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企業統治はメインバンク重視から株式市場重視へ 金融機関と金融仲介

前回は、資金を黒字主体から赤字主体へ円滑に移転すること 資金の貸借と金融についてまとめた。ここでは、企業統治はメインバンク重視から株式市場重視へ 金融機関と金融仲介について解説する。

1 日本の金融機関

日本の金融機関の分類

日本の金融機関は大別すると、①現金通貨(日銀券)を発行できる唯一の主体である日本銀行、②民間金融機関、③公的金融仲介機関に分類される。②は間接証券(預金証書など)の発行の有無で金融仲介機関とその他の金融機関(証券会社)に分けられ、さらに預金取扱機関(銀行)と非預金取扱機関(保険会社など)に分けられる。さらに、銀行は普通銀行(都市銀行など)、長期金融機関(信託銀行など)、協同組織金融機関(信用金庫など)に分けられる。

 

銀行を仲介とする資金の流れ

銀行・信託銀行を仲介とする資金の流れは、最終的借り手から借入証書・手形、債券・株式などが銀行・信託銀行に発行され、銀行・信託銀行から預金証書・信託証書が発行されるという形をとる。

 

日本の民間銀行

日本の民間銀行は、短期金融を主たる業務とする普通銀行と、長期金融を主たる業務とする長期金融機関、協同組織の形態をとる協同組織金融機関に分類される。

 

民間非預金取扱金融仲介機関

民間非預金取扱金融仲介機関には、証券投資信託委託会社、生命保険会社、損害保険会社、ノンバンクなどがある。

 

証券会社

証券会社の業務は売買関係業務である①自己売買業務(ディーラー業務)、②委託売買業務(ブローカー業務)、発行関係業務である③引受け業務(アンダーライター業務)、④売りさばき業務(セリング業務)に分けられる。

 

2 公的金融仲介機構

公的金融仲介機構の仕組み

民間の金融を補完すると言う目的のもとに、政府金融機関などから構成される公的金融仲介機構が存在する。この政府の金融活動の全体を財政投融資という。

 

3 金融仲介機関の機能

銀行の業務

銀行の業務は、決済手段と貯蓄手段の供給や金融仲介機能を果たすことである。金融仲介機能は、①情報生産機能、②リスク負担機能、③資産変換機能の3つである。

 

保険会社の機能

保険会社は保険というリスク回避手段を提供しながら金融仲介機能も果たしている。すなわち、保険加入者(貸し手)に保険証書という間接証券を売って得た保険料で、借り手が発行する本源的証券を購入することによって、貸し手と借り手の金融を仲介するのだ。なお、保険が成立するのは大数の法則が働くからである。

 

投資信託委託会社の機能

投資信託は小口の投資家に対して、分散投資によってリスクの軽減を図っている。

 

4 金融仲介機関と企業統治

所有と経営の分離と企業統治

金融仲介機関は資金の借り手である企業を監視する役割も果たしている。代表的監視者としてメインバンク制がある。メインバンクの特徴は以下の5つである。

  1. 当該企業と長期的・総合的な取引関係を維持している
  2. 当該企業に対して、最大の融資シェアを持っている
  3. 当該企業の主たる株主である
  4. 役員の派遣など企業と人的関係を持つ
  5. 当該企業が経営難に陥ったとき、企業を再建したり最悪の場合は解散させたりする上でイニシアティブを発揮する

 

アメリカの企業統治

アメリカの企業統治は、かつては外部の株式市場を通して経営の刷新を迫る形態であった。他方、個人が株式市場で株式を購入する直接投資から、年金や生命保険などの機関投資家を通じて株式を購入するという間接投資への移行が進んだ。最近のアメリカの経営者の所得は、自社株で支払われるストック・オプションの形をとることが多い。こうして経営者の利益と株主の利益とが一致するのである。

 

株式持ち合い制と企業統治の変化

戦後の日本では、株式の持ち合い制によって株式市場による企業統治はほとんど働かなかった。しかし、90年代に入って株価が低下し、銀行が大量の不良債権を抱えたことで、次第に株式持ち合いを解消する企業が増加している。今後は、日本でもアメリカ型の企業金融と企業統治が増加すると予想される。

 

最後に

日本の金融機関は、日本銀行、民間金融機関、公的金融仲介機関に分類される。民間金融機関は間接証券の発行の有無や預金取扱の有無などによってさらに分けられる。金融仲介機関の機能は、情報生産、リスク負担、資産変換機能の3つである。日本の企業統治はメインバンク制が主だったが、最近ではアメリカ型の株式市場に準ずるものが多くなってきている。時代によって金融仲介機関の機能も変化している

次回は、狭義の市場取引と相対取引、資本市場 資金循環と金融市場についてまとめる。

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