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ポール・ピフ お金が人を嫌なヤツにする?

「勝敗の決まっているモノポリーによって驚くべきことが明らかになります」ピフは語りかける。ここでは、200万ビューを超える Paul Piff のTED講演を訳し、自分が裕福だと感じる人がとる残念な態度と朗報について理解する。

要約

勝敗の決まっているモノポリーによって驚くべきことが明らかになります。この愉快かつハッとさせるトークで社会心理学者のポール・ピフが紹介するのは、自分が裕福だと感じる人がとる(残念な)態度です。不平等の問題は複雑で困難な課題ですが、朗報もあります。(TEDxMarinにて収録)

Paul Piff studies how social hierarchy, inequality and emotion shape relations between individuals and groups.

 

1 仕組まれたゲームで有利に事を運ぶという経験が与える影響

皆さん ちょっと モノポリーというゲームについて 考えてください。ただし 今回のゲームは 実人生と同様 技と才能と運が相まって 成功を勝ち取るという 通常のゲームとは まったく別物です。仕掛けがしてあって 必ず勝てるようになっています。対戦相手より多くのお金をもらい 盤上を動き回るチャンスも多く 利用できる資源も多いのです。この経験について 皆さんに考えていただきたいのですが 仕組まれたゲームで 有利に事を運ぶという経験は 自分についての考え方や 相手に対する見方を どう変えるのでしょうか。

 

2 金持ちは支配的な仕草や力を誇示したりすることが多くなった

我々がUCバークレー校で研究を行い 調べたのは まさにその疑問です。研究室に被験者を呼び 初めて会った人同士 100組以上のペアを作り コインを投げて無作為に ペアの一人を金持ちに割り当て ゲームをやってもらいました。金持ち側は2倍のお金をもらいます 「GO」のマスを通ったら サラリーは2倍もらえ サイコロは― 1個ではなく 2個とも振れますから うんと早く進めるわけです (笑) 15分間に渡って 隠しカメラで様子を観察しました。今日は初めて 皆さんに 我々が見たものの一部をお見せします。音質が良くないのですが なにしろ隠しカメラですので お許しください 字幕を付けておきました。 金持ち:500は何枚あるんだっけ? 貧乏:1枚だけ 金持ち:マジで? 貧乏:うん 金持ち:僕は3枚(笑) 何故か たくさん くれたんだよね。

彼らはすぐに「何かある」と 気づいたようですね。一人だけが相手に比べ どう見ても 多くのお金を持っているのです。それでも ゲームが進むにつれ 我々は二者の間に 非常に顕著で劇的な違いが 表れてくるのを目撃しました。金持ちのプレイヤーは 盤上を進む時に大きな音を立て コマを叩きつけるようにして 回るようになってきたのです。金持ちは支配的な仕草や 非言語のサインを見せ 力を誇示したり 喜びを表したりすることが 多くなりました

 

3 金持ちの方がプレッツェルを多く食べる

脇にプレッツェルを置いておきました。画面では右下に映っています。被験者の完了行動を 観察するためです。被験者がプレッツェルをいくつ食べたか 調べました。 金持ち:このプレッツェルも 仕掛けかな 貧乏:さあ 当然ですね 感づいています。そこにプレッツェルがあること自体 不審に思っています。ご覧いただいたとおり プレッツェルは仕掛けかと 聞く人もいました。怪しいと思いながらも 立場による力の影響は どうしても出てしまうようで 金持ちの方がプレッツェルを 多く食べるのです。 金持ち:プレッツェルはうまいなぁ(笑)

 

4 金持ちは相手に対し横柄な態度を取るようになった

ゲームが進むと 実に興味深く 劇的なパターンが 現れてきました。金持ちは相手に対し 横柄な態度を取るようになりました。気の毒な対戦相手が 苦境に陥っても だんだん気に留めなくなり 自らの物質的な成功を どんどん表に出して 見せびらかすようになってきました 金持ち:もう何でも買えちゃうよ 貧乏:いくら? 金持ち:君に24ドル貸してるよ。もうすぐ すっからかんだね 買おう お金はたっぷりある ありすぎて使い切れないよ。 金持ち2:全部丸ごと買い取るわ 金持ち3:お金なくなりそうだね 俺は無敵だな。

 

5 たまたま有利な立場になったことも全然気にしなくなっていた

さて ここで私が 大変興味深いと思うのは 15分間のゲーム終了後に プレイヤーたちにゲーム中の経験について 語ってもらったことです。金持ちのプレイヤーは 必然的に勝った理由を述べる時― そう仕組まれているわけですが (笑) 彼らは様々な資産を購入したり 成功を収めるために 自分が何をしたか語りました。いろいろあったはずの 状況の違いも まるで気にしなくなっていました。最初にコインを投げて たまたま有利な立場になったことも 全然 気にしなくなっていたのです。これは人が優位性に対し どう辻褄を合わせるか。その本質を実に見事なまでに 突いています。

 

6 人間は富のレベルが上がると慈悲や同情の気持ちが減り、権利意識や自己利益についての観念が強くなる

さて このモノポリーの実験は 社会とその階層構造を理解するための メタファーとして使えます。社会には 裕福で地位の高い人もいますし そうでない人も大勢います。多くの人は裕福でなく 地位もなく 貴重な資源へのツテも 持っていません。私が仲間と共に ここ7年行っているのは こうした階層の影響を 研究することです。いくつもの研究を重ね 国内の何千という被験者の協力を得て わかってきたのは 人間は富のレベルが上がると 慈悲や同情の気持ちが減り 権利意識や 自己利益についての観念が 強くなるということです。アンケートによると実際 裕福な人たちほど 貪欲であることを 倫理的に良いものと捉え 私利私欲の追求には賛成で 倫理にかなうと考える傾向がありました。今日 私がお話ししたいのは この自己利益の観念が意味すること なぜそれに注目する必要があるか そして最後に どんな対策ができるか ご提案します。

 

7 他人に助けの手を差し伸べる傾向が強いのは金持ちなのか貧乏人なのか

初期の研究で調査したのは 人助けの行動でした。社会心理学では 向社会的行動と呼ばれるものです。興味の中心は 他人に助けの手を 差し伸べる傾向が強いのは 金持ちなのか貧乏人なのか ということです。ある研究では 金持ちと貧乏人を 研究室に呼び 全員に10ドル相当ずつ渡し こう言いました 「この10ドルは 取っておいてもいいし もし望むなら一部を まったく知らない誰かに あげてもいいですよ」 お金を受け取る人と 会うことはありません。そして被験者が いくら分け与えるか観察しました。年収が2万5千ドルの人や 1万5千ドル以下の人が 見ず知らずの人に与えるお金は 年収が15万ドルや 20万ドルの人より 44%多いという結果が出ました。

 

8 お金持ちほどズルをする頻度が3-4倍だった

賞品を獲得するためなら ズルもしかねない人の特徴を調べるため 被験者にゲームをさせました。あるゲームでは コンピュータに細工をして 特定のスコア以上が 出ないようにしておきました。12以上は絶対に出ません。ところが お金持ちほど このゲームでズルをして 50ドルの賞金を獲ろうとしたのです。その頻度は3倍から4倍でした。別の研究では ビンに入ったお菓子を 人々が取る傾向を調べました。お菓子は子ども用だと はっきり断ってありました (笑) 冗談じゃないですよ。冗談みたいに聞こえますけどね。被験者に はっきり言ったんです。近くで発達研究をやっていて このお菓子はその協力者である― 子どもたちのために用意してあると。そして被験者がお菓子をいくつ取るか 観察しました。金持ちと自覚している人は 貧乏と自覚している人の 2倍多く お菓子を取りました。

 

9 高級車の運転手ほど法律を破る傾向が強い

車についても調べました。ただの車じゃありません。車種によって運転手が 法律違反をする傾向に 違いがあるか調べました。ある研究では 横断歩道を渡る素振りを見せている 歩行者のために 運転手が止まるかどうか 検証しました。カリフォルニアでは 当然のことですよね。渡ろうとしている歩行者がいたら 止まるのがルールです。実験はこんな感じです。左にいる人はサクラで 歩行者を装っています。彼が前へ出ると 赤いトラックがちゃんと止まります。カリフォルニアでは日常茶飯事ですが バスが追い越し 歩行者をひきそうです (笑) 高級車の場合です。プリウスは無視です。BMWも 同じくです。何百台もの車を 数日間にわたって調査し 止まる車と止まらない車を 記録しました。これでわかったのは 高級車の運転手ほど 法律を破る傾向が強い ということです。一番安い価格帯の車は 一台たりとも 違反しませんでした。最高価格帯の車では 50%近くが 法律違反をしました。別の実験では 裕福な人ほど交渉で嘘をついたり 職場における違反行動― たとえばレジから現金を盗んだり 賄賂を受け取る 顧客をだますなどの違反を 容認する傾向が表れました。

 

10 人は裕福になればなるほど周囲の人の不利益を顧みなくなる

裕福な人々だけが こうした行動パターンを示すと 言っているのではありません。まったく違います。実際 私たちは皆 日々の生活の中で 常に 自分の利益を 他人の利益より優先させるか否か させるとすればいつか そういう対立する気持ちと闘っています。仕方がないのです。なぜなら アメリカンドリームというのは 誰もが機会を平等に持ち 一生懸命 真面目に働けば 成功し繁栄するという思想です。それは時に 自分の利益を 周りの人の利益や幸せより 優先させる必要がある という意味でもあります。研究により わかってきたのは 人は裕福になればなるほど 個人的な成功や 業績についての理想を求め 周囲の人の不利益を 顧みなくなるということです。こちらは ここ20年間の 世帯収入の平均を グラフ化したものです。人口を5分の1ずつに分け 上位5%と比較しています。1993年の時点で 五分位数間の 所得格差には かなりの開きがあります。差があるのは 誰の目にも明らかです。しかしこの20年で その著しい格差は 上位とその他の間で 天と地ほどの差になりました。実際 人口の上位20%が 我が国の富の90%近くを 保有しています。これほどの経済格差は 人類史上 例がありません。これは ある特定の層の人が ますます富をかき集めるように なってきているというだけでなく 増加し続ける大多数の人々にとって アメリカンドリームを達成することが ますます難しくなっている ということでもあります。我々が明らかにしたとおり 人は裕福になればなるほど 特権意識を募らせ 他人の利益よりも 自分の利益を 優先させる傾向が強まり 自己利益を追求しようとするのなら このパターンは今後も 変わっていくわけがありません。むしろ悪化の一途をたどると 考える方が自然です。このペースで今後20年の間に 事態が変わらなければ ご覧のようになっていきます。

 

11 身体的健康、社会的信用などは格差が広がると下落する

さて 不平等や経済格差は 皆で考えるべき問題です。社会的階層の底辺にいる 人たちのためだけでなく 個人であろうと集団であろうと 経済格差が広がると 状況が悪くなりますから。貧困層の人々だけでなく 全員に関わるのです。裏付けとなる研究が たくさんあります。経済格差の拡大に伴い 弱体化した様々な物事を 紹介する研究が 世界中の― 一流の研究所から 発表されています。社会的流動性や 我々が大切にしているもの 身体的健康 社会的信用などは皆 格差が広がると下落します。同様に社会的集団や 社会そのものにおける ネガティブな物事― たとえば肥満や暴力 投獄や刑罰などは 経済格差が広がると 悪化するのです。先ほども言ったとおり こうなると 一部の人だけではなく 社会階層の どの層も 甚大な影響を受けます。最富裕層の人たちにさえ 影響が及びます。

 

12 46秒間、子どもの貧困についてのビデオを見ることで寛容になる

では どうしましょう? この尽きることのない 致命的な悪影響の流れは 制御不能に見えるかもしれません。もうお手上げ状態で 我々個人には為すすべもないように 思えます。しかし実は 私たちの研究所での 研究によると ほんのちょっとした心理的介入や 価値観のちょっとした変化 ある方向への ちょっとした刺激によって 平等主義や共感のレベルを 修復できることが わかってきています。たとえば人々に 協力による恩恵や 共同体の利点を 思い出させると 裕福な人も貧しい人と同じくらいの 平等主義になります。ある研究で 短いビデオを見てもらいました。たった46秒間 子どもの貧困についてです。世の中には困っている人がいるのだと 思い出させるのが狙いです。ビデオを見た後 研究室に 悩みを抱えた人が現れます。我々は人々が 見ず知らずの人のために どれくらい自分の時間を 使おうとするか検証しました。ビデオを見てから1時間後 金持ちは赤の他人を救うために 時間を割くことにおいて 貧乏人と同じくらい寛容になりました。このことが示すのは 差異というものは 先天的でも絶対的でもなく 価値観のわずかな変化や 慈悲や共感する力に ちょっと目を向けさせるだけで 左右されるということです。

 

13 「Giving Pledge(寄付の誓い)」

研究室内だけでなく 社会にも変化の兆しが 現れ始めています。ビル・ゲイツは我が国の 最富裕層の一人ですが ハーバードの卒業式の式辞で 社会が直面している不平等の問題を 最も手ごわい課題として語り それと闘うためにすべきことを 語りました。彼の言葉です 「人類の進歩のうちで最大のものは 発見にあるのではなく 不平等を緩和するために 発見をどう利用するかにある」 「Giving Pledge(寄付の誓い)」という 取り組みがあります。そこでは― 我が国の百人以上の大富豪たちが 財産の半分を寄付すると 誓いを立てています。利益分割の草の根運動が いくつも始まっています。名前を挙げるなら 「We are the One Percent」 「Resource Generation」 「Wealth for Common Good」 こうした活動を通じ 特権階級の人たちや 上位1%に当たる人など 裕福な人々が 自らの経済力を使って 大人も若者も ― ここに私は 最も感動したのですが 自らの特権や 自らの経済力を 格差是正のために生かそうと 社会政策や 社会的価値の変革を求め 人々の行動を 変える必要があると訴えています。この活動は彼ら自身の 経済的利益にはマイナスですが いずれアメリカンドリームを復活させる 可能性を秘めています。ありがとうございました(拍手)

最後に

仕組まれたゲームで有利に事を運ぶという経験が与える影響。金持ちは支配的な仕草や力を誇示したりすることが多くなった。たまたま有利な立場になったことも全然気にしなくなっていた。人間は富のレベルが上がると慈悲や同情の気持ちが減り、権利意識や自己利益についての観念が強くなる。身体的健康、社会的信用などは格差が広がると下落する。Giving Pledge(寄付の誓い)

和訳してくださった Emi Kamiya 氏、レビューしてくださった Yuko Yoshida 氏に感謝する(2013年10月)。

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