前回は、個人向け国債は価格変動リスクのない債券である 国債・社債・地方債についてまとめた。ここでは、オプション取引を理解できない人は手を出すな! EB債と特約付商品について解説する。
1 EB債
高金利の債券のカラクリ
EB債(Exchangeable Bond:他社株転換条項付債券)とは、株価に応じて株式に転換される債券(仕組み債)で、“株式のオプション取引”を組み込んだ金融商品である。株価変動リスクを引き受ける代償として高金利を得られるのが特徴だ。主に3つの条項があるが、特に「他社株転換条項」と「期限前償還条項」は購入者側にとって不利な条項である。
1つ目の「他社株転換条項」は、償還対象株式の価格(終値)が特定の水準(行使価格)より安くなっていたら、満期日には債権の元本金額(額面金額)の代わりに株式が渡されるというものである。株価下落時には株価が下がれば下がるほど損が拡大する可能性があるのに、株価がいくら上がっても利益は債券の金利が高くなっている部分だけに限定されるのだ。つまり、この条項のために株価上昇のメリットを十分に享受できない。
2つ目の「下方修正条項」は、広告の作成から発売(受け渡し)されるまでの数日のズレの分、株式転換の基準となる株価を修正するための条項である。行使価格の下方修正がなされると、株式に転換された場合にも端数金額の分は現金で払い戻すことになる(現金調整額)。
3つ目の「期限前償還条項」は、少しでも株価が値上がりしていれば期限前償還されてしまうことである。たしかに期限前償還されれば額面金額が返ってくるが、その時点までの利息しか受け取れないため、高金利のメリットをほとんど享受できないのである。
2 特約付き外貨預金
外貨での運用商品にも、EB債と類似の仕組みを持つものがある。「特約付き外貨預金」がその代表格で、為替レートに応じて外貨預金に転換される円預金で、“通貨のオプション取引”と預金を組み合わせた金融商品である。為替変動リスクを引き受ける代わりに、円預金の金利が少し高くなるのが特徴だ。しかし、為替レートが円高になった場合には一般的な外貨預金と同様の為替差損を被るが、円安になった場合には為替差益を一切得られないという不利な商品である。しかも、外貨預金に転換された場合には為替手数料もかかるのだ。
3 プライベートバンクサービス
プライベートバンクサービスの正体
プライベートバンクサービスとは、金融資産が1億円を超える人たち(富裕層)向けに行われる各種金融サービスの総称である。その本質は「金融サービス業における高級ホストクラブ(高級風俗店)」であり、大金持ちからたくさんの手数料をもらうことにある。その分、客を気持ちよくさせる技術(話術や各種サービスなど)を駆使し、「高度な金融技術」というラベルを貼った「特別な金融商品」(複雑で手数料の高い金融商品)を提供してくれるのだ。
4 特約付き外債
もっと複雑な特約付き外貨運用
「特約付き外債」とは、通貨のオプション取引と債券をセットにしたもので、”経路依存型オプション取引“と呼ばれる特殊な取引を使っている商品である。経路依存型オプション取引とは、損得を評価するための経路が複数あるため、単純に比較しにくいという特徴を持つ。例えば、1年間の為替レートの変動パターンに応じて転換条件が変わるというものである。ノックインレベル(転換の基準となる為替レート)や「償還の条件」などで転換条件を複数にすることによって、金融機関側が損をしない仕組みにしていることが多い。
最後に
EB債は株式のオプション取引を組み込んだ債券。特約付き外貨預金は通貨のオプション取引を組み込んだ預金。プライベートバンクサービスの本質は高級ホストクラブ(風俗店)。特約付き外債は通貨のオプション取引と経路依存型オプション取引を組み込んだ債券。複雑な商品には理由がある。
次回は、利率保証付き・変額年金保険などは老後の不安につけ込む 年金保険についてまとめる。
![]() |