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デビッド・バインダー 芸術フェスティバル革命

「フェスティバルは街をより住みやすい場所にします」バインダーは語りかける。ここでは、60万ビューを超える David Binder のTED講演を訳し、町が自己表現するのと手助けする芸術フェスティバルについて理解する。

要約

ブロードウェイで有名な演出家デビッド・バインダーは、昨年の夏、オーストラリアの小さな町で、住民が自分の庭で踊り演技してるのを観て感動しました。観客と演出者の境界をとりのぞき、町が自己表現をするのを手助けするという、芸術フェスティバルの新しい側面を紹介します。

A four-time Tony nominee, theater producer David Binder is interested in taking performances off the stage.

 

1 住民がパフォーマーとして…

シドニー、生まれてからずっとシドニーに来たいと思っていました。 空港からホテルに着いてチェックインすると、 ロビーにシドニーフェスティバルの パンフレットがありました。ざっと目を通すと 「ミント:ライブ」というショーを見つけました。 こう書いてありました。「ミントの郊外の通りを舞台に 国際的なアーティスト達が ミントの住民と 共演します」

ミントという場所はどんなところだろう? 後でわかったのですが、郊外の発達したシドニーの 南西1時間ほどの所にミントはあります。 オーストラリアの初日に行こうと思っていた場所というわけでは ありませんでした。 ハーバーブリッジかボンダイビーチに行くつもりが ミント?でも、私はプロデューサーです。 地域独自の演劇プロジェクトを 見ないわけにはいきません(笑)

金曜日の午後のラッシュにもまれて着いた そこで目にしたことは、二度と忘れません。 パーフォーマンスを見るため 地域の家から家へと観客は歩きまわります。 住民がパフォーマーとして、 自分の家から出てきて、 芝生や表の道路で 自伝的なダンスを演じたのです(笑) イギリスを本拠地とするパーフォーマンス集団 「ローン・ツイン」との共作です。 ローン・ツインは、ミントまで来て 住民と協力し、ダンス作品を創りあげたのです。

 

2 徹底的にオープンな「ミント:ライブ」

このインド系オーストラリア人の少女が家から出てきて 家の前の芝生で踊り始めます。 この音と騒ぎは何事だと 窓から覗いたお父さんも すぐに娘と一緒に踊り始めました。 さらに下の妹も加わりました。 あっというまに、家族みんなが自分の家の前で 楽しげで熱狂的な踊りを始めたんです(笑)

そして、この地域を歩きまわりながら 私が驚き感動したのは このイベントがどこまでも 地域のものとして行われていること。 「ミント:ライブ」は、地元シドニーの人と 国際的なアーティストを対話させ、 シドニーの多様性を見事に花咲かせました。

「ミント:ライブ」を制作したシドニーフェスティバルは、 21世紀の新しいタイプの芸術フェスティバルの代表です。 これらのフェスティバルは、徹底的にオープンです。 町やコミュニティーを変身させます。

 

3 フェスティバルの歴史

これを理解するために、フェスティバルの歴史を 振り返ることは意味があることでしょう。 現代の芸術フェスティバルは、世界大戦の 瓦礫の中から生まれました。 人間の魂を最高に表現するものとして 文化の集う場として 市民が主催する毎年のイベントです。 1947年、エジンバラ・フェスティバルが生まれ、 アビニョンが生まれ、その他たくさんのフェスティバルが 立ち上げられました。 生みだされた作品はとてもレベルの高い芸術で、 アンダーソン・ローリーやクニングハム・マース こんな回廊を作ったレページ・ロバート などスターも生まれました。 独創的な「マハブハラタl」や 歴史的名作「海岸のアインシュタイン」もありました。

しかし時がたつにつれ、 古いフェスティバルが地位を得る一方で 文化と資本主義とが加速し インターネットは全てを一緒くたにして、 ある意味で階級が消え去るとともに、新しい― フェスティバルが出現しました。

前からのフェスティバルも盛んでしたが、 ブライトンやリオ、そしてバース、新しい何かが登場しています。 とても違ったフェスティバルでした。 これらのフェスティバルは、オープンでした。 ミントのように、地域と世界との対話が 欠かせないと理解しているからです。 観客が受身で見るだけでなく、役者として― 主役や脇役として参加することを求めるからオープンなのです。 想像力を建物の中だけに留めておけないことが わかっているからオープンなのです。 また作品は地域に特有だったり 戸外で演じられるものが多いのです。

 

4 観客が作品を作り上げる必須の役割を担う

新しいフェスティバルでは、観客が 作品を作り上げる必須の役割を担うのです。 私が演出する「デラガルダ」や「パンチドランク」といった集団は 観客を舞台の中に配置して、 完全に投入する体験を作り出します。 また、ドイツのパーフォーマンス集団のリミニ・プロトコルは もっと先のレベルまで進めました。 「100%バンクーバー」「100%ベルリン」などのシリーズでは、 リミニ・プロトコルは、社会を反映させたショーを 作りました。 リミニ・プロトコルは、ショーの3ヶ月前から準備を始め、 その都市のその時点を代表する人種、性別、 社会階層を反映させた100人を選び、 その100人の人が、 彼ら自身の話や人生を語って、 全体としてその都市のその時点のスナップショットになっているのです。 「リフト」は、常に会場の使い方の先駆者でした。 演劇やパフォーマンスは、どこででもできると 理解しているのです。 学校の教室でも、ショーはできます。 空港でも(笑) デパートのショーウィンドウでも。

 

5 芸術家は探検家

芸術家は探検家です。誰よりも上手に、町の新しい面を示します。 芸術家はまだ見出されていない町の片隅に私達を導いたり、 あるいは毎日前を通り過ぎているのに 一度も入ったことのない建物のなかへ私達を導いてくれます。

芸術家は人生で見落としがちなことを 実際に私達に見せてくれるものだと私は思います。 「バック・トウ・バック」は、知的障害のある人々による オーストラリアのグループです。 ニューヨークのスタテン島の船着場で、ラッシュアワーに すばらしいショーを見ました。 我々観客は、イヤホーンを与えられ、 ターミナルの片側に座りました。 役者たちは私達のすぐ目の前にいて、 通勤者の中にまざっています。 役者達の言葉は聞こえても、 彼らを見分けることはできないのです。 バック・トウ・バックは、地域独自の演劇で、それを使って私たちに、 日常生活の中で誰を、何を見ないようにしているか、 それとなく教えてくれるのです。

 

6 「ロイヤル・デラックス」の類まれなパフォーマンス

そして地域と世界との対話とか、 観客が参加者や役者そして主役となること、 場所を革新的に使うこと、それらすべてが すばらしいフランスのグループ「ロイヤル・デラックス」の 類まれなパフォーマンスに結実しています。 ロイヤル・デラックスは、 巨大人形を町に繰り出し、数日そこに飾ります。

「サルタンの象」で、ロイヤル・デラックスはロンドン中心街を訪れ、 巨人な少女と彼女の友達でタイムトラベラーの象の 静物像を展示しました。 数日の間、巨大な都市は、尽きることのない可能性に支配されたコミュニティーに変身したのです。 ガーディアン紙の記事です「芸術が変身することだとすれば…これほどの変身体験は他にないだろう 「サルタンの象」が体現したものは、 単に芸術的な町の占領や 人々が街道を取り戻したという以上の何かである」

 

7 町をより住みやすい場所にする

フェスティバルが町にもたらす経済的効果を語ることもできますが しかしそれ以外に興味深いことがあります。 町が自己を表現するのに、フェスティバルがいかに役立ったか、 町自体を取り戻すのに、どんなに助けになったかです。 フェスティバルは、多様性を推進し、 町の人々に会話を取り戻させ、 創造力を高め、 住民のプライドを満たす機会を与え、 精神的な健康を増進します。 一言で言えば、町をより住みやすい場所にするのです。

例を挙げましょう。 サルタンの象がロンドンに来たとき、 7月7日からちょうど 9ヵ月でした。あるロンドン住民の言葉です。 「私の娘は、ロンドンの爆破事件後初めて元気な声で電話をしてきました。 彼女は他の人たちと集い、サルタンの象を観て、そしてそれがすべてを変えたのです」 ガーディアンのガードナー・リンは書きました。 素晴らしいフェスティバルは、世界地図や町の地図、 そして我々自身の地図を示すものだが、 しかし、フェスティバルのモデルは誰かが決めるものではない」 フェスティバルの輝かしい点は、 新しいタイプのフェスティバルが、今日の私達の生活の複雑さと興奮とを、 完全に捉えていることにあると私は考えています。 ありがとうございました。(拍手)

 

最後に

徹底的にオープンな「ミント:ライブ」。フェスティバルの歴史は観客が受身のものから参加するものへと変化していき、作品を作り上げる必須の役割を担った。フェスティバルは町をより住みやすい場所にする。芸術家は探検家

和訳してくださったhiroko fujikawa 氏、レビューしてくださった yuto ito 氏に感謝する(2012年6月)。

フェスティバル/トーキョー13ドキュメント


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