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ロバート・フル ヤモリの尻尾から学ぶ

「ヤモリは驚異的な付着力のある足と、極めて制御された平衡滑降ができる能動的尻尾を持ちます」ロバートは語りかける。ここでは、58万ビューを超える Robert Full のTED講演を訳し、ヤモリの尻尾から得られる知見について理解する。

要約

生物学者ロバート・フルは、驚異的な付着力のある足と落ちずに登る能力を持つ素晴らしいヤモリの研究をしています。でも、ヤモリの尻尾にはこれまでで最も驚くべき能力を隠しているかもしれないことを高速映像が明らかにしています。

Robert Full studies cockroach legs and gecko feet. His research is helping build tomorrow’s robots, based on evolution’s ancient engineering.

 

1 生体模倣を超えた「生体相利共生」

今日は新しい発見についてお話したいと思います。でも実際にどう起こったかを語ってお話します。私が学会で発表する形や 皆さんが学術論文で読む形とは違います。これは生体模倣を超えた話です。個人的には「生体相利共生」と呼んでいます。私はこれを「生物学と別の分野が提携し それぞれが相手の分野を相互的に進歩させ そこから生まれる共同発見はどんな1つの分野より勝る」と定義します。生体模倣の観点では 自然の特性がもっと人間の技術に取り入れられるにつれ 自然はより一層有益な教師となります。生物学の原理や相似が有用な場合 それを利用して工学がアイデアを得ることもあり得ます。そしてその後最終的に 実際自然よりも 優れたものを創るため それを最高の人間工学に統合するのです。

 

2 分子間に働く力だけで張り付くヤモリの足指

私は生物学者なのでとても興味があったのはこれです。ヤモリのつま先部分です。奇妙な足指は 壁を素早く登るのに どう使われるのだろうと思いました。私たちが突き止めたのは ヤモリの足指には 葉状構造があり 敷物のような 何百万の微細毛がついていることでした。1本1本の毛先は史上最悪な枝毛のようで ナノサイズで約100~1000の枝毛になっています。このようなナノサイズの枝毛は1匹につき20億本あります。マジックテープや吸盤や 糊で張り付くのでなく 実は分子間に働く力だけで 張り付くのです。そして今日は皆さんに 初の合成自浄式の乾燥接着素材ができたことを発表します。自然界で一番単純な形である1本を バークレーの共同制作技術者ロン・フィアイングが 世界初の合成バージョンにしました。もう1人の素晴らしい共同制作者 スタンフォードのマーク・カッコスキーも 同じ原理を使い ヤモリの毛よりももっと太いバージョンを作りました。

 

3 ヤモリからヒントを得た素材

これが最初のテストです (笑) ルイス&クラーク大学の教授になった 私の教え子のケラー・オータムです。文字通り自分の第一子をテストに捧げています (笑)最近はこういうこともありました

男:実際にこれを使って人が登るのは初めてです ―プロクライマーのリン・ヴァリンスキー 自信たっぷりのようです― リン:マジで全然大丈夫 全く安全よ 男:どうしてわかるんですか? リン:賠償保険があるから ―マットレスを敷いて命綱をつけ リンが60フィートの高さを登り始めます― ―ハリウッドと科学を完璧に組み合わせ リンが最上部までたどり着きました― 男:初めてヤモリを模倣した人間となりましたね リン:は!そりゃスゴイ栄誉だったわけね ロバート:これはザラザラの表面でした。彼女は滑らかな表面には実は こちらを2つ使って登りました。ロビーで試してみてください。ヤモリからヒントを得た素材も見てください。さて ロボットがこれを使用する際 問題になるのは この材質を 剥がせないことです。これがヤモリの解決法です。ヤモリはつま先を 表面からめくるように高速で 剥がして壁を駆け登ります。

 

4 新型の階層式乾付着素材を使った「Stickybot」

と言うことでですね 今日は皆さんに ロボットStickybotの最新型をご紹介します。新型の階層式乾付着素材を使っています。これがそのロボットです。こうやって動きます よく見てもらうと ロボットがつま先をめくるように 剥がすのが分かると思います。ヤモリがするのと同じです。壁を登るのを映像でご覧ください (拍手) 登ってます。ちなみに他のタイプの表面でも登れます。スタンフォードのグループがこの凄いロボットを 設計するうえで新しい付着素材を作ったおかげです (拍手)

 

5 生物は壁を登るとき尻尾を使うの?

1つ指摘したいことがあります。Stickybotを見てもらうと 何かついてますね。ヤモリに似せるためだけではありませんが尻尾があります。自然の理解ができたと思った時に こういうことが起こるんですが エンジニアたちに言われたんです 「尻尾がないとロボットは 登っていても壁から落ちてしまう」 そして彼らは重要な質問を 私たちにしました 「尻尾に見えるだけで 我々がつけたのは 特別何も機能がない棒なんだが 生物は壁を登るとき尻尾を使うのか?」 彼らは生物学でテストすべき仮定を 提示して私たちにお返ししてくれたのです。私たちには考え付かないことでした。

 

6 尻尾の役目は何か?

実際 当然私たちは慌てました。生物学者として知っているべきでした 「はて 尻尾の役目は何か?」 例えば尻尾が脂肪を貯蔵することや 何かに掴まるときに使われることは知っていました。一番よく知られているのは 静的なバランスを保てることです (笑) 平衡力にもなります。このカンガルーを見てください。この尻尾 素晴らしいですね! マーク・レイバートがUniroo片足跳びロボットを作りましたが 尻尾なしでは安定しなかったそうです。普通 尻尾は運動性を制限します。この恐竜コスチュームを着ている人のように (笑) 私の同僚は実際にこの制限をテストしました 生徒の慣性モーメントを加増し 尻尾をつけさせ 障害コースを走らせると タイムが悪化すると判明しました。実験するまでもありませんが (笑) でももちろんこれは受動的尻尾でした。能動的尻尾もあります。

 

7 5本目の足として機能して安定感を保つ能動的尻尾

これについて調べていて 今までの優れたTEDトークの1つで ネイサンが能動的な尻尾について 話していたのを思い出しました。 ビデオ:ミアボルドは恐竜が 尻尾をバシッと鳴らすのは 戦いでなく求愛のためだと考えます ロバート:尻尾は意思疎通用のムチだと言いました。身を守るために使うこともできます。迫力満点ですね。そこでもう一度ヤモリを見ました 壁を登らせたのですが 今回は滑りやすい箇所を入れました。黄色の部分です。ヤモリは滑ったときに尻尾をどうしているか右側で見てください。10倍のスローモーションです。これが普通のスピードです。では滑るところを見て 尻尾をどうするか見てください。5本目の足として機能して 安定感を保つ能動的尻尾です。思いっきり滑らせると こうなります。ビックリです。エンジニアたちのアイデアはとても良かったのです。

私たちは当然その後考えました。能動的な尻尾があるわけだから 壁や木を登っているとして 上にたどり着いて 例えば葉っぱがあったら そして葉っぱの裏を登っていて風に吹かれたり 葉っぱが揺すられたりしたらどうなるのか? その実験をしたのがこれです (拍手) これがその結果です。実時間では何も分かりません。スローモーションにするとこうです。

 

8 世界一速い空中立ち直り反応

私たちが見たのは世界一速い空中立ち直り反応でした。物理学で言うと角運動量ゼロの 立ち直り反応です。猫と同じです。猫も落ちるとき身体をひねります。でもヤモリの方が上手にやります。尻尾を使ってやるんです。くるりと回るときに能動的尻尾を使うわけです。そしてスーパーマンがスカイダイビングする姿勢でいつも着地します。これが正しいなら物理的モデルの ロボットでテストできるはずだと考えました。

そこでTED用にあちらにある ロボットを尻尾付きの試作品として作りました。尻尾を使った空中立ち直り反応を ロボットで初めてやってみます。照明をお願いします オッケー それではいきます。映像を見せてください。やりました。ヤモリと同様の効果を見せます。つまり体制を直すには尻尾を振るだけでいいのです (拍手)

 

9 ヤモリは極めて制御された平衡滑空をする

でも当然普通かどうか心配でした。ヤモリには滑空適応がないからです。そこで考えました「それなら垂直風洞に入れて 下から風を送って プレキシガラスの囲いのすぐ外に 着地用の木の幹を置いて ヤモリがどうするか見ればいい」(笑) その通りやると こうなりました。下から風が送られています。10倍のスローモーションです。ヤモリは極めて制御された平衡滑空をします。驚きですが 写真を撮ってみると 実際かなり優美です。それだけではありません。ここの滑走で空中操作しています。どうやるかと言うと 尻尾を 一方に振って左に進み もう一方に振って右に進むのです。こうやってうまく動けます。それとこれは信じられずに何度も撮影したのですが― こういうこともします。見てください。イルカのように尻尾を上下します。実際に空中を泳いで進めるのです。でも前足を見てください。何をしてるか分かりますか? 羽ばたきして飛行する起源に関係するのでしょうか? 木から飛び降りて滑降を制御することから 進化したのかもしれません。この続きはお楽しみに (笑)

 

10 自然のヤモリも滑降する

「本当にこれで滑降操作できるのか?」と考えました。この機能を使って 着地目標の方向に行けるのか? 風洞の中を飛んできました。確かにできるようです。上から見下ろすともっとよく分かります。ヤモリを見てください。明らかに目標方向に動いています。その際に尻尾を振っているのに注意してください。見てください! 信じられません。

本当に困惑してしまいました。ヤモリの滑降の報告はないからです 「これはヤモリが本当に滑降するか 現地で確かめないと」と 自然映画と全く逆のやり方になりました 「自然のヤモリも本当に滑降するのか?」と東南アジアと シンガポールの森林に行きました。次の映像は初めて公開するものです。

ヤラセではなく 実際の真面目な研究ビデオです。ヤモリが滑降していて 赤で軌跡が示してあります。ヤモリは最後に見えます。でも木に近づいてきたら クローズアップで着地が見えるか見てください 降りてきました。軌跡の先にヤモリがいます。見えますか?降りてきます。では上で着地を見てください。成功しましたね? 実際に尻尾も使っています。研究所で見た通りです。

 

11 自然の様式を守らなくてはダメ

というわけで 能動的尻尾を作ることをエンジニアに提言して この相利共生を続けることができます。そしてこれが初の能動的尻尾を持ったロボットです。Boston Dynamicsが作成しました。結論として お見せしたような応用の中で基礎的発見の速度を上げる 生体相利共生を構築する必要があると思います。でもそのためには教育制度を大きく変え 学際的情報交換の視野を調節する必要があります。そして他の分野に貢献し利益を得るやり方を人々に明確に教えなくてはなりません。もちろんこれを行うための生物と環境も必要です。つまり安全保障や捜索活動や健康に関心があるなら 自然の様式を守らなくてはダメです。でなければ解明の鍵は永遠に失われます。私たちの新大統領の言っていることからすると 楽観的です。ありがとうございます (拍手)

 

最後に

生体模倣を超えた「生体相利共生」。分子間に働く力だけで張り付くヤモリの足指。新型の階層式乾付着素材を使った「Stickybot」。5本目の足として機能して安定感を保ったり、世界一速い空中立ち直り反応ができる能動的尻尾。ヤモリは極めて制御された平衡滑空をする。安全保障や捜索活動や健康に関心があるなら、自然の様式を守らなくてはダメ

和訳してくださった Sawa Horibe 氏、レビューしてくださった Hidetoshi Yamauchi 氏に感謝する(2009年2月)。

ゲッコーとその仲間たち: 世界のヤモリ―オウカンミカドヤモリ ヒョウモントカゲモドキ ヒルヤモリ ニホンヤモリ etc (見て楽しめる爬虫類・両生類フォトガイドシリーズ)


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