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日本で暮らすなら外貨建て資産はほとんど必要ない 外貨運用

前回は、予想される結果のバラツキと平均的に予想される利益 リスクとリターンについてまとめた。ここでは、日本で暮らすなら外貨建て資産はほとんど必要ない 外貨運用について解説する。

1 外貨預金

ネット銀行の強み

ネット銀行の強みは為替手数料の安さである。それは、店頭での事務処理が存在せず、インターネットによって自動的に連動させているからである。既存の銀行では為替連動リスクを銀行が持っているが、ネット銀行では外国為替市場での為替レートとほぼ連動させることで、そのリスクを回避しているのである。

 

2 外国為替証拠金取引

外貨預金以外での外貨運用

外国為替証拠金取引(FX:Foreign eXchange)とは、為替レートに関する”先物取引”の一種である。外貨預金よりも応用範囲が広い分、理解していないと大損する危険性もある。例えば、外国為替証拠金取引には通常の為替手数料のほかに、外貨の売値と買値の差である「スプレッド」という売買コストがかかる。このことを広告では隠し、スプレッド手数料を取る業者もある。さらに悪質な業者の場合、「手数料0円」をうたって客と直接取引を行い、無理やり損をさせて儲けようとするところもあるのだ。

 

3 外貨MMF

MMFは公社債投資信託のことで、株式では一切運用せず、安全性の高い国債や社債を中心に運用するものである。信用リスクは低く、手数料も安いため、普通預金に似た性質を持つ金融商品である。税制についても外貨預金と異なる扱いを受ける(詳細は省略)。外貨MMFとは、公社債投資信託を外貨で行うものである。

外貨預金と類似商品のコスト比較をすると、ネット銀行(ソニー銀行や新生銀行など)の外貨預金が最も安く、次いで証券会社の外貨MMF、最後に銀行の外貨預金となる。外国為替証拠金取引は、その業者の質によって大きく差が出るため、投資初心者は行わない方がよい。

 

サルFP氏の外貨運用指南

「外貨投資は生活のリスクを減らす」として、FP(ファイナンシャル・プランナー)などによって以下のような宣伝がされる場合がある。①円安が進むと輸入物価が上昇し、インフレが進み、円の実質的な価値が低下する、②外貨建ての資産を保有していると、円資産の目減りをカバーできる、③資産の3割くらいは外貨で持つことで為替差益が得られる。

しかし、これは円安リスクを過剰に考えており、以下のように反論できる。①日本の輸入依存度は約1割と世界で最も低いため、円安によってインフレが起きるリスクは小さい、②もしリスクを減らすとしても、外貨建て資産の比率は5%未満に抑えないとリスクは減らない、③金融資産が多くない人にとって、小額の外貨建て資産を保有するのはコストが割にあわない。

 

4 長期の外貨定期預金

まとめのクイズ

まとめのクイズとして、以下のような商品を考える。「高金利米ドル定期預金10年もの年利3.5%」「中途解約も可能」「円から外貨に交換の際は為替手数料無料」という3つの特徴を持つ外貨定期預金である。欄外に「税引き後金利は2.8%」「中途解約時の適用金利は年利0.09%(税引き後0.072%)」「外貨から円に戻すときの為替手数料は1円/ドル」と書いてある。

結論を言えば、①同条件の米国債を買った方が得、②10年間もの金利固定運用は、経済情勢や生活環境の変化から、おすすめできない、ということである。目先の好条件に飛びつき、自ら調べて熟考する手間を省くと危険である。

 

最後に

外貨預金はネット銀行を活用した方が手数料が安い。外国為替証拠金取引は”先物取引”の一種であり、初心者には大損する危険性がある。外貨MMFは普通預金と似た性質だが、ネット銀行の外貨預金のほうが有利である。長期の外貨定期預金を買うならば、同条件の外国債を購入した方がよい。外貨運用をするならネット銀行の外貨預金がおすすめ

次回は、個人向け国債・社債・地方債には金利変動がある 国債・社債・地方債についてまとめる。

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