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本質は移動、電波、音声・データ 「携帯電話はなぜつながるのか」

携帯電話の本質は移動すること、電波を使うこと、そして電話とデータ通信の2つのサービスを提供していることの3点にある。ここでは『携帯電話はなぜつながるのか』を7回にわたって要約し、スマートフォンを支える3G/3.9G高速通信のしくみを解説する。

1 ダイヤルするとまずは無線基地局につながる

W-CDMAとLTE

携帯電話には複数の方式がある。著書では第3世代(3G)携帯電話のW-CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式を中心に、第3.9世代(3.9G)方式のLTE(Long-Term Evolution)方式も説明している。W-CDMAは、NTTドコモのFOMAやソフトバンクモバイルのサービスで使われている方式である。ここではFOMAを例に説明する。

 

無線基地局からノードビルへ

携帯電話には音声の電話とiモードなどのデータ通信という2種類のサービスがある。ここでは電話の音声通信でつながるしくみを解説する。携帯電話網の構成は、NTTドコモの場合、無線基地局が屋内・屋外で4万局以上、交換機は数十台ある。まず、携帯電話端末は無線基地局と電波で交信する。次に、光ファイバなどの伝送路を経由して、交換機が収容されているノードビルと呼ばれる建物に到着する。音声は着信者に届くまで複数のノードビルを経由する。

  • 無線基地局:携帯電話端末が出した電波を受信し、その電波を元のデジタル信号にしたり、逆にデジタル信号を送信電波に変換して携帯電話端末に送り出したりする装置
  • ノードビル:携帯電話事業者の拠点で、主に交換機などの携帯電話に欠かせない装置を収容している

 

携帯電話がつながるまでの流れ

携帯電話の発信の流れは以下の8つの手順を踏む。

  1. 発呼(発信)
  2. 携帯電話端末が制御チャネルで発信
  3. 無線基地局がダイヤル情報を受け取り、加入者交換機に渡す
  4. 加入者交換機が、ホームメモリーに相手の位置登録エリアを問い合わせる
  5. 位置登録エリアの加入者交換機に、発信者から届いたダイヤル情報を送る(認証
  6. 加入者交換機が位置登録エリア内のすべての無線基地局を経由して、ページング・チャネルで相手を呼び出す
  7. 返事があった無線基地局に回線を接続する
  8. 通話開始

なお、2000年頃より商用サービスに導入された第3世代携帯電話システム(3G)は、電波の国際標準化機関であるITU-R(国際電気通信連合の無線通信部門)では「IMT-2000」(International Mobile Telecommunications 2000)と呼ばれている。IMT-2000は過去の第1世代のアナログ方式、第2世代のデジタル方式よりもさらに優れた性能を持ち、情報通信速度が数百kbpsから2Mbpsと高速なのが特徴である。IMT-2000にはいくつかの方式があり、日本と欧州が中心となって開発した「W-CDMA」方式と米国が開発した「cdma2000」方式などがある。日本では、NTTドコモとソフトバンクモバイルがW-CDMA方式を採用し、KDDI(au)がcdma2000方式を採用している。また、イー・モバイルが2007年から1.7GHz帯でW-CDMa方式のサービスを提供している。

 

2 コンビニより多い数で全国をカバーする無線基地局

無線基地局の大きさは小規模なものから大規模なものまで様々である(機能については次回)。携帯電話のサービスエリアはほぼ全国をカバーしており、NTTドコモの「FOMA」の場合、2011年3月時点で屋外は6万2800、屋内では3万近い無線基地局がある。

無線基地局は周囲のある範囲のエリア(セル)をカバーしており、このエリア内にいる携帯電話端末と無線で通信する(無線アクセス・ネットワーク)。そして光ファイバーなどの伝送路を経由して、コア・ネットワークにつながっていく。コア・ネットワークは、光ファイバなどでつないだ交換機同士のネットワークである。

 

3 ノードビルには重要な装置が満載

携帯電話端末が発信して無線基地局に届いた相手の電話番号は、ノードビルの交換機に送られる。ノードビルには加入者交換機無線ネットワーク制御装置RNC:Radio Network Controller)、ホームメモリーなどが設置されている。無線ネットワーク制御装置とは、ハンドオーバーなどの無線回線を制御する機能や、電話音声を処理する音声符号化装置を搭載した装置である。ただし、どのノードビルにもこれらすべての装置があるとは限らない。

これらの携帯電話の重要な各種装置は、架構造をしている。架構造とは、各種機能を搭載したモジュールを差し込んでいくフレーム上の筐体である。NTTドコモの場合はほぼサイズが揃っていて、社内規格であるINS架規格(高さ1.8m×幅60cm×奥行60cm)を採用している。

 

4 電話番号で相手の位置を探し出す

携帯電話がつながる流れは、無線基地局から交換機を経由して通信相手がいる位置登録エリアまでつながり、位置登録エリア内の加入者交換機は無線基地局から携帯電話端末を呼び出して(ページング)つながるというものである。

加入者交換機はホームメモリー(携帯電話端末のデータを記録している一種のデータベース)に問い合わせをすることで、その電話番号を持つ携帯電話端末がいる場所を探し出す。位置登録エリアとは、無線基地局のカバーエリアセルを複数まとめた広い地域のことである。すなわち、セル<位置登録エリア<サービスエリアという大小関係を持つ。

ページング(一斉呼び出し)では、ページング・チャネルというチャネルを使う。ページング・チャネルとは、無線基地局のエリア(セル)内にいる全携帯電話端末に情報を送れるチャネルで、制御チャネルの1つである。チャネルとは通信路のことで、音声が流れる通話チャネルや、回線を接続するための各種制御情報が流れる制御チャネルなどがある。W-CDMAでは拡散コードというしくみを使い、混信しないようにしている(詳細は次回)。

 

5 携帯電話の本質は「移動すること」

携帯電話の本質は「移動すること」である。この点で従来の固定電話と比べてサービス面でも技術面でも大きな変化が起こった。移動するには携帯電話端末と電話局をケーブルでつないでおくわけにはいかない。そのため「電波を使うこと」も大きな特徴となった。さらに、「音声とデータの2本立て」も携帯電話独特の特徴である。端末もネットワークも同じものを使いながら異なる通信処理を実施して、電話とデータ通信の2つのサービスを提供している。

  1. 移動すること
  2. 電波を使うこと
  3. 音声とデータの2本立て

 

6 移動することの難しさ

移動することによる難しさは以下の4つの問題に起因する。前提として着信があったら即座に接続しなければならない場合を考える。第一に、相手の場所が定まらないという問題がある。そのため、常に位置を把握しなければならず、位置検出のためだけの電波やネットワーク機能が必要である。そこで位置登録という対策が考えられた。

第二に、電波の問題がある。電話しながら移動すると電波は弱くなるため、通話中に切れない工夫が必要である。そこでハンドオーバーという対策が考えられた。

第三に、無線を使うことから生じる電波の混信の問題がある。同じ周波数の電波は混信し、周波数も限られているため、数多くの通信を同時には行えない。そこで周波数の利用効率を上げる対策が考えられた。

第四に、電源と電波の質の問題がある。まず無線を使うことにから電源は電池になるため、あまり送信出力を上げられない(電波が弱い)。また電波は場所によって届きにくいため、通話品質が悪くなる。そこで、どこでも電波が届くように多くの無線基地局が必要となり、コストと品質のトレードオフへの対策が考えられた(セルラーコンセプト)。

 

7 携帯電話端末の場所を記憶するホームメモリー

携帯電話端末の現在位置を記憶するホームメモリーも携帯電話ならではの装置である。都道府県単位よりも小さいくらいの範囲が、位置登録エリアになっている。ホームメモリーが故障すると携帯電話はつながらなくなってしまう。

 

8 携帯電話ならではの位置登録処理

位置登録は、携帯電話端末が移動して別の位置登録エリアに移ったときに実施する。位置登録のきっかけは、携帯電話端末が無線基地局から届いた報知情報を解読して、自分が別の位置登録エリアに移行したことに気づいたときである。報知情報には、その無線基地局がどの位置登録エリアに所属しているかという情報が入っている。

 

9 移動するから必要になるハンドオーバー処理

携帯電話端末は複数の無線基地局からの電波強度を計測している。電波強度の変化は無線基地局経由で無線ネットワーク制御装置に通知され、ハンドオーバーのきっかけとなる。ハンドオーバーとは、セルを移動しても切れないように通話チャネルを切り替える処理である。ハンドオーバーの仕組みは以下の通りである。

  1. 携帯電話端末が無線基地局Bからの電波強度が、通信中の無線基地局Aよりも強くなったと通知
  2. 無線基地局Aが端末からの情報を無線ネットワーク制御装置(RNC)に転送
  3. RNCが携帯電話端末からの通知に基づき、ハンドオーバーを実施
  4. 無線基地局Bにて新たに通信開始

こうしたハンドオーバーの回線制御動作は、携帯電話端末、無線基地局、無線ネットワーク制御装置が高信頼で常時連携できて初めて可能になるのである。

 

10 干渉し合う電波をうまく使う

携帯電話が電波を使う上での工夫を、アマチュア無線と比較して説明する。アマチュア無線では通信者同士を直接電波で結ぶため、通話距離は電波が届く範囲に限られる。しかし、携帯電話は途中に大きなコア・ネットワークという有線のネットワークが介在しているため、世界中でも通話ができるのである。

また、干渉対策がされている。干渉とは、複数の電波が重なり合って届く前と異なる状態になることである。アマチュア無線ではユーザーがお互いの通話をモニターしながら、干渉しない無線チャネルを自分で探し出して通話する。しかし、携帯電話は無線ネットワーク制御装置が空いている無線チャネルを選んで通話に割り当ててくれるのである。無線基地局が多く必要なのも干渉を避けるための工夫なのだ。

 

11 音声とデータの2本別立て

電話とデータ通信の2本立てについて説明する。携帯電話では、無線アクセス部分でも、コア・ネットワーク部分でも、音声通信とデータ通信とを分けている。その理由は周波数の有効利用と通信品質の確保のためである。

 

無線アクセス部分

音声通信とデータ通信のチャネルは、通信の形式や伝送速度が大きく異なる。音声はチャネルを占有して送るのに対し、データ用通信チャネルは情報を小包状のパケットに入れてやりとりするパケット通信を行っている。通話がリアルタイム重視なのに対し、データ通信は必ずしもリアルタイムが重視されないことから使い分けている。これによって電話の通信品質を確保し、データ通信における周波数の有効利用を果たしている。

ユーザーが送受信するデータは、時間・量ともにランダムである。そこで無線基地局は、電波を無駄遣いしないようにユーザーがデータを送信する時間を調整して、すき間なく送るようにしている。

 

コア・ネットワーク部分

コア・ネットワーク部分でも音声通信とデータ通信とを分けている。音声とデータは無線ネットワーク制御装置の中で分離される。その後、音声とデータは別のコア・ネットワークに入る。音声とテレビ電話は加入者交換機に入り、データは加入者パケット交換器に入っていく。音声の加入者交換機はATM(非同期転送モード)という方式を使った回線交換ネットワークを利用し、データ通信の加入者パケット交換器はIPネットワークを介して送受信している。

さらに音声は、関門交換機という交換機を経由して固定電話網や他の携帯電話事業者の携帯電話網につながる。データ通信でも、ゲートウェイという装置を経由してインターネットにつながる。このように音声とデータは、どちらも携帯電話端末、無線基地局、無線ネットワーク制御装置を通るが、コア・ネットワークの交換機では独立したネットワークを経由させるのである。つまり、物理的には同じ装置を使っているものの、論理的には音声とデータを別々に扱っているのである。

 

最後に

本質は移動、電波、音声・データとして「携帯電話はなぜつながるのか」についてまとめた。

携帯電話の本質は、移動すること、電波を使うこと、音声とデータの2本立てという3つである。 相手の場所が定まらないことや電波の問題から、位置登録、ハンドオーバー、周波数の利用効率を上げる、コストと品質のトレードオフといった対策が立てられている。音声とデータはどちらも携帯電話端末、無線基地局、無線ネットワーク制御装置を通るが、コア・ネットワークの交換機では独立したネットワークを経由させている。

次回は、携帯電話端末と無線基地局を無線でつなぐ4つの工夫とCDMAについて解説する。

携帯電話はなぜつながるのか 第2版 知っておきたいモバイル音声&データ通信の基礎知識


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