fractals

ブノワ・マンデルブロ フラクタルと荒さの科学

「フラクタルの数学は、荒さの複雑さと人知を超えた複雑さの中に秩序を見つけるという特徴を持ちます」ブノワは語りかける。ここでは、90万ビューを超える Benoit Mandelbrot のTED講演を訳し、フラクタルの数学と荒さの科学について理解する。

要約

TED2010において、伝説的な数学者ブノワ・マンデルブロが1984年のTEDで初めて話題にあげたテーマである、荒さの複雑さと人知を超えた複雑さの中に秩序を見つける、フラクタルの数学について語ります。

Benoit Mandelbrot’s work led the world to a deeper understanding of fractals, a broad and powerful tool in the study of roughness, both in nature and in humanity’s works.

 

1 荒さは人間の活動の一部

どうもありがとう。座らせてください。高齢なのでね (笑) これから話す話題は ある意味でちょっと珍しいことです。とても古いのでね。荒さは 人間の活動の一部です。これからもずっと 古代の学者がそのことについて書いています。荒さはまったく制御できないものだと。ある意味では 荒さは非常に複雑なように見えます。単にぐちゃぐちゃで きたなくて散らかっているように いろいろな種類の乱雑な状態があります。実は 完全な偶然によって 何年も前に私は この複雑さの世界に飛び込みました。とても驚いたことに 私は手がかりを見つけたのです。とても確かな手がかり 荒さの秩序と言うほかにありません。今日は お見せしたいと思います。このことが何を示しているか いくつかの例を 私は荒さという言葉が好きです。不規則さという言葉よりも なぜなら不規則さは 若かったころの私のように ラテン語を勉強したことのある人にとって 規則正しいことの反対の意味を持っています。でもそうではありません。規則正しさは荒さの反対語です。なぜなら世界の基本となっていることは とても荒いからです。

 

2 カリフラワーはとても複雑でとても単純

では いくつか絵をお見せしましょう。これらのうち いくつかは人工的に作られています。他のものはある意味で とても現実的です。これは本物です 野菜のカリフラワー では なぜ一般的で古くからある野菜 このカリフラワーを見せたのか。その理由は 古いかもしれませんが この野菜はとても複雑で とても単純だからです。両方とも カリフラワーの重さを計るとき もちろんとても簡単に計れます。また食べるときには 重さは重要ですね。では このようなことを考えてみてください。その表面を測ろうとしましょう。とてもおもしろいですよ。よく研いだナイフで カリフラワーのつぼみを 切り落としてみると それは 小さいカリフラワーに見えますね。さらに切っていきます。また切って 切って 切って どんどん切りましょう。でもそこには また小さいカリフラワーがあります。人間の経験では こういう珍しい特徴を持つ形は いつも存在しています。それぞれの部分は 全体の形と似ていますが もっと小さいもの では 人間はこの特徴に関して何をしたでしょうか。本当に少しのことだけです (笑)

 

3 私たちは荒さを測ることができる

私が実際にやったことは この問題を研究すること。そして大変驚くべきいくつかの発見をしました。私たちは 荒さを測ることができます。数によって 2.3 1.2 時々もっと大きい数字になります。あるとき 私の友人のひとりが 私を困らせるために ある絵を持ってきて このように言いました 『この曲線の荒さはいくつだい』 『そうだね 1.5よりちょっと小さいくらいかな』と答えました。それは1.48でした。いくらも時間はかかりません。このようなことを研究してきましたのでね。これらの数字は このような表面の荒さを示す数値です。これらの表面は 完全に 人工的だということを言わねばなりません。これらはコンピューターによってつくられました。入力したものは 数字だけです。そしてこの数字こそが荒さなのです。左の写真には たくさんの風景写真から得た荒さを使いました。右の写真には もっと高い荒さを使いました。しばらくすると 目は この2つをとてもよく見分けることが できるようになります。

 

4 カリフラワーの表面積はなにか

人は荒さを測ることを学ばなければならなかったのです。これはとても荒い これはなめらか これは完全になめらか というように わずかなものだけが 本当になめらかです。それでは 質問をしてみましょう。カリフラワーの表面積は何ですか。何度も何度も何度も 計測するでしょう。より精密に行うと 答えは毎回より大きくなります。とっても小さい間隔で測ったらね。では この湖の海岸線の長さは いくつですか。より精密に計測すると それは長くなってしまいます。海岸線の長さの定義は それがとても自然なように見えるのは たくさんの事例があるからであって 実は 完全に間違った考えなのです。そのようなものは無いのです。違う方法で計測しなければならないのです。

 

5 人間は十分に大きい肺を持っている

このようなことを知って どうしますか。とても驚くことに たくさんのことができるのです。まず初めに 人工的な風景は いくらか私が生み出したものですが 映画の中でずっと使われています。遠くに山が見えますね。山かもしれませんが たくさんの方程式かもしれません。簡単にできます。以前は時間を食ったものですが いまはどうってことありません。それではこれを見てみましょう。本物の肺です。肺はとても奇妙な器官です。肺はとても軽いと 私たちがよく分かっています。肺の体積はとても小さいのです。では 肺の表面積はどうでしょうか。解剖学者はこのことをいつも議論しています。通常の男性の肺は バスケットボールのコートと 同程度の面積を持っている と言う人はいますが 『いや バスケットボールコート5つ分』だと言う人もいます。たいへんな違いですね どうしてそうなるのでしょう。なぜなら 肺の表面積は はっきりと定義されていないからなのです。枝状に分かれた気管支が さらに分かれ また分かれています。分岐が終わるということは 何かの法則によるのではなく 物理的な理由 つまり 肺の中にある粘液がそれを決めるのです。何が起こっているかというと 人間は十分に大きい肺を持っているということです。もしも肺が細かく枝分かれしていたら クジラの肺も人間の肺も 加えて小さいネズミも 同じ長さをを持つことになります。

 

6 幾何構造を持たない対象のための幾何学を発明した

そのような肺を持つことで 何が優れているのでしょう。驚くことに 非常に驚いたことに 解剖学者はほんの最近まで 肺の構造について つたない考えしか 持っていなかったのです。私の数学的な方法は 驚いたことに とても大きな役割を果たしました。外科医は 肺の疾患や 腎臓疾患を研究していますが このような枝分かれの形状をしているために 構造的に理解できないからです。言い換えると 幾何学を作り出した つまり 幾何構造を持たない対象のための 幾何学を発明したのです。その驚くべき一面は この幾何学の法則は とても短いことです。あなたがたは長い式があるとき 何度も展開してみるでしょう。ときには何度も何度も繰り返して 同じ繰り返しをね。最終的にこのようなものを得るでしょう。

 

7 雲の荒さの裏側には単純な規則を持っている

この雲は完全に 100%人工的に作られました。99.9%かな。この中でたった一つ自然なことは 雲の荒さを表す数字です。自然界からもらった数字です。雲のような複雑なものは 安定していなくて 変わりやすいですが その裏側には単純な規則を持っているのです。この単純な規則は 雲を説明するためではありません。天気予報士は その規則に注意しなければなりません。これらの絵がどれだけ進歩したのかわかりませんが 古いものなのです。私はこのことにとても深く携わっていましたが 他の現象にも注目するようになりました。

 

8 数学者は平面を埋め尽くす曲線を生み出した

さて これは さらに面白いことです。数学を破壊したある事件は 数学の歴史の中で 多くの人には歓迎されませんでしたが およそ130年前か 145年前に起こりました。数学者たちが 自然に存在し得ない形を 創造し始めたのです。数学者は自画自賛しはじめました。ある程度はすごいことだったのです。人間が生み出すことができるということが 自然さえ知らないことをね。とくに このようなものをつくり出しました。平面を埋め尽くす曲線です。曲線は曲線 平面は平面 この2つは決して混じり合いません。彼らはそれを組み合わせたのです。ジュゼッペ・ペアノという人物が このような曲線を定義しました。そして非常に興味深い図形となったのです。それはとても重要で 面白いのは 数学の境界だったからです。それは 現実から生み出したきた今までの数学と 純粋に人間の思考が生み出した 新しい数学との このことを指摘することが残念なのですが 純粋な人間の思考は 実は 結局のところ 長い間 見たことのあるものに基づいているのです。そしてこれは私が導入したもので 平面充填曲線(ペアノ曲線)の流れの集合です。これも それ自体に同じ説明が成り立ちます。1875年から1925年は とても驚くべき時代でした。世界中から突然に 数学が数学自体を作り始めたのです。そして 例えば 私がまだ 子どもで学生だったとき 数学と 現実世界との間には このような研究対象が ありました。私はこれらの周りを徹底的に研究したのです。私はこれを説明するために まったくもって複雑な自然の原理を用いました。

 

9 浮世絵やエッフェル塔はフラクタルと同じ性質を持っていた

1919年にフェリックス・ハウスドルフという人物が 単なる数学的な冗談としてある数字を 導入しました。そして私はこの数字が 荒さを良く表すものだと発見したのです。数学者の友人らにそのことを話したとき 『ばかなことを言うな。ただの数字だろう』と言われました。実際 私はばかげてなどいませんでした。画家の北斎はそのことをとても良く知っていました。地面にあるのは藻です。彼は数学は知らなかったでしょう。存在さえしていませんでした。それに彼は日本人で 西洋とのつながりは持っていませんでした。しかし 浮世絵は長いことフラクタルと 同じ性質を持っていました。私はそのことをいくらでも話すことができます。エッフェル塔もフラクタルの性質を持っています エッフェル塔についての ギュスターブ・エッフェルの本を読んだことがありますが 彼がとても良く理解していたことに 本当に驚きました。

 

10 ブラウン運動と呼ばれる軌跡は1.33だった

これはとてもぐちゃぐちゃな ブラウン運動がつくる軌跡です。あるとき 私の学者としての半ばで たくさんの仕事を持ちすぎていたので 私自身を試してみることにしました。私はただ見ることができるだろうか だれもが長いあいだ見ているものを。そして飛躍的に 新しいことを見つけることができるだろうかと。そして私はこれらを見ていたのです。ブラウン運動と呼ばれる軌跡。単にさまよっているようです。しばらくの間 それにいたずらをしてみて 元に戻したのです。そして助手に言いました 『私は何も見えない。君 描けるかい』 彼はそれを描きました。つまり すべて塗りつぶしたのです。彼はこう言いました 『ええと こういう結果になりました』そのとき私はこう言いました『ちょっと待った 私には島が見える』 驚きました。ブラウン運動は 荒さ2の数値を持って動き回っていたのです。私が測ると1.33でした。さらに何度も測りました。長い計測の結果 大きなブラウン運動は 1.33でした。数学の問題が発生します。どうやって証明するか 私の友人らが20年かけて 成し遂げました。そのうち3人は不完全な証明でしたが それを寄せ集めて 証明を得たのです。彼らは数学の権威ある賞(フィールズ賞)を勝ち取り その中の1人は ある証明をして賞を受け取りました。私が証明できなかったことを。

 

11 きっかけは株式相場を研究し始めたこと

いまではみんなが私にこう尋ねます 『どうやってそれを始めたんですか。どうしてそんなおかしな問題に取り組んだのですか』 何が私をそうさせたのかというと 同時に 機械のエンジニアであり 地理学者であり 数学者であり それから物理学者でもあるかな 実は 不思議なことに 株式相場を研究し始めたからなのです。そしてここに 学説を立てました また それについて本を書きました。金融価格の増加について 左上には長期間のデータがあります。右手の一番上には とっても流行りの理論が見えるでしょう。とても簡単なので とても早くたくさんの本を書けますよ (笑) これに関する本はたくさんあります。では 実価格上昇と比べてみましょう。どれが実価格上昇でしょうか。これら他のグラフ線は いくつかの実価格上昇のデータと 私がねつ造したデータを含んでいます。そこにある考えを そのグラフは どう言うでしょう。価格変動をモデル化できるということです。それは50年前にうまくできました 。50年間 人々は私をばかにしていました。なぜなら 彼らはより簡単にやってのけたからです しかし話をしている現時点では みなさんは私の話を聞いています (笑) この2つの線は平均を表しています。青線はスタンダード&プアーズ 赤線はスタンダード&プアーズから 寄与しない5つの不連続データを 取り除いたものです。不連続はやっかいものです。多くの価格研究では それは取り除かれます 『神の仕業だ。それを取り除いたとき 少ししか意味をなさないものになる 神の仕業』 このグラフでは 5つの神の仕業がほかのすべてと同じくらい重要なのです。言い換えると 取り除いた行為は 神の仕業ではないのです。それこそが要点であり 問題なのです。これらに精通すれば 価格を支配できるでしょう。もし精通できないのならば 不要な情報だけを自由に操ることができます。しかしそれは重要でないのです。これはそのためのグラフです。

 

12 ガストン・ジュリアとピエール・ファトウの作図問題

では最後の問題に取りかかりましょう。私の名前が付けられた集合です。ある意味では 私の人生そのものです。私の青年期は フランスに占領されたドイツで過ごしました。1日か1週間のうちに 私が消えて いなくなってしまうのではないかと考えていたので とても大きな夢を持っていました。戦争の後 叔父に再び会いました。叔父はとても著名な数学者で 私にこう言いました 『ほら ここに問題がある。私が25年前に解けなかった問題だ。そして誰も解けない。これはガストン・ジュリアと ピエール・ファトウの作図問題だ。もし君が 何か新しいことを発見できれば 君自身の仕事をつくることができるだろう』 とても単純な問題でした。その問題を見ましたが 何人もの人が今までに挑戦してきたように 何も見つけられませんでした。

 

13 これらの島はひとかたまりの大きい図形とほぼ同じ

しばらくしてコンピュータが登場しました。私はコンピュータに応用することにしました。数学にとっては新しい問題ではありませんが これを揺り動かすと新しい問題になります。古い問題に適用したのです。そして 実線上の点の実数から 虚数へと拡張しました。それは平面上の点であり そこにあるべきものです。そしてこの形が現れました。これはとても異常に複雑な形をしています。方程式はここに隠されています。zから2乗足すcへの写像 とても単純で飾り気のないものです。それほどおもしろくもありません。クランクを1回 2回 2回まわしてみましょう。不思議な形が現れます。これが現れたのです。これらの図形のことはあまり説明したくありません。この図形が現れ これも現れました。このように複雑で 調和がとれていて美しい図形です。これは 何度も繰り返して現れます。私の主要な発見のひとつは これらの島は ひとかたまりの大きい図形と ほぼ同じことを見つけたことです。そしてこれらの とても風変わりな装飾が あらゆるところにあります。これらのすべては この短い式から得られます。その式は5つの記号しかありません。これを見てください。色付けは2つの理由で加えられました。一つ目は これらの形が とても複雑なので 数字の意味を理解できないからです。図面を作ろうとするとき 形式を選ばなければなりません。私の方針は 図形を表すことにしています。常に異なる色で 色づけは形を強調させ 印象付けられるからです。とても複雑ですね(笑)

 

14 無限の不思議は単純な規則から生まれ、終わりなく繰り返す

1990年 私はイギリス・ケンブリッジにいました。大学からの賞を受け取るために それから3年後 パイロットがある地域の上空を飛んでいて これを見つけました。これはどこから来たのでしょう。明らかに 地球外の生物からですね (笑) ケンブリッジの新聞が その『発見』についての記事を書き 翌日 5千を超える手紙を受け取りました 『あれは単に とても大きいマンデルブロ集合だ』それでは終わりにしましょう。この図形は 純粋数学の訓練から得ました。無限の不思議は 単純な規則から生まれ 終わりなく繰り返す。どうもありがとう(拍手)

最後に

荒さは人間の活動の一部。人間は十分に大きい肺を持っているが測定できなかった。幾何構造を持たない対象のための幾何学を発明した。雲の荒さの裏側には単純な規則を持っている。浮世絵やエッフェル塔はフラクタルと同じ性質を持っていた。取り除いた行為は神の仕業ではない。無限の不思議は単純な規則から生まれ、終わりなく繰り返す

和訳してくださった Chihiro M 氏、レビューしてくださった Kyizom Lily Yichen Shi 氏に感謝する(2010年2月)。

プログラマの数学


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