「以前は女性らしさに抵抗がありましたが、そう見せない柔軟性を身につけました」ドネリーは語りかける。ここでは、100万ビューを超える Liza Donnelly のTED講演を訳し、ユーモアの力で女性が決まり事をいかに打ち破るかについて理解する。
要約
漫画家としてニューヨーカー誌に連載をもつライザ・ドネリーが現代の生活を描いた才能あふれる愉快な作品を紹介しながら、ユーモアの力でいかにして女性が決まり事を打ち破るかについて語ります。
New Yorker cartoonist Liza Donnelly tackles global issues with humor, intelligence and sarcasm. Her latest project supports the United Nations initiative Cartooning For Peace.
1 以前は女性らしさに抵抗があった
(すべての始まり)以前は女性らしさに抵抗がありました。今も無いわけではありませんが そう見せない柔軟性を身につけました (不安は立派な動機) 不安を解消できる格好のツールを 磨き上げてきましたので それを ご紹介します。1950年代から60年代 幼い頃 女の子に求められたのは 優しさ、思いやり、かわいさ、穏やかさ、柔和さでした。陰の役に徹することが 当たり前でした。ところが — 何を目指すのかは あいまいでした。
2 人は小さい頃に決まり事を悟る
(どんな大人?ちゃんとした人?ダメな人?)手本にできる人はたくさんいました。母、叔母、いとこ、姉妹もそうですし メディアも映像や言葉で 女性のあるべき姿を 刷り込み続けていました。ところが 私の母は変わった人で 主婦なのに 外で 女の子らしい経験もさせてくれず ピンクの服も買ってくれませんでした。代わりに 欲しかった漫画を買ってくれました。私は夢中になって 絵を描いて描いて 描き続けました。家族はユーモア好きでしたから 描きたいままに描くことができました。自己主張も会話も不要でした。内気な性格は 今でも続いています。それが漫画家としての一歩です (女らしさや失敗を避けていいわけじゃない) 人は小さい頃に 決まり事を悟ります (結婚したら私はあの女の人 トミーはあの男の人になるの) ですが いつも決まり事に 従うわけではありません。生まれた時から 刷り込まれているとしてもです。世界で一番重要とされている お決まりの色(ピンク) お決まりの形 (大きい服ですが お客様もです) お決まりの服装 (ああいうの着たほうがいいかな?) お決まりの髪型 (政治家のサラ・ペイリンみたいな髪型で でも彼女みたいな印象にはしないで) お決まりの行動にも従いません。
3 女性が伝統の継承者。嫌ならユーモアで変えるのが一番
ここで言う決まり事は 絶えず社会の目にさらされて 修正を受け続けているものです。その監視役に最適なのは女性です。女性が伝統の継承者だからです。代々 女性が決まり事を受け継いでいるのです。何か押しつけられていると ぼんやり感じ続けている だけではなくて — (ずっと押しつけられている気がするのはなぜ?) その内容も変わり続けています(何も気にならないことが気になる) 現状を把握していないこともよくありますけど それが女性の立場を危うくします (服装 振る舞い 話し方 歩き方)
そんな決まり事が嫌いな人は 多いと思います。もちろん決まり事に従うことも多く 無意識に従うこともありますが 私は昔からずっと嫌いです。嫌なら ユーモアで変えるのが一番です(ユーモア) ユーモアは社会の伝統に依存します(伝統) 知識にひねりを加えたり 振る舞いや服装の決まり事を 思いもよらないものに変えて 笑いを誘うのです。女性とユーモアを組み合わせたらどうなるか? 変化が生まれます。女性は有利です。伝統をよく把握していますから 新たな声を届けることができます。
4 一緒に笑いたくて描いていた
私が漫画を描き始めた頃 社会は混沌としていました。ワシントンD.C.からそう遠くない所で 公民権運動、暗殺事件、ウォーターゲート事件 女性解放運動を見て育った私は 目の前の状況を把握しよう という気持ちで描き続けていました。家族にも混乱がありましたから 家族をつなぎ止める思いもありました (パパとママのために 一緒に来てあげたの) 一緒に笑いたくて描いていたのです。でもダメでした。両親は離婚して 姉妹は逮捕されました。でも私は居場所を見つけました。ハイヒールを履かなくていいと気付き ピンクの服を着なくていいと気付き それが自分に合っていると感じました。
少し成長して20代になると 女性の漫画家が多くないことに気付いて 「漫画界の見えない壁を崩せるはず」 と思ったら本当に崩せました (誰でも壁を破れる日はいつ?) 40代には こう考え始めました 「何かしたほうがいいんじゃない? ずっと政治風刺漫画が好きだったし 作品を使って何かしたら? 女性を縛るくだらない決まり事について 笑いを交えて 考えてもらったら?」
5 世界中の漫画家と共同作業をしている
(黒で目が引き立つね) 私の見方は 特に アメリカ人的な見方です。ここに暮らす以上 それは避けられません。旅行は何度もしていますが アメリカ人女性っぽい思考のままです。でも この決まり事というのは 世界共通です。文化が違えば 振る舞いも違い 服装や伝統も違いますが どこの女性も アメリカ人と同じ問題に 立ち向かわないといけないのです (見て あのアンテナいけてる) 女性は伝統に通じているから有利で アンテナの感度もいいのです。
最近は 世界中の漫画家と 共同作業をしています。とても楽しく 漫画のもつ力を 一層深く感じることができます。真実をとらえる力 問題を素早く簡潔にとらえる力 見る者に訴える力を感じます。知性だけでなく心にも訴える力です。制作を通じて世界中の女性漫画家と 力を合わせることができます。サウジアラビア イラン、トルコ アルゼンチン、フランス みんなで座って 笑って 話して 問題を共有するのです。どの国の女性も とても困難な環境の中で 懸命に自分の声を届けようとしています。こういった女性たちと協力し合えるのは幸せです
女性が危うい立場にあり 伝統の継承者となっている状況で 女性が変革の請負人として 高い潜在能力を持てることを 強く自覚させるにはどうしたらいいのか それを話し合っています (ご飯の話はやめて革命についてつぶやけたらなあ) 笑いを添えて 一歩ずつ 変えていけると信じています。ありがとうございました(拍手)
最後に
以前は女性らしさに抵抗があった。一緒に笑いたくて描いていた。人は小さい頃に決まり事を悟る。女性は伝統の継承者。嫌ならユーモアで変えるのが一番。世界中の漫画家と共同作業をしている。笑いを添えて一歩ずつ変えていこう。
和訳してくださった Satoshi Tatsuhara 氏、レビューしてくださった Takahiro Shimpo 氏に感謝する(2010年12月)。
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