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金融業は「お金という商品」をレンタルする商売 資金調達の基礎知識

前回は、資産形成は3つの変数で決まる 収入、支出、運用見回りについてまとめた。ここでは、金融業は「お金という商品」をレンタルする商売 資金調達の基礎知識について解説する。

8 金融とは

借金を学ぶ理由

借金を学ぶ理由は、ファイナンス(資金調達)に関する無知によって人生を棒に振らないようにするためである。例えば、「借金は悪だ」と教えられながら35年もの長期の住宅ローンを組み、年収の何倍もの借金をして平然としている人がいる。そもそもの「借金」の意味すら知らずに。

借金はお金で時間を買う行為であり、いますぐ夢を実現するための魔法の道具ともいえる。時間をかけてお金を貯めなけれなければ手に入らない家や店も、住宅ローンや事業資金調達をすることで、今すぐ自分のものにすることができる。

 

金貸しより普通の人のほうが怖い

「金貸しより素人のほうが怖い」こう言われる理由は、一部の素人(普通の人)が自己破産を武器に、借りたお金を踏み倒すことがあるからである。信用して貸したお金を返してもらえないこともある、これが金融業という仕事である。

 

だまされることを望む人たち

一方で「信用」は金融機関の側にも必要不可欠である。大手銀行の窓口で営業されるのと、あまり知られていない金融機関の名刺で営業されるのとでは、その安心感に大きな差がある。しかし、世の中には相手の信用よりも自分の欲得を優先させる人が一定数おり、こうした素人をカモとして丸裸にする金融機関があるのである。

 

信用を補完する工夫

信用を補完する工夫の例として、以下の3つがある。

  1. 担保:自宅、婚約指輪、ロレックスの時計など
  2. 保証人:親族、知人など
  3. 金利を上げる:出資法上限金利の20%で貸すなど

 

保証人という担保

保証人とは借り手の人間関係を資産化し、担保として提供したものと考えられる。その意味で、不動産担保ローン(不動産)、オートローン(自家用車)、証券金融(株式や債券などの有価証券)などと同じである。

金融機関に担保を提供すれば、信用力が補完された分だけ借入金利は低くなる。不動産などの有効な担保を持たない顧客が、低利の融資を受けるための合理的な仕組みともいえる。目論見どおりに返済が行われさえすれば、借り手は安い金利で資金調達でき、保証人は借り手からなんらかの報酬を得られ、金融業者は元金と利息を回収して適正な利益をあげられるという、「三方一両得」の話になるのである。

 

金利のグレーゾーン

日本には「利息制限法」と「出資法」という金利を規制する2つの法律がある。前者は罰則規定がなく有名無実化していたが、後者には罰則規定があり、違反業者は貸金業の登録を取り消されてしまう。この利息制限法と出資法の上限金利の差が、金利のグレーゾーンといわれていた

しかし、2010年6月18日に出資法が改正(完全施行)がされ、上限金利の引き下げが行われた。これによって、貸金業者は利息制限法に基づき、貸付額に応じて15~20%の上限金利での貸付けを行わなければ、行政処分(超過分は無効)や刑事罰の対象となったのである。

 

善意の結末

こうした上限金利の引き下げという「善意」が行われた結果、中小貸金業者がつぶれて寡占化が進み、大手貸金業者と闇金融の二者択一の状態に陥ってしまった。つまり、大手貸金業者に融資を断られると、闇金融に頼らざるを得ないという状況になってしまったのである。

闇金融の世界での金利は「トイチ」(10日で1割ずつ複利で利息が増える)という年利換算で2700%といったものが有名である。

2008年9月15日のリーマンショックに象徴される、アメリカのサブプライムローン(日本でいう消費者金融や商工ローン)市場でも、金利は15〜25%とされているため、市場で公平な競争が行われるなら価格(金利)は一定の範囲で収まる。同様に、アメリカのブルーカラー労働者や年金生活者向けの短期貸し出しに特化した「ペイデー・ローン」でも、平均金利は500%と闇金融よりもはるかに良心的である。

このように、法で上限金利を定めることで、禁酒法が密造酒の闇市を作ってしまったように、善良な消費者が反社会的組織に搾取される事態を招いているのである。

 

9 信用とは

金融業はレンタルビデオ屋と同じ

金融業は「お金のレンタル業」であり、金利とは「レンタル料」のことである。貸し出す商品が「お金」になり、レンタル料を前金でもらう代わりに金利として後取りしているだけである。レンタルビデオ屋と違うのは、相手の信用力を見てお金のレンタル料(金利)を変えていることである。金利を変えるルールは以下の3つである。

  1. 信用力が高い(リスクが小さい)=金利が安い
  2. 信用力が低い(リスクが大きい)=金利が高い
  3. 信用力が基準以下(リスクが極めて大きい)=貸さない

 

金融の世界の「前科者」

銀行のカードローンやクレジットカード会社(信販会社)のキャッシング付カードを申し込む際に、最初に問題にされるのが返済履歴である。金融機関は、あなたがこれまで返済を踏み倒したこと(前科)はないかといったことを、最多で4つのデータベースを参照している。

 

4つの個人情報データベース

4つの個人情報データベースとは以下のものである。

  1. 全国銀行個人信用情報センター(全銀協=銀行系ローン)
  2. CIC(指定信用情報機関)(クレジットカードなど)
  3. JICC(日本信用情報機構、元CCB)(クレジットカードなど)
  4. 全国信用情報センター連合会(全情連=消費者金融)

以前はこうしたデータを本人が見ることはできなかったが、現在では、本人もしくは本人の代理人に限り閲覧できるようになっている。

 

ブラック情報は全金融機関で共有されている

事故情報(延滞や貸し倒れ)や破産宣告などのブラック情報は、ほぼすべての金融機関にその情報が流れるようになっている。そのため、自己情報が載っている人には、金融機関は絶対にお金を貸したりクレジットカードを作ったりしない。5〜10年でブラック情報は抹消されるが、十分に注意が必要である。

 

個人情報を開示してみよう

情報開示の方法は、運転免許証やパスポートなど本人確認のできる書類を持って「情報開示センター」に行くだけである(CICとJICCでは1000円の手数料が必要)。引越などによって情報が過去の住所で登録されている場合があるので、これまで住んでいた住所をある程度控えておくとよいだろう。

ただし、4.の全情連のデータは利用履歴しか登録されず、ただカードを持っているだけでは記録が出てこない。しかし、一度でも消費者金融を利用すれば、その事実はクレジット会社や信販会社など他の金融機関にも筒抜けになってしまう。そのため、緊急事以外には消費者金融を利用するのは避けたほうがよいだろう。

 

自分の借入枠を把握する

いくらまでだったらお金を貸してくれるかという借入枠は、本人の年収に応じて目安が決められている。この上限は金融機関ごとに異なるが、銀行の場合は年収の3分の1〜2分の1程度である。クレジットカード会社の場合は、できるだけカード発行枚数(手数料収入)を増やしたいという目論見があるので、販促期間中などでは年収を超えていてもカードを発行してくれる。

 

信用力の点数化

信用力は、借入枠以外にも職業(年収)や家族構成などによって点数化される。日本の金融機関は、会社員に甘く自営業者に冷たい傾向があるので、クレジットカードが必要ならばサラリーマンのうちに作っておくほうがよい。

 

10 金利

金利の決め方

金利(レンタル料)はそのときの需要と供給によって決まる。一般に金利は、中央銀行が決める政策金利(公定歩合)と、金融市場が決める短期金利や長期金利が基準となる。政策金利とは、中央銀行が民間銀行にお金を貸すときの金利で、国家が決めた基準金利である。

また、中央銀行はお金をいくらでも印刷することができることから、お金(貨幣)とは中央銀行の借用証書にすぎないことがわかる。通常の借用証書には利息がつくが、中央銀行が発行する「貨幣」という借用証書には利息がつかない。この差から生まれる利益をシニョレッジ(通貨発行益)といい、これが景気対策に金融緩和が効く大きな要因である。現在の日銀は金融緩和によって「資金供給量と国債保有額を2年で倍増させる」という目標を立てている。

 

市場が決める基準金利

短期金利や長期金利は金融市場が決める金利である。短期金利は、金融機関同士が短期(通常、翌日返済=オーバーナイト)の資金を貸し借りするコール市場で決まる。この短期金利と政策金利との差をスプレッドという。

一方、長期金利は10年ものの国債価格を基準に債券市場で決められる。債券市場の参加者は、将来のインフレ率や金利動向を予想して、金利が下がると思えば国債を買い、金利が上がると思えば国債を売る。このように長期金利は、以下のように国債価格と連動しているのだ。

  1. 国債価格が上昇すれば金利は下がる
  2. 国債価格が下落すれば金利は上がる

 

プライムレートとTIBOR

政策金利(公定歩合)、短期金利、長期金利以外の代表的な金利指標として、プライムレートとTIBOR(タイボー)がある。

プライムレートとは最優遇貸出金利のことで、銀行が財務内容の優れた企業などに融資する際の金利のことである。長期融資の金利を「長プラ」、短期融資を「短プラ」という。以前は日本興業銀行(現・みずほ銀行)が、金融債の金利を基準に大蔵省(現・財務省)と相談しながら決めており、各行がそれに追随する護送船団方式の典型のような存在だった。しかし、金融ビックバンなどの流れの中で、現在は有力都銀が独自基準で決める「変動型長期プライムレート」や、CD(譲渡性預金)などの市場金利をもとに決められる「新短期プライムレート」にとって代わられている。

TIBOR(Tokyo InterBank Offered Rate)は、国内の金融機関同士が資金を貸し借りするときの基準金利である。無担保コール市場の実勢を反映した日本円TIBOR(16行)と本邦オフショア(国際金融)市場の実勢を反映したユーロ円TIBOR(15行)の2種類があり、それぞれ1週間もの、1ヶ月~12ヶ月ものの13種類が公表されている。各営業日の毎朝11時に、全銀協(全国銀行協会)の指定銀行が一斉に対金融機関向けの貸出金利を提示し、上位2行と下位2行を除いた銀行の金利を平均して計算される。

変動金利型の住宅ローンでも「TIBOR+スプレッド」で金利を決めるものが増えているため、銀行のローン担当者に聞いてみてもよいだろう。

 

固定金利と変動金利

住宅ローンなどには固定金利と変動金利のいずれかがある。それぞれの金利がどのように決まるかといえば、変動金利は短期プライムレート(短プラ)プラスアルファ、固定金利は10年であれば新発10年国債の流通利回りを基準とするのが一般的である。

固定金利と変動金利のどちらかが有利ということはない。金利変動のリスクを貸出側が引き受けるのが固定金利で、借入側が引き受けるのが変動金利なだけにすぎない。固定金利が変動金利よりも0.5〜1.0%程度高い理由は、この金利変動リスクを貸出側がとっているからである(2013年5月現在、固定金利は3.1%、変動金利は2.51%、フラット35は1.81%)。

そのため、変動と固定のどちらがいいかは、借入者の将来収入に依存する。景気とともに収入が増える人は変動金利でも大丈夫だが、そうでない人は固定金利がおすすめである(住宅ローン金利は「変動」と「固定」どちらがいいのか?)。

なお、金融機関が金利変動リスクを負うための保険料はデリバティブを使って計算されており、固定金利では「金利スワップ」使い、上限金利付変動金利は「金利オプションのプット」を買っている(詳細は省略)。

 

11 金融業者

金融業は「お金という商品」をレンタルする商売

金融業は、お金という商品をレンタルして金利というレンタル料を受け取る商売である。こうした商売が生まれた経緯は、ちょっとしたお金が必要になったときに親兄弟や友人知人を訪ね歩いて無心するより、それなりのレンタル料を払って業者から借りたほうが手間も時間も節約できるからである。

 

バンクとノンバンク

金融業は、銀行(バンク)と銀行以外(ノンバンク)に分けられる。バンクとノンバンクの大きな違いは、不特定多数の人からお金を預かることができるかどうかである。貸金業登録を行わずに不特定多数の人からお金を預かると、出資法違反で捕まってしまう。

このように、銀行(バンク)の定義はしっかりしているものの、ノンバンクは「銀行以外の、お金を扱うすべてのビジネスの総称」といった定義にしかならない。狭義のノンバンクは、特定の人からお金を借り(資金調達し)、不特定多数の人にお金を貸す貸金業登録業者ということになる。例えば、お金を貸す相手が個人であれば消費者金融やクレジット会社、法人なら商工ローンやリース会社である。

 

信販会社とクレジットカード

信販会社の主な業務はショッピング・クレジットで、高価な買い物(宝石や海外旅行など)に使う分割払いのことである。この分割払いを、カードを使って簡単にできるようにしたものが日本信販(現・三菱UFJニコス)などの信販系クレジットカードだった。

以前は信販系クレジットカードしか分割払いを行えなかったが、現在ではカード発行主体による機能はほぼなくなり、リボ払い(毎月の支払額を固定させる方式)なども認められている。

 

すべてのレンタル業は金融業である

「所有とは期間無制限でレンタルすること」と考えれば、所有はレンタル(リース)の一形態にすぎないといえる。例えば、高級車を買うためにカーローンなどで融資を受けて購入し、5年で飽きて買い換えるということと、リース業者から5年リースで車を借りることは一緒のことである。つまり、お金を借りて車を買うか、車そのものを借りるかは、話の順序が前後するだけで全く違いがないのである。

 

12 金融という仕事

金融業の基本構造はメガバンクから街金まで同じ

金融業の基本構造は以下の4つからなり、これはメガバンクでも街金でも全く同じである。

  1. 資金調達:お金という商品を仕入れること
  2. 顧客開拓:融資(貸出)先を見つけること
  3. 審査(融資):融資先の信用力を調査し、貸出金利を決めること
  4. 債権回収:商品(元金)とレンタル料(利息)を返済してもらうこと

 

0.002%の資金調達

資金調達のポイントは、最も安い元手でお金を集めることである。その方法は主に2つあり、一般の人から預金を集めることと、銀行から卸値で借りることである。後者は短期金融市場(コール市場)で行われており、銀行や大手証券会社などごく一部の金融機関にしか参加が認められていない。その意味で、全金融機関の中で最も資金調達面で有利なのは銀行である。

 

銀行が吉野家になる日

顧客開拓のポイントは、コスト削減である。土地代や人件費といった間接コスト(販売管理費)を削減できれば、その分商品(お金)の値段を下げることができる。例えば、インターネット・バンクにすることで預金金利の上乗せや貸出金利の引き下げ、送金手数料など各種手数料の割引などで顧客にアピールすることができる。金融業は誰から借りようが、その商品に差がないという際立った特徴を持つ。そのため、ITと非常に相性のいいビジネスなのである。

 

審査は職人芸からマニュアルへ

審査のポイントは、顧客の信用力に応じて金利を計算し、破綻リスク(貸し倒れ)を抑えることである。審査は金融機関の最も大切なノウハウにもかかわらず、日本の金融機関にはほとんどない。例えば、有担保融資の代表である不動産担保ローンでは「融資金額は不動産の時価の8割まで」とほぼ一律に決められている。それに「定期的にローンを返済できる人」という条件で、勤務形態や勤続年数、年収、家族の有無、ほかの借入の有無などを点数化して、融資するかどうかを決めているだけである。

無担保ローンも同様で、源泉徴収票などで年収を確認し「年収の3分の1」などの基準で一律に貸出枠を設定し、クレジットカードなどのほかの借入枠を確認した上で、勤務形態などを点数化して融資の可否を決めている。さらに、無担保ローンに関してはほとんどの銀行が自らリスクをとらず、系列のクレジットカード会社などに丸投げしている。

このように、シンジケート・ローン(協調融資)といった大口融資を除けば、融資業務においてもマニュアル化が進んでいるのである。

 

金融業の汚れ仕事「債権回収」

債権回収のポイントは、(合法な範囲で)どんな方法を使ってでも融資回収を徹底することである。「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」と言われるように、融資先の業績が悪いときには債権(融資したお金)を返してもらわなければならない。

しかし、1997年の金融危機まで、銀行は「利息さえ払っていればすべて優良貸出先」として、破綻寸前の借り手に対して借金の利子分を追加で融資したりしていた。この追加融資(追い貸し)で借金の利息を払ってもらえば、とりあえずは「正常」融資先になって、引当金を積んだり、大蔵省(現・金融庁)の検査で問いつめられたり、融資担当者が責任を取らされたりすることがなかったのである。

こうして「銀行から1000万円借りたら奴隷になるが、100億円借りれば王様になる」という現実が続いていたのである。

 

仕事よりも生命が大事

銀行マンの中にももちろん良心的な人もいて、こうした債権回収を誠実に行う人もいる。しかし、金融機関から100億円も借金するような人の多くは普通の人ではなく、回収担当者に嫌がらせを行うことが多かった。本人のみならず家族や子どもの生命の危機を感じさせたり、家に犬や猫の死骸が投げ込まれるということもあった。さらに、1993年には阪和銀行の副頭取が、1994年には住友銀行の支店長が殺されるといった事件も起こっている。

いかに仕事に対してマジメで誠実であっても、殺されてしまっては何にもなくなってしまう。金融業にはこうした負の側面もあるのである。

 

最後に

金融業は、交易や売春などと同様に、貨幣の誕生とともに生まれた人類最古のビジネスといわれている。キーワードは「信用」と「金利」であり、信用を正確に測り、それに合わせた金利を設定することがポイントとなる。つまり、信用からすべてが始まる。お金は信用から生まれる。なければ作ればいい。まずは自分を信じて努力しよう

次回は、借金はお金で時間を買う行為 クレジットカードから闇金融までについてまとめる。

「黄金の羽根」を手に入れる自由と奴隷の人生設計 (講談社プラスアルファ文庫)


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