electroencephalography

タン・レイ 「脳波を読むヘッドセット」

「8秒間イメージするだけでものを動かすことができます」タン・レイは笑顔で語りかける。ここでは、120万ビューを超えるTan LeのTED講演を訳し、脳波を読む数百ドルのヘッドセットの可能性を学ぶ。

要約

タン・レイのびっくりするような新しいコンピュータインタフェースは、ユーザの脳波を読み取り、仮想的なオブジェクトや実際の家電機器を念じるだけで(それと少しばかりの集中によって)操作することができます。タン・レイがこのヘッドセットのデモを披露し、いろいろな応用例を紹介します。

Tan Le is the founder & CEO of Emotive Lifescience, a bioinformatics company that’s working on identifying biomarkers for mental and other neurological conditions using electroencephalography (EEG).

 

1 機械に脳が作り出す信号を解釈させる

これまでの私達の 機械に対する コミュニケーションは 意識的で 直接的なものに 限られていました。スイッチで電灯を点けるという 単純なことから ロボティクスのプログラミングのような複雑なものまで、機械に何かをさせようと思ったら はっきりと命じたり 一連のコマンドを与える必要がありました。一方で 人と人のコミュニケーションは ずっと複雑で ずっと興味深いものです。明示的には示されない 多くのことが考慮されるからです。表情やボディランゲージを読むことで 会話しながら気持ちや感情を 直感的につかみ取ることができます。実際これは私達の意志決定において 大きな部分を占めています。私達がビジョンに掲げているのは 人とコンピュータの対話の中に 今までにはなかった 人の対話の要素を導入することで、コンピュータが 直接命令されたことだけでなく 人の表情や 感情にも 反応できるようにすることです。そのための方法として 私達の制御や体験の中心にある 脳が作り出す信号を解釈するより 良い方法はないでしょう

 

2 課題は検出アルゴリズムと脳波観察装置

これはとても良いアイデアに見えますが ブルーノも紹介してくれたように 2つの理由により 容易なことではないのです。第一の問題は 検出アルゴリズムです。私達の脳には 活動状態のニューロンが何十億もあり 軸索を繋ぎ合わせると 17万キロにも及びます。これらのニューロンが情報を伝えるとき 化学反応が起こす電気信号を 計測することができます。脳の機能部位の 大部分は 脳の表層部分にあります。そして知的能力に使える領域を増やすために脳の表面には たくさんの皺があります。この皮質にある皺のために 脳表層の電気信号の解釈は 難しい問題となっています。皮質の皺の入り方は 指紋のように 個人ごとに 異なっているのです。だから信号が 脳の同じ機能部位から来ているにしても この皺になった構造のために 物理的な位置が 個人ごとに大きく異なり たとえ一卵性双生児でも 同じにはなりません。表層の信号に 一貫した解釈はできないのです。私達はこの問題の解決のため 皮質の皺を展開するアルゴリズムを作りました。それによって信号を その発生元に 対応づけることが可能になり 多くの人に適用できるようになったのです

もう1つの難問は 脳波を観察するための装置です。脳波測定には通常 センサが並んだヘアネットのようなものを使います 写真でご覧頂いているようなものです。その電極を 技師が伝導性の ジェルやペーストを使って 頭皮に取り付けるのですが これをやると あとで軽い 擦り傷のようになります。これはとても時間がかかりますし あまり快適なものでもありません。その上 こういったシステムは 何万ドルもするのです。

 

3 14チャネル高忠実度脳波捕捉システム

ここで去年の講演者であるエヴァン グラントに 登場してもらいましょう。彼は快く 私達の発明のデモへの協力を 引き受けてくださいました(拍手)。ご覧頂いている装置は 14チャネル 高忠実度 脳波捕捉システムです頭皮にジェルやペーストを 付ける必要はありません。装着して信号が安定するまで ほんの数分しかかかりません。ワイヤレスですので 自由に動き回れます。何万ドルもする従来の 脳波捕捉システムに対しこのヘッドセットは ほんの数百ドルしかしません検出アルゴリズムについてお話ししましょう。前に感情表現としての 表情の話をしましたが 個人に合わせた簡単な 感度調整だけですぐに表情の捕捉ができるようになります。今日は時間が限られていますので 認知セットだけを ご紹介します。これは心の中で 仮想的な物体を動かすというものです

 

4 脳の標準的な状態を設定する

エヴァンは 初めて このシステムを使うので 最初に新しいプロフィールを作ります。彼がジョアンなわけありませんね。「ユーザの追加」で エヴァンと入れます。認知セットを行うにあたって まずニュートラルな状態の信号による トレーニングから始めます。ニュートラルというのは 何もしない状態ということです。ただくつろいで リラックスします。これによって ベースラインというか 脳の標準的な状態を設定します。脳は人によって異なるからです。これには8秒かかります。それが済んだら ものを動かす課題をどれか選びます。ではエヴァン 心の中で明確に イメージできるものを選んでください。

 

5 8秒間「引く」をイメージする

「引く」をやってみます。では「引く」を選択します。エヴァンには 物体が画面の 手前の方にやってくるところを イメージしてもらいます。その間プログレスバーが 伸びていきます。最初は何も起きません。彼が「引く」をどう考えるのか システムはまだ知らないからです。8秒間「引く」ことを イメージし続けてくださいそれでは 1、2、3、はい いいでしょう。これを登録してやると 立方体を動かせるようになります。ではエヴァンに 「引く」ことをイメージしてもらいましょう。わぁ すごい! (拍手) びっくりしました

 

6 「消す」をイメージする

まだ少し時間があるようですので エヴァンにすごく難しい課題に 挑戦してもらいましょう。これが難しいのは 実際の世界には存在しないことを イメージする必要があるためです。「消す」をやります。移動に関するアクションであれば いつもやっている事なので 容易にイメージできます。でも「消す」というのは経験がありません。ではエヴァン 立方体がゆっくりと 消えていくところをイメージしてください。まずは練習です 1、2、3、はい じゃあ試してみましょう。ほら! 彼は本当に優秀です もう一度やってみて…。集中力が切れちゃったな(笑)。でも一度うまくいったのわかりますよね。あまり長くは 保てませんでしたけど さっきも言ったように これはイメージするのが とても難しいんです。これのいいところは 「消す」をどう考えるか ソフトウェアに いっぺん教えればいいということですこの中には機械学習アルゴリズムが入っていて…(歓声)。どうもありがとう すごい すごい(拍手)。本当にありがとう エヴァン おかげで素晴らしいデモができました

 

7 計測システムに機能を追加できる

ご覧頂いたように このソフトには計測システムがあって ユーザがシステムに 馴染んでいくのに応じて 機能を追加していくことができるんです。そうやってシステムが いろいろ異なる考えを 識別できるようになります。一通り検出のトレーニングが済んだら それぞれの考えを コンピュータや アプリケーションや 装置に 割り当てることができます。

 

8 念じるだけでヘリコプターを飛ばせる

いくつか例をお見せしましょう。この新しいインタフェースに どれほど多くの応用があるか。たとえばゲームや仮想空間では 普通に表情を直感的に使って アバターや 仮想のキャラクタを 操作することができます。もちろん魔法のファンタジーを体験し 心で世界をコントロールすることだってできます。それからまた 色や 光や 音や 特殊効果も 感情の状態に応じて変化させ リアルタイムで体験を増幅することができます。世界中の研究者や開発者によってロボットや機械を使った応用例が 開発されています。たとえば ここではオモチャのヘリコプターを 飛べと念じるだけで飛ばしています

 

9 表情で電動車椅子をコントロールできる

このテクノロジーは実用的なことにも 応用することができます。たとえばスマートホームです。制御システムのユーザインタフェースを通して カーテンを開けたり 閉めたりできます。それにもちろん照明を 点けたり 消したりもできます。最後に 本当に人の生活を変える応用です。電動車椅子のコントロールができるんです この例では 表情を移動コマンドに対応づけています。右目のウィンクで右に曲がります 左目のウィンクで左に曲がります。笑顔で直進しますここでは…ありがとうございます(拍手)

 

10 この技術の見極めに力を貸してほしい

現在可能なことのほんの一部をご紹介しました。コミュニティからの意見や 世界中の開発者や研究者の参加によって、このテクノロジーがこれからどこへ向かうべきか 見極めるのに力を貸していただけたらと思います。どうもありがとうございました。

 

最後に

「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない」(アーサー・C・クラーク)。まさに。

和訳してくださった Yasushi Aoki 氏、レビューしてくださった Yuki Okada 氏に感謝する(2010年7月)。

新版 脳波の旅への誘い―楽しく学べるわかりやすい脳波入門


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