economic-growth

人口が減少しても経済成長は可能 物価、金融政策、経済成長への誤解

前回は、復興財源は国債の日銀引き受けと埋蔵金の活用 シンプルな復興政策についてまとめた。ここでは、人口が減少しても経済成長は可能 物価、金融政策、経済成長への誤解について解説する。

震災後のインフレ懸念 – 物価

「震災でサプライチェーンが崩れて供給が減るので、インフレになる」と話すある経済アナリストががいた。しかし、現実にはデフレが続き、アベノミクスによってやっとインフレに向かったという事実がある。また、関東大震災や阪神・淡路大震災後の物価動向もほとんどインフレになっていない。

このような誤解が生じる理由は、「個別のモノの値段」が上がることと「物価」が上がることを混同しているからである。その典型例が『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』(角川oneテーマ21)である。この本では、社会が高齢化すると、耐久消費財の価格が下がるということが述べられている。たしかに、人口の減少と耐久消費財の価格には一定の相関関係が見られるが、「物価」との比較ではない。

耐久消費財価格と一般物価の差を見ると、凸型になっている。一方、非耐久消費財価格と一般物価の差を見ると、凸型になっている。つまり、耐久消費財価格が下がった場合、非耐久消費財価格は上がっているため、人口減少とデフレには全く関係がないことがわかる。

 

アメリカの金融緩和が新興国バブルを生み出すか

池上彰氏(「週刊文春」2011年9月15日号)などから、アメリカの金融緩和が新興国バブルを生み出すとの指摘がされた。しかし、マクロ経済的にはそのようなことはない。それは以下のように説明できる。

  • アメリカが金融緩和すると、各国の通貨に対して相対的にドルが多くなる(ドル安)
  • 新興国では自国通貨と米ドルを一定レートに保つドルへのペッグ制(固定相場制)が多いため、為替相場維持のためドル買いの為替介入をする
  • 為替介入を相殺するために自国通貨も増加し、新興国も金融緩和状態になる

 

国際金融のトリレンマ

この状態は国際金融のトリレンマという命題から説明できる。国際金融のトリレンマとは、国債金融政策においては、①固定相場制、②独立した金融政策(金利政策の自由)、③自由な資本移動という3つの政策は同時に2つしか実現できないというものである。

つまり、固定相場制をとり、自由な資本移動を優先すると、金融政策を放棄せざるを得ないのである。重要なのは、決してアメリカの金融緩和のカネが新興国に流れているのではなく、新興国も金融緩和になってしまうのだ。

金融緩和を行えば必然的にインフレ気味になり、何かの拍子に個別価格が急激に上がることもある。もともと食料品価格や商品価格は、需給状況によって価格が上下しやすいため、中東の動乱などのきっかけによって跳ね上がることもあるだろう。

 

中国がアメリカの金融緩和を批判する理由

中国がアメリカの金融緩和を批判する理由は、政治的に国内のインフレを避けたいからである。中国政府は固定相場制を維持したいがために中国国内にカネをまいている。その理由は、人民元を安くし、中国国内の輸出勢力を味方につけたいからである。

 

変動相場制の国は、金融政策で対応できるから問題ない

各国通貨に対してドル安になった場合、変動相場制の国は自国でも金融緩和政策によって対応すればよい。もし金融緩和をしないと、近隣困窮化(自国通貨を安くして輸出増などを図る政策のこと。貿易相手国の輸入を増やし、失業などを押しつけることになる)ではなく「自国困窮化」になってしまうのである。

もちろん、部分的にはアメリカから新興国へのカネの流入もある。しかし、国際収支については、経常収支(黒字)+資本収支(赤字)は常にゼロである。つまり、資本収支(外国とのおカネそのもののやりとりの差額)は、マクロ的に見れば経常収支(輸出と輸入の差額)で決まるということである。さらに、たとえ経常収支が赤字になっても、まともな経済運営さえすれば経済成長も金利も問題ない(日本の貿易収支が赤字転落で本当に国債は暴落するのか参照)。

 

人口が減少している国は、経済成長しないか

「日本が経済成長しないのは、人口が減少しているからだ」そう話す識者も多い。しかし、人口増加率と実質成長率の関係(2000〜08年)を調べると、相関係数は0.17と非常に低い数字であり、人口増加と経済成長の相関関係が高くないことがわかる(日本のデフレは人口減少が原因なのか人口増減と「物価」は実は関係がない参照)。

つまり、経済成長には人口の増減ではなく、生産性の向上や技術革新が大きな役割を占めているといえる。

 

最後に

「個別のモノの値段と物価は異なる」「変動相場制の下では各国に金融政策の自由がある」「経済成長と人口減少には相関がない」事実を直視しよう

著者は、最後に以下の20個の質問を書いている。もし1つでもわからないことがあったら、『この金融政策が日本経済を救う』『日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える』『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』(いずれも光文社新書)を読むことをおすすめする。

  1. なぜデフレはダメなの?
  2. なぜ円高はダメなの?
  3. 中央銀行(日本銀行)の役割は?
  4. 為替レートはどうやって決まるの?
  5. 金融緩和をすると、どうしてデフレや円高から抜け出せるの?
  6. 銀行貸出が増えないと、金融緩和しても意味ないんじゃないの?
  7. シニョレッジ(通貨発行益)って何?
  8. インフレ目標政策って何?
  9. インフレになったら金利も上がって大変なことになるんじゃないの?
  10. インフレ政策はハイパーインフレの危険性があるんじゃないの?
  11. 増税して景気が良くなることはあるの?
  12. 財政を立て直すために増税が必要じゃないの?
  13. 経済成長はなぜ必要なの?
  14. そもそも経済成長って何?
  15. 名目金利と実質金利って何?
  16. 財政政策(公共投資)は景気に対して効果がないの?
  17. 埋蔵金って何?
  18. 埋蔵金って本当にあるの?
  19. 日本の財政は破綻寸前じゃないの?
  20. 財政赤字を減らさないと、景気は良くならないんじゃないの?

統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる (光文社新書)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>