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ピーター・ヴァン・マネン フォーミュラ1が赤ちゃんを救う?

「フォーミュラ1のデータシステムを使えば、救急車が集中治療室のベッドになります」ピーターは語りかける。ここでは、60万ビューを超える Peter van のTED講演を訳し、カーレースで用いられるデータシステムの応用可能性について理解する。

要約

フォーミュラ1のレーシングカーは、1レース走行中に何億ものデータポイントをピット・ガレージに送信し、リアルタイムでの分析・フィードバックを受けます。この詳細で緻密なデータシステムを他でも応用しない手はありません――例えば、小児病院で。ピーター・ヴァン・マネンが語ります。

Peter van Manen is the Managing Director of McLaren Electronics, which provides data systems to major motorsports series.

 

1 カーレースはまさに細部にいかに注意を払えるか

カーレースの世界は面白いものです。毎年 新しいレーシングカーを作っては 残りのシーズン全てを使って どうやったら そのマシンを良く 速くできるかを模索していきます。そして 次の年になれば同じことを繰り返します。目の前にあるレーシングカーはかなり複雑な構造をしています。シャシーは1万1千もの部品からなり エンジンだけで6千 電気系は8千5百の部品を使っています。つまり 故障を招きかねない部品が2万5千もあるわけです。カーレースは まさに細部にいかに注意を払えるかです。特にフォーミュラ1に関しては 常にマシンに手を加えて 速くしようとしています。2週間ごとに そのマシンに使う― 部品を 5千も新調しています。レーシングカーの5~10%が 1年を通じて 2週間ごとに変わっていくわけです。

 

2 2時間のレースで各マシンは7.5億もの数字を送信する

どうやってやるのか? まず レーシングカーから始めます。車体にたくさんの計測センサーをつけます。ここにあるレーシングカーで言えば レースで走るときにはおよそ120のセンサーをつけます。そのマシンに関する あらゆることを計測し データが記録されます記録するのは データーシステム内の500のパラメーター 1万3千の異常察知パラメーターそして 予定通りに動いていないことを示す事象です。それらのデータは ピット・ガレージに 無線で 毎秒2~4メガビットの速度でデータが送られます。つまり 2時間のレースで 各マシンは 7.5億もの数字を送信するのです。それは 私たちが一生で話す単語の数の 2倍に当たります ものすごい量のデータです。

 

3 データを取ってそれを行動に結び付けられる情報に変える

でも データを取り 計測するだけでは十分ではなく それで何かができないといけません。だから 私たちは多くの時間と労力を費やして データから 様々なことが 語れるようにしてきました。エンジンの状態がどうだとか タイヤのすり減り具合がどうだとか 燃料消費がどうか といったことです。要するに データを取って それを 行動に結び付けられる情報に変えるのです。

 

4 情報を見れば心不全になる5分ほどくらい前から、少し乱れてきているのがわかる

では データについてちょっと見てみましょう。こちらで見るのは 生後3ヶ月の患者のデータです。これは子どもで今ご覧いただいているのは実際のデータです。画面の右側に行くと いろんなことが ぐちゃぐちゃになっています。患者が心不全になっていっているのです。これは予見できないこととされていました。誰も予期しえない心臓発作でした。でも ここの情報を見れば 心不全になる5分ほどくらい前から 少し乱れてきているのが分かります。小さな変化が見て取れます。例えば 心拍数もそうです。これらは全て通常備わっている異常検知機能では 検知されませんでした。では なぜ 分からなかったのでしょう? これは予期しうる出来事だったのでしょうか? データのパターンをもっとよく見たら 助けるために何かできたのでしょうか?

 

5 どの患者も容体が悪くなり始めたら手を打つのに一刻の猶予もない

この子は ここにあるレーシングカーとほぼ同じで 生後3ヶ月です。この子は心臓に問題がありました。上のスクリーンに表示されているデータ 心拍数や脈拍 酸素 呼吸数などを見ると それらは全て普通の子どもとは違います。でも この子にとっては それが普通なのです。医療における課題の一つは 目の前にいる患者を診て その患者特有の状態を把握し 状態が変わり悪化しそうなときを どうやって見出すかなのです。レーシングカーのように どの患者も 容体が悪くなり始めたら手を打つのに もう一刻の猶予もありません

 

6 フォーミュラ1で2週間ごとに稼働させるデータシステムを病院に導入した

そこで私たちが行ったのがフォーミュラ1で 2週間ごとに稼働させるデータシステムを 病院のコンピュータに導入することでした。バーミンガム小児病院で行いました。小児集中治療で使われている― ベッドサイドモニタからデータをストリーミングし リアルタイムでデータを見ると同時に こちらがより重要ですがデータを蓄積して そこから学習できるようにしました。まず アプリケーションを適用してリアルタイムで データからパターンを認識できるようにしました。何が起こっているか見て 変化が起こりそうなときを察知するためです。

 

7 救急車がまさに集中治療室のベッドになる

カーレースではみんな ちょっと野心に満ちていて 恐れを知らず 時にちょっと傲慢です。だから 私たちは病院に救急搬送されてくる― 子どもたちも見ることにしました。病院に到着するまで 待たないといけない理由なんてないでしょう。そこで リアルタイムのネットワークを 救急車と病院との間でも作りました。通常の3G回線を使ってデータを送るのです。救急車が まさに集中治療室の ベッドになるのです。

 

8 医学的な解釈をするまでもなくデータが語りかける

私たちはデータを分析し始めました。上のグラフにある いろんな色の波線は 通常 モニターで見るデータで 心拍数 脈拍 血中酸素濃度 呼吸数です。下にある 青と赤色のラインが 興味深いものです。赤のラインは 自動で算出された― 早期警告スコアで バーミンガム小児病院ではすでに使用しています。2008年から導入していて 病院内での 心不全や 心停止を防いできました。青のラインが示すのは パターンの変化で それは即座に見て取れます。医学的な解釈をするまでもなく データが語りかけるのです。データは 何かがおかしいと訴えています。

 

9 状態が悪くなり始めるとラインは赤色になる

そして 赤と緑の固まりで示されているのは 細かなデータを それぞれ互いに プロットしたものです。緑色は その子にとっては普通の範囲のことで 「通常のクラウド」と呼んでいます。状態が変わり始める― 状態が悪くなり始めると ラインは赤色になります。ここに高度な科学はありません。すでにあるデータを違った形で表示しているだけです。データを増幅させ医者や看護師に手がかりを与え 何が起こっているか可視化するのです。同じように 優秀なレーシング・ドライバーは こうした手がかりを頼りにブレーキや コーナーを曲がるタイミングを 判断しています。医者や看護師が問題を察知できるよう 手助けする必要があります。

 

10 ワイヤレス接続の環境があれば遠隔治療ができる

私たちには とても野心的なプログラムがあります。もう 変革に向けたレースが始まっているのです。大きなことを考えていますがそうすべきなんです。私たちのアプローチはもしうまく行けば 病院の中だけで終わりません。その壁を越え 広めることができます。今のように ワイヤレス接続の環境があれば 患者や医者 看護師たちが 常に 同じ場所にいる必要はありませんし 全員が一緒にいなくてもいいんです。そして 私たちの3ヶ月のかわいい車も レース場で走らせ 安全を確保しながら より速く より良いものにしていくのです。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

フォーミュラ1で使われているデータシステムを使えば、遠隔医療が容易になる。背景には大量のデータがある。遠隔治療は目の前に

和訳してくださった Yuko Yoshida 氏、レビューしてくださった Rosa Kai 氏に感謝する(2013年8月)。


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