「下を向いて歩くことが最終形なのでしょうか?快適に使えてはいませんよね?」ブリンは語りかける。ここでは、75万ビューを超える Sergey Brin のTED講演を訳し、顔を上げて世界と向き合うという、モバイル・コンピュータを使った新たな関係性のあり方を理解する。
要約
なぜグーグルのセルゲイ・ブリンと彼のチームは、グラスというコードネームがついたヘッドマウント式のカメラ兼コンピュータを作りたかったのでしょうか?このトークでは、デモンストレーションではなく、その哲学について語られます。TED2013のステージで、ブリンは、スクリーンを覗き込むのではなく顔を上げて世界と向き合うという、モバイル・コンピュータを使った新たな関係性のあり方を提唱したのです。
Sergey Brin is half of the team that founded Google. Now he’s leading the development of special projects like Google Glass.
1 グーグルも最初はそうして資金を集め上手くいった
またTEDに参加できてうれしいです。まずはこのビデオをお見せしましょう。
(音楽)(ビデオ)男性1: よし グラス 録画してくれ
女性1: 準備OK あと2分で開演よ
男性2: グラス 飛行クラブとつないでくれ
男性3: 「トラの顔の写真」をグーグルで調べてくれ
男性4: いいか?行くぞ!(吠える声)
女性2: そこに立って そこよ グラス 写真を撮って(子どもの歓声)
男性5: 行け~!
男性6: うわっすっごい!素晴らしい!
子ども: うわ~!蛇だ!
女性3: さあグラス 録画して!
男性7: 橋を渡って最初の出口だ
男性8: A12ゲート あそこだ!(拍手)(子どもの歌声)
男性9: 「おいしい」をタイ語で言うと?
グーグル・グラス: 男性9: んー (タイ語で) おいしい
女性4: 「くらげ」を検索して(音楽)
男性10: きれいだな~(拍手)
セルゲイ・ブリン: 失礼 ナイジェリアの王子からメッセージが来たもので 1,000万ドル必要なんだそうです。こうしたメッセージにも 関心を持ちたいのです。グーグルも最初はそうして資金を集め とても上手くいったのですから
2 下を向いて歩く姿が最終形なのでしょうか?
真面目な話 たった今 僕は 携帯電話を 覗き込んでいましたがこの姿勢が グーグル・グラスのプロジェクトを始める理由の1つとなりました。ほかの人や情報と 今後もずっと このような形で つながっていくのだろうかと。とことん疑問に思っていたからです。下を向いて歩く姿が最終形なのでしょうか? こうしたビジョンを持って グーグル・グラスをデザインしました。これでできること・できないことを詳しく話すつもりはありません。それよりも グーグル・グラスを生み出すに至った動機をお話ししましょう。出歩いているときに携帯電話を覗き込んでいるのは 自分を社会から孤立させかねないだけでなく それが ふさわしい体の使い方なのだろうかという気にもなります。ただ突っ立って のっぺりとした ガラスの画面をこすり 動き回っているだけなのです。
3 どうすれば手を自由にできるかということを考え抜いた
グーグル・グラスの開発では どうすれば手を自由にできるかということを考え抜きました。さっきお見せした動画では いろんなことをしていましたね。あれは全部 グーグル・グラスをつけた人が撮影したものです。
4 目も自由にしたいと思った
また 私たちは 目も自由にしたいと思いました。それで ディスプレイの位置を上げ 視線から外すようにしたのです。何かを見るときの邪魔にはなりませんし アイコンタクトの 邪魔にもなりません。
5 耳も自由にするために音が頭蓋骨に直接伝わるようにした
耳も自由にしたかったので 音が頭蓋骨に 直接伝わるようにしました。最初は少し変な感じがしますが慣れてきます。皮肉なことに グラスの音をはっきり聞きたいときには 耳の穴をふさげばよいのです。びっくりしますが そういう風にできています。
6 検索文字の入力をいずれ不要にしてしまおう
15年前 グーグルを始めたときに思い描いていたのは 検索文字の入力を いずれ不要にしてしまおうということでした。必要な情報が 自分のところにやってくるようになるのです。15年経った今 そのビジョンを実現した 最初の形状の製品が完成し 外で人と話したりしながら 使えるようになりました。
7 快適に使えるものにすることがとても重要
このプロジェクトは2年ちょっと続いています。多くのことを学びました。快適に使えるものにすることがとても重要でした。最初の試作品は巨大で頭に携帯電話を くくりつけているようでした。とても重くて使いづらいものでした。デザイナーには仕事を引き受けると言うまで 詳しいことは秘密にしていました。真相を知って 叫びながら逃げ出す一歩手前でした。そこから長い道のりを乗り越えてきました。
8 予期しなかった驚きはカメラ
もうひとつ 予期しなかった驚きは カメラです。最初の試作品にはカメラなどありませんでした。でも 家族や子どもとの時間を記録できるのは 本当に素晴らしいことでした。デジカメや携帯やほかの機材を 探し出す必要がないのです。
9 無意識に繰り返す神経質な癖があることに気づいた
グラスを使った実験で最後に気づいたのは 自分にも無意識に繰り返す神経質な癖があるということです。携帯は – そう 覗き込まなければいけなかったりもしますが – ついつい見てしまう習慣がつきものです。喫煙者だったら煙草を吸ってしまうようなものです。煙草に火をつけたりすればその方が格好よく 見えるかもしれません。こんな感じに – でも携帯の場合はサッと取り出して 何か重要なことでも しているかのように使うのです。でも それによって自分がいかに多くの時間 引きこもっていたのかということに気づきました。そんなに重要でも差し迫ってもいないのに EメールやSNSなどを していたのです。グーグル・グラスでは本当に重要なメッセージは 届きますが ずっとチェックしている必要はありません。
10 世界を我が身で探求して楽しもう
この動画のようにクレイジーなことを もっとたくさん体験しながら世界を我が身で探求して楽しむのです。ありがとうございます(拍手)
最後に
正面を見たまま歩き、手も目も耳も自由にして、顔を上げて世界を楽しもう。
TED公式和訳をしてくださった Wataru Narita 氏、レビューしてくださった Akinori Oyama 氏に感謝する(2013年5月)。
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