前回は、国税庁、金融緩和の不足、新成長戦略 財務省・日銀タッグと無策民主党についてまとめた。ここでは、インフレ目標の設定、歳入庁、消費税の地方税化 日本経済復活への道について解説する。
円高対策 日銀の国債引き受けは「禁じ手」などではない
日銀の国債引き受けは、年間30兆円程度の余地はある。事実、日銀は2011年度に約12兆円、2012年度には約17兆円の国債を引き受けている。国債の発行額は年間150〜160兆円だが、このうち1〜2割程度を日銀が引き受けるだけなら経済、財政規律に悪影響を及ぼすこともないのである。
復興費用対策 増税はすぐにやめて「100年復興国債」を発行せよ
復興費用対策としては国債の日銀引受がふさわしい。しかし、実際は所得税の2.1%上乗せ、個人住民税は10年間一律年間1000円が増税されることになった。この方法では震災を経験した世代だけが過分な負担を負うことになるので、不公平な制度である。例えば、100年復興国債を発行すれば、必要なお金を一気に調達できる分、復興のスピードも格段に速まるだろう。
TPP交渉 自由貿易は推進した方が絶対に有利
TPP交渉への参加が決定されたが、基本的に自由貿易は推進した方が有利である。たとえ農業が損をしたとしても、所得移転で国全体が潤うからである。内閣府の試算によれば、TPP参加による経済効果はGDPベースで2.4〜3.2兆円である。このプラス分を国内農業の損失にあてれば、十分に穴埋めできるのである。
デフレ脱却 2%のインフレ目標を何が何でも達成させる
デフレも円高も円の供給量が少ないことが原因である。モノに対して円の量が少ないから相対的にモノの価値が下がるのであり(デフレ)、ドルに対して相対的に供給量が少ないから円の価値が上がる(円高)のである。つまり、これらを解決するためには積極的な金融緩和を推し進める以外に方法はない。高福祉国家であるスウェーデンに学んで、積極的な金融緩和を行う必要がある。
成長戦略との決別 規制緩和と金融緩和だけで十分
産業政策が求められているのは途上国だけである。途上国の場合、生産やサービスに必要な技術、人材、資本が著しく不足している産業が多いため、ある程度保護せざるを得ない。しかし、先進国ではそうしたことはないため、むしろ市場の開放や規制緩和を積極的に推し進めるほうが有効である。
年金問題 国税庁と年金機構を一体化して「歳入庁」を立ち上げよ
公的年金は長い目で見れば「積立方式」への転換が望ましい。日本のように人口減少が進んでいる国では、保険料負担の世代間不公平がますます大きくなるからである。ただし、賦課方式から積立方式への切替は、100年スパンで時間をかけて取り組まなければならない。当面は、保険料の未納を減らすために「歳入庁」を立ち上げるなどの方法が有効だろう。未納について追徴課税や差し押さえなどの強制措置を執行すれば、15兆円程度は保険料収入と税収が上がるだろう。同時に、国民一人ひとりの預金や保険料、税金などを一括管理できる国民番号制度を導入すれば、取り逃しを防ぐことができる。
産業空洞化対策 円安がこのまま進めば簡単に解消される
金融政策こそが産業空洞化を防ぐ最大の特効薬である。金融緩和によって円安誘導することで、海外メーカーとの厳しい価格競争にさらされている国内製造業への打撃を和らげることができる。
所得向上策 「デフレスパイラル」からの脱却を図れ
GDPを増やせば、おのずと所得も上がる。「失われた20年」の間、国民の所得が下がり続けたのは、GDPが伸び悩んだからにほかならない。そのためには、デフレを脱却することが唯一の処方箋である。インフレに誘導することで実質金利を下げれば、設備投資や消費が喚起されてGDPが拡大するからである。
また、デフレと人口減少には何の関係性もない。世界の約180カ国をサンプルに、10年間の人口増加率の平均と、インフレ率の平均を見比べてみたところ、両者に相関は見られなかったからである(相関係数0.1程度)。一方、インフレ率と通貨の供給量については、相関係数(数値が1に近いほど相関性が高い)は0.7と、デフレを解消するには金融緩和を推進した方がはるかに効果的であるといえる。
公務員制度改革 夏の参院選で自民党が勝利できるかがカギ
公務員制度改革は入口(公務員の採用)、中間(人事評価・異動など)、出口(天下り斡旋禁止)のフルパッケージで取り組むべきだが、安倍首相はひとまず天下り斡旋禁止の復活から着手するのではないだろうか。
道州制 消費税の地方税化から始めよ
道州制を実現させるためには、膨大な数の法律や制度を整備する必要がある。その第一歩としては、消費税の地方税化から始めればよい。なぜなら、消費税は所得税に比べると地域間の税収のばらつきが少なく、景気が冷え込んでも所得税ほど大きく税収が減ることはないからだ。地方への財源移譲が分権を加速させていくだろう。
最後に
円高、デフレ、失業率の悪化、国の借金などの問題は、すべて日銀による金融政策の失敗によって引き起こされている。パイを大きくする政策を選ぼう。
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