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ジョン・アンダーコフラー ユーザインタフェースの未来

「OSとインタフェースは不可分なものですが、インタフェースは初歩的で煩わしいままです」アンダーコフラーは語りかける。ここでは、130万ビューを超える John Underkoffler のTED講演を訳し、ユーザインタフェースの未来について考える。

要約

『マイノリティレポート』の科学アドバイザであり発明家であるジョン・アンダーコフラーが、映画に出てきたあの「サイバースペースの太極拳」とでも言うべき、目を見張るようなユーザインタフェースが現実化された g-speak のデモをご覧に入れます。これは未来でコンピュータを使う方法になるのでしょうか?

Remember the data interface from Minority Report? Well, it’s real, John Underkoffler invented it — as a point-and-touch interface called g-speak — and it’s about to change the way we interact with data.

 

1 OSとはインタフェースであり、インタフェースとはOSである

25、6年前の Macintoshの出現は マン マシン インタフェースや コンピュータ全般の歴史の中で 驚くほど大きな 出来事でした。コンピュータや計算に対する 人々の考えを 根本的に変えました。誰が どれだけの人が どんな風に使えるかを 変えたのです。それは非常に大きな変化であり 実際1982年から84年頃の 初期のMacintosh開発チームは 新しいオペレーティングシステムを一から作る必要がありました。そこには興味深い小さな教訓があったのですが その教訓はその後忘れ去られ 消えてしまったように見えます。それはつまり OSとはインタフェースであり インタフェースとはOSである ということです。アーサー王物語における国と王のように 両者は不可分なものなのです。新しいOSを作るというのは 気まぐれでできるようなことではありませんでした。グラフィックスルーチンをチューンナップすれば済む話ではありません。グラフィックスルーチンもなければ マウスドライバもなかったのです。すべて作る必要がありました。

 

2 インタフェースは初歩的で煩わしいまま

しかしその後の4半世紀の間に 基本技術の狂ったような発展を 私たちは目にしました。メモリ容量とディスク容量は 1万倍とか100万倍というスケールで拡大しました。プロセッサの処理速度も同様です。それにネットワーク Macintoshが現れた頃 ネットワークはありませんでした。ネットワークは 今ではコンピュータにおける もっとも重要な要素となっています。それにもちろんグラフィックスも 今日 家電量販店で84.97ドルで買える グラフィックス装置は ほんの10年前 100万ドルしたSGIのものより 高性能なのです。ものすごいパワーの上昇です。それに加え 私たちはWebを手に入れ クラウドを手にしつつあり 素晴しいのですが インタフェースの方は初歩的で どちらかと言えば煩わしいままです。新しいインタフェースを作ることは 忘れられています。しかし最近は多くの変化を目にします。人々はこの点に関して目を覚ましつつあります。では次に何が起きるのでしょう? どこへ向かうのでしょう?

 

3 問題の鍵は「空間」あるいは「現実世界における幾何学」

問題の鍵になるのは 単純な1つの言葉「空間」 あるいは単純な1つのフレーズ 「現実世界における幾何学」です。コンピュータや コンピュータに指示する プログラミング言語は 空間について恐ろしく無頓着です。現実の空間を理解しません。私たち自身は非常にうまく空間を扱っているので これはおかしなことです。コンピュータはまた時間も理解しませんが これはまた別な話になります。

 

4 入力と出力の空間が同じところに設定されたシステム「ルミナスルーム」

ではコンピュータに空間を教えたら どうなるのでしょう? 答えの1つは「ルミナスルーム」のようなものになるでしょう。ルミナスルームは 入力と出力の空間が 同じところに設定されたシステムです。奇妙なくらいにシンプルでありながら いまだよく探求されてないアイデアです。マウスを使うときは 手は下のほう マウスパッドの上にあり 扱う対象と同じ平面上にさえありません。ピクセルはディスプレイの上にあります。これは壁や 床や ペットや 鉢植えといった 様々なものがある部屋で それぞれが表示するだけでなく 反応することもできます。入力と出力が同じ空間にあって このようなことを可能にしています。物理的な入れ物にデジタル情報を保管します。ここでの決まり事は 現実の世界にある実際の容器と同じです。入れたものは何でも取り出せなければなりません。この小さなデザインの実験作品には 他にもいくつか仕掛けがあります。チェス盤を載せると それが何を意味するのか理解しようとします。そしてすることがなくなれば チェスの駒たちは そのうち飽きて どっか行ってしまいます。

 

5 インタフェースのないインタフェース

学者の目にはこの作品が 不真面目すぎると映るので 「光学試作作業台」のような ごくまじめな応用例も用意しました。厚紙の箱に付けた歯磨きチューブのキャップが レーザーを出します。物理的なモノが ビームスプリッタやレンズを表し レーザービームの経路が表示されます。いわばインタフェースのないインタフェースです。この世界では 現実世界と同じように 自分の手で操作することができます。同様に この「デジタル風洞」では デジタルの風が右から左へと吹いています。私たちが理論を発見したわけではないので そんな大した話ではありません。でもCRTや液晶画面に表示していたら 現実のモノをそこに置いたところで 何の意味もありません。ここでは現実世界とシミュレーションとが 混じり合っています。

 

6 模型を建築家や都市計画者の手に取り戻す「Urp」

最後に あらゆるものを取り入れて “Urp”という 都市計画者のためのシステムを作りました。CADを作った時に取り上げてしまった模型を 建築家や都市計画者の手に 取り戻そうというものです。マシンが現実を半分だけ補っていて ご覧のようにデジタルの影を表示します。そしてこのような「時計ツール」を持ってくると 空にある太陽の位置をコントロールできます。これは午前8時の影です。9時になると影が少し短くなります。こうやって太陽を動かすことができます。正午には影はうんと短くなります。この中には様々なツールを作り込みました。これを使うと 子どもでも 日陰の影響を検討できます。都市計画のことは何も知らなくても構いません。建物を動かすには ただ手を伸して動かしてやればいいのです。「素材スティック」を使うと フランク ゲーリーの作品みたいに 光りを反射するようになります。建物が通行人や道路を走るドライバーの目を眩ませたりしないか? 「区画ツール」は離れた建物や道を繋ぎます。都市計画委員会に訴えられたりしないか? こんなアイデアは見慣れているとか 少し古いと感じられるなら それは結構なことです。見慣れていてしかるべきなのです。

 

7 マン・マシン・インタフェースの必然的な未来「空間操作環境」

この作品は15年前に作られたのですから。これはMITメディアラボで タンジブル メディア グループを率いる石井裕教授の 素晴しい指揮の下に作られました。そしてこれが世界的に有名な プロダクションデザイナである アレックス マクドウェルの目にとまったのです。アレックスは当時 漠然としたインディー的実験映画を準備していました。スティーブン スピルバーグが監督する「マイノリティレポート」です。そして私たちをMITから招いて 映画に出てくるインタフェースを デザインさせたのです。素晴しいのは 迫真性にアレックスが真剣に取り組んでいたことで 映画に描かれる2054年の世界を 可能な限りリアルなものにするため デザイン作業を研究開発のように やらせてくれたのです。結果はとても満足のいく 永続的価値を持つものになりました。人々はいまだに新しいUIデザインの話となると 「マイノリティレポート」のシーンを引き合いに出しています。そしてそれが奇妙な具合に一回りして 私たちが マン マシン インタフェースの 必然的な未来であると考えている 「空間操作環境」のアイデアへと繋がりました。

 

8 手を使って6つの自由度のあるナビゲーション操作を行える

ここには たくさんの画像があります。手を使って 6つの自由度のある ナビゲーション操作を行うことができます。ベケット氏の目の間を 自由に飛び抜け それから威嚇するオランウータンの間を 戻っていきます。とてもいい具合です。もっと難しいことをやってみましょう。様々な画像があります 飛び回ることができます。ナビゲーションは基本的な問題です。3次元をナビゲートできる必要があります。私たちがコンピュータでやりたいと思うことの多くは そもそも 本質的に空間的なものなのです。そして空間的でないものも 空間的にすることで 私たちの頭にわかりやすくすることができます。これをいろいろ違ったやり方で配置できます。この様に広げられます。リセットして こんな風に並べてみましょう。

 

9 現実の空間の中で手をトラッキングすることが重要

もちろんナビゲーションだけでなく 操作もできます。嫌いなものや 特に興味深いものがあれば… エルンスト ヘッケルの科学的に歪曲された絵を このように取りのけておくこともできます。分析するときには 少し後ろに引いて 配置を変えます。もう少し下に移動して 眺めてみましょう。これもまた1つの見方です。分析的な人は これを 色のヒストグラムとして 見てみたいと思うかもしれません。色に従って並べてみました。色と角度が対応づけられています。この3次元空間で 選択をしようと思ったら 現実の空間の中で手をトラッキングすることが重要になります。私たちが触れるのは 2次元ではなく 擬似的3次元でもなく 本当の3次元だからです。この選択平面を使って 論理演算をし 大好きな黄色と 緑の草の上のバクを取り出しました。

 

10 従来的な表形式データと3次元的な地理空間情報を結びつける

次に 実際の仕事の世界を見てみましょう。これは私たちが現在構築している ロジスティックスシステムの一部です。たくさんの要素があります。ここで重要なのは 従来的な表形式データと 3次元的な地理空間情報を結びつけることです。おなじみの場所ですね。表をいったん持ってきて 一部を選択し グラフにして 今度は こっちに移って 近寄って… これにはアメリカ中に散らばっている ロジスティックス要素が表示されています。

 

11 人とコンピュータの間の1対1の関係を打ち壊す

3次元的インタラクションと 空間を取り入れた計算 という考えによって 人とコンピュータの間の 嘆かわしい1対1の関係を打ち壊すことができるでしょう。古いやり方 古いしきたりでは 1台のマシンに 1人の人 1つのマウス 1つの画面です。そんなのは もはや立ちゆきません。現実世界では 作業は協同して行われます。一緒に作業する相手がいて たくさんの画面があります。見たい画像がたくさんあります。誰か手伝ってほしいと思うかもしれません。

 

12 物事は空間というコンテキストにおいて捉える必要がある

この新しいポインティングデバイスの作者が 向こうに座っています。画像をこちらから向こうに移動することができます。別なマシンの間でです。計算が空間やネットワークを越え 溶け込んでいます。ポールに聞きたいことがあるので あれは向こうに置いておきましょう。ポールはこのスティックのデザイナーなので 彼に出てきて説明してもらった方が早いかもしれません。ここをちょっと片付けて これを分解し さらにバラバラにします。ケビン 手伝ってくれるかな? 回路基板を見つけられるかやってみましょう。銃の分解組み立ての練習みたいなものです。ラボでしょっちゅうやっています。いいでしょう。協同作業というのは 同じ場所にいようと 遠隔地にいようと 常に重要なものです。そして物事は空間という コンテキストにおいて捉える必要があるのです。

 

13 未来におけるメディアの編集や操作を行う装置「TAMPER」

最後にもう一度映像の世界に戻って お見せしたいものがあります。これはTAMPERというシステムで 未来におけるメディアの編集や操作が どうなるかを垣間見せてくれる 少し奇妙な装置です。Oblong社では メディアというのは もっと細かい粒度でアクセスできてしかるべきだと考えています。この中にはたくさんの映画が 入っています。素材をいくつか取り出しましょう。何がいいか 素早く目を走らせ 要素を切り出して 再び再生し こちらのテーブルにドラッグします。次にジャック タチの映画から 青服の人物を選んで こちらもテーブルに引っ張ってきます。何人かいた方がいいですね。それからたぶん カウボーイが欲しいですね。率直に言って (笑) この人に 来てもらいましょう (笑) 見ての通り カウボーイとフランス人とでは そりが合わないのを システムはちゃんと承知しています。

 

14 優れた芸術は常に賜である

最後に申しあげておきたいこと それは この30年における最も偉大な 英語圏の作家が言っていることですが 優れた芸術は常に賜であるということです。小説が24.95ドルするとか 盗まれたフェルメールの絵を買い戻すために 7千万ドル出すべきだとか言うことではありません。彼が言っているのは 芸術の 創作の状況と あり方についてです。私たちはテクノロジーについても 同じことを求める時が来ていると思います。テクノロジーは ある種の寛容さを表現し 吹き込むことができ 私たちは実際それを求めるべきなのです。このようなテクノロジーの 中心にあるのは 様々なデザインの組み合わせであり とても重要なものです。デザインや 効用や 効果が はじめから― 組み込まれているのでない限り もはやテクノロジーを 前に進めることはできないのです。私たち人類は ものを作る生き物です。我々のマシンがその助けになり イメージ通りに使えるべきなのです。以上です。ありがとうございました(拍手)

15 すべての人のためにすべてのディスプレイに組み込まれる

当然の質問をしたい… ビル ゲイツからの質問なんですが いつですか? いつ実現されますか? ラボやステージ上でなく 普通の人にとっては? これは万人のためのものなのか それとも企業や映画制作者のためのものなのか? これはすべての人のためのものです。それが私たちの目指していることです その大きな一歩を踏み出さなければ 成功することはないでしょう。25年変わってないのです。本当にインタフェースは1つだけでいいのでしょうか? そんなことあり得ません。

しかし みんなのデスクや家に プロジェクタやカメラが必要になるのでしょうか? どのように実現するんですか? すべてのディスプレイに組み込まれるようになるでしょう。アーキテクチャの中に組み込まれるのです。グローブは数ヶ月とか数年の内に不要になるでしょう。これが必然的な方向なのです。

あなたの考えでは 5年のうちに 人々がこれを普通のコンピュータの一部として 手に入れられるようになると思われますか? 5年後には コンピュータを買えば これが 手に入るようになると思っています。

そいつはすごい (拍手) このようなものがどんな使われ方をするか 私たちはいつも驚かされてきました。これの最初のキラーアプリになるのは どんなものだと思われますか? いい質問です。私たち自身 そのことは日々考えています。現時点では アーリーアダプターの顧客や 現実に使われているシステムでは 大きなデータ集約型の データ中心の問題を扱っています。サプライチェーンのロジスティクスとか 天然ガスや資源の採掘とか 金融サービス、製薬、バイオインフォマティクスといったものが 現時点での対象ですが キラーアプリというのではないでしょう。あなたの言われていることはわかります。 ありますよね。格闘技とか ゲームとか ほら (笑) ジョン SFを現実にしてくれたことにお礼を言います。 お招きいただいて光栄でした。皆さんありがとうございました(拍手)

最後に

OSとはインタフェースは不可分だが、インタフェースは初歩的で煩わしいまま。問題の鍵は「空間」あるいは「現実世界における幾何学」。入力と出力の空間が同じところに設定されたシステム「ルミナスルーム」。模型を建築家や都市計画者の手に取り戻す「Urp」。マン・マシン・インタフェースの必然的な未来「空間操作環境」。手を使って6つの自由度のあるナビゲーション操作を行える。未来におけるメディアの編集や操作を行う装置「TAMPER」。私たち人類はものを作る生き物

和訳してくださった Yasushi Aoki 氏、レビューしてくださった Masahiro Kyushima 氏に感謝する(2010年2月)。

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