべきです。アマゾンは何処に行っても 行く度に驚かされます。たぶんこんな景色が見られるでしょう。でも 川だけを見ていると 森で実際に何が起きているのか 分からないということがよくあります。この同じ川の上を飛び 3Dの画像を撮りました 。森は左側です。森をデジタル処理で削除し 林冠の下の様子を見ることができます。ここでは川岸から離れた所に 非合法な金採掘場を見つけました。画面の右側に 不自然な窪みが見えますね。心配しないで 私たちは公的機関と共に この問題に対処していますし この地域が抱える他の多くの問題にも取り組んでいます。

 

7 生物多様性の地図は保護区を作るためにきわめて肝要な情報

この地にあるユニークで 重要な回廊 – 西アマゾンや アンデス山脈・アマゾン川回廊地帯の保全計画をまとめるため 具体的な明確な地理計画を 作り始める必要があります。でも その地域の生物多様性が科学で全く解明されていないのであれば 計画を作ることはできません。それでレーザー作動の CAOの分光計を使い アマゾン熱帯雨林の生物多様性を 初めて地図にしています。実際のデータを使い違う種を違う色で示しました。赤や青 緑が それぞれの種を示しています。規模を拡げて地域全体の 地図を作れば これまでにない 全く新しい 生物多様性の地図が出来上がります。そうすれば 生物多様性の大きな変化が 起きている場所がわかるようになります。気候変化により生き物が 何処から何処へ移動するのかがよくわかるので これは非常に大切なことです。政策の立案者にとっても 地域の発展計画と照らし合わせ 保護区を作るためにきわめて肝要な情報です。

 

8 保護された生態系の生物多様性をどう維持して行くか

そして三つ目 最後の質問は 地球上の 保護された生態系の 生物多様性をどう維持して行くかです。最初にお話ししたライオンの狩猟行動の例は 南アフリカの 保護区内での調査でした。実際にはアフリカの自然の多くは この図の青色で示されるような 保護地域内で維持されていくでしょう。その為 保護区管理側に非常なプレッシャーと責任が かかってくる事になります。保護している動植物の全ての種を 公平に守る方針を作らなければなりません。方針によっては大きな影響が出ます。例えば火を管理道具として使う 場所とその量についてとか または 象などの大型動物をどう扱うかといったことなどです。もし象が過剰に増えた場合 他の生き物や生態系に対して 悪影響を引き起こしかねません。こうした相互関係は全生態系に 実に大きく関わってきます。前方は火がたくさん使われていて象の数も多い場所です。青い部分は見通しの良いサバンナで木はほんの少ししかありません。この囲い線を越えると 火を使う必要もなければ。象もいない地域になります。植物が生い茂り著しい生態系の違いが見られます。クルーガーのような場所では 象の数が急速に増え 大きな問題になっています。デリケートな問題です。簡単に解決出来ることではありません。でも 私たちが開発し 南アフリカで使ってきたテクノロジーにより 例えばサバンナの全ての木の地図が作れるので 何度も飛行すれば どの木が象に倒されたのかを 知ることができます。画面の赤色が倒された木ですサバンナの何処でどれ程 こうしたことが起きているかがわかるのです。これによって 初めて 保護地域の責任者達は 先ほどお見せしたような極端な方針を取ることなく 繊細で周到な管理策を立てられるようになるのです。私たちは最近 保護区のことを 自然な生命のバランスを保つ場所だと考えています。火や象の管理に加え それらが生態系や 昆虫からライオンに至るまで あらゆる生物に与える影響も 管理するということです。

 

9 テクノロジーは使い方への理解と応用する知恵が必要

ゆくゆくは 空中観測所を 大きく広げていくつもりです。空中観測所を地球周回軌道に打ち上げ 地球全体を調査したいと思っています。それまでは誰も知らないような 辺境の地を私は飛び回っているでしょう。最後にひとつお伝えします。テクノロジーは地球を管理するのに不可欠なものですが もっと大切なのはその使い方を理解し それを応用する知恵を持つことです。ありがとうございました(拍手)

最後に

私たちは自然に対して無知。ライオンの雄は怠け者ではない。CAOの本質は生態系の実際の構成要素を測定する能力。熱帯林での炭素蓄積状況の管理の仕方「炭素地形図」は、森林保護と温暖化防止の取り組みを進化させている。生物多様性の地図は保護区を作るためにきわめて肝要な情報。テクノロジーは使い方への理解と応用する知恵が必要

和訳してくださった Reiko O Bovee 氏、レビューしてくださった Yoshifumi Yamada 氏に感謝する(2013年12月)。

Garmin(ガーミン) 日本登山地図 TOPO10M Plus V2 1120901


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