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ステファン・フレンド 「知られざるヒーロー遺伝子たち」を探して

「遺伝性疾患の秘密を解読するためのレジリエンス・プロジェクトを知っていますか?」フレンドは語りかける。ここでは、77万ビューを超える Stephen Friend のTED講演を訳し、健康であり続ける人々の研究について理解する。

要約

私たちは病気になる遺伝学を持つけれども病気にならない人々から、何を学ぶことができるでしょう?同じ遺伝疾患のリスクを持つ家族でも、全員では無く、一部だけが病気を発症します。ステファン・フレンドが、私たちは健康でありつづける人々を研究するべきだと示唆します。遺伝性疾患の秘密を解読する為の大規模な「レジリエンス・プロジェクト」に参加してみては?

Inspired by open-source software models, Sage Bionetworks co-founder Stephen Friend builds tools that facilitate research sharing on a massive and revolutionary scale.

 

1 遺伝による眼腫瘍 網膜芽細胞腫

30年程前に 私がフィラデルフィアにある小児病院の 腫瘍内科で働いていた頃 父親とその息子さんがオフィスを訪ねて来ました。二人とも右目が無く 病歴を調べると 二人とも珍しいタイプの 遺伝による眼腫瘍 網膜芽細胞腫 を患っていました。父親にはその運命を 息子さんに遺伝させた事が よく分かっていました。

その瞬間が私の人生を変えました。その経験が私の背を押し 最初にがん感受性遺伝子を発見した チームを共同で率いることになったのです。それから数十年の間に 我々の研究分野で 文字通り地殻変動が起こり どのような遺伝子性変異が 様々な疾患の背後にあるか ということが明らかになってきました。実際 数千に及ぶ人間の特質を決定づける 分子基盤 そして毎日数千の人々が 様々な疾病にかかるリスクについての 情報を新たに得ています。

 

2 私達に起こるほとんどの変化は身体機能の喪失

ただ同時に 「それが 医薬品の開発の仕方を 効率化したりしたのでしょうか?」と聞かれたら 答えは「そうでもない」です。医薬品開発費用の内訳には そういったことへの費用は含まれていません。ですから まるで私達は診断する力を得た一方 完全に治療出来る力は持っていない といった状態です。そしてこうした状況には 二つの ありきたりな理由があります。一つ目の理由は 今はまだこの分野の黎明期だということ。言葉を 情報の断片を 遺伝情報の文字や配列を 知り始めたばかりで センテンスの読み方も分からず 物語の文脈を理解する事も出来ません。もう一つの理由は 私達に起こる殆どの変化は身体機能の喪失で 薬でこれらの機能を回復させるということは とても難しいということです。

 

3 健康な人々が健康である理由をもっと研究すべき

でも今日 私は一歩立ち戻って より根本的な質問を投げかけたいと思います。「もし私達が これを 間違った文脈で 捉えていたとしたらどうだろうか?」 我々は数々の患者を研究し 変異した遺伝子の 長いリストを作成しています。しかし 私達がやろうとしているのは 疾患を予防する為の医療で 本当にやるべきことは 実は 病気にならない人々を 研究することなのかも知れません。健康な人々が健康である理由を もっと研究することなのかも知れません。殆どの人々は ある特定の遺伝子や危険因子を 持っているとは限りません。彼らが解決策を示す事はありません。そうした人々は 将来 疾病に罹患するリスクを持ち そしてそのうち症状を発現するでしょう。そうした人々が対象なのではなく 私達が探しているのは 通常なら病気になってしまう リスク要因を持ちながら 彼らの中の隠れた 防護機能を持つ何かによって 疾患の発現から守られているような ごく少数の人々なのです。

 

4 40歳以上の成人で子どもの頃健康だった人が対象

そうした研究をする為には大勢の人々を 研究対象とする必要がある事は想像に易いでしょう。大規模な臨床研究が必要です。そして 一つのやり方は 40歳以上の成人 ― しかも皆子どもの頃に健康だった人々 を対象にすることだと気付きました。彼らの中には 小児疾患を患った家族を 持つ人もいるかも知れません。でもそうとは限らないでしょう。それからスクリーニングにより 小児疾患の遺伝子を持つ人々を 割り出すのです。

さて 皆さんの中には 「いや ちょっとまて それが可能な証拠がどこにある?」 と疑問に感じている方もいますね。二つの例をご紹介しましょう。

 

5 予防医療の2つの事例

一つはサンフランシスコの例で 1980年代と1990年代のものですが とても高いレベルのHIVウイルスを持っていた 人々のことをご存知でしょうか。やがて彼らはエイズとなりました。ところが そのうちのごく少数は 非常に高いレベルのHIVウイルスを持ちながらも エイズにはなりませんでした。そして明晰な臨床研究者たちは彼らが 遺伝子変異を持っていた事を突き止めたのです。注目して頂きたいのが 彼らは生まれながらに 防護的役割りを果たす変異を持ち それが彼らをエイズから守っていた事です。この事を基に一連の治療法が開発されている事を ご存知の方もいるかも知れません。

二つ目の例はより最近のものです。ヘレン・ホッブスによって エレガントに設計された研究がありました 「非常に高い脂質レベルを持つ人々を調べて ― その中でも 高い脂質レベルを持ちながら 心疾患を患わない人々を探す」というものでした。彼女もまた 幾人かは 非常に高い脂質レベルを持ちながらも 生まれながらに彼らを守って来た遺伝子変異を 持っている事を突き止めました。この例は 予防医療を開発する為の 方法における興味深いアプローチだと お分かりでしょう。

 

6 「レジリエンス・プロジェクト」

私達のプロジェクトは 「レジリエンス(抵抗力)・プロジェクト: 知られざるヒーローを探して」 と呼ばれ その理由は 隠れた防護因子を持った希少な個人たちを 突き止めたいという願いでした。ある意味 これは暗号解読者達の同盟だと考えて下さい。私達が創ろうとしているのは 「レジリエンス暗号解読同盟」です。これを体系的に実行するべきだと気づいた私達は いったん小児遺伝性疾患の全てを 対象と考えました。まずは全てをリストアップして その中から 症状の重い病気を選びました 両親が、子どもや、周りの人が 子どもが病気だとわかる程度の病気です。それから それらの疾病を その疾患を引き起こす特定の変異を 起こすと知られている 既知の遺伝子によって捉えることにします。

 

7 百万人を対象にしよう

ではどこを探せば良いのでしょう? 近隣地域や地元を見る事が出来ます。これは妥当ですね。しかしこう考え始めました。世界中を対象に 探してみるべきなのではないだろうか。この辺りだけではなく ひょっとしたら特徴的な遺伝子が育つ環境にある 遠隔地も視野に入れるべきではないだろうか。人々を守っている環境要因が 見つかるかも知れない。百万人を対象にしよう

これを実行するのに今がとても 良い時期だと思うのは 過去数年の間に この種の分析や この種のデータ集積にかかる費用が 顕著に下がったことが理由です。データ集収と分析の費用のほうが サンプルを集めて処理する費用よりも 安価だというところまで来ているのです。もう一つの理由は 過去5年の間に ネットワーク生物学やシステム生物学の分野で 新たなツールが登場したことです。これを使えば 特異的に健康な人の秘密が 明らかにできるかもしれないのです。

研究者や研究機関にこの話をしてまわると ある変化が起こり始めました。彼らは「これは興味深い あなた達の研究に 喜んで参加したい」 と言い始めたのです。彼らは「物質移動合意書はどうなっている?」とか 「論文著者としての記載はどうなる?」 「このデータの所有権は自分にあるのか?」 とは言いませんでした。彼らは基本的に 「オープンなクラウドソーシング体制のチームで 暗号解読に取りかかろう」と言ったのです。

 

8 50万サンプルを分析し終えた

6ヶ月前に私達は 暗号解読の為のスクリーニングの鍵を特定しました。ニューヨークのアイカーンマウントサイナイ医科大学の 優秀な科学者で私の共同研究主任の エリック・シャットと彼のチームは 暗号解読の為の鍵を特定し そして我々は サンプルを探し始めました。なぜなら いくつかの既存のサンプルから 実現可能性を割り出す事が出来ると気付いたからです。プロジェクトの総対象数のうち2~3%から 存在を推測出来るかも知れない。そして私達は 協力を求め ― フィラデルフィア小児病院のホーコンや フィンランドのレイフ 23andMeのアン・ウォジツキや BGIのワン・ジュンとこの話をしました。すると こんな良い展開になりました。こういう話です 「サンプルはあるけど その分析も済んでいるんだ。その匿名化サンプルを使って 探しているものがないか 見てみよう」 2~3万サンプルから と思っていたのが 先月私達は50万サンプルを 分析し終えました

 

9 私達の遺伝子はどう役立つのだろう?

こう考えておられるかもしれませんね 「それで知られざるヒーローは見つかったのだろうか?」 答えは 一つや二つ見つけただけに留まらず 何十もの強力な「知られざるヒーロー」予備軍を 見つけたのです。ですから 今プロジェクトはベータ版に 移行し 前向き研究の対象となり得る個人を 集め始めるべきだと考えています。つまり私達が必要としているのは情報のみです。DNAを採取出来て 「私の情報はどうなっているんだろう? 結果を教えて下さい」という積極さが必要なのです。

私達の多くは人生において 健康や病気といったことについて 傍観者として過ごします。私達は疾病を理解し治療するという 責任は 選ばれし専門家に託してしまいます。このプロジェクトの為には 個人個人が別の新たな役割りを持って この夢を実現する為に このオープンクラウド型プロジェクトに参加し 「知られざるヒーロー」達を見つける為に 現在の資源と制約という医療の概念から進化し 現在の資源と制約という医療の概念を出て 予防医療をデザインするために 小児疾患より更にその先の アルツハイマー病やパーキンソン病までを 理解するために 私達は自分たち自らの遺伝子情報を調べて 「私達の役割は何だろう? 私達の遺伝子はどう役立つのだろう?」と問いかけ始める 必要があります。今まではどこかの専門家に相談に行かなくてはと 言っていた その代わりに 自分たちの中の遺伝子情報に問いかけるのです。そしてその情報を皆で共有するのです。ありがとうございました(拍手)

 

最後に

遺伝による眼腫瘍、網膜芽細胞腫が私の人生を変えた。私達に起こるほとんどの変化は身体機能の喪失。健康な人々が健康である理由をもっと研究すべき。「レジリエンス(抵抗力)・プロジェクト」。私達の遺伝子はどう役立つのか、自分たちの中の遺伝子情報に問いかければいい

和訳してくださったEriko T 氏、レビューしてくださった Masaki Yanagishita 氏に感謝する(2014年3月)。

遺伝性疾患および奇形症候群診断補助ソフト―GenDis


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