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ケーブルの先はLAN機器 ハブ、スイッチ、ルーター4項

前回は、TCP/IPのデータを電気信号にして送るプロトコル・スタックとLANアダプタについてまとめた。ここでは、ハブやスイッチ、ルーターなどのネットワーク機器の働きについてまとめる。

1 ケーブルとリピータ・ハブの中を信号が流れていく

 一つひとつのパケットが独立したものとして動く

すべてのパケットは何の関連性もない別々のものとみなされ、目的地に向けて中継されていく。

 

LANケーブルは信号を劣化させないことがポイント

まず、LANアダプタのPHY(MAU)回路で電気信号に姿を変えたパケットは、RJ-45コネクタを通ってツイストペア・ケーブル(より対線)に入っていく。イーサネットの信号の実体はプラスとマイナスの電圧なので、LANアダプタのPHY(MAU)回路のプラスとマイナスの信号端子から信号が出てくるイメージである。

この信号は、ケーブルの長さが長くなれば長くなるほど、周波数が高い信号ほど弱くなってしまう。送信側ではきれいな長方形になっている信号波形は、伝送途中で弱くなったり波形が崩れたりして、受信側で読み取りにくくなるからである。さらに、ケーブルの周囲で発生する電磁波も信号を弱くしてしまう。

 

「より」は雑音を防ぐための工夫

そこで、LANケーブルとして使うツイストペア・ケーブルより対線)には、こうした雑音の影響を抑える工夫がなされている。それが「より」である。ツイストペアとは、2本の信号線を組にしてより合わせている様子のこと。信号線をよることで外部からの雑音を打ち消し、間隔を変えることでケーブル内の雑音を減らすのである。こういった雑音による影響をクロストークという。現在市販されているツイストペア・ケーブルには、カテゴリ5(CAT-5)、エンハンストカテゴリ5(CAT-5e)などがある。

 

リピータ・ハブはつながっているケーブル全部に信号を送信

信号がリピータ・ハブに届いたら、そこからLAN全体に信号がばらまかれる。リピータ・ハブの概要は以下の通り。1)各コネクタの内部には、LANアダプタ内部にあるPHY(MAU)回路と同じ働きをする回路がある。2)リピータ・ハブの端のコネクタには、MDI/MDI-X(Media Dependent Interface / MDI-Crossover)という切替スイッチがついていることがある。3)リピータ・ハブのPHY(MAU)回路の受信部に届いた信号は、そこからリピータ回路に入っていく。4)信号は全コネクタから出て行き、リピータ・ハブに接続した機器全部に届く

 

2 スイッチング・ハブのパケット中継動作

スイッチング・ハブはアドレス・テーブルで中継

スイッチング・ハブはイーサネットのパケットをそのまま目的地に向けて中継するように作られている。ポイントは以下の2つ。1)スイッチング・ハブのポートのMAC回路にはMACアドレスが割り当てられていない。2)スイッチング・ハブは、MACアドレス・テーブルでMACアドレスを調べて、該当するポートから信号を送信する。その動きの概要は以下の通り。

1)信号がコネクタ部分に届き、PHY(MAU)回路で受信する(リピータ・ハブと同じ)。2)PHY(MAU)回路でケーブルを流れる信号の形式から共通の信号形式に変換した後、信号はMAC回路に入っていき、そこでデジタル・データに変換してからパケット末尾にあるFCSを照合してエラーの有無を検査し、問題がなければそれをバッファ・メモリーに格納する。3)宛先MACアドレスと一致するものが、MACアドレス・テーブルに登録されているかどうかを調べる。4)スイッチ回路(入力ポートと出力ポートをつなぐしくみを電子回路で作ったもの)を経由して送信側のポートにパケットを運ぶ。5)MAC回路やPHY(MAU)回路が送信動作を実行し、ケーブルに信号が流れる(LANアダプタの送信動作と同じ)

 

MACアドレス・テーブルの登録・更新

更新動作は2種類ある。1つはパケットを受信したときに送信元MACアドレスを調べ、それを受信した入力ポート番号とセットにしてMACアドレス・テーブルに登録する動作である。もう1つは、MACアドレス・テーブルに登録されている内容を消す動作である。

 

例外的な動作

パケットを受信したポートと送信するポートが同じ場合は、パケットを中継せずに棄てることになっている。

 

全2重モードで送信と受信を同時に実行

全2重モードとは、スイッチング・ハブの持つ特徴で、送信と受信を同時に実行できる性質である。MAUの送信部分と受信部分の間には、信号の衝突を調べる部分がある。送信と受信を同時に行う全2重動作の場合は、この働きを無効にするのである。

 

最適な伝送速度で送るオート・ネゴシエーション

オート・ネゴシエーションとは、接続相手が全2重モードに対応しているどうかを検出して、動作モードを自動的に切り替えるものである。データを送信しないときに流す信号を用いて、自分の状況を相手に伝える方法を利用する。以下の2つがある。1)奇数番目のパルスは信号のタイミングを計るためのもので、一定間隔で送信することになっている。これには意味はない。2)偶数番目のパルスは送る場合と送らない場合があり、そのパターンに意味を持たせる。これで動作モードなどを相手に伝える。

 

スイッチング・ハブは複数の中継動作を同時に実行

スイッチング・ハブは、宛先MACアドレスの機器が存在するポート以外には送信動作を行わないので、他のポートは空いた状態になる。そのため、同時に複数のパケットを中継することができる。

 

3 ルーターのパケット中継動作

ルーターの基本

ルーターの内部構造は、中継部分とポート部分という2つの部分で構成されている。中継部分がパケットの中継先を判断する動作を担当し、ポート部分がパケットを送受信する動作を担当する。そのため、ルーターの各ポートにはMACアドレスとIPアドレスが割り当てられている。MACアドレスは、LANアダプタと同様に工場で製造するときにポート部分のROMに書き込まれている。

 

経路表に登録される情報

経路表(ルーティング・テーブル)とは、ルーターのテーブルのことで、宛先、ネットマスク、ゲートウェイ、インタフェース、メトリックといった情報が登録されている。概要は以下の通り。1)ルーターはIPアドレスで中継先を判断する。2)ルータはホスト番号を無視して、ネットワーク番号の部分だけ調べる。3)ルーターの経路表のネットマスク欄は、経路表の宛先とパケットの宛先アドレスを照合するときのビット数を表しているだけである。経路表に登録する方法は以下の2つに分類できる。1)人間が手動で経路情報を登録/更新する、2)ルーティング・プロトコルというしくみを使ってルーター同士で経路情報を交換し、ルーターが自分で経路表に登録する。

 

ルーターのパケット受信動作

ルーターのポートにはMACアドレスが割り当てられており、ルーターは自分のアドレスに該当するパケットだけ受信して、該当しないものは棄ててしまう。

 

経路表を検索して出力ポートを見つける

ルーターで中継するパケットの宛先MACアドレスには、そのルーターのポートに割り当てられたMACアドレスが書いてある。そのため、パケット受信動作が終わったら先頭のMACヘッダーは棄てる。そして、MACヘッダーの後ろにあるIPヘッダーの内容を見て、パケット中継動作に入る。

 

該当する経路がない場合に採用するデフォルト経路

デフォルト経路とは、ルーターの経路表のネットマスク欄の「0.0.0.0」の行のことである。そこに登録したルーターをデフォルト・ゲートウェイという。

 

パケットには有効期限がある

ルーターには、TTL(Time To Live:生存期限)というIPヘッダーのフィールドを更新する役目がある。パケットには有効期限があり、ルーターを経由する都度この値を1ずつ減らしていき、それが0になったら棄ててしまうのである。パケットが同じ箇所をぐるぐる回ることを防ぐためのしくみである。

 

大きいパケットはフラグメンテーション機能で分割

フラグメンテーションとは、IPプロトコルで規定された方法を使ってパケットを分割し、パケットの長さを短くしてから中継するものである。TCPヘッダーはユーザー・データではないが、IPプロトコルの観点から見た場合にはデータとして扱われる。

 

ルーターの送信動作はコンピュータと同じ

ルーターが次に渡す相手を判断する方法は2つある。1)経路表のゲートウェイ欄にIPアドレスが書いてあれば、そのIPアドレスが渡す相手。2)経路表のゲートウェイ欄が空白だったら、IPヘッダーの宛先IPアドレスが渡す相手である。また、ルーターもARPを使って、次に渡す相手のMACアドレスを調べる。

 

ルーターとスイッチング・ハブの関係

ルーターとスイッチング・ハブの関係は、通信相手までパケットを届ける全体の動作はIP(ルーター)が担当し、その動作の際に次のルーターまでパケットを運ぶ部分をイーサネット(スイッチング・ハブ)が担当する。

 

4 ルーターの付加機能

アドレス変換でIPアドレスを有効利用

アドレス変換とは、社内ネットワークにプライベート・アドレスを割り当て、インターネットとは直接パケットをやり取りさせずに接続させるしくみである。アドレス不足に対処するために作られた。従来の固有なアドレスをグローバル・アドレスと呼ぶとした。

 

アドレス変換の基本動作

アドレス変換のしくみは、パケットを中継するときにIPヘッダーに記載されたIPアドレスとポート番号を書き換えるものである。ポート番号を利用してIPアドレスを変換するとは、外部に対して1つのグローバル・アドレスしか利用できない場合、社内ネットワークの複数の端末を見分けるのにポート番号を利用することができるということである。

 

ポート番号を書き換える理由

グローバル・アドレスの利用効率を高めるためである。クライアント側のポート番号をグローバル・アドレスとワンセットにしてプライベート・アドレスに対応づければ、1つのグローバル・アドレスを数万個のプライベート・アドレスに対応づけることができるからである。

 

インターネットから社内へのアクセス

事前にアドレスとポート対応づけ情報をアドレス変換装置の対応表に登録しておけば、インターネット側からプライベート側(社内)にアクセスすることもできる。

 

ルーターのパケット・フィルタリング機能

パケット・フィルタリング機能とは、パケットを中継するときにMACヘッダー、IPヘッダー、TCPヘッダーに記載してある内容を調べて、それが事前に設定した条件に合致したらパケットを中継するあるいは棄てるといった動作を行うことである。

 

最後に

コンピュータから出てきた信号は、ケーブルを伝わってリピータ・ハブなどを経由して進んでいく。スイッチング・ハブは信号を流すのではなく、パケットの信号を受信してデジタル・データの姿に戻し、再び信号に直して送信するという動作によってパケットを運ぶ。ルーターもスイッチング・ハブと同様にパケットを中継するが、IPの考え方に基づいて作られている点が異なる。ルーターにはプライベート・アドレスをグローバル・アドレスに書き換えるアドレス変換機能や、危険なパケットを遮断するパケット・フィルタリング機能を利用する機能が付加されている。

次回は、インターネットの内部であるアクセス回線とプロバイダについてまとめる。

ネットワークはなぜつながるのか 第2版 知っておきたいTCP/IP、LAN、光ファイバの基礎知識


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