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国政進出、復興、法案作成、教育、公務員制度改革 維新八策の真相

前回は、生活保護、歳入庁、負の所得税、ストック課税 大阪維新の格差対策についてまとめた。ここでは、国政進出、復興、法案作成、教育、公務員制度改革 維新八策の真相について解説する。

15 都構想は1年、道州制は3年、一気に決着がつく

道州制実現、最後は国民の決断

道州制は既得権のある人には不利益が大きい。「国家公務員から地方公務員になるのは嫌だ」という官僚もいるだろう。しかし、道州制が是か非かは、選挙で決することになる。

国民にとっては道州制になっても受けられる住民サービスはそれほど大きく変わらないが、仕組みが変わることで問題解決のスピード感が違ってくる。地域の利益をしっかりと実現できるトップを選ぶことが非常に重要となり、役所への関心も高まるだろう。

現在、地方の財源になっている特定財源は国税であり、ガソリン税という形で国が吸い上げ、財務省が国交省にお金を回し、それが国庫補助金という形で地方に還元されている。道州制が実現すれば、ガソリン税は道州の税になることが考えられ、首長の実力によって税率が変わってくる可能性もある。

 

東北3県はもっと早く復興できた

東北3県は東北州をつくることでもっと早く復興できた。国が東北州を認め、権限、人間、財源の「3ゲン」を与えた上で「地元で考えて復興してくれ」といえばよかったのである。3県の首長が協力した上で「道州制特区法」を改正して適用すれば、道州制特区ができる。

東北3県でそれが実現しなかった理由は、国のほうが権限を押さえたがったというのと、地方もこれまでの経緯から国に頼ることを疑わなかったという両方の側面がある。3県の首長たちは、権限と財源を得るための具体策を打ち出すことができなかったのである。

さらに、中央官庁は権限も財源も渡さず、復興庁を霞ヶ関につくった。復興庁は被災地につくるのが当たり前だが、残念ながら本庁は東京なのである。

 

橋下徹が自ら国政に打って出る

橋下市長はゆっくり議論するのには向かない。ブレーンにも「もうアイデアはいいです。行動です」といつも言う。それをどう実行するかに興味があるのである。

 

2015年までには決着をつける

道州制実現のための期間は2、3年の間に決着させる。最後は、選挙によって「国民に問う」ことで、正当な仕組みを選んでいくだろう。

 

16 方法論なき法案は総務省の骨抜きで台無しになる

官僚たちは「骨抜き法案」作成の達人

官僚たちは骨抜き法案作成の達人である。例えば、大阪都構想実現に向けた協議会での検討事項について「総務省との事前協議をしてから結論を得る」と書かれていた。これは、総務省の意向に沿っていないといつまでたっても法改正が進まない、ということに等しい

また、みんなの党の法案では「知事は…をできる」という表現になっているのに対し、自民党の当初案は「知事は、政令に定めるところにより…をできる」となっている。「政令」を入れることで、政令に従えばできるし、従わなければできないということになり、つまり「できない」というのが既定路線である。これが俗に言う「骨抜き」である。

 

官僚の「権限確保への意志」は侮れない

官僚が条文にこだわるのは、権限を渡したくないからである。例えば、農地転用(農地を農地以外の目的に使うこと)の許可は、規模によって分かれているが、農地法を見ると知事に権限があるかのような印象を受ける。しかし「政令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない」と書いてあり、農水省の指導が前提になっている。つまり、知事の権限では許可できないのである。

このように、大阪都構想や道州制を実現させるには、法律の中身が重要であり、細部に戦略を宿らせることが実現への必要条件なのである。

 

理想はあっても方法論がないとすぐに骨抜き

骨抜きにされてしまうのは「わかっていない」からである。何かを変えるには、正しい政策とそれを実現するための方法論が整っていなければならない。つまり、法律が書けなければ、何も動かせないのである。

 

17 背後には文科省。教育制度でも地方分権が進む

教育委員会には住民の意向が反映されない

教育委員会制度は、戦後にGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が取り入れたアメリカ的な制度である。戦前の軍国主義教育の反省から、政治が教育へ過度に口出しできないようにしたのである。これを盾に、教育委員会は市から隔離されている。

教育委員会制度を住民の意思が反映されたものにするには、教育委員長を公選で選ぶ必要があり、実際にそうしたのが東京の杉並区である。そうなれば文科省の存在意義が薄れることになる。文科省は教育委員会制度を守るべきと言っているが、教育委員会制度を貫徹すると、実は教育は地域が行うべきであり、文科省はいらない。事実、世界では文科省のような機関はほとんどない。

 

教育の多様化を一番いやがるのは文科省

教育委員会制度を尊重するなら「教育目標を掲げて市長選を行い、当選した市長が教育委員会に目標を与える。教育委員会はそれに従ってその目標を達成するように活動する」というのが、最も筋の通った形である。

そうすれば、地方ごとに教育制度の多様性が出るが、文科省はそれが嫌だから必死になって抵抗している。そもそも、地元から選出された市長に目標を与える権限がないというのはおかしい。

教育の分権を進めると国立大学はいらず、すべて州立大学になる。今は国から運営交付金を受けているが、文科省を解体して運営交付金をそれぞれの州に分けてしまえば、州立大学になっても何の支障もない。

 

一律教育は教科書にも見てとれる

日本には教科書の検定制度があり、どの教科書も基準をクリアするような内容になってしまうため、一様でつまらない。海外の多くの国では、地域によって教育内容も教科書も異なる。

 

「教育バウチャー」で教育を選べるようにする

教育バウチャーとは、使用目的を学校教育に限定したクーポンを支給し、生徒が学校を選べるようにするものである。教育は競争ではないと言うが、選べないことのほうがひどいだろう。それは子どもにとって不幸だし、よくできる先生にとっても不幸であり、努力しなくなる

大阪都構想は基本的に多様性を認めている。多様性を嫌う人は大阪都構想そのものが嫌だろう

 

18 公務員制度改革は大阪で実現する

国ではダメでも大阪では実現できる不思議

国では一向に進まない公務員改革だが、大阪では公務員改革が進んでいる。改革をするときには公務員制度改革が避けて通れない。特に、道州制への移行など、大きく国のあり方を変えようとするときには、公務員制度改革はセットである。

2012年3月には、大阪維新の会が提案した「大阪府職員基本条例」が可決された。例えば、府議会議院の定数は現在109名だが、2015年4月に実施予定の一般選挙では定数が88人に削減される。大阪維新の会は都道府県では「人口10万人あたり議員1人」という基準を考えているという。

また、職員評価や処分厳格化を規定しており、「職員が上司の職務上の命令に従わない場合は戒告、減給、停職または免職ができる」「一定の勤続年数がある者は、府が財政的援助を行っている法人への就職ができない」などの内容が盛り込まれている。

 

大阪市には「闇」がある

大阪市役所では、ヤミ便宜供与、実質的ヤミ専従、違法な政治活動、人事介入、規則に違反する疑いのある随意契約、区役所と地域団体の不透明な関係、頻発する不祥事などが次々と明らかになっている。問題の存在が疑われたなら調べるのは当然であり「人権侵害」にはあたらない。調べられる側は、そうした実態があるからこそ阻む必要があったのだろう。

 

19 大阪維新の会は脱藩官僚が集う第二霞ヶ関

特別顧問はビジネスにはならない

大阪維新の会の周辺には多くの「脱藩官僚」がおり、さしずめ第二霞ヶ関である。特別顧問の報酬は2時間以下だと2万2000円で、1日上限5万5000円。メールはすべて公開されるが、メールのやりとりには報酬は発生しない。直接的なビジネスとしてのうまみはあまりない。

 

本当の報酬は道州制・歳入庁の実現

道州制という地方分権と歳入庁の実現が、著者にとっての報酬である。中央ではできなかったが、大阪で切り開く可能性があるのである。

 

つくろうと思えば利権もつくれるが…

道州制にかかわる法律を法律の立案は、霞ヶ関官僚を除けば著者たちの「政策工房」の独壇場である。その意味で、利権をつくろうと思えばつくれるが、それは行わない。大阪が地方分権に本気で取り組んでいるからこそ、著者も本気の法案をつくるのである。

 

脱藩官僚の意見はあくまでセカンドオピニオン

本来の霞ヶ関(第一霞ヶ関)と、第二霞ヶ関(大阪維新の会)を使い分ければよい。双方を競わせれば、いい政治ができるだろう。これと似たようなことをやっていたのが小泉純一郎元首相である。

 

第一霞ヶ関と第二霞ヶ関の戦い

第一霞ヶ関と第二霞ヶ関を公開の場で議論させて、どちらがいいかを判断すればよい。脱藩官僚には既得権がないためしがらみがなく、そもそもほしがってないからすっきりした意見が多い。

 

「霞ヶ関の反社会的勢力」の政策論は強い

例えば、消費税について、軽減税率と、歳入庁を使った給付付き税額控除で議論を戦わせたら、普通は給付付き税額控除が勝つ。しがらみがないと本当にいいものを考えればいいからである。

加工を排除してそのままを見せ、世間がどちらを支持するかを見極め、判断する。それが政治家の仕事である。

 

最後に

震災復興は東北州を実現することによって、もっと早く実現できた。自ら法案作成ができなければ、官僚によって「骨抜き」にされてしまう。本来の教育委員会制度を貫徹すると、文科省はいらなくなる。公務員制度改革は国では進まなくとも、地方では進めることができる。戦略は細部に宿る

次回は、橋下徹、マスコミ、文化、公開主義 大阪維新の会の真相についてまとめる。

大阪維新の真相


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